長官会見要旨 (令和2年10月21日)

会見日時等

令和2年10月21日 14時00分~14時25分
於:気象庁会見室


発言要旨

   冒頭私から、気象庁庁舎の虎ノ門への移転について述べさせていただきます。

   新庁舎への移転がいよいよ目前に迫っており、来月(11月)上旬から12月中旬にかけて順次移転を進めて参ります。
   庁舎移転につきましては、平成19年の「国有財産の有効活用に関する検討・フォローアップ有識者会議」におきまして虎ノ門への移転が示されたことを受け、PFI方式を前提に港区立教育センターとの合築計画として進めて参りまして、約10年の歳月を経て本年2月28日に竣工したところでございます。
   新庁舎は防災に重点を置いて建築されており、地下部分の免震層は建物全体の横方向の揺れを低減し、さらにオペレーションルームやサーバ室には床免震構造の採用により上下方向の揺れも低減するとともに、7日間の業務継続を可能とする燃料タンクや受水槽も整備されております。
   さらに、大手町庁舎内にある各種システム機器につきましては、新旧庁舎に機器を二重配置する等の準備をしており、業務継続をしながらの移転に向けて調整手続きを進めております。
   移転に向けましては、報道の皆様にも会見室の機材準備等ご協力をいただいており、誠にありがとうございます。引き続き、移転作業が順調に進むよう、しっかりと対応して参りますので、よろしくお願いしたいと思います。

   私からは以上でございます。

質疑応答

Q : 先日の台風第14号で、三宅村と御蔵島村に、基準の見直し後としては初めての大雨特別警報が発表されました。発表の経緯と経過について、どのように評価していらっしゃるかお伺いします。
A : 三宅村と御蔵島村では、今月7日から10日にかけて、台風第14号や前線の影響で雨が降り続き、その結果、10日17時に大雨特別警報(土砂災害)を発表したところでございます。
 ご質問のとおり、気象庁では、7月30日から島しょ部等の狭い地域におきましても、大規模な土石流等が想定されるときには大雨特別警報(土砂災害)を発表できるよう、新たな発表指標の全国的な運用を開始したところでございます。そして、今回が新しい指標に基づいて発表した大雨特別警報の初めての事例ということでございます。
 大雨特別警報の発表を含めた、今回の一連の情報発表では、特別警報の発表前の段階から、大雨の状況に応じて、大雨・洪水の警報や土砂災害警戒情報等の気象情報を段階的に発表するとともに、気象庁防災情報ツイッターや、自治体への直接の電話解説であるホットライン等を通じて、記録的な大雨に対する厳重な警戒の呼びかけを行う等対応してきたところでございます。
 今般の改善により、これまでの基準では発表に至らなかった島しょ部において、大雨特別警報という形で私どもの持つ最大級の危機感を伝えることができたというようには考えていますが、その効果や受け止め等につきましては、関係機関とも振り返りを行い、今後の適切な運用に繋げて参りたいと考えております。

Q : この夏、熱中症警戒アラートを関東甲信地方で試行を行い、その結果について今週月曜日に環境省と共同での検討会がありましたが、来年度どのような方針で運用をするのか、教えていただけますでしょうか。
A : ご案内のとおり、今年、関東甲信地方を対象として、熱中症警戒アラートの試行を行ったところでございます。報道機関の皆様には、様々な機会で、熱中症警戒アラートの取り組みや熱中症への警戒を呼びかけていただきました。ありがとうございました。
 おかげさまで、一般の方を対象に実施したアンケートでは、アラートに関する認知率は75%を超える非常に高い数字が出ております。また、環境省の熱中症予防サイトへのアクセス数についても、記録的な猛暑となった2018年と比べても急増したということで、今回のアラートの取り組みによって、熱中症対策への効果は一定程度あったというように考えております。
 ご質問にありましたとおり、10月19日(月)に第3回の有識者検討会を開催いたしました。来年度からの全国運用に向けては、発表基準は全国一律で暑さ指数33以上、発表単位は都道府県単位を基本に、北海道・鹿児島県・沖縄県については細分化する、発表のタイミングはこの夏の試行と同様に前日17時と当日5時ということで、基本的にこの夏の発表方法を踏襲するという形でご了解いただいたところでございます。一方で、名称や色につきましては、委員の方々から様々なご意見をいただいたところでございますので、12月2日を予定している次回の検討会で更に検討をするということにしております。
 引き続き、いただいたご意見を踏まえまして、効果的な情報発信を行えるよう、環境省と連携して検討を進めて参りたいと考えております。

