長官会見要旨(令和2年3月18日)

会見日時等

令和2年3月18日 14時00分~14時12分
於:気象庁会見室


発言要旨

   最初に私の方から、4点述べさせていただきます。

   最初は「防災気象情報の伝え方に関する検討会」についてでございます。
   第6回の検討会につきましては、新型コロナウイルスの感染防止の観点から書面開催とさせていただき、現在、委員の皆様に資料を確認していただいているところでございます。
   今回の検討会の資料におきまして、これまでの議論を踏まえて、今後に向けた改善策をいくつか提案させていただいております。
   具体的な改善策といたしまして、
   ○ 大雨特別警報の解除が安心情報と受け取られることのないよう、特別警報の解除に際して、河川管理者と共同で記者会見を行うなど、今後の洪水の見通しについてしっかりと情報発信し、注意喚起を行うこと
   ○ 大雨特別警報については台風を要因とするものを廃止し、大雨を要因とする警戒レベル5相当のものに限定すること。また、暴風に対する警戒の呼びかけを改善すること
   ○ 危険度分布の更なる精度向上や利活用を促進すること
   こういった項目を挙げさせていただいております。
   気象庁では、今後速やかに委員の皆様からのご意見をとりまとめ、今月末までには検討結果として改善策を公表させていただく予定でございます。

   続きまして、熱中症対策についてでございます。
   先週13日に報道発表をさせていただきましたが、このたび、環境省と連携いたしまして、熱中症予防に資する新たな警戒情報の創設に向けた検討を進めていくことといたしました。
   熱中症対策に関する情報としましては、現在、気象庁から「高温注意情報」を、また環境省からは「暑さ指数」という情報が発表されておりますが、この両者の強みを活かす形で、より強力な熱中症予防のための「熱中症警戒アラート(仮称)」として情報発信していくことを考えております。
   このアラートの創設をきっかけに、熱中症予防に効果的な指数である「暑さ指数」を活用した日頃からの熱中症予防対策の一層の徹底を図っていくことを狙っているものでございます。
   今後、このアラートの発信に向けて、有識者検討会でご意見をいただきながら詳細を詰め、この夏には関東甲信地方で先行実施しまして、令和3年度からは全国展開していくことを目指しております。
   また、関連いたしまして、本日より天気分布予報の改善を実施しております。分布予報は、明日にかけての3時間毎の天気・気温・降水量・降雪量の予想を分布図として地図上に表示するもので、本日より、解像度をこれまでの20km毎から5km毎にきめ細かくするなどの改善を図っております。
   熱中症予防をはじめ、屋外での活動やイベントの計画等にも役立てていただくことを期待しておりますので、ぜひご活用いただければと考えております。

   続きまして、今冬の高温と少雪についてでございます。今冬は、日本の平均気温が統計開始以降最も高くなり、また降雪量は全国的にかなり少なく、記録的な暖冬・少雪となりました。
   この要因につきまして、先月の会見において、3月に異常気象分析検討会を開催して分析を行うとお伝えしていましたが、現在、新型コロナウイルス感染症対策の状況を注視しつつ開催について検討しているところでございますので、また開催が決まりましたらお知らせをしたいと思います。

   最後に、新型コロナウイルス感染症対策についてでございます。
   最初に、今般の新型コロナウイルス感染症により、お亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被害を受けられた全ての皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
   気象庁では、新型コロナウイルス感染症につきまして、感染拡大防止に万全を期すとともに、気象庁の業務継続を維持するため、政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」等に基づき、職員個人による感染予防対策と体調管理を徹底するとともに、時差通勤の徹底やテレワークの推進、外部の方をお招きするイベント・会議等の開催の自粛などの措置を講じているところでございます。
   また、気象庁職員に感染者が出た場合においても、人員の適切な配置を行うなど、業務継続に必要な人員を確保し、防災気象情報を適時・的確に発表できる体制の維持に努めて参りたいと考えております。
   今後も、政府の方針に従い、関係省庁などと緊密に連携を図りつつ、感染拡大の防止を徹底して参りたいと考えております。

