長官会見要旨 (令和2年6月17日)

会見日時等

令和2年6月17日 14時00分~14時43分
於:気象庁会見室


発言要旨

   私から3点述べさせていただきます。

   最初は、大雨への備えについてでございます。梅雨のシーズンに入り、これから梅雨末期にかけて大雨が心配される時期となりました。
   気象庁は昨年度開催いたしました「防災気象情報の伝え方に関する検討会」からご提言いただいております、大雨特別警報を警報等へ切り替える際の国土交通省水管理・国土保全局との合同記者会見をはじめとしました各種改善策について、その実施状況を先月28日に報道発表させていただいたところでございます。今後、内閣府や国土交通省などの関係省庁や地方自治体とも連携を図りながら、気象庁としてしっかりと取り組んで参りたいと考えております。
   住民の皆様には、注意報や警報等に加えて、実際に地域のどこで土砂災害や洪水等の危険度が高まっているかが分かります危険度分布をご利用いただきまして、早め早めの防災対応を取っていただくようお願いしたいと思います。

   続きまして、この夏の見通しと熱中症対策についてでございます。
   今年の夏は全国的に気温が平年並か高い見込みでございまして、近年の夏と同様に熱中症のリスクが高いことから、十分な備えが必要だと考えております。
   これに関連しまして、環境省と連携いたしました熱中症予防に資する新たな情報発信について、昨日16日に報道発表させていただきました。これは環境省が発表する、熱中症による救急搬送人数との相関が高い「暑さ指数」を基準に、気象庁の強みであります防災気象情報の伝達経路を活かした「熱中症警戒アラート」を、今年7月1日から関東甲信地方で先行的に提供を開始するというものでございます。
   このアラートは、熱中症の危険性が極めて高くなる暑熱環境が予測される場合に、国民の皆様に、暑さに対する「気づき」を促し、予防行動の徹底に繋げていただくことを目的とするものでございまして、先行実施の結果を踏まえ、来年度からは全国に展開する計画としております。
   このアラートを含めまして、既に環境省や気象庁から提供している暑さ指数や気象情報についても、熱中症の予防行動に十分ご活用いただけるよう、しっかりと取り組んで参りたいと考えております。

   最後は、現在審議を進めております「交通政策審議会気象分科会」についてでございます。
   気象分科会では、一昨年8月に、「2030年の科学技術を見据えた気象業務のあり方」をご提言として取りまとめていただきました。この提言では、観測・予測精度の向上に係る技術開発と気象情報の利活用促進の2つの取組を進め、その相乗効果によって、安全、強靭で活力ある社会の実現に貢献していくべきとされたところでございます。
   社会が変革し、災害が頻発・激甚化する中で、この提言を実現していくにあたっては、先進的な技術を生み出している「学」と気象情報・データの利用者を熟知している「産」との連携が不可欠と考えております。去る6月5日に開催しました第31回気象分科会では、産学官連携を促進していく観点から、
   〇気象業務に関わる産学官はどのような関係性を構築していくべきか、
   〇気象庁はどのような施策を講じていくべきか、
の2つについて、委員の皆様から様々なご意見をいただいたところです。
   今後の審議についてでございますが、気象業務の一層の発展のためには、民間から幅広い知見やご協力をいただきながら、産学官の有機的な連携のもとで、気象業務を推進していくことが重要と考えております。6月5日の審議でも、この点について委員の皆様からご意見をいただいたところでございますが、次回の審議においてさらに議論を深め、8月頃を目途に一定の方向性をとりまとめ、今後の業務運営に活かして参りたいと考えております。
   私からは以上です。

