長官会見要旨(令和元年11月21日)

会見日時等

令和元年11月21日 14時00分~14時36分
於:気象庁会見室


発言要旨

  私の方から、3件申し上げたいと思います。

  最初は、気象災害についてでございます。
  本年も、大変残念ではございますが、梅雨時期をはじめ、8月の佐賀県を中心とした大雨災害、また台風第15号や第19号による災害、さらに10月25日の千葉県や福島県を中心にした大雨災害など、風水害が相次いで発生いたしまして、各地で甚大な被害が発生いたしました。改めまして、これらの災害によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げたいと思います。
  気象庁といたしましては、このような大きな災害が発生したことについて大変重く受け止めております。今般の大雨時や台風接近時において、自治体や住民の皆様が様々な防災対応を判断する上で、私どもの発信しました情報が有効であったか、という点などについて、しっかりと確認・検証を行い、今後に繋げて参りたいと考えております。
  具体的な取組といたしましては、国土交通省水管理・国土保全局と気象庁とで連携しまして「河川・気象情報の改善に関する検証チーム」を設置いたしまして、先週14日に第1回目の会合を行ったところでございます。今後、本検証チームにおきまして、課題となりました要因を検証し、今後の改善に向けて検討して参りたいと考えております。
  併せまして、気象庁におきましても、昨年度設置いたしました「防災気象情報の伝え方に関する検討会」の場を活用いたしまして、有識者の皆様からご助言をいただきながら、情報発信の更なる改善に向けた検討を進めて参りたいと考えております。

  2件目は雪に関する情報についてでございます。これから本格的な雪のシーズンに入って参ります。気象庁では、雪に関する情報の改善に取り組んでおりまして、先週13日に報道発表させていただきましたが、この冬に大きく3点の情報改善をいたします。
  具体的には、
    ・1点目として、雪の観測が行われていない地域におきましても現在の積雪や降雪の分布を把握可能となりますよう「解析積雪
    深・解析降雪量」の提供をいたします。
    ・2点目として、冬型の気圧配置において日本海側で数日間降雪が持続するような場合において、3日先までの降雪量予測情報
    を提供いたします。
    ・3点目として、北陸や東北地方において、短時間の大雪に対して一層の警戒を呼びかける情報の提供を開始いたします。
  今後、本格的な雪のシーズンを控えまして、気象庁が発表する雪に関する情報に十分ご留意いただいて、大雪や風雪への万全の対策・対応をとっていただければと考えております。

  最後に、先月29日に第1回を開催いたしました、「津波警報等の視覚による伝達のあり方検討会」についてでございます。
  海水浴場等における津波警報の伝達につきましては、音声や音響による伝達手段に比べ、視覚による伝達手段の整備事例は圧倒的に少ないということが分かっています。津波警報等の視覚による伝達手段が整備されておりませんと、海水浴場を利用されております聴覚障害者の方々が津波警報等の発表を覚知することができず、避難が遅れてしまうというおそれがあります。このため、国として津波警報等の視覚による伝達手段を定め、広く国民の皆様に周知することで、その普及を図っていくことが重要であると考えております。
  本検討会では、海水浴場等において津波警報等を伝達する立場、また、それを受ける聴覚障害者の皆様の立場から、望ましいと考えられる津波警報等の視覚的な伝達手段についてご検討いただくこととしております。結果は今年度中に取りまとめる予定でございます。
  また、報道の皆様には先ほどご案内いたしましたが、本検討会に関連いたしまして、来週29日(金)に、神奈川県横浜市の「海の公園」において、関係機関のご協力のもと、各種旗による視覚的伝達の有効性の検証を行うこととしております。当日は取材可能でございますので、担当までお問い合わせいただければと思います。

  併せまして、聴覚障害者の皆様への防災情報の伝達の改善といたしまして、現在、緊急記者会見へ手話通訳者の方を試行的に配置させていただいております。聴覚障害者の皆様への伝達には、放送いただいております報道機関の皆様のご協力が不可欠でございますので、こちらにつきましても、引き続き、よろしくお願いしたいと思います。

