長官会見要旨(令和2年4月15日)

会見日時等

令和2年4月15日 14時00分~14時23分
於:気象庁講堂


発言要旨

   最初に、本日の記者会見から講堂で開催させていただくことといたしました。報道機関の皆様にも機材の設置、動作確認等でご尽力いただいたと伺っております。新型コロナウイルス感染症対策へのご理解とご協力に感謝を申し上げたいと思います。

   さて、私の方から3点ほど述べさせていただきます。

   はじめに、気象庁における新型コロナウイルス感染症対策の状況についてでございます。
   まず、今般の新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被害を受けられた全ての皆様に心よりお見舞い申し上げたいと思います。
   先週7日に、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部により緊急事態宣言が行われております。気象庁では、引き続き防災気象情報の適時・適切な発表に必要な体制を維持し、業務の継続に努めて参りたいと考えております。
   一方で、ここ大手町の気象庁本庁をはじめ、宣言が行われた都府県に所在します気象官署では、防災気象情報の発表に必要な監視・予測業務等に携わる最低限の人員を除き、都府県知事の要請等に対応するため、在宅勤務を最大限に推進しているところでございます。
   また、感染拡大防止に万全を期すため、職員個人による感染予防対策と体調管理を徹底するとともに、監視・予測業務等に携わる職員への感染防止策として、24時間業務を実施している現業室への当番者以外の立入り制限、現業室における事務機器・机・ドアノブ等の消毒等を徹底しているところでございます。あわせて、外部の方をお招きするイベント・会議等の開催の自粛等の措置を引き続き講じております。
   交通政策審議会気象分科会につきましては、既にお知らせしましたとおり、第30回以降、多様化・増大する気象業務へのニーズを背景として、気象業務における産学官連携の方策について検討していくこととしておりますが、第30回気象分科会につきましては、対面形式ではなく、書面により開催することといたしました。現在、委員の皆様に資料を送付しご意見を伺っているところでございます。意見が取りまとまり次第、資料とともに公表させていただきたいと考えております。
   この他の主な会議としまして、
   「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」、
   「防災気象情報の伝え方に関する検討会」、
   「異常気象分析検討会」、
   につきましても、書面による開催とさせていただきました。
    また、4月1日に開館を予定しておりました、虎ノ門新庁舎における気象科学館のリニューアルオープンにつきましても、外部の方々の接触の機会を減らすという観点から、開館を当面延期しているところでございます。
   一方、気象業務の継続、いわゆるBCP対策については気象庁職員に感染者が出た場合においても、人員の適切な配置を行うなど業務継続に必要な人員を確保し、防災気象情報を適時・的確に発表できる体制の維持に努めて参りたいと考えております。
   今後も、政府の方針に従い、関係省庁等と緊密に連携を図りつつ、感染拡大の防止を徹底して参りたいと考えております。

   次に「防災気象情報の伝え方に関する検討会」についてでございます。ご案内のとおり、3月31日に提言をとりまとめていただきました。内容についてはご案内のことと思いますが、例えば、
   ○大河川では大雨から時間をおいて氾濫の危険が高まることに関連して、大雨特別警報の解除が安心情報として受け取られることのないよう、特別警報の「解除」を「警報への切替」と表現すること、
   ○この切替の際には今後の洪水の見込みについて、本省庁での合同記者会見を行うなどの改善を行うこと、
   ○令和元年東日本台風の際に狩野川台風を例にしたように、過去の災害事例を引用して警戒を呼びかける際の留意点や、危険度分布の周知の強化など様々なご提言をいただいたところでございます。
   また、中央防災会議のワーキンググループや、国土交通省水管理・国土保全局と気象庁によります「河川・気象情報の改善に関する検証チーム」の報告書も同じようにとりまとめがされております。
   気象庁としては、これらのとりまとめを踏まえて、政府全体の取組とも十分に連携しながら、防災気象情報が避難等の防災行動に役立てられるよう、可能なものから取組を推進して参りたいと考えております。具体的な取組、特にこの出水期から行うものについては、出水期前に皆様にお知らせをしたいと考えております。