質疑応答

Q : 熱中症警戒アラートが運用開始するという正式なアナウンスがありましたが、改めてこのアラートを新たに発出するということの意義と国民はこの夏どのような点に留意して過ごすべきであるかということについて、メッセージをいただければと思います。
A : 熱中症警戒アラートは暑さ指数が33℃以上という、熱中症の危険性が極めて高い状況のときに発表されるものでございまして、国民の皆様にはまず暑さに対する「気づき」をしていただいて、その上で予防行動の徹底をしていただくということが目的でございます。例えば、具体的な予防行動の例を示しますと、不要不急の外出を避け、エアコンを活用するなど、涼しい屋内で過ごしていただくとか、特に高齢者の方におかれましては、夜間であっても屋内でしっかりと熱中症の対策をしていただく、また、運動、特に部活動は原則行わない、あるいは給水をこまめに行うといった、ある意味当然というような予防行動ですが、これを徹底していただくということ、そしてそのことに気づいていただくということが最も重要だと思っています。併せまして、熱中症警戒アラートが発表されていないから熱中症の危険がないという訳では全くございませんので、気象庁の発表する気象情報や、あるいは環境省のホームページには暑さ指数が毎日公開されており、こういったものをご活用いただいて、水分をこまめに補給するとか、休息を取るなど、よく言われております熱中症対策をしっかりと早め早めに行っていただきたいということが、熱中症警戒アラートに込められているメッセージでございます。

Q : 新型コロナウイルスの関係で、国内の感染状況は一定程度落ち着いてきているかなというように見えますが、気象庁の業務、例えばテレワークであるとか、通常と異なる体制が今どれほど続いているのかを教えていただきたいということと、なおかつ、出水期を迎えてきている中で、防災気象情報の発信に支障はないのかという点を改めて教えてください。
A : 私ども政府の基本的な方針に基づきまして、まず新型コロナウイルスの感染拡大を防止するという観点、併せて気象業務をしっかりと継続していくという観点の2つから感染予防対策を講じているところでございます。具体的には、職員個人による感染予防対策の徹底及び体調管理、それから在宅勤務や時差出勤、テレビ会議活用の一層の推進が挙げられます。在宅勤務等については50%という一つの目安がございますが、それを上回っても当然良いということで、できる限り在宅勤務を推進しているところでございます。また、24時間体制で業務をする現業室への不要不急の立ち入り制限も実施しております。
 一方で、24時間体制で防災気象情報を提供している現場にいる職員については、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策を取る以前と全く同じ体制を取っています。在宅勤務ということは一切なく、必ず現業室に来ていただいて業務をするということは全く変わりません。併せまして、もし大きな災害が起きた場合には、当然そのための応援の職員が緊急で参集するという体制も、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策を取る以前から一切変わりません。防災情報の提供に関しては、従来どおりの体制をそのまま取っておりますので、なんらかの支障が出るということは一切ないと考えていただいて結構でございます。