   私からは以上です。

質疑応答

Q : 3つ目の少雪を受けての異常気象分析検討会についてですが、集まれなかった場合は開催自体がなくなるという可能性はありますか。
A : 今のところは、何らかの形で開催をさせていただいて、しっかり分析をしていただきたいと思っております。本当は3月に開催するのが適切だったのですが、多少遅くなっても、しっかり分析をしていただくことは重要だと考えていますので、何らかの形で開催したいと思っております。

Q : 書面開催という可能性はありますか。
A : できれば、このような問題でございますので、皆様に集まっていただいて議論を交わしていただくのが一番いいかなと思っていますが、それは今後の状況を見ながらしっかり決めていきたいと思っております。

Q : 先ほど長官から言及がありましたが、台風第19号等も関係する「防災気象情報の伝え方に関する検討会」について、長官もおっしゃられたように、特別警報解除後の洪水への注意の呼びかけ、あるいは危険度分布の改善などが織り込まれていますが、これらの改善点を今後どう活かしていくか、長官のお考えをお聞かせください。
A : まずは私どもの予測の精度を高めていくということが、一つの大きな課題だろうと思っております。極端な話ですが、我々の予測が常に必ず当たるのであれば、間違いなく我々の予測に従って皆様避難していただくだろうと思いますが、残念ながら実際には、全員避難にあたる警戒レベル4相当の情報が発表されても、被害が起きることが必ずしも多くないという現実もございますので、皆様にとっては、「警戒レベル4になっても何も起きないじゃないか」というような思いがまだまだ強いだろうと思います。そのような意味で、長期的な永遠の課題にもなると思いますが、まずは我々の情報の精度を高めていくということが、気象庁としてやはり一番やっていくべきことだろうと思っております。併せまして、一朝一夕で急に改善するものではございませんので、そういった中でいかに皆様に我が事感を持っていただいて、避難をしていただけるかということで、様々な改善をこれまでも継続的に行ってきましたが、まだまだ十分ではないことも事実でございますし、一つ一つ新たな災害が起きるたびに、一つ一つまた課題が見えてくるということも事実でございます。台風第19号で言いますと、お話にありましたとおり、大雨特別警報を解除したことが安心情報として受け止められた部分もあり、それで避難をやめられた方もいらっしゃったということでございますので、そういうことがないようにするということで、今回いくつか改善策を出させていただいているところです。ただ、これだけでもちろん十分ということではありませんが、まずは当面やれることからしっかりやっていくことで、一人でも災害によって犠牲になられる方が少なくなることを我々としては目指していきたいと思っております。

Q : 河川管理者との大雨特別警報解除の際の共同会見や暴風の特別警報の地域毎の基準の改定について、それぞれの実施の目途について教えていただけますか。
A : 河川管理者との共同会見、あるいは共同で情報発表することについては、今年の出水期からぜひ実施したいと思っております。暴風の特別警報の地域毎の基準の改定については、まだ方向性が定まっておらず今後検討していくということでございますので、今の時点でいつからということが決まっているわけではありません。

Q : 現在委員の皆様に書面で見ていただいているということですが、方向性としてまとまった場合には、暴風の特別警報の基準改定も今年の大雨シーズンから運用可能なものでしょうか。
A : それはどういう内容で決まるかにもよります。非常に技術的に難しいものであれば、ある程度時間が掛かることもあるだろうと思いますし、まだ具体的にどのような方向性で改善を進めるかということが現実に決まっているわけではございませんので、もちろんできる限り早くやりたいと思っておりますので、可能であれば今年の出水期から始めるということも当然あるかと思いますが、今の時点ではいつから始めるかを申し上げるのは難しいと思っております。

Q : 環境省との共同の熱中症警戒アラート(仮称)はこの夏から関東周辺でやるということですが、このスケジュール感は、例えば今問題になっているオリンピックに照準を合わせているようにも見えますが、オリンピックが中止・延期になった場合に時期がずれるようなことは考えているのか、それとも、それに関係なく、まずは関東近郊でやって、再来年度全国でやるというスケジュールは変わらないのか教えてください。
A : 事実関係から申し上げますと、新しい熱中症警戒アラートについては、オリンピック・パラリンピックが開催されるから開始するというものではございませんので、スケジュールとしては、この夏に関東甲信地方で先行で開始をするということは変わりありません。必ずやるつもりでございます。

(以上)

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