長官会見要旨(令和元年7月17日)

会見日時等

令和元年7月17日 14時00分~14時21分
於:気象庁会見室


発言要旨

   最初に4点、私の方から述べさせていただきます。

   最初は大雨についてです。7月上旬の九州南部での記録的な大雨など、今年も大雨による災害が各地で発生しております。大雨災害によりお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
   九州南部での記録的な大雨につきましては、気象庁では早い段階から気象情報の発表や記者会見等を行い、さらに、九州南部をはじめとする西日本の地元の気象台から延べ53人の職員を気象庁防災対応支援チーム(JETT)として派遣するとともに、ホットラインによる気象解説を適時に実施するなど、地方公共団体の防災対応の支援に努めてまいりました。
   今後も大雨に注意・警戒が必要な時期が続きますので、現在進めております防災気象情報の伝え方改善の取組を踏まえまして効果的な防災情報の発信を引き続きしっかりと行ってまいりたいと考えております。また、これから暑い夏の時期を迎えますと熱中症に対しても十分な備えが必要となりますので、これにつきましても、気象庁の発表する情報等をご活用いただき十分にご注意いただければと思います。
   併せまして報道機関の皆様には、引き続き防災情報の発信へのご協力をお願いしたいと思います。

   2番目は、既に多数報道でも取り上げていただいておりますが、最近の低温と日照不足についてです。
   北日本及び東日本の太平洋側では、梅雨前線の停滞に加え、オホーツク海高気圧からの冷たく湿った空気の影響を受けやすい状態が続いており、6月の終わりから日照不足と低温が続いています。
   これらの地域では、今後も向こう1週間程度は引き続き、曇りや雨の日が多くなることが予想されているため、農作物をはじめ多くの影響が出ておりますので、引き続き十分ご注意いただければと思います。

   3番目は、7月10日に報道発表させていただきました「大雨危険度の通知サービスの開始」についてです。
   このたび、民間事業者5社にご協力をいただきまして、「危険度分布」等が示す危険度の変化を、メールやスマートフォンのアプリで伝えるプッシュ型のサービスを順次進めているところでございます。
   このサービスは、大雨時の避難の判断等に大変有効でございますので、ぜひ多くの方々にご利用いただければと思っております。

   最後に、「気象過去データの利用環境」の公募についてです。
   これについても、6月28日に報道発表させていただきましたが、気象データを活用し、様々な産業分野における生産性向上をめざす「気象ビジネス市場の創出」の取組の一環として、大容量の気象データをご利用いただく「気象過去データの利用環境」を構築し、これを利用される方を公募しているところでございます。
   これまであまり気象データに馴染みのなかった企業にご利用いただくことで、気象データを用いたサービスの開発等に役立てていただきたいと考えております。また、本事業を通じて利用される方々からフィードバックをいただき、気象データの提供の改善を図ってまいりたいと考えています。

    私からは以上です。

質疑応答

Q : 先日の九州を中心とする大雨に関しまして、先ほどお話のありました早めの気象情報の発表や記者会見の開催についてですが、特に当日の記者会見で呼び掛けられた内容は、「防災気象情報の伝え方に関する検討会」の内容を踏まえた新しい言葉遣いがあったりということを感じましたが、それが住民や自治体にうまく届いたかどうかを、振り返ってみてどのように総括されているでしょうか。また、記者会見のタイミングですが、初日は午後、翌日は午前という昨年の西日本豪雨と同じような形の事前の会見でしたが、記者会見の時刻の設定等は振り返っていかがでしょうか。
A : 今回は、比較的現象のスケールが大きいものでございましたので、ある程度、大雨になることは事前に予測できていましたし、その地域もある程度絞れていましたので、事前に記者会見をさせていただきました。詳しくは、我々「振り返り」と呼んでいる検証をこれからしっかり行って、実際に我々の情報がどう届いたのか、あるいは不足した点がなかったのか、タイミングはどうだったのかという点をしっかり検証していきたいと考えていますが、現時点においては、いわゆる大きな失策のようなものはなかったのではないかと思います。報道機関の方々にもしっかりお伝えいただきましたし、私も報道を見ている限りは、現地の鹿児島県・鹿児島市にも非常にしっかり対応していただけたと思っています。
 一方で、お亡くなりになられた方もいらっしゃいますし、また、避難率というのは難しい問題があるので必ずしも高い・低いという評価は難しいかと思いますが、必ずしも多くの方が避難したというわけではないのかなとは受け取れますので、実際それで正解だったかもしれませんし、それがまずかったと直ちに申し上げるつもりもありませんが、こういった点はこれからしっかり検証していく必要があるかなと考えております。