Q : 本日午前中に開催した気象分科会のことで伺います。ウェザーニューズ社の草開社長の代理の方から、気象データの有償化について「無くなったと聞いています」というご発言がありました。6月の気象分科会でそういったお話があって以降にどういった議論があったのか、また無くなったというのは、とりあえず今回の提言の中からは無くなったというような受け止めなのか、それとも今後継続して議論していくということなのか、そのあたりを教えていただければと思います。
A : 前回の気象分科会の際、そのことが議論になったことは事実ですが、必ずしも我々の方から、気象分科会においてデータの有償化という観点でご提案させていただいたものではなかったのですが、内部においてそういったことについても検討したことは事実でございます。一方で、こういったものはやはり合意形成が重要でありますので、現時点においては、具体的な案ができているというような状況ではございません。
 一方で、本日午前の気象分科会においても、産学官が技術・能力・人材・資金等を結集して気象業務全体で社会へ貢献していくという点については皆さんご賛同いただいたと考えておりますので、この考え方に沿って、合意形成やwin-winの関係を前提に今後の検討を進めていきたいと考えております。

Q : 虎ノ門庁舎への移転について伺いたいのですが、現在の庁舎を長年愛着を持って使われている職員の方も多くいらっしゃって、長官ご自身も思い入れや感慨深さがあると思いますし、長官会見自体もここでやるのは最後だと思いますが、そういった面で感慨深さ等がありましたらお願いいたします。
A : まったく個人的な感想を述べさせていただきますけれども、ここでの長官会見も今日が最後で、来月の長官会見は新しい虎ノ門庁舎で実施する予定と伺っております。
 この庁舎ができたのは昭和39年と伺っています。それから56年、私が気象庁に入ったのは昭和59年でございますので、この庁舎が竣工してから20年後、さらにそこから36年以上ということなので、この庁舎ができてから役割を終えるまでの間のうち6割くらいの間、私は気象庁にいたということになりますので、そう思うとこの庁舎に本当にお世話になったなという気持ちがございます。
 一方で、新しい庁舎は色々な意味で今の庁舎よりも使い勝手が良くなりますので、ある意味、気象庁に対して、もっとパフォーマンスを上げろという国民からの声援・ご指導というように思っておりますので、新しい庁舎に行った際には、今以上に我々のパフォーマンスを上げて、国民の皆様の期待に応えられるようにしていく必要があるなと感じている次第でございます。

Q : 今の関連ですが、この庁舎で勤務された中で、何か印象的なこと等はございますか。
A : 以前は仕事が終わると事務室等に関係者やメディアの方も集まって一緒に懇談をした、という時代がございました。その当時、私も若く見習い身分でしたが、そこで色々お話しさせていただいたことはその後の仕事に役立った点も多かったかなと思っています。今となっては、そういったやり方ではできませんので、それ以外の方法でしっかりコミュニケーションを図っていくということが重要だと思いますが、この庁舎の思い出となると、そういったことがよく思い出されるというのが正直なところでございます。

