長官会見要旨(令和2年2月19日)

会見日時等

令和2年2月19日 14時00分~14時16分
於:気象庁会見室


発言要旨

   私の方から、5点述べさせていただきます。

   最初は、昨年の台風の名称についてでございます。気象庁では、顕著な災害をもたらした自然現象につきまして、後世に経験や教訓を伝承するという目的で名称を定めることとしています。従前、台風については台風番号によって判別が可能であるため、昭和52年の沖永良部台風以降、名称を定めておりませんでしたが、災害の経験や教訓を後世に効果的に伝承していくためには台風についても名称を定めることが適切であるという観点から、平成30年7月に名称設定の基準を改めたところでございます。
   今般、新たな基準に沿いまして、昨年顕著な被害をもたらしました台風について名称を定めることといたしました。房総半島を中心に暴風による被害を及ぼした台風第15号については「令和元年房総半島台風」という名称を、また、東日本の広い範囲にわたって多数の河川の洪水などの被害を及ぼした台風第19号については「令和元年東日本台風」という名称を定めることといたしました。
   これらの名称が利用されることで、災害の経験や教訓が後世に効果的に伝承されるよう、気象庁としても努めて参りたいと考えております。

   続きまして、「津波警報等の視覚による伝達のあり方検討会」についてでございます。
   気象庁では、聴覚障害者の方に津波警報等をより確実に伝達することができるよう、昨年10月より「津波警報等の視覚による伝達のあり方検討会」を開催し、海水浴場等における「旗」を用いた津波警報等の伝達について検討を進めて参りました。
   その結果、先週13日に開催した第3回検討会におきまして、聴覚障害者の方々からいただいたご意見や、実際に海水浴場で実施した旗による伝達の有効性の検証などを踏まえまして、津波警報等の伝達には「赤と白の格子模様」の旗を用いることが望ましいという形でとりまとめが行われました。
   気象庁では、検討結果を受けまして、気象業務法施行規則を速やかに改正するとともに、関係機関とも連携いたしまして、津波警報等の旗による伝達の周知・普及に努めて参りたいと考えております。

   3つ目は気象ビジネス市場の創出についてでございます。2月4日に気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)の総会が開催されました。総会では令和2年度の活動計画につきまして審議が行われ、産業界における気象データを活用したビジネスの強化や新たなビジネスの創出のため、ニーズ側企業がより一層参画する活動の展開や、気象データを活用して課題解決の提案ができる人材の育成に取り組んでいくということが承認されました。
   また、同日に開催されました「第4回気象ビジネスフォーラム」では、気象学の専門家、企業、気象庁の産学官によるトークセッションが行われ、気象データをビジネスに活かしていくためには、専門的なスキルを持った人材が必要であるとあらためて認識したところでございます。
   気象庁といたしましても、引き続き気象データの活用を推進するとともに、WXBCと連携しまして、気象データを扱う専門的な人材の育成をしっかりと進め、産業界のニーズを踏まえた取組を進めて参りたいと考えております。

   4番目は気象衛星ひまわりによるオーストラリアの森林火災の監視支援についてでございます。
   気象衛星ひまわり8号は、1000キロ四方の任意の領域を集中的に観測できる機能を有しております。台風が発生した場合は、台風を追尾し監視を行うということに利用しております。気象庁では、この機能を活用した国際協力の一環といたしまして、外国の気象機関から要請された領域に対して観測を行います「ひまわりリクエスト」を実施し、各国の災害リスクの低減に貢献しているところでございます。
   平成30年1月に「ひまわりリクエスト」を開始して以降、これまでに諸外国から熱帯低気圧、あるいは火山噴火の監視のための要請がありましてご活用をいただいているところでございますが、今般、オーストラリア気象局からの要請に応じ、オーストラリア東部を対象に森林火災を監視するための長期間にわたる観測を行いました。オーストラリアからは森林火災の発生域を特定する上で非常に貴重であると感謝いただいたところでございます。
   今後も、ひまわりの観測データが諸外国における気象災害リスク軽減に、より一層活用されることを期待しております。

   最後は、今冬の記録的な高温と少雪についてでございます。
   今冬は記録的な高温となっておりまして、また、降雪量も記録的に少ない状態となっております。今後も、全国的に3月上旬にかけて気温は高く、日本海側の降雪量も少ない状態が続く見込みです。
   今冬の高温と少雪の要因について速報的な分析を行い、1月24日に報道発表したところですが、3月に開催を予定しております、異常気象分析検討会において、より詳細な分析を行う予定でございます。検討会の日程につきましては決まり次第またお知らせしたいと思います。

   私からは以上でございます。

質疑応答

Q : 台風の名称について伺います。後世に経験や教訓を伝承することというのが一番の目的ということですが、長官ご自身は台風第15号と台風第19号に関して後世にどのようなところをお伝えしたいとお考えでしょうか。
A : まず、台風第15号に関しては暴風でこれだけ大きな被害が出るということ、これは大きな教訓であるだろうと思っております。私も暴風の場合は、大雨に比べるとそれ程大きな災害にならないだろうと少し油断していた部分もありましたが、暴風によって、特に電源の方の施設が被災して長時間停電が続き、このことによって非常に大きな社会的な支障が出たということで、これは非常に大きな教訓なのだろうと感じている次第でございます。台風第19号に関しましては、台風としましても、大雨の量としましても記録的な台風でございましたので、これは後世へ記憶に残す必要のある台風であったと考えております。