  私からは以上でございます。

質疑応答

Q : 台風や大雨について国交省との検証チームを作るということで、その結果は期間的にはどれくらいを目処にまとめるお考えでしょうか。
A : 期間的には年度内にまとめる予定でございます。

Q : 台風19号関連で何点かお伺いします。水局との検証チームの課題の一つになっていたと思いますが、大雨特別警報解除後の氾濫発生情報というのが、住民の方や有識者の方からも、今後改善の余地があるのではないかという声もあったのですが、まず一点事実確認として教えていただきたいのが、今回大雨特別警報の浸水害を解除するにあたって、川の洪水危険度分布や指定河川洪水予報、水位の実況などの川の情報を考慮して解除したという経緯はあったのでしょうか。
A : 基本的に大雨特別警報に関して申し上げますと、雨が降り止んで弱くなったという時点で基本的には解除させていただいております。これは、これ以上危険が上がらないという観点から解除させていただく、これは従来からやっているとおりでございます。ただ実際に、例えば洪水の危険度の濃い紫が非常に広い範囲で広がっているような場合は少しそれがうす紫に落ちるのを待つというようなことはいたしますが、基本的には洪水に関しては考慮しないというルールでございます。

Q : それは今回に限ってなのか、これまで大雨特別警報開始時からそういった運用というのは一度も変わっていないということですか。
A : はい。大雨特別警報は、基本的には洪水に関しては対象外ということでございますので、洪水に関しての危険度というのは基本的には洪水で出します。

Q : 洪水が対象外ということですが、一方で発表の基準には洪水の危険度分布や指定河川洪水予報も入っていると思いますが、大雨特別警報の浸水害の呼び掛けでは洪水は入っていないという理解でいいのでしょうか。
A : 大雨特別警報の対象災害として洪水は入っていません。洪水についてはご案内のとおり、指定河川洪水予報という枠組みがございますので、こちらの方で危険度を見ていただく、もちろん、我々には洪水の危険度分布がございますので、こういったものももちろんご覧いただくのですけれども、特別警報という観点からいきますと洪水については基本的に入っていないということでございます。

Q : そうすると発表の判断の時に、今の考え方でいくと浸水害の危険度分布をトリガーにするということであればそのような説明かと思うのですが、洪水も考慮して発表しているというのはどういうことですか。
A : これは、従来の災害を見ますと、基本的に対象となるのは洪水害、浸水害、土砂災害ですが、こういうものがどういう地域で起きているかということと我々の危険度分布とを重ね合わせた場合に、洪水の濃い紫、最大危険度を考慮した方がより的確にそういった災害(浸水害)を捉えることができるということが分かりましたので、そのような形とさせていただきました。

Q : そうすると、特別警報は、例えば中小河川を対象にしているとかそういうことではなく、そもそも洪水は対象としていないということですか。
A : 大雨特別警報では洪水を対象災害としていないということでございます。補足しますと中小河川について言えば、従来の洪水の危険度分布を見ていただければ、基本的にはその危険度が分かりますので、特別警報という範疇は必要ないと考えております。一方で大きな河川が氾濫するような場合は、おそらくもう特別警報が発表されるような事象だと思いますけれど、これについてはすでに指定河川洪水予報というしっかりとした枠組みがございますので、洪水については特別警報を設けてないということでございます。
<会見後の補足(洪水害と特別警報の関連)>
  会見時に申しましたとおり、洪水害を対象とする特別警報はございません。
  また、大雨特別警報(浸水害)においては、浸水害の危険度をより適切に捉えるため、洪水警報の危険度分布の状況を考慮に入れております。
  これは、中小河川では、浸水害において内水氾濫と外水氾濫によるものとの区別がつかない場合が多いため、これらをまとめて特別警報(浸水害)の対象事例としており、その危険度を適切に捉えるために浸水の危険度分布に加えて、洪水の危険度分布の状況を考慮に入れているものです。
  このことから、結果として、大雨特別警報(浸水害)には、洪水の危険度分布をもとに、中小河川の氾濫の危険性が一部考慮されていることは事実です。