Q : 6月4日の桜島の噴火で大きな噴石が3km飛んだ事案についていくつかお伺いしたいのですが、大事なところなのでまず問題意識を改めてお伝えしたいので少し前置きがあるのですが、桜島の噴火警戒レベルの判定基準の中で、大きな噴石が2.5km以上飛散するということは噴火警戒レベル5への引き上げ基準に書いてあって、かつ3日間同程度の爆発がなければ引き下げると書いてあるので、6月8日に気象庁が把握したときは4日経っていますので、その時点では基準に則って、噴火警戒レベルを引き上げるような状況ではなかったと考えております。一方で当初の気象庁への取材でそもそも判定基準は大きな噴石の複数の飛散だということで、当時仮に観測できても、引き上げる対象ではなかったと説明されました。これについて、専門家や地元の住民から疑問の声が上がっています。まずお聞きしたいのが、当初の説明の複数の噴石の飛散という見解は判定基準から読み取れないので、どこから出てきたものなのか、当日の庁内の議論の中で出てきたのか、もしくはそういう内規や運用があるのか、その議論の過程を教えてください。
A : そのことについては我々の説明が十分でなく、誤解を招いた点があったのかなと反省しているところでございます。まず経緯を話しますと、今のご質問にありますとおり、8日に発見された時点では既に4日経っていますので、警戒レベルを上げる状況ではないという判断をさせていただいた上で、我々の方で一番議論があったのは、6月4日以降の状況が住民の方々に緊急に避難していただくような切迫した火山活動状況であったのかということで、ここが非常に重要なポイントでございます。仮にそういう火山活動状況であったとしたら、そのことを我々は覚知できなかったということなので、これは非常に由々しき問題だろうということで、そこは真剣に議論させていただきました。結論から先に申し上げますと、住民の皆様が緊急に避難をするようなそこまでの切迫した状況ではなかったということが我々の結論です。なぜそのような結論に至ったかというと、6月4日の3km噴石を飛ばした噴火ですが、まず実際その噴火が起きた時にリアルタイムで火山カメラで監視をしているのですが、その時、観測者、つまり監視している職員が見た範囲では噴石の飛散距離は全て2km以内で、いわゆる噴火警戒レベル3の基準の範囲内であったことが挙げられます。また、爆発の大きさをどのように客観的に見るかということは難しいですが、噴煙の高さや、爆発に伴う空気の振動である空振の大きさを見るのですが、この時の空振の大きさは136.8Paでした。100Paを超えているので大きな空振であることは間違いないのですが、例えば2019年には100Paを超えるような爆発が計6回起きました。この中には136Paを超える空振もありました。こういった客観的なデータを見る限り、爆発の大きさとしてはもちろん大きいものでしたが、これまで何度かあったその範囲内であるということでございます。それから、こういった噴火が起きる前には地殻変動のデータが少し変化し、それで爆発が近いということが大体分かるのですが、その変化の範囲もこれまでよく見られた変化の範囲内であり、特段急に大きな変化が起きたということは一切なかったことが挙げられます。そのため6月4日の噴火は、3km噴石が飛んだということ以外は、大きめの噴火ですが、これまで何度もあった噴火の範囲内としか見えず、実際に監視している職員もそのように判断したということでございます。
 それから、6月4日の噴火以降も様々なデータに活動の高まりを示すような特段の変化がなく、実際に6月4日の噴火以降大きな噴火はありませんでした。こういった状況を見ますと、6月4日の噴火以降、住民の皆様に直ちに避難していただくような切迫した状況ではなかったということを我々として判断しました。
 その説明の中で、今、住民の皆様に直ちに避難していただくような切迫した状況ではないという言い方をさせていただきましたが、噴火警戒レベル5の意味はまさにそうなのですが、その意味と噴火警戒レベル5に引き上げるかどうかは別の観点がございます。つまり住民の皆様に避難していただかないということは後から見たときにそうであったと判断ができる話であって、当然大きな噴石が飛んだことを観測した時にはそこまでの判断ができませんので、そのような時には間違いなくすぐに噴火警戒レベル5に引き上げる運用をさせていただいております。それは合理的であると思っていますが、今申し上げたとおり、今回実際どうだったかというとそこまでではなかったという判断をしたことを説明させていただいたことが、おそらく噴火警戒レベル5に引き上げるような状況ではなかったという言い方をさせていただいたのだろうと思います。そこが我々の説明が十分でなく、誤解を招いたところではないかと考えています。改めて申し上げますが、6月4日以降の状況について、その後我々がデータを精査した結果では、住民の皆様に直ちに避難していただくような切迫した状況ではなかったということが我々の判断でございます。併せまして、噴火警戒レベル5への引き上げの基準というルールについては、風に乗ったり転がってくるものは別としまして、2.5km以上弾道を描いて飛んでくる噴石があった場合には、直ちに噴火警戒レベル5に引き上げるというルールであるということは間違いありません。誤解があったようですので、改めてそこははっきりお話させていただきたいと思います。

Q : そこにこだわりたいのは、複数の噴石という基準は、これまで桜島の噴火警戒レベルの基準等の取材において全く聞いたことがなかったので、なぜそういう話が出てきたのかお聞かせください。
A : 私の想像ですが、議論をしているときに、最終的に直ちに避難が必要な状況ではなかったという結論になったのですが、それはあくまで結果論ではないか、結果論でそうであったからそれでいいという訳にはいかないだろうという中で、さらに議論したことは本当に切迫した状況であればもっと色々なことが起きていただろうということでした。今回の場合はほとんどの噴石、確認されたものでは3km飛んだ噴石以外は全て2km以内でした。そういう状況の中で、全ての噴石をもともとリアルタイムで追跡し確認することは無理ですので、それがたとえ見逃されたとしても、他のデータで本来であれば活動が活発化しているということは当然分かって、その時点で引き上げるという行為が行われるだろうと、その中の色々な事象は、例えば今回は一つの噴石だけが3kmを超えた以外は全て2km以内の飛散でしたが、本当に活動が活発であれば複数の噴石が2.5kmを超えていくだろうと思います。それであれば、間違いなく捉えられるし、それはもう待ったなしで噴火警戒レベル5に引き上げなければなりませんが、今回はそのような状況ではありませんでした。複数でという議論をしたのはそこの部分です。そこの説明がまずかったために誤解を招いたのではないかというのが私の想像です。