Q : 津波警報の視覚による伝え方の旗ですが、今後色々な周知やPRが必要になると思いますが、次の海水浴シーズンに向けて、残された時間でどのように周知を図っていきたいと考えていますか。
A : 今ご質問いただいたとおり、「赤と白の格子模様」は海岸で振った場合、海から見たときに見やすいということで選ばさせていただいておりますが、一方で、この「赤と白の格子模様」が津波警報を伝えるというものだと認識されている方はほとんどいらっしゃらないという状況ですので、できる限り普及を進めていくということが非常に重要な課題だと思っております。まずは、こういった旗を運用するのは地方公共団体ですので、そことまず連携をさせていただくというのが第一でございます。併せまして、検討会に参加していただいております全日本ろうあ連盟や日本ライフセービング協会といった関係団体や、もちろん関係省庁とも連携をしながら、なかなか気象庁だけでは難しい部分もありますので、こういったまさに海水浴に接する方々、あるいは、聴覚障害を持っている方々と接する人たちと特に連携を取りながら、しっかりと普及を進めていきたいと思います。普及の具体的なメニューについては、出来次第、またお知らせをさせていただきたいと思いますが、あらゆることをやっていく、例えば政府広報を使うとか、リーフレットやパンフレットを使うとか、あるいは様々な講演会等で必ずお知らせをしていただく、といった形であらゆる手段を使っていきたいと思っております。

Q : 台風の名称に関連して、少し暴風が想定を上回るところがあったというご発言だったと思いますが、防災情報を出していく伝え手、発信する側として、全体を通して何か想いを新たにした部分などがありましたら、今後の気象庁としてのあり方、どういう姿勢で臨むべきかというお考えをお聞かせください。
A : 情報の伝え方については、先月開催いたしました「防災気象情報の伝え方に関する検討会」の中でも我々が今課題として認識している部分についてはお知らせをして、色々なご意見をいただいたと認識しております。いくつか当然課題はあって、我々の予測自体がどの程度精度があるのかが非常に重要なポイントです。これは一朝一夕で解決するものではございませんので、非常に長い、中長期的に少しずつ精度を上げていくという、ここの部分は永遠の課題なのだろうと思っております。併せまして、我々の危機感という点については台風第19号の方は、もちろん合格点に達しているかどうかは分かりませんが、それなりに伝えられたのかなと思っておりますが、それが具体的にどういう災害に結び付く、あるいはどの場所で発生する災害になるのかという点については、もう少し工夫の余地があったのかなと思っております。もちろん最も指摘されている特別警報解除後の河川洪水への注意喚起という点は足りていなかった部分があるだろうと思っておりますので、ここはしっかりとやっていく必要があると思っております。

Q : 基準を設けて以降、初めて台風への名称を付けるということだと思いますが、一つの年に2個いきなり出てきたというところに、何か異常現象などのフェーズが変わっているような感覚はお持ちでいらっしゃいますか。
A : いきなり10個出てきたら、それは多分とんでもない話なのだろうと思いますが、2個という数がそれほど特別だという感覚はございません。ゆらぎの中でも十分説明できる範囲かなと思っております。実際は変わってきているのかもしれませんが、私自身は2個という数字が非常に多いとは受け止めておりません。

Q : 台風の名称について、少し細かいですがお伺いさせていただければと思います。平成30年に基準を決められた時に、損壊家屋、浸水家屋、相当の人的被害と、それぞれ基準を決めていらっしゃいますが、台風第19号と台風第15号、それぞれどのような基準を満たして名称を付けるに至ったのかということについて教えていただけますでしょうか。
A : 基本的に基準をクリアしているということを数字で確認して、決めております。

Q : 例えば、台風第15号であれば、台風第19号よりも損壊家屋等、かなり小さかったと思いますが、特異な気象現象による被害なども基準に入っていますが、何か社会的な影響なども考慮されたのかどうかということが気になって伺いました。
A : 基本的に台風第15号は損壊家屋で基準を超えていると思います。台風第19号は損壊家屋、浸水家屋の両方で基準を超えていると思っておりますが、予報部担当の方確認してください。
(予報部担当)基準はホームページにも掲載しておりますが、損壊家屋が全壊・半壊1000棟以上または浸水家屋が10000棟以上という基準となっておりまして、台風第15号は全壊・半壊家屋1000棟以上という基準を満たしていて、台風第19号は両方の基準を満たしているという状況となっております。

Q : 確認ですが、平成30年の時に基準が新しくなった時も、損壊家屋1000棟以上、浸水家屋10000棟以上の基準以外にも、例えば人的被害を考慮して、被害的にその数字は満たしていないが、名称を定めるというようなことも聞きましたが、その方針は変わっていないのでしょうか。
A : 変わっておりません。相当数の人的被害があった場合にも対象となります。

Q : 台風第15号、台風第19号について、どの点を後世に伝えたいかについて、台風第19号については申し上げるまでもないがというように仰ったのですが、例えば河川の氾濫や土砂災害など、具体的にどのような伝えるところがあるのか改めてご説明していただけると助かります。
A : これだけ非常に広い範囲で、大きな河川や中小河川で洪水被害があったということは、めったにない現象ですし、そのような点は記憶に残すべきものだろうと考えております。

(以上)

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