Q : 昨年の台風第19号の災害から1年が経ちましたが、これまでの教訓を、今後どのように気象行政、防災行政に繋げていきたいとお考えでしょうか。
A : 台風第19号ではいくつか教訓を得られたと思います。一番大きかった教訓としては、特別警報を警報に切り替えた後、これはあくまで大雨の特別警報が警報になったということなのですが、残念ながら河川についても安全だという誤解を与えるような情報となってしまい、それによって避難されていた方が自宅に帰られて洪水の災害に遭われたという大変残念な事態がございました。それについては、今年度、特別警報を警報に切り替える際には、河川についてはまだ危ないということを、さらにどの河川がどの程度危ないかということを、気象庁と国土交通省水管理・国土保全局とが合同で記者会見を行うという非常に画期的なスキームができまして、それはそれなりに機能したのではないかと思っております。
 こういった形で、大変残念でございますが毎年のように大きな災害が起きており、その都度新しい教訓が得られるというのが今の状況でございますので、我々としては、一つ一つそういったものに誠実に対応していくということが重要かと考えております。

Q : 教訓を活かしてこられた中で得られた成果や手応えといったものはありましたでしょうか。
A : 先ほど申し上げたとおり、合同会見については一定程度の成果があったと考えておりますが、毎年、出水期が終わった段階で、それぞれの災害について振り返りを行っております。気象庁の中でも行いますし、関係する地方公共団体や住民の方々にもご意見を伺って、我々の行ったことが本当に効果があったのか等の検証を進め、仮に十分でなかった場合はさらに改善を進めていくというやり方をしておりますし、今回についてもそういったやり方をしていきたいと思っております。

Q : ウェブサイトへの広告掲載の改善策の道筋や進捗状況について教えてください。
A : 現時点では、表示された広告の総数、あるいは事業者において停止した広告サイト数等について把握したところでございますが、我々が想定していなかった事態が発生してしまった根本的な原因や、それを踏まえた形での今後の再発防止策については、引き続き調査・検討を続けているところでございます。それらがはっきりした時点で速やかに皆様にお知らせいたしますので、大変申し訳ないのですが、もう少しお待ちいただければと思います。

Q : 概算要求を見ますと、ウェブサイトの運用資金が盛り込まれていないということは、もう退路を断って、ウェブサイトの運用については広告費で賄うという方向は変わりないということでしょうか。
A : そこも含めて今後どうするかは、原因の究明と再発防止策ができてからになると考えております。ご質問にあったとおり、ウェブサイトの費用について来年度予算に計上していないことは事実ではございますが、そこは柔軟に対応できるものだと考えております。

Q : 本日の気象分科会での議論についてお聞かせください。過去の分科会でも議論になっていたと思いますが、気象庁の人員は減少傾向にあって、気象情報の高度化で運営維持費も増えているという状況があると思います。新規のインフラの整備や更新のための予算確保も難しいという背景もあると聞いています。長官はこの現状をどう認識されていて、どう改善していくのか、お考えを聞かせていただければと思います。
A : 以前もお話しさせていただいたとおり、もちろん予算が潤沢にあるわけではございませんが、それは気象庁に限った話ではなく、すべての省庁が少ない予算でやりくりしている状況は同じだろうと思っています。気象庁につきましても潤沢ではございませんが、日々の気象業務を遂行するために必要な経費、あるいは、それをさらに改善をしていくための経費といった必要な経費はこれまで基本的に確保できていると思っております。もちろん綱渡りの部分もあったりしますが、今後も色々な方法を使ってなんとか経費は確保していくという姿勢は変わらないと思っています。

Q : その上で、今日も分科会でお話がありましたが、民間の方や学の分野の皆さんとどう連携していくかというところも重要なポイントになると思いますが、そのあたりはどうお考えでしょうか。
A : 今日の議論の中で、例えばリソースの最適化というご意見もありましたが、まさしくそのとおりだと思っています。以前、20年かそのくらい前で言えば、どちらの方が精度が高いとか、どちらの情報が優れているといったことで、国と民間が競ったり、研究機関と気象庁が競ったりという部分があったのも事実でございます。ある意味、競い合うというのは切磋琢磨するということで、決してマイナス面ばかりではありませんが、やはり今のような情勢になりますと、競うこともゼロとは言いませんが、一方でお互いに協力をすることによって効果的にリソースを作っていく、使っていくということが非常に重要だと私は思っています。そしてそういった機運は気象庁だけではなく、民間の方も研究機関の方も同じ思いだと理解しておりますので、そこはしっかりした協力関係ができるのだろうと思っています。具体的なところはこれから詰めていきますが、そういう考え方で三者が一致したというのは非常に大きな成果だと私は思っております。