Q : 長官としては今回の台風19号の時の呼び掛けにあたって、その辺りの周知というのは、住民の方にできていたという認識があるのか、もしくは課題があると考えていらっしゃれば教えてください。
A : この検証チームの中でご案内のとおり、特別警報解除後の洪水への警戒の呼び掛けということは一つ課題として認識しておりますので、ここは十分検証していく必要があると思っております。

Q : それは、当時の会見の呼び掛けなどで洪水についての呼び掛けが足りなかったという認識でよろしいでしょうか。
A : 足りなかったのかどうかも含めて、もっと良いやり方があるのか、そういうことも含めて検討していくということでございます。

Q : 気象庁の方の伝え方の検討会もあると思いますが、その中ではどういう議論をすると考えておりますか。
A : 基本的には、伝え方検討会で様々な改善についてご提言いただいておりますので、そのフォローアップが中心でございます。改めまして、今回台風第19号をはじめとして様々な風水害がございましたので、こういった災害でこれから我々は検証を進めていきますので、その中で、課題が明らかになれば、そういった点につきましてもご意見を伺うと考えております。

Q : その検討会の中で、例えば大雨特別警報の発表基準のあり方や、もしくは洪水特別警報といった情報そのものを考え直すということは視野に入れていらっしゃらないのですか。
A : 今の時点においては、こういうものを検討しましょう、これは議題に入れてこれは入れませんというように、あらかじめスクリーニングしているわけでは全くございませんので、今後の検証作業で様々なアンケート調査等を行って、課題が出てきたら当然それは議論していただく所存でございます。もちろん、今申し上げました大雨特別警報解除後の洪水への警戒の呼び掛けについては、すでに課題として挙がっていますので、これは当然ご議論いただくことになると思います。

Q : 解除後の呼び掛けということであれば、情報そのものをいじるという認識はないというように受け取れるのですが、そういう考え方でよろしいでしょうか。
A : 何度も言いますとおり、今の時点において、これは議題に入れます、議題に入れませんということを決めているというわけでは全くございませんので、今後の検証作業の中で、これは確かに課題として議論しないといけないなということが出てくるのであれば、それは当然議題の中に入ってくると思っております。ただ、現時点において、そういう具体的な課題として大雨特別警報の情報自体の見直しがあるのかと言われれば私自身は今のところはそういうものは思い付いていないということでございます

Q : 今の関連についてですが、大雨特別警報は、警戒レベル5の命の危険がある、命を守る最大の行動を呼び掛けるものとして位置付けられています。そういった情報が、今回の台風19号のケースで言いますと、千曲川、あるいは阿武隈川の流域等では氾濫発生が相次いでいる中で、まさに水位がピークの時にこの警戒レベル5の大雨特別警報が解除されています。ここについての問題意識はありますでしょうか。
A : 何度も申し上げますとおり、千曲川や阿武隈川といった大きな河川について言いますと、降った雨がそのまま氾濫の危険に直接結び付くのではないことはお分かりのとおりだと思います。中小河川は、比較的すぐ流れますので、降った雨がそのまま危険度につながる部分もあるわけですが、大河川になりますと、そういうことではありませんので、要は我々が基本的に予想しているのは雨の降り方ですが、それだけでは判断がつかないという事情がありますので、これは以前から指定河川洪水予報という枠組みで、河川管理者と我々が共同で、我々は雨量を予想し、それに基づいて河川管理者が水位を予測するというやり方で情報を出しているわけですので、これを使っていただくというのがまさにベストなやり方だと私は思っております。

Q : 大河川の情報である指定河川洪水予報も国交省と気象庁が共同で発表されていると思います。その解除のタイミングについても、その川の危険度に応じて、河川の管理者と連携した上で、解除のタイミングを考えるという余地はなかったのでしょうか。
A : まさに、河川がどのくらい危険なのかということは指定河川洪水予報の中で表現しているわけですから、それを使っていただくのがベストだと思っております。

