長官記者会見要旨(平成30年9月19日)

会見日時等

平成30年9月19日(水) 14時00分~14時46分
於:気象庁会見室


発言要旨

  よろしくお願いします。

  まず、台風第21号、それから平成30年北海道胆振東部地震についてお話をさせていただきます。9月に入りまして、4日には、台風第21号が非常に強い勢力で徳島県南部に上陸しまして、その後、近畿地方を縦断し、日本海沿岸を北上しました。四国や近畿地方を中心に暴風や高潮などに伴う被害が発生しております。また、9月6日ですけれども、最大震度7を観測した「平成30年北海道胆振東部地震」が発生しまして、厚真町において広い範囲で土砂崩れが発生するなど、大きな被害が出ております。今般の台風や地震により、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。また、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。

  この3ヶ月程を振り返ってみますと、大阪府北部の地震が6月18日に発生しました。それ以降、「平成30年7月豪雨」が発生し、また、台風第12号、第20号、第21号など台風が相次いで接近・上陸しました。また、熊谷で観測史上1位を更新する41.1度を観測するなど、7月中旬から8月にかけて、東日本・西日本を中心に、記録的な高温となりました。さらに、8月には口永良部島での火山活動の高まりもありましたし、今般の「平成30年北海道胆振東部地震」の発生もありました。このように、大雨、台風、猛暑、地震、火山など異常気象、異常な現象が相次いでおります。あらためて、関係者とよく連携して災害の軽減にしっかり取り組んでまいりたいと感じているところです。

  次に、交通政策審議会の提言に簡単に触れたいと思います。今先ほど申し上げたように自然災害が相次いでいるなか、また、社会環境の変化や、先端技術の進展を踏まえて、気象庁のみならず様々な主体によって実施されます気象業務が、社会的課題の解決に一層貢献できるよう、今後10年程度を展望した気象業務のあり方について、交通政策審議会気象分科会において審議いただきました。本年1月から5回の審議を経まして、8月20日には、新野宏分科会長から提言を手交いただきました。提言では、安全、強靭で活力ある社会の実現に向け、「観測・予報に関する技術開発」と「気象情報・データの利活用促進」を「車の両輪」として相乗効果を上げて取り組むとともに、これらを一体とした「防災対応・支援」を推進していくという方向性が示されました。例えば、防災対応・支援につきましては、「危険度分布」のような最新の技術開発の成果を取り入れた情報の提供、あるいはこれらの情報が市町村の防災対応に「理解・活用」されるよう、関係機関と一体となって平時・緊急時・災害後の取組を推進するなど、今後の提言内容に沿った重点的な取組の具体化を進めてまいりたいと考えております。8月末に提出しました平成31年度予算概算要求におきまして、これらの提言に関連する事項も含めておりますけれども、引き続き、業務体制、技術基盤の強化、産学官の連携・国際連携等の着実な推進に努めてまいりたいと考えております。

  私からは以上です。

主な質疑応答

Q : 冒頭の発言にもございましたが、北海道胆振東部地震、明日で発生から2週間になるのですが、地震活動は弱まりつつあるとは思うのですけれども、気象庁として被災地に呼びかけたいことなどがあればお願いします。
A : 「平成30年北海道胆振東部地震」ですが、9月6日に発生し、最大震度7を観測しました。
  この地震による揺れの状況やその後の地震の発生状況につきましては、逐次、情報提供させていただいているとおりです。また、地震活動、あるいは降雨の状況への注意を適時呼びかけさせていただいておりますし、JETT(気象庁防災対応支援チーム)を地元自治体に派遣しまして、地震活動や気象の見通しの解説等を行っているところです。
  お尋ねのありました地震活動の状況ですけれども、まず先週の13日、大きな地震のあとに規模の大きな地震が発生することが多いとされる1週間が経過した際には、震度7を観測した地震と同程度の地震が発生する可能性は、地震発生当初に比べ低くなったということについて言及させていただきました。また、その際に、今回の地震の震源を含む南北約30kmの領域では、地震活動が依然として活発な状態が続いていることから、13日の時点からさらに1週間程度は最大震度5弱程度以上の地震に注意を呼びかけているところです。その後、地震回数はゆるやかに減少してきているところですけれども、今しばらくは、地震活動の経過を注視してまいりたいと考えております。
  今回、地震が発生しました周辺地域には、ご案内のとおり石狩低地東縁断層帯があります。さらには、強い揺れを伴う地震はいつどこで発生してもおかしくないということに、改めてご留意いただいて、家具の固定など日頃からの地震への備えを心がけていただきたいと思います。
  いずれにしましても、今回の地震で揺れの強かった地域では、家屋の倒壊、土砂災害などの危険が高まっているおそれがありますので、復旧活動などを行う場合には地震活動や降雨の状況に十分注意いただいて、やむを得ない事情が無い限り危険な場所に立ち入らないなど、身の安全を確保するよう心がけていただきたいと思います。
  気象庁といたしましては、地震活動の監視を行うとともに、引き続き、気象の状況も含めて、情報の提供にしっかりと努めて参りたいと考えております。