Q : 複数の噴石というのは、もともと噴火警戒レベルの判定基準の運用の中でそのような考え方はないということですか。
A : ありません。複数の噴石が飛散すれば、さすがにどれかは捉えられるだろうという議論はありました。

Q : なぜこのようなことを聞いているかというと、噴火警戒レベルの判定基準や警戒範囲は地元の協議会と合意をした上で公表しているものだと思うので、その解釈が気象庁の運用で変わってしまうということであれば、地元の防災対応も大きく変わります。そもそも噴火警戒レベルとは何なんだという話にもなってしまうと思いますので、気象庁の裁量で大きく変わるような見解を最初に示したということについてはどうお考えでしょうか。
A : そのような意図はありませんでしたが、結果的にそのように受け取られたことは事実でございまして、それは我々の方の説明がまずかったことが原因であるだろうということは間違いないと思います。そこは反省しているところでございます。併せまして、今回について言いますと、本来であればリアルタイムで噴石が見つからなかったとしても、なるべく早い時期に、実際は当日の昼に現地調査をしたのですが、その時も噴石が2kmを超えているかどうかを重点的に調査したので、まさか3kmまで飛んでいることは想像が足りなくて、残念ながらその時点では調べられなかったのですが、できるだけ早期にこのような事態が起きたことを覚知できるような方法が必要かと思います。その上で、今回のような、もちろん早期に2.5km以上へ飛んだことが分かればその時点で悩まずに噴火警戒レベル5に引き上げますが、そうではなくある程度時間が経ってしまった場合にどのような運用をするかについてはしっかりと決められたルールがないと我々は認識していますので、その点については今後防災協議会の中で議論していく必要はあるかと思いますが、2.5km以上であれば、噴石が1個か2個かということとは一切関係なく、弾道を描いて飛んでくる噴石があれば、直ちに噴火警戒レベル5に引き上げるというのはそのとおりで、そこには紛れはないと考えております。

Q : 確認ですが、当初の説明で、複数の噴石ではないので噴火警戒レベル5への引き上げには該当しないと説明したという認識は長官にはありますか。
A : 私も取材対応した本人からしかインタビューの状況は聞いていないのですが、本人としては1個だから上げないとか、複数だから上げるという意識はなかったということです。あくまで今回の事例が、当時は噴火警戒レベル5ではないという言い方をしたかと思いますが、正確に言えば住民が直ちに避難することが必要であるような切迫した状況ではなかったということを説明したつもりであったと聞いています。

Q : 翌日鹿児島地方気象台も我々の取材に対して同じように答えていたので一定程度組織の回答なのかなと思ってしまったのですが。
A : 詳しく調べてないので分かりませんが、そのような報道が流れたので、鹿児島地方気象台がそれに合わせた可能性がありますが、我々の意図としては今申し上げたとおりでございます。ただ、実際に誤解を招いたのは事実で、我々の説明がまずかったということでございますので、そこは反省しているところでございます。

Q : 今後そのような公表されている判定基準とは異なる運用の解釈を示してしまうということがないようにするには、どうして今回そのようなことを示したかということは、今後のためにも大事だと思いますが、そこはもう少し確認するお考えはありますか。
A : 今回は非常に特殊なケースで、2.5km以上飛散したことをすぐには確認できず、実際に確認できたのは4日後でしたので、ルール上では上げて下げるような状況でした。このこと自体は当然今後改善していく必要があると思いますが、その時点で我々として最も関心があったのは、本来であれば住民を避難させなければならかったのではないかということでした。そこが我々にとって重要なポイントなので、そこを一生懸命に議論したので、それ以外の部分が疎かになっていた部分もありますので、上手く伝わらなかったのだと思います。決して我々の方の解釈で勝手にルールを変えるということはありません。ただ、先ほども申し上げましたとおり、必ずしも全てのルールが厳密に決まっているわけではないので、そこの部分については一定程度は我々の運用に任されることはあるだろうと思いますが、今回について言えば2個だから上げるとか、1個だから上げないということではないことははっきり申し上げます。