Q : 一方で、氾濫発生情報が出て、氾濫が発生している中で、特別警報が解除されたことで住民の油断につながったのではないかと指摘する専門家もいます。そのことに対してはいかがでしょうか。
A : もちろん色々なお考えや色々なやり方もあるのだろうと思います。ただ、特別警報の警戒レベル5というのは、従来から私共申し上げており、皆さんもそうおっしゃっていただいていると思うのですが、「特別警報を待つのではなく、警戒レベル4の段階で避難してください」と常に言い続けています。そのため、今回ももちろん特別警報が解除されて一度は警戒レベル4になるのかもしれませんが、それでも避難は必要だということは全く変わっていないわけで、逆に言うと、今のようなロジックでいくと、「警戒レベル4になったから大丈夫ですよ」という意味だと我々自身も認識しているということになりかねないのかなという、これは個人的な考えをしています。それぞれの情報についてはそれぞれの役割がある訳で、そういう役割があるから、いくつかの情報があるわけですから、河川について言えば、何度も申し上げますとおり、指定河川洪水予報という最もベストなやり方がありますので、やはりこれを見ていただく、今回の場合も、当然氾濫危険水位になっている訳ですから、当然避難を続けていただかなければいけない訳ですが、そこについては、我々の呼び掛けが十分であったかどうかという点はもちろんしっかり検証していく必要があるだろうと思っております。

Q : 長官のおっしゃることはすごく良く分かって、例えば指定河川洪水予報で言うと、気象庁も絡んで情報を共同で出しているというところですが、一つその下にある水位周知河川に関しては、今のロジックで言うと、気象庁はそこに手を出せないので、我々の範疇ではないというようなお考えをお持ちなのか、もっとゆくゆくは踏み込んで気象庁も面倒を見ながら良い情報を出していこうとお思いなのか、そのあたりは、ニュアンスの問題ですがどのようにお考えでしょうか。
A : 今の厳密的な切り分けで言えば、水位周知河川も含めて、我々の洪水警報の対象なのだろうと私は理解しています。指定河川ではありませんので。ただ、我々はあくまで降った雨をもとに洪水の危険を推定しているのですが、水位周知河川も水位を測っており、こちらの方が確実であることは間違いありませんので、逆に言うと、我々の洪水警報と水位周知河川の水位をどのようにうまく整合させていくかという点は、これは非常に重要なポイントだと思っていますけれど、ここもやはり共同してやっていくべき部分だろうと私は思っております。

Q : 同じように思います。千葉ではやはり指定河川がない中で大混乱が起きていて、氾濫しているところも上手く伝わらなかった、というところに、行政の壁か仕切りがあるのか分かりませんが、やはり連携して、国民、住民にとって見ると、あまり気象庁だろうが、国交省、水の管理者だろうが、理解しておらず、気象庁がそこの(会見会場の)白と青の壁紙を背負って発することが国から出ている全ての情報のように思っている方もいますので、今質問に出たように、特別警報の認知度が高まっている中で、解除ということの大きさというのを考えていただかないといけないのかなという思いがありますし、そう思っている住民も多いので、そこはより一歩踏み込んで、せっかく水局と一緒の会議もありますので、そうしていただくような方向で行けないのかなと思っております。その辺はどうでしょうか。
A : おっしゃる意味もよく分かります。そういうやり方もあるのかなと思うのですが、私自身は、やはりまたそこに特別警報ということを、今は指定河川洪水予報というかっちりとしたベストな仕組みがあるところに、その上に覆いかぶせるように特別警報を持ってくるというのは、やはり特別警報頼り、最終的には特別警報が出ているから、出ていないからとそこだけを判断すれば良いというようになるのではないかというのは非常に恐れているところでございます。それは従来から申し上げているとおり、警戒レベル4の段階でもう避難をしていただかないといけない、これは皆さんはそのとおりご周知いただいているかと思いますが、やはりそこを我々はずっと強調している時に、今回のことがあったので、では洪水も例えば氾濫危険が続いている間は特別警報を出し続けるのだというように仮に我々が踏み切った時に、国民の皆様はどう思いますでしょうか。やはり特別警報だけを見ていればいいというようになるのではないでしょうか。それが私が一番気にしている部分でございます。やはりそれぞれの情報というのはそれぞれの目的があって、なぜそういう枠組みになっているかということも、何十年にもわたって積み上げてきたものですので、それはやはり尊重すべきものかなと、私自身は思います。だからといって、金輪際変えないというわけでは全くなく、新たな課題が出て、確かにそういう課題であれば特別警報にした方がいいというものが仮にあるのであれば、当然そうしますが、現時点においてそういうことがあるとは認識していない、というのが私の考えです。