Q : 庁舎移転に関することで、業務的なことで思い出に残っていることはありますか。また、長年勤められた庁舎での仕事も残り1か月ということで、改めて所感を教えていただければと思います。
A : 私は国土庁に出向していたことがありますが、他の役所での勤務の経験はそこだけですし、民間企業にもいたことはありませんので、他の職場のことはあまり経験がないものですから、職場というのはこういうものだというような認識でずっといましたので、おそらく虎ノ門に行ったら、色々な意味で、ここの思い出が蘇ってくるのかなという気がしています。
 また私も現場の勤務を何度かさせていただいていますので、2階の地震の現業室について言えば非常に思い出が深いものはありますし、特に遠地津波といったものは時間が長くかかりますので、3日間くらい現業室に入っていたということもあり、それは一つの思い出ではあります。

Q : 最近、気象庁が出す情報をベースにしたような、例えば東京都での感染拡大特別警報であったり、今日は新潟県でクマ出没の特別警報が出ましたが、こういった「特別警報」というワードを使い最大級の警戒を呼びかける情報が全国各地で出されていることについて、率直にどのようにお考えでしょうか。
A : 気象業務と直接関係のない話ですので、コメントは控えた方がいいと思いますが、名前を使っていただくのは構わないと思っています。

Q : ある意味、「特別警報」というワードの強さが世の中に周知されているのかなと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
A : そういったことがあるのかもしれませんが、私自身、それについて何らかのデータを持っているわけではございませんが、皆様お使いになるということは、それなりに少なくとも「特別警報」という名前が皆様に普及しているのかなというのはそのとおりかと思います。

Q : ウェブサイトの広告の件ですが、先ほど柔軟に対応とおっしゃったのは、場合によっては予算の組み換え等も選択肢に入ってくるということなのでしょうか。
A : 少なくとも、来年度の気象庁ホームページの経費をすべて広告で賄うことが前提ということではないということでございます。

Q : 今後デジタル庁ができてどのようになるかは定かではありませんが、国の省庁のサイトを広告に使うというのが将来にわたって気象庁だけというのは考えづらいので、ホームページのスペースを有効活用することやそれに伴う業務というものが、果たして気象庁が単独で考えなければならないものなのか疑問で、国の然るべき機関で、それがデジタル庁なのかは分かりませんが、統一的に運用していただいて、気象庁は単に場所を貸すだけで、それにまつわる業務は然るべきところがやって、利益に関しては気象庁に還元してもらう、という仕組みにした方がいいのではないかと思いますがいかがでしょうか。
A : ご提案については承りましたが、私自身がコメントする立場にはないのかなと理解しております。

Q : 熱中庁警戒アラートの名称の問題ですが、東京アラートというものが出てきまして、それと混同する人はいないと思いますが、○○アラートという言葉はあちこちで使われるようになってきているということと、やはり「熱中症警戒アラート」という言葉は9文字で長いということ、また警戒とアラートがダブるということ、しかし下手に短縮して「熱中症アラート」とすると民間企業の情報と重なるという問題があります。そのため、候補の一つにありました「熱中症危険情報」という言葉であれば、7文字でかつ危険という言葉があるので、熱中症は今や命の危険に直結することであるという認識で皆さん動いているわけですので、熱中症危険情報にしていただいた方がありがたいという要望です。
A : ご意見としてはもっともだと思いますが、これについてはご案内のとおり有識者検討会でご議論させていただいておりますので、我々としてはそれを尊重したいと思っています。

(以上)

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