   最後に、異常気象分析検討会の開催についてでございます。
   この冬の記録的な暖冬・少雪の要因につきまして、当初、3月中に異常気象分析検討会を開催し、ご議論いただく予定でございましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、4月上旬に書面にて実施し、その結果につきましては昨日報道発表させていただいたところでございます。
   この記録的な暖冬は、インドネシア付近の積雲対流活動が不活発であったことにより日本付近で偏西風が北に蛇行したことや、正の北極振動が持続し中緯度帯に寒気が南下しにくかったことに加え、地球温暖化の影響が重なったことにより生じたものと考えております。今後とも、異常気象の監視を行い、その情報発信に努めて参りたいと考えております。

   私からは以上です。

質疑応答

Q : 新型コロナウイルスの感染防止対応についてですが、テレワークなどの対策を進めることで、例えば必要な観測や、防災情報の提供・発信、こういったものが遅くなってしまったり、最悪の場合、欠けてしまったりする心配はないのでしょうか。あるいは、その心配を払拭するために具体的に講じられている対策等あれば教えてください。
A : テレワークをできる限り推進しておりますが、観測・予測業務に携わる人員については一切触れておりません。従来どおりの人員を確保しておりますので、防災気象情報に関しては全く問題なく発表できると考えております。一番気になることは、仮にこれらに携わる職員の中から感染者が出た場合でございますが、その場合にも当然、応援の要員を確保して順次穴埋めをしていきます。通常の場合でも病気する方はおり、そういう方の応援は行っておりますので、そのような意味で防災気象情報の発表に関しては、万全を期しているとお考えいただいて結構だと思います。

Q : 「防災気象情報の伝え方に関する検討会」に関連してですが、この状況下で出水期が一日一日近づいています。先日も警報や記録的短時間大雨情報が出るような雨が降りましたが、これについては、「防災気象情報の伝え方に関する検討会」の報告書を踏まえて、まずどこに力を入れていくのか、色々な取組が示されましたが、優先順位等あれば教えてください。
A : 当然いただいたご提言についてはどれも重要だと思っていますのでしっかり進めていく予定ですが、やはり一番大きな問題となったのは、昨年の例では大雨特別警報の解除後の注意喚起のあり方で、我々もそこはなるべく迅速に改善する必要があると思っていますので、それについては、まずしっかりやっていきたいと思っています。

Q : 関連しまして、出水期前までに間に合わせるという点で他に何かありますか。
A : いただいた報告書の中で、今後検討するとか、技術開発をしていくとか、中長期的に、という文言が入っているもの以外は、基本的に私の認識では、今度の出水期に間に合わせるようにやるべきものだと理解しております。ただ、実際いつから実施できるかについては、出水期前に整理してお知らせをしたいと思っております。

Q : 新型コロナウイルスに関連して、これからの出水期に気象庁緊急記者会見で避難の重要性を呼びかけることがあると思いますが、新型コロナウイルスの感染拡大防止が求められている中で、災害時の避難行動を取ることについて、気象庁としてどのような考えを持っているかお聞かせください。
A : 皆様が、今住んでいる場所がどのような自然災害に対して危険があるのか、土砂災害に対して危険がある場所なのか、あるいは河川の洪水の危険がある場所なのか、そこをまず認識していただくのだろうと思います。その認識をしていただいた上で、該当する自然災害の危険度が高まった場合には、外出の自粛が呼びかけられている地域であっても、迅速に避難をしていただくということは、これまでと変わらないと考えております。