Q : 今指定河川が出て、水位周知河川が出て、それよりもまた小さい2万にも及ぶ中小の河川について、洪水害の危険度分布というものをもう数年やっていますけれど、今回の大雨被害の中で上手く表現できなかった部分、例えばバックウォーターであったり、雨が止んだ後に色がどんどん水色に戻った中で実際には氾濫していた、というところが表現できなかったことについての改善の方向性についてはどうお考えでしょうか。
A : バックウォーターの問題は非常に重大な問題であったと我々は認識しており、これについては今すぐいつまでに改善しますということは、なかなか技術開発の問題もありますので申し上げられませんが、これについてはしっかり表現できるように改善していくことで今は検討を進めているという段階でございます。

Q : 流れとして、今までもこういう改善は、例えば技術委員会などで技術の部分について話し合いをして、ある程度方向性を示した後に、有識者会議や検討会を開いて、そこでご意見をいただき、また国の中央の方に投げて、結果いつ時点から変わりますという流れが今までもありましたが、そのスピード感ですと来年の出水期には間に合いそうにないのではないかと思うのですが、この辺のスピード感はどうお考えでしょうか。
A : そこは、まず技術開発の部分はやはりある程度慎重にやる必要がありますので、急いだために精度の低いものを出してもいけないので、ここはしっかりやりたいのですが、その後のステップで言えば、あまり時間を掛けるべき話でもありませんし、基本的に技術的な問題であって、今まで十分表現できていなかったものが表現できるということですから、基本的に反対される方がいらっしゃるとは思いませんので、そこはスピード感を上げてやれるだろうと私は思っています。

Q : 来年間に合いそうな状況なのでしょうか。
A : 私も含め、関係者は来年に間に合わせたいという思いでやるべきことをやっているのは事実でございます。

Q : 再び特別警報の解除のことですが、今回千曲川等が氾濫しているまさにその時に解除されましたが、一方でかつての常総の鬼怒川の決壊の時には、大雨のピークが超えているのにも関わらず、まだ大雨特別警報が出されていました。今一度確認したいのは、この解除のタイミングの、いわゆる指針のようなものは、常総の時と今回と何が違ったのか、この点をお願いします。
A : 今から4年前の関東・東北豪雨の時は解除の考え方が変わっており、基本的に警報レベルより下になった場合に解除をするというルールになっていました。要は、特別警報からいきなり注意報に落とすというやり方をしておりました。そういった関係で、あの場合ももちろんピークは過ぎていたのですが、雨はずっと降り続いていたという事情もあって、警報を解除できるタイミングがずっと遅れたということで、最終的に特別警報が長くなったということでございます。決して、河川の氾濫を考慮して長引いたという訳ではない、というように聞いております。

Q : 先ほどから長官のお言葉の中に、特別警報の警戒レベル5が解除されて、警戒レベル4になったというステージのお話がありましたが、実際今回の千曲川や阿武隈川の話ですと、特別警報の警戒レベル5が解除されても、氾濫しているので大河川の警戒レベル5が残っていたと思います。その点について住民の油断に繋がったのではないかというあたりは改めてどうですか。
A : そこは、我々の特別警報の解除ということが、もう大丈夫だというように仮に受け取られたのであれば、それはそうならないようにしなければいけないということで、今回も特別警報解除後の洪水への警戒呼び掛けが適切であったかどうかということを検証していくということなのですが、今まさにおっしゃられたとおり、氾濫が発生していればこれは警戒レベル5ですので、本来、特別警報で警戒レベル5を維持するのではなく、あくまで「氾濫が発生しました」、要するに「災害が発生しましたので警戒レベル5です」ということで警戒レベル5を維持するのが本来の警戒レベルのあり方ですので、そこを目指すべきだろうと私は思っています。