Q : 自治体支援に関してですが、JETTやホットラインを去年と比較してどれだけ厚みを持ってできたか、そのあたりはいかがでしょうか。
A : 去年も相当厚みを持ってやらせていただいていたと私は理解しておりまして、今年もそういう意味では同じようにやれたというのが今の感覚ですが、やはりこれは受け取り側がどのように感じていらっしゃるかが大きな問題ですので、これからしっかりと関係の地方公共団体ともお話させていただきながら、我々のJETTやホットラインがどう効果的だったのか、あるいは効果的でなかったのかという点はしっかり検証していきたいと思います。

Q : 事前の記者会見を含めた早めの情報発信で、いち早く観測機関として抱いた危機感を発信しようというのが今回も見られましたが、一方で、一昨年の九州北部豪雨のようなケースですと、梅雨前線が停滞するようなケースに比べて、気象現象としてはもう少し小さい、あるいは急速に変化するようなものについて、どの程度前もって警告を発せられるのかということについて、現状どのような認識を持っておられるでしょうか。
A : 先ほども申し上げましたとおり、今回はある程度スケールが大きく、しかも時間的にもスケールが長い現象でしたので、こういった形で事前の呼び掛けが可能だったのですが、2年前の九州北部豪雨や5年前の広島の土砂災害といった現象はスケールが非常に小さいため、事前にどこで大雨や土砂災害になるかの予測は非常に難しい状況でございます。実際のところ、この2例についても、ほぼ現象が始まってから、あるいはその直前にようやく危ないことが分かるものであるため、とても事前に記者会見を行って警戒を呼び掛けるのは、現状では不可能だと思います。こういった点も我々これから技術開発を進めて、少しでも早めにお知らせできるように進めていきたいと思っていますが、まだまだそれには相当の時間が掛かりますので、今の段階においては、事前の記者会見ができるときはもちろん行ってまいりますが、そうでない場合も多いということを皆様にご承知いただいて、事前の記者会見のあるなしに関わらず、常に自分のところにはどのような大雨災害の危険があるのかを把握していただいた上で、我々の出します警報や土砂災害警戒情報等の情報、あるいは危険度分布等をしっかり入手していただいて、早め早めの避難をしていただく必要があると思っています。

Q : ヤフーとの取り組みについてお伺いします。九州南部の大雨のときですが、市内全域に避難指示が出たりした中で、ある程度危険な地域が、ヤフーの地図ですと絞り込めるところがあると思います。その有効性についてどのようにお考えでしょうか。
A : もともと、危険度分布を1kmメッシュでお示ししていくというのは、どこが最も危険なのか、あるいはあなたのいる場所はどの程度の危険度があるのかをお示しするものでございますので、有効に使っていただいて、危険なところがあればそこから早めに避難していただくという形で使っていただければと考えています。
 ただ一方で、今回鹿児島市が全域に避難勧告・指示を出されたことについては、これは当然首長さんが自らの責任で、我々の情報だけではなく様々な情報をもとにご判断された結果と受け止めておりますので、これについて我々がどうこう申し上げるつもりはございません。一方で、危険度分布は色々有効に使えるだろうと思いますが、やはりまだこれからだと思っていますので、使われ方や有効性等はこれからしっかり検証していきたいと思います。

Q : 先だっての会見についての質問です。かなり踏み込んだ形でのお話もありましたし、気象庁の姿勢は非常に感じたのですが、一方で、会見の実施というものをむやみやたらにやることで、会見慣れと言いますか、そういったことが今後起きてくる、会見は最後の伝家の宝刀かと思いますし、そういったことの懸念を持っているのですが、そのあたりについて長官としてどのようにお考えかという点と、その上で、今後記者会見というものをどのように位置づけていくか、お考えをお聞かせください。
A : 我々の方は、災害をもたらすような大雨が事前に予想されているのであれば、当然、早めに正確にお知らせするという観点で積極的に記者会見を開いていくべきだろうと私は思っています。一方で、今ご質問にあったとおり、事前に記者会見を行うこと自体が非常に強いメッセージになっていることも事実なのかもしれませんが、先ほどのご質問にもあったように、必ずしも常に事前に記者会見ができるわけではありませんので、記者会見のあるなしで大雨の危険度を判断していただくというのはちょっと問題かなと我々は思っています。当然、事前に分かる場合には、なるべく丁寧に、皆様に我々の懸念あるいは危機感をしっかり正確にお伝えするには、記者会見は非常に良い場なので、それは積極的に利用していきたいと思っています。ただ何度も申しますとおり、記者会見がなかったからといって安全だという意味では全くありませんので、そこは間違えないでいただきたいと思っています。それほど大きな災害の危険がないと我々が思っている場合に開くつもりは毛頭ありませんが、一方である程度危険度が高いと判断した場合には積極的に開いていくというのが望まれる姿勢ではないかと思っています。そこはまた報道機関の皆様とご相談させていただきながら、どんなときにやっていくのか、皆さんとの間で共通認識ができた方が良いかと思いますので、色々と打合せをさせていただければと思います。