Q : 台風第21号により、暴風や高潮で関西を中心に大きな被害が出たわけですけれども、特に西日本豪雨の直後ということもあって、防災情報の提供方法や内容で何か改善してきたとか、課題があったとかございましたら教えていただければと思います。
A : 台風第21号ですが、25年ぶりに非常に強い勢力のまま上陸したもので、四国・近畿地方を中心に暴風や高潮等に伴う被害が発生しております。特に高潮につきましては、過去最高となる潮位を大阪市、神戸市で観測し、関西国際空港では滑走路の浸水をはじめとする被害がでたという状況になっております。
  この台風第21号の接近にあたりましては、進路等についての予想はある程度の確度がありますので、早い段階から情報提供して、報道関係のみなさまのご協力を得ながら、この台風に対する警戒、特に記者会見等も行いまして、暴風や顕著な高潮についての警戒を呼びかけ、早め早めの対応をお願いしたと思っております。
  このような情報の提供とともに、今回も大阪府、兵庫県をはじめとする23の道府県におきまして、JETT(気象庁防災対応支援チーム)を事前に派遣しまして、気象の解説等をそれぞれの自治体で行いました。また、個別ですけれども、緊迫した状況においては、ホットライン等を通じて市町村に直接、気象台の危機感を伝えるなどの対応を行いました。
  今回の台風では、高潮により甚大な被害が発生したということがひとつの特徴だと思っております。高潮による潮位情報につきましては、これまでも様々な検討をしてきたところではありますけれども、特に今回の場合は台風のスピードが速く、非常に強い台風ということで中心気圧が低い状態でしたので、急速に潮位が上昇する、あるいは下降するという状況がありました。高潮については、波浪の影響を取り除いた3分平均値を用いて、防災上の利用により適合する形で情報を提供することが重要だと考えておりまして、今回の高潮におきましても、そのような観点で情報提供を行いました。この最高潮位につきましては、過去のデータの連続性から、平滑値といいますか、およそ3時間平均のデータをこれまでも用いてきたわけですけれども、最高潮位を見るという観点からは、できる限り3分平均値を使用できるよう、過去データについても精査を進めてまいりたいと考えております。
  引き続き、適時的確な防災気象情報の発表に努めたいと思いますし、関係機関ともよく連携しまして、地域防災支援の取組をしっかりと進めてまいりたいと思います。

Q : 火山の観測体制のことでお伺いします。9月末で御嶽山の噴火から丸4年になるわけですけども、その間火山の観測体制としては、火山に関わる職員の規模ですとか専門性、観測機器の整備ですとか、その間で十分に整ってきたとお考えでしょうか。同じような災害を引き起こさない体制作りというのはできてきたという認識でしょうか。それとも今後更なる拡充の必要性や課題等感じているということがありましたら教えてください。
A : まず今月で、今お話にありましたとおり御嶽山の噴火の災害から丸4年です。改めてこの戦後最悪の人的被害となった火山災害で亡くなられた方に対してご冥福をお祈りするとともに、被害にあわれた方へお見舞い申し上げます。今、ご質問ありましたこの4年間の火山に対する取組、様々な取組を進めてまいりました。観測施設、観測機器の強化、それからそのデータを集めて処理するシステムの強化、また火山に関する気象庁における組織として、火山監視・警報センターを整備し、あるいは増員といいますか、職員の数も増強するといったことを進めてきております。そういう中で、今、ご紹介のありました内容以外にも情報として噴火速報の提供を始めるとか、あるいは火山防災協議会が活火山法において法定化されましたので、その地域における関係者のみなさんとよく連携し、日頃からのコミュニケーションにより、何か異常があったときに気象庁の持っている知見と現場で防災対応される方、あるいは登山者のみなさんに対する情報がよく伝わるようなそういう仕組みを築いてきたと思います。この4年、いろいろな評価はあるかと思いますけれども、気象庁としては精一杯やってきたとは感じています。
  一方で、やはり火山の監視をする知見を職員の中につけていく、またオールジャパンとして火山に関する専門家を育てていくというような課題があると思っております。これにつきましては、文部科学省等でしっかり進めていただいているところもございますので、よく連携をして火山の専門家を育てていく、オールジャパンとして育てていく、また気象庁の中で専門家を育てていくということについては、まだまだやることがたくさんあると思っておりますので、この点については引き続きしっかりやっていく必要があると思っております。
  それから、噴火警戒レベルの具体的な判定基準の見直しというものを進めてきております。これも専門家のみなさんの意見を聞きながら進めてきておりまして、この見直しについても適時に最新の知見を入れながらやっていく必要があると思っております。
  また、今年1月に草津白根山で噴火がございました。いわゆる、火山の山体の中で活発に活動していた火口ではない所で噴火をしたというところがありましたので、活火山のどの火口で噴火が発生した場合についても、水蒸気噴火の場合は非常に難しいわけですけれども、それを把握していく努力が必要だと思っておりますので、そのあたりについては草津白根山の噴火を踏まえて、平成31年度の予算要求としても、把握能力をあげるための要求をさせていただく、その点が新たな噴火に関する課題としてあったので、そこはしっかり進めていきたいと思っております。