Q : では、例えば解除する会見であったり、情報を発信する時に、より国交省側と連携を取って、雨の方は解除するけれども川の方は依然として警戒レベル5が続いているというところをもっと強調するなどというお考えというのはどんなものでしょうか。
A : そういう方向は一つ考えられると思いますし、本来は我々そこを意識してやっていたつもりなのですが、現実は氾濫が発生していれば、もう見れば分かる、実際に申し上げるまでもなく、現地の方は分かる訳ですので、それ以上に我々が一番気にしているのは氾濫危険水位であって、いつ氾濫してもおかしくないという状況の方が、本来であれば当然避難を続けないといけないのですが、我々が特別警報を解除したということで、「もう氾濫しないんだな」と安心をしてしまったということが仮にあるとすれば、そこはしっかり我々の呼び掛け方について考えなければいけないなと思ってます。

Q : 一般の国民の皆様にとって、大雨特別警報というのは、いわゆる大河川の氾濫や洪水などは含まないということを理解できると長官はお考えでしょうか。
A : それはご理解いただくように我々は努力すべきであろうと思っています。理解されないから特別警報にという考え方をすると、これはまた同じで、特別警報が出ているか出ていないかで判断して下さいということになってしまうのではないでしょうか。指定河川洪水予報の良いところは、場所が限定されており、どこの河川でどの場所だということが分かっていますので、特別警報のように市町村全体に出す訳ではありませんので、しかも注意すべきものは河川であることもよく分かりますし、そういう意味では非常に優れた情報だと私自身は思っています。そのため、この情報を皆さん使っていただくように我々は努力すべきであって、もう使えないのだからそんなものは置いといて、特別警報でカバーすればいいというのは私は違うと思います。

Q : 台風上陸の前日に、各管区気象台と国交省の地方整備局が共同で会見をするということがありました。住民の皆様にとって警戒を呼び掛けたという声がある反面、例えば台風が上陸してから、もしくは特別警報が出る時、それから解除される時に、改めて国交省との共同会見や共同の文書を出すなどの連携を図るというお考えはありますか。
A : その点については、まさに検証チームの中で検討していきたいと思います。

Q : 特別警報解除後の洪水への呼び掛けについて、現時点で気象庁として、解除を以って安全だというように認識された方が被災またはお亡くなりになられたという情報には接しているでしょうか。
A : そういう報道があったことは承知しています。

Q : 気象庁としては。
A : 確認したわけではありません。

Q : 確認作業は。
A : これからさせていただきます。

Q : 検証への動きの中で、アンケートという言葉がありましたが、被災された方へのアンケートはもう始められているのでしょうか。
A : これから始めます。

Q : これは検証チームに活かすためのアンケートでしょうか、それとも伝え方検討会でしょうか。
A : 両者に活かされることになると思います。

Q : これはどのくらいに実施される予定でしょうか。
A : (予報部担当)年内を目途にとりまとめられるよう準備をしているところです。

Q : 対象がどのくらい、といった詳細は。
A : そこは個別に取材していただければと思います。

Q : 特別警報が出る前の警戒レベル4までに避難してください、ということは報道機関としても伝えている中で、今回、前日の緊急会見の中でも気象庁として大雨特別警報を出す可能性があります、という強い文言を冒頭発言でおっしゃっていて、そういった中で現状の警戒を呼び掛けられていたと思います。その大雨特別警報が、まさに大河川の流量がピークになる中で解除されたことについて、住民がどう受け止めたか、そこについては思い至るところはありますか。
A : そこはしっかり検証させていただきたいということを何度も申し上げていると思います。