Q : 会見慣れについて関連しますが、ここぞという時に記者会見をされる一方で、地震で言いますと震度5弱のあまり被害が出ないようなケースでも会見をするケースが見られると思います。このバランスを考えていくことも必要だと思いますが、いかがでしょうか。
A : 地震に関する会見の場合はどこを基準に行うかは、決めの問題もありますし、現象が起きてからなるべく早く記者会見を開くとなるとある程度揺れの強さ、震度だけで判断しているのは止むを得ないのかなと思っております。ただ、おっしゃる通り、震度5弱程度ですと、それほど大きな被害が出ていないということも現実にあります。そこは我々は震度5弱にこだわっているわけではありませんので、皆様が必要だと思われる基準をご相談させていただいて、もし変更する必要があるなら、柔軟に検討していきたいと思っております。

Q : 日照不足の話がありましたが、改めて、今回観測されている日照不足・低温について、過去のどのような事例に似ているかについての所感と、今後いつまで続くのかについての所感をいただければと思います。
A : 担当と事前に話したのですが、過去のどういった事例に似ているかと言うのは簡単ではないようです。またもう少し時間が経ったら担当に是非取材していただき、詳しく聞いていただければと思っております。
 実は先ほどから“記録的な”という言葉は使っていません。本当は使いたかったのですが、実を言うとまだはっきりこれまでの記録を更新するという所には至っていないというのが事実でございます。7月上旬の関東甲信地方の日照等は第何位といった状態でして、もう少し続いて中旬が終わった後にもしかしたら更新する可能性もありますが、今はそのような状況です。ただ、私も実感としてこれほど毎日のように曇りと雨が続いた年というのはあまり記憶がありませんので、非常に珍しい事例ではないかとは思っておりますが、実態としてデータと照らし合わせると今のような状況ですので、もう少ししたら更新があるかもしれません。
 今後の見通しについては、週間天気予報の通りなのですが、1週間程度しばらく雨や曇りの天気が続くといった状況でございます。

Q : 7月で来年はいよいよ東京オリンピックが東京で開催されますが、気象庁として、現象を追いかけていくこと以外に、最後の検証ができる夏と言いますか、あと一年という時期が迫ってきました。オリンピックに向けて、民間を含めて色々天気に関する情報の出し方や警戒の呼びかけ等で動いている民間企業は多いのですが、気象庁として何かこの1年をかけて東京オリンピックに向けて行うような施策はあるのでしょうか。
A : 最終的にオリンピック・パラリンピック組織委員会に入って各会場の予報を出すのは民間企業だと思いますので、我々は民間企業が予報を出すベースとなるような、具体的に言えば数値予報のモデルの改良に努めて、できる限り正確で細かな予報が可能となるように目指していきたいと思っております。併せまして、熱中症についても今年度、よりきめ細かな予測情報を出す予定でございますので、活用していただければと思っております。また、組織委員会の方に当庁から職員を2名派遣しておりますので、こういった職員を通じて我々の持っている様々な情報を上手く活用していただけるよう、組織委員会あるいは民間企業の方ともしっかり協力していきたいと思っております。

Q : どういった立場の方が2名派遣されているのでしょうか。
A : 詳しくは後で担当へお尋ねください。組織委員会の中の2名になりますので、どういうポストかというのは聞いていただければと思います。

Q : 危険度分布について伺います。最近危険度分布は非常に社会的にも関心が高く注目されています。その一方で、気象庁ホームページを見ますと、危険度分布の位置付けが非常に控えめで、目立たない位置にあったり、何回かクリックしていかないとたどり着けなかったりという街の声を聞くのですが、これだけ注目されている危険度分布ですから、自信をもってお伝えするという位置付けにあるものをもう少し目立つ位置にとか大きくとか分かりやすく表示するような改良は考えていますか。
A : 危険度分布については当然自信は持っておりますし、是非使っていただきたいですが、むしろホームページの作り方があまり上手くなくて、どうしても目立ってないのかもしれません。是非こうした方がいいといったご指摘がありましたら、我々としても是非対応させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。

(以上)

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