Q : 仮に避難が必要な場所にいる人がそのような判断する時に、避難先での感染拡大とか懸念される方はいると思いますが、そのことについてのお考えはいかがでしょうか。
A : そのことについては、既に内閣府の方から自治体へ通知が出ており、皆様もご案内だと思いますが、既にご検討されて、一定の考え方が示されていると思います。我々の役割は、あくまで自然災害についての危険度の高まりについて、的確にお知らせをしていくということでございますので、それについては、今のところ大きく変わることはないだろうと思っております。

Q : 一方で、特に会見など多くの方に行動を促すようなところで、避難先のところまで、どこまで言えるか分かりませんが、何か入れるお考えはありますか。
A : 先ほど申し上げたとおり、自然災害の危険度、危険性の高まりについて解説することが我々の役割であると思っておりますが、災害から避難していただくと同時に、新型コロナウイルスの感染を防止していただくということも非常に重要でございますので、具体的に何か思っているものはありませんが、仮に会見の中で話すもので、災害からの避難とともに、新型コロナウイルスの感染防止でも役立つことがあるのであれば、具体的に考えているものがあるわけではありませんが、仮にあるのであれば、そこは柔軟に対応したいと思っております。

Q : 重なる部分があると思いますが、いざ緊急会見を行うような状況では、一人一人が判断するには難しいところがあると思うので、今の時期から、今の状況を踏まえて住民や行政で避難について考えておいてほしいことはありますか。
A : そこの部分については、気象庁が単独で申し上げるのが適切であるかどうか、先ほど申し上げましたとおり、内閣府の方で、特に避難所での感染防止のために様々な取組のガイドラインが示されておりますので、そういった取組が今後進んでいくのだろうと思っております。

Q : 重ねての質問となりますが、避難所でのクラスターの発生懸念の指摘が出ています。気象庁が会見で避難行動の呼びかけを大雨や台風の際にしていくことは住民の行動に有意義であることは分かっている中で、今後、避難所でのクラスター問題を念頭に置きながら呼びかけ方を工夫していくようなお考えはありますでしょうか。
A : 現時点において、先ほども申し上げましたとおり、具体的な考えはございませんが、今後どのように推移していくのか予断を許さない状況でもございますし、仮に我々の避難の呼びかけに際して、併せて新型コロナウイルスの感染防止について触れることが、避難を促進すると共に、これは非常な重要なポイントですが、併せて感染防止にも繋がるというものが仮にあるのであれば、柔軟に対応したいと思っております。

Q : 「防災気象情報の伝え方に関する検討会」に出席されていた水害の専門家からも、避難所に行くことだけが避難行動ではないといった指摘もありましたが、そういった専門家にヒアリングをするなどして対策を練っていくようなお考えはありますか。
A : 新型コロナウイルスの対策以前から、避難と言っても、全員避難ということが誤って受け取られていて、例えば非常に頑丈なマンションの高層階にお住まいの方は、基本的には水害についてはそこにいることが一番安全ですので、そういった方に対して避難を呼びかけているわけではないのですが、そういった誤解は当然解いていかないといけないだろうと思っております。これは内閣府からも様々な形で今後広報していくと伺っております。そのような面で、先ほども申し上げましたとおり、我々がそのようなことを申し上げることが、避難にしっかりと結びつくと共に、感染防止にも役立つのであれば、柔軟に対応したいと思いますので、そのことについてご提案があれば、我々も真摯に検討したいと思っています。

Q : 暑くなる時期に、環境省と共同で新たな熱中症警戒アラート(仮称)を出すと伺っていますが、今までの高温注意情報といわゆる暑さ指数を合わせてやると聞いていますが、今年の新型コロナウイルスの状況であまり屋外に出る方が少ない中で、外の気温や指数を主に基準としていることによって、熱中症は一方で、室内で湿度が非常に高い場合には、気温がそれほど高くない日でも死亡するケースが散見されると認識していますが、そのあたりの整合性と言いますか、室内にいる方への呼びかけにまで踏み込んでアラートを出すようなものなのか、お聞かせいただけますか。
A : これまでの高温注意情報はあくまで気温が概ね35度以上ということで、必ずしもおっしゃられたとおり、湿度を考慮しておりませんが、新しく考えております熱中症警戒アラート(仮称)については、現在の暑さ指数、これは湿度もしっかりと考慮しておりますので、そこをベースに基準を考えていこうということでございますので、熱中症警戒アラート(仮称)が発表されるような場合には、屋内にいても適切に冷房を使っていただかないと熱中症の可能性が高まりますので、そのような意味で有効性は変わらないのだろうと我々は認識しております。