Q : 気象庁としての認識はいかがでしょうか。
A : 何度も申し上げますとおり、指定河川について言えば、指定河川洪水予報という枠組みでやるのが私はベストだと思っています。お話のあったとおり、実際に氾濫が発生していれば警戒レベル5ですので、警戒レベル5は氾濫が発生したという事実で既に維持されていますので、我々の特別警報でそれを維持するというのは違うのかなという考えでいます。

Q : そのタイミングで大雨特別警報を解除することで、住民が分かりやすく自分が取るべき行動を判断できると思っていますか。
A : そのようにしていただくよう我々は努めるべきだと思っています。

Q : 事実確認をさせていただきたいのですが、先月の長官会見で、東北地方に関しても仙台管区気象台が特別警報の可能性にまで言及をして厳重な警戒を呼び掛けていたと長官はおっしゃられましたが、現地からは、決してそのような声は聞こえてこない状況です。改めて事実関係をお願いします。
A : 改めて確認しましたところ、上陸前日の10月11日11時から開催しました東北地方整備局と仙台管区気象台の共同記者会見において、記者から「特別警報の可能性はありますか」という質問があり、それに答える形で「特別警報については発表の可能性がないことはない。今後の雨の降り方により随時検討する」と回答したというのが事実であります。

Q : 同じ時刻に本庁では冒頭発言で特別警報の可能性について言及があったと思いますが、東北に関してはそういった言及はなかったということでしょうか。
A : あくまで質問に答える形で回答したということです。

Q : 10を超える都県に大雨特別警報を出されるという事態は、気象庁では事前にどこまで想定されていたのでしょうか。
A : いくつ出るかは分かるものではありませんが、少なくとも複数の都県、または複数の県に特別警報の発表の可能性はある、一つではなく、複数になる可能性があると想定していたという状況でした。

Q : 関東以外の東北や長野に関しても可能性があると考えていたのでしょうか。
A : そこは当然コースによってはあるのだろうと思っていたということです。

Q : ただ、仙台ではそこまでの言及はされなかったということでしょうか。
A : 言及しなかったというのは事実ですが、質問ではそのようにお答えしているということです。

Q : 仙台で言及されなかった理由はあったのでしょうか。
A : それは聞いておりません。どのように言うかはその時の担当者の考え方だろうと思います。ただ、頭の中にはありましたし、結果的にはそのことはお伝えしたと我々は理解しています。

Q : 先ほど冒頭で、自治体が防災対応などを判断をする上で情報が有効であったか今後検証すると述べていましたが、自治体に対してアンケート調査などをするということでしょうか。
A : そういうことです。

Q : 今回のような広範囲の災害となりますと、地元気象台から各地の自治体に対して警戒を呼び掛けるような情報を発するのがマンパワーとしてそもそも足りている状況なのかどうか、そのへんのご認識はいかがですか。
A : 今回の調査の中で、自治体の方々がどの程度我々の危機感が伝わったかということにもよると思いますが、こういった事態ですので、担当者だけでなく、気象台をあげて、場合によっては他の地域の気象台からも応援を得て、できる限り伝えるという体制にはしているつもりです。

Q : 現状、そのような応援体制を組まれているということでしょうか。
A : はい。

Q : 台風の特別警報について、台風15号や19号の甚大な被害を受けて、基準を改定する予定はありますか。
A : 台風の特別警報は出ていませんが、台風によって大きな災害が出ましたので、これについて色々ご意見を聞いてみようと思っています。何度も申し上げているとおり、いずれ見直す時期が来るだろうと思っていますが、今回の様々な検証の中で具体的な問題点が上がってきて、早急に対応すべきということであればしっかり対応していきたいと思っています。

Q : 台風の特別警報と警戒レベルとの紐づけや、大雨特別警報との整理はいかがでしょうか。
A : まず、現在ある大雨特別警報の警戒レベル5というのは、いわゆる台風以外のものについて決められているもので、台風の大雨特別警報の場合にどこのレベルになるかは、必ずしも明らかではないというのはそのとおりだと思っています。そのため、そこについては少なくとも何らかの対応が必要だろうと私は思っています。

(以上)

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