Q : 判定基準そのものを気象庁の裁量で大きく変えていくということはあるべきではないし、今後もそのようなことはないということでしょうか。
A : もちろんそうです。当然判定基準の内容を変えるのであれば、協議会に諮ってご了解をいただいてから変えます。これはこれまでそうしてきていますし、今後もそうしていきます。

Q : 次このようなことがあったら、噴石を捕捉できるようにするという検討は必要だと思いますが、現地調査の方法や監視カメラの体制について、専門家からは火口から南西方向が少し見えづらいのではないかという指摘もあるのですが、そのあたりの今後の検討はどのようなことを考えていますか。
A : まずは先ほども申し上げましたとおり、例えば天候不良の時はもともと見えませんし、全ての噴石をリアルタイムで監視カメラで追えるわけではありません。そのため、まずはそういう場合であってもできるだけ早期に噴石の状態が分かるのであれば現地調査を行いますが、今回のようにどうしても抜けが出ますので、なるべく多くの方々に、もし今までなかったような石が転がっているのを見つけたら、通報していただくというようなことをまずしっかりやるべきことだと思っています。監視体制について言いますと、今回も噴石がここに飛んだことが分かっている状態で見ると、難しいですがそれなりに見えますが、リアルタイムではまず無理です。今回のようにある程度ここへ飛んだことが分かっていると、逆にその軌跡を辿っていくと、これがそうなのかなということが見えます。そのような観点からいくと、カメラを増やしたからといって本当に今回のようなケースが救えるかは疑問があります。そういう意味では、どのような形でやったら今回のような噴石をなるべく早く捉えられるのか、このことはしっかり検討したいと思います。その上で、例えば今AIのような画像認識が非常に精度や技術が上がってきていますので、そういったものを使えるのではないかと思っています。今、ベテランの監視員が噴石がどこに飛んでいるかをその都度画像を目視で確認していますが、そうではなく、コンピュータで噴石が大体どの範囲に散らばったかということをある程度推定して、最終的に現地調査でそこを重点的にやっていくというような方法は十分にあるのではないかと思っています。もちろん、これからの開発になるので、すぐにできるかどうかは分かりませんが。もちろん議論の中で、ここにカメラがあれば確実に捉えられていたということがあるのであれば、当然観測強化もあるかなと思いますが、今現在そのような状態にはなっていないということです。

Q : 今回、長官も冒頭おっしゃいましたが、噴石が飛んだこと以外には大きな変化がなかったということで、噴火警戒レベルが完全な予知ではないということは理解していますが、もともとの基準を超えて現象が起きるということも重い事実として今回改めて分かったのかなと思いますが、噴火警戒レベルの限界、制度そのものについてあり方をまた考えていくという考えがあるのか、もしくはこれをどのように住民や地元自治体に見て欲しいかということがあればお願いします。
A : そこは非常に悩ましい部分です。今おっしゃったとおり、客観的なデータから見ると、今回の噴火の前に特別な事象は全くなく、それまでの状況と何ら変わらない状況で噴石が3km飛んでいったというものでした。これは非常に悩ましいのですが、確認できている他の噴石は全て2km以内で1つだけ3kmということで、もちろん爆発の大きさと噴石の飛散には相関はありますが、このような例外的なものをここまで予測することは難しいです。結局我々は噴石がどこまで飛ぶのかを事前に予測することは、色々な条件も重なりますので、そこまではできず、大きな噴火が起きそうかどうかというデータが掴めるだけですので、6月4日の噴火を事前に予測して噴火警戒レベルを引き上げる方法は現時点では考え付かないのが正直なところです。ではその場合どうするかは、本当に悩ましい問題だと思います。本当に安全側を見るのであれば、今の状況であってももう少し広い範囲まで警戒範囲を広げるというやり方しか今はないと思います。それは逆に様々な社会活動を制限することになりますので、そことの兼ね合いになります。そのあたりについては、我々だけではなく、まさに火山防災協議会の中で議論をしていくのかなと思っています。