Q : 気象庁の中でも専門家を育てていくというご回答いただいたのですが、例えば職員が大学で学んだり、専門家を積極的に採用していくとか、具体的にはどのようなことを検討しているのでしょうか。
A : 今おっしゃったことは具体的に考えておりますので、数の多い少ないというのはあると思いますけれども、人的、技術的な交流をする、こちらから大学へ行って勉強する人も出てきておりますし、あるいは日頃の業務の中で火山を学ぶ学生などの方に来ていただいて勉強していただく、あるいは火山の関係者を採用していくというようなことは、粘り強く引き続きやっていきたいと思っています。

Q : あと二点。4年たってもまだ当初と同じように、火山に特化したいわゆる火山庁のような専門組織が必要だとおっしゃる火山学者がいらっしゃるわけですけども、私も今年これだけ豪雨ですとか猛暑ですとか災害が相次ぐ中で、各省庁の概算要求を見ていましても、やっぱり喫緊の目の前で起きた災害に対する予算配分というのが重点的にならざるをえなくて、色々なものを抱えている中で火山だけに予算配分するのは難しいでしょうし、そういったことを考えると特化した組織というのは必要な面もあるのではないかと思う節もあったのですが、そういった火山に特化した組織の必要性についてはどのようにお考えでしょうか。
A : 個別にどういう組織がいいとか悪いとかについてはコメントするつもりはございません。どのような組織形態であれ、それぞれ、観測をする機能、研究する機能、また、何か噴火災害があったときには実働部隊と呼ばれるようなオペレーションをされることもありますが、そういった様々な機能が連携し、十全に発揮されることが重要ですので、どういう組織形態であろうともそのことをしっかりと機能させていくということが、気象庁として与えられた役割だと思っております。

Q : 今年、平成30年7月豪雨がありまして、その中で特別警報が11府県に出されたと思います。その中で被害がそれなりに出たということで、今後特別警報のあり方や、特別警報を出したあと、それぞれ警報ありますけれども警報を出した後の自治体との連携について、先ほどもお話ありましたけれども再度お話伺えますでしょうか。
A : 7月の会見でもこの件の質疑がいくつかあったと記憶しております。平成30年7月豪雨では、結果として特別警報を11の府県に発表いたしました。その前から、私どもとしては記者会見もやりましたし、個々の場面で警戒を呼びかけてきたところです。そういった中で、実際に、平成に入ってから最も多くの方が亡くなってしまうという最悪の気象災害となったということを踏まえますと、やはり私たちとして何ができたのか、できなかったのか、何が課題なのかということについては、しっかりと検証していかなければならないと思います。検証のポイントは、私どもが出した情報が、例えば自治体の首長さん、避難勧告を出す立場の方に理解をされ、活用され、タイムリーにそれが使われたかということと、それから、例えば避難勧告や避難指示を受けた住民の皆さんが、それを受けて実際に自分の身を守る形で行動していただけたかどうか、それはもちろん避難指示、避難勧告という流れの中で捉える部分があると思いますけれども、私どもが出した情報についても住民の皆さんに同様に理解されたか、役立ったのかということについての検証もしていかなければならないのではないかと思っております。今、まさにデータを見ながら検証を行っているところでありまして、予断を持って申し上げる段階ではないですけれども、この何年か自治体に対して私どもが取り組んできた取組、例えばホットラインをするとか、事前に色々勉強をするとかをやり始めていて、そういう効果は出てきている、裏を返せばまだ十分であるかどうかは別としても、私どもが出している情報にそれなりに理解をし、活用をしていただく自治体の方は出てきているという感触は持っておりますけれども、いずれにしましても先ほど言いました、自治体の皆さんの出す避難情報・防災情報との連携、それから住民の皆さんがどう動けたのかということについては検証をしていく必要があると思います。もうご案内のとおり、中央防災会議の元にあるワーキンググループが設けられて、今後そういった点も含めて検討されることになっておりますので、気象庁もよく参画をしてしっかりやっていきたいと思っております。