Q : 熱中症警戒アラート(仮称)について、今月中にも環境省と検討会を開催すると報道発表されていますが、関東甲信地方だけ今年の夏のシーズンから先行して実施ということでしたが、東京オリンピックも延期になった中で、関東甲信地方のみ先行して実施することは変わらないのか、そうであればその理由について教えてください。
A : もともと東京オリンピックがあるから関東甲信地方のみというわけではなく、様々なデータが揃っているということで、まずは関東甲信地方から始めるということと私は理解しております。従いまして、東京オリンピックの開催有無に関係なく、まずはできる関東甲信地方から今年は始めさせていただくということは変わりございません。

Q : 関東甲信地方以外の地方で、熱中症警戒アラート(仮称)が発表されるような危険な状況だとしても、熱中症警戒アラート(仮称)は出ず、従来どおりの高温注意情報しか出ないという、地域によっての差異が出てしまうことについてはどうお考えでしょうか。
A : 先ほど申し上げましたとおり、基本的にデータがないとどのような発表基準にすれば良いかが分かりません。現在それができるのが関東甲信地方ということでございますので、まずそこで先行的にやらせていただくということで、来年の夏には全国的に展開をするというスケジュールについては、私は合理的であると考えております。

Q : 来年度の全国一律での実施ではなくて、今年関東甲信地方のみ先行して運用されるということについてお考えをお聞かせください。
A : やれるところからまずやらせていただいて、当然やってみると様々な問題点や課題が出てくると思いますので、そういうものを踏まえて来年全国展開するというやり方は、私は合理的だと思っております。

Q : 新型コロナウイルス関連で確認ですが、避難した後の対応について、気象庁として呼びかけるのかどうか今後検討していくということなのでしょうか。先ほどご提案があればという発言だったので、どのような状況なのか教えてください。
A : 現時点において、どのような呼びかけをするべきか考えがある訳ではございません。様々な状況を見て、我々の方が一定程度の呼びかけを行うことが災害からの避難を促進すると共に、新型コロナウイルス対策にも有効であるというものが仮にあるのであれば、しっかりと対応させていただくことになるだろうということでございます。

Q : 有効な呼びかけがあるのかどうかを検討されるということでしょうか。
A : 例えば、それぞれ場所によっても状況は違いますし、新型コロナウイルスのことをあまりに強調するがゆえに、本来避難していただかなければいけない方が避難されなかったということでは困りますので、我々はどちらにウエイトがあるのですかと聞かれれば、自然災害からの危険が迫っているのでまず逃げていただきたいということが、まず第一であることは間違いないので、そこは間違えてはいけないのだろうと思っております。そこをしっかり押さえた上で、そこの部分を特に阻害することなく、なおかつプラスアルファとして新型コロナウイルスの感染対策になるような呼びかけがもしあるのであれば、柔軟に対応させていただきたいということでございます。

Q : 「呼びかけがあるのであれば」というのは。
A : 何度もそのような言い方をしているのは、私自身が現在どのような言い方をすれば適切か見当がついていないものですから、それについては今後の状況を見ながら、それぞれの地域によっても事情は違うと思いますし、一律にこういう呼びかけをすればいいというものがあるのかどうかも分かりませんので、今のところは全く白紙の状態でございますが、それはやらないという意味ではなくて、例えば何かのご提案があって、それが非常に有効で、我々も納得できるようなものがあるのであれば、当然それをさせていただきたいということでございます。

(以上)

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