Q : 関連しまして、噴火警戒レベルを上げる、上げないという判断以前の問題として、居住地域に噴石が飛んでいるという状況の中で、噴火速報が出せなかったことについては、率直にどのようにお考えでしょうか。
A : これも全く同じ問題で、全ての噴石の軌跡を追える訳ではないので、もちろんある程度多数の噴石が例えば2kmを超えていけば、少なくとも一つ二つの噴石はリアルタイムで確認できますので、その時点で噴火警戒レベル3を超えていますから、噴火速報を発表するということは当然あるかと思います。しかし、今回のように確認されたものは1つを除くと全て2km以内という状況の中で、それについても噴火速報を発表しろと言われると、正直技術的には非常に難しいということになります。それでいいのかというのは、もちろんそのとおりで、そこは考えないといけないのですが、技術的には手段がないというのが現状だと思います。

Q : 全国に常時観測火山含め多くの火山がある中で、噴火速報が発表されなくても、危険な場合もあるということになりますでしょうか。
A : そういうことです。

Q : 今日、仙台の方で気球の目撃情報がありまして、仙台管区気象台にも情報が寄せられたとのことですが、気象観測機器にも似ているのではないかという指摘もあったと聞いておりますが、現在気象庁の方で把握されている情報や、あるいは長官のご見解などもしありましたらお願いできますでしょうか。
A : その話は初めて聞きました。情報を把握している職員がいましたら回答お願いいたします。
A : (広報室長)仙台管区気象台にも、今朝の夜が明ける頃に白い球が空に浮いているという問い合わせが来てまして、気象台が上げている高層気象観測用のゾンデと似ているものでしたので問い合わせがありましたが、もともと仙台管区気象台では高層気象観測はやめておりますし、気象庁が高層気象観測用のゾンデを上げるのは朝と夜の9時ですから、その時間帯には上げていません。また、気象研究所にも確認を取りましたが、研究用に上げた事実はないということでありまして、気象庁に関わるものではありません。また、皆様の発信されているニュースの画像を見ると、白い風船の下についている機械が、我々のものは落下した時も安全なように白い発泡スチロールの立方体のものがあるだけなのですが、白い棒が十字に付いており、気象庁が持っているものとは全く違うということを皆様には回答しているところです。

Q : 長官からご見解は。
A : 気象庁の高層気象観測では、通常は海に落下してくれるのですが、たまに陸上に落下し、ご迷惑をお掛けすることは何度かありました。それについては、そのたびにお詫びをしているところですが、一方で非常に貴重な観測でございまして、高層気象観測というのは、全世界で同時に観測を行うということに非常に意義があって、なおかつ高層の気象データを直接測る手段であり、リモートセンシングという形ではたくさん方法あるのですが、直接測る方法としてはほぼ唯一の手段ですから、非常に貴重なデータとなっています。そのため、もしたまたま近くに落下した場合については、気象台へお知らせいただくとともに、仮にご迷惑をお掛けしてしまったとしても、そのようなものでありますので、ぜひご理解いただきたいと考えています。

Q : 熱中症警戒アラートについてですが、関東甲信地方以外の地方は暑さ指数33℃以上の極めて危険な状況でも、今年は熱中症警戒アラートは発表されずに高温注意情報が従来どおり発表されますが、地域によってどうしても差が出てしまうことについて、関東甲信地方以外の地域の方への注意点をお願いできますか。
A : 従来の高温注意情報は、どちらかというと熱中症警戒アラートよりも広めに発表されますので、熱中症警戒アラートを発表するほどではない時にも発表されるものですが、そのような時にも熱中症の危険性はありますので、まずは高温注意情報を見ていただくということで、これまでどおりにしっかりと熱中症対策をしていただくということが一つだと思います。併せまして、暑さ指数につきましては、環境省のホームページで常に全国分が出ておりますので、ぜひそういうものをご活用いただき、「今日はこんなに熱中症の危険性が高いんだ」ということは分かりますので、ぜひそのようなものにも注目していただいて熱中症対策に繋がるよう注意していただければと思います。

Q : 今、熱中症警戒アラートの質問がありましたが、逆に言うと、今回関東甲信地方1都8県では、高温注意情報はなくすということなので発表されず、より危険度が高いときに熱中症警戒アラートが発表されるとなると、今までは高温注意情報が発表された時点で気を付けていた人達を救えなくなるというデメリットは感じられないでしょうか。
A : そこは非常に難しい問題で、もちろんどこで基準を切っても、それ以下では決して熱中症が起きないということではございませんので、常にその問題はあるのだろうと思います。今回色々と議論した中では、本当にその「気づき」を促すという観点からいくと、年に20回も30回も発表されるものではないだろうというところだと思います。「今日は本当に危険ですから、今日は徹底してください。基本的に外に出ないでください。エアコンをかけて屋内にいてください」というくらい徹底してやっていただくような日に限定してやらせていただくということでございまして、これは今は熱中症警戒アラートという形で「気づき」を促すわけですが、最終的には毎日、個人個人が自分のいる所の暑さ指数がどのくらいなのか、それは人によっても当然感じ方が違いますから、例えば「僕だったら30℃だったらもうだめだな」といった感覚を身に付けていただいて、「今日は31℃だから外に出るのはやめよう」とか、「絶対に運動しないようにしよう」とか、そのように最終的には個人個人でご判断いただくということが必要なのだろうと思っています。我々の情報は広く皆様にお知らせするものであり、必ずしも個人個人にカスタマイズしているものではありませんので、そういったところに繋がっていただくということが、一番の目的だと考えています。

Q : 今の31℃や30℃というのは指数のことですか。
A : そうです。指数です。

Q : そこが非常に分かりにくいので、長官も、環境省のホームページには以前から暑さ指数は公表されているとおっしゃっていますが、そこが今回熱中症警戒アラートを発表するきっかけとなっていて、暑さ指数があまり周知されていないので、気象庁が持っている周知能力や発信力を使ってやろうということで、そのため「暑さ指数33℃にならなければ危険ではないんだ」という部分のデメリットを本当に心配していますが、大丈夫でしょうか。
A : そこはしっかり周知していきたいと思います。これまでも熱中症警戒アラートのお話をさせていただいた時は、基準以下でも熱中症は起きますと常に言わせていただいておりました。ただ、年に10回も20回も発表されますと、発表されたとしてもあまりピンと来なくなってしまうということがありますので、今日こそはという日に絞って発表させていただこうということです。それでも年数回は発表されますので、「気づき」には十分だろうと思っています。

Q : 冒頭発言の3点目の気象分科会に関して、先日気象分科会を傍聴していたところ、議題にないものが突然飛び出して、産官学連携の中で、気象データに対してお金を取ろうという方向性の議論はされるはずではなかったと聞いていたのですが、後半はその議論に終始していました。今後はその部分に関してどのような話になっていくのでしょうか。
A : 今回の気象分科会の目的は2年前のご提言の中で観測・予測精度の向上と利活用の推進の2つが両輪で、これはこれまで私からもお話させていただいてますが、そのうち予測精度の向上は気象庁だけで行う時代ではないだろうと、これからさらに色々と高度化を図っていく上では、我が国の気象業務に携わる産学官が力を結集し相互に協力や連携をしていかないと、なかなか前に進んでいかないだろうという想いが一つで、そのような意味で観測・予測精度の向上という観点から、「学」という非常に大きな知識を持った方がいらっしゃいますので、こことしっかり連携していき、同様に利活用の推進という観点では、「民」としっかり連携していく、ということが大本でございます。実際に私も気象分科会の席上で発言させていただいたのですが、これまである委員の方から役割分担ということが非常に重要だというご意見があって、それはそのとおりなのですが、今まで役割分担という名目の下で、壁を作り線を引いて、ここからここは官がやり、こっちは民がやってくださいと決めた上で、その後は官と民がバラバラに好き勝手にやっていたのが今まででした。それは連携でもないし協力でもありません。我々としては、仮にそのような線引きをしても、時代が変わればその線自体にあまり意味がなくなってしまうこともあるので、常に産学官が話し合うコミュニケーションの場をしっかり作って、気象業務にはどのようなことが求められているかという共通認識をしっかり持った上で、「ここは民が得意だからぜひやってください。ここはやっぱり国がやるべき話だから我々がやります。是非このような技術開発をよろしくお願いします」といったことを、常に話し合いながらやっていくということが重要で、これが今回の気象分科会の一番の目的であります。残念ながら、今ご質問いただいたように、お金を取るという議論になってしまいましたが、実際に我々の方でも、いくつか産学官連携の具体的な方策についてご提案させていただいていましたので、それについてまずしっかり議論していきたいと思っています。先日の気象分科会の場ではそこを十分に議論できなかったので、事前に各委員の先生には個別にご相談させていただき、ご意見をいただくというような形で今後進めていきたいと思っています。

(以上)

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