Q : 台風第21号の高潮についてお伺いしたいんですけれども、プレスリリースによると6か所で過去最高潮位を記録した、となっていて精査によってこれがかわる可能性もあると書かれています。事情を伺ってみますと3分値と3時間の異なる基準で比較していたり、過去の3分値で今回のものよりも高いものがあるのに、今回が最高だという見出しが見られます。今後精査するにしても、今回6か所が最高を記録したというのがミスリードにあたる可能性があると思うのですが、それについて、長官はどうお考えなんでしょうか。
A : まず、従来から平滑値と呼ばれている数字があって、これは約3時間の潮位の平均を見ているというものです。それは、長い観測の歴史からいうとそういう平均値で見ざるを得なかったような観測をしていたというようなことがございます。私の記憶が正しければ、後で確認頂ければと思いますけれども、1997年以降、現在のようなサンプリングをするようにしておりますので、3分平均でものを見ていくということは、1997年以降であれば可能になってきているという状況にある、これが背景の事情だと思います。高潮については、特に近年、いくつか被害ございましたけれども、大きなものはなかったというところでありまして、この平滑値をそのまま使うのか、3分値についてどう扱っていくのかということは先ほど冒頭で申し上げましたけれども、色々検討してきたという中で、今回大阪湾等で大きな高潮が発生したということになります。事実として、例えば大阪湾の淀川河口等をみると相当な高さまできているという、3分平均で見て、実際は1時間ぐらい潮位が高い状態があったと記憶しておりますけれども、3分平均で見てそういう状態でありますので、まさに防災対応上はこの数値で見ていく必要があると思っておりますので、今回唐突のようであったかもしれませんけれども、この3分平均で潮位の高さを出していくことの意義を明確にさせていただいた、本来はもうちょっと早くやれば良かったのですけれども、ということになっております。そういう観点で即座に比較するものについて言えば従来の平滑値の値しかございませんので、今ありました6つの地点において平滑値と比較した場合、これが適切であるかというのは色々な議論があるかと思います。比較したときに6点でこれまで最高であったということであります。自然現象は何でもそうですけれども、高潮についても、一つ一つの高潮について、個性といいますか違いがあるわけですが、ゆっくりと台風が進む、スピードが速い、吸い上げ効果と吹き寄せ効果などがありますと、吸い上げに伴うものと吹き寄せに伴うものとそれぞれの影響の度合いというのは違うわけでして、例えばこれまで最高とされてきた第二室戸台風と比べてみて、全く同じような形で上昇してくるというわけでもないでしょうから、両者を比較すること自体、ある場合は意味があると思いますし、ある場合はそうでもないということがありますので、完全な比較はできませんけれども、防災上の観点から最大値を観測したものについては公開しなければならないと思っております。一方で、それでは1997年以降どうであったかということについては速やかに精査・解析をして、公表をしていかないと、私も一部の地点についてはもっと高かったところがあるのではないかという話を聞いておりますので、そこは速やかにそれぞれの地点で最高値がどうなるかということについては確認をして、ご提供していくことが必要なのではないかと思います。

Q : 6地点全て精査した上で、何地点かが最高であったと出せば済む話だと思うんですけども。
A : あの時点の速報値としては、ひとまず、今申し上げましたように平滑値との比較をした上で公表させていただいた。その上で、その6点全ての点も含めて、全国の高潮の潮位を見ている点については全て精査をして速やかに提供し、必要であれば、その後に修正等させていただくということが、あの時点では、それが唯一できることといいますか、最も的確な対応だったのではないかと思います。

Q : 今後修正がある状態でそう出したということですけれども、仮に6地点調べて過去最高でないものがあったとわかった場合に訂正しないといけないと思うんですけれど、その際の責任は誰がどう取るべきかというのは。
A : 最高潮位を公表した、そのことによって悪さをしないと言いますか、というようなことが起こらないように速やかに対応することが必要なことではないかと思います。

Q : 悪さをしないとはどういうことですか。
A : 今ミスリードという言葉をおっしゃったと思いますけれども、例えば今回最高であった数値を以て、これでいいというようなことで、今後も何か構造物の設計をされるとか、防災対応をされて何か不都合が生じるというようなことにならないように、関係者の理解や速やかな過去データの精査が必要だと思います。

Q : 今、長官が西日本豪雨だったり、台風だったりの件で、気象庁が出した情報が自治体にどう理解されて、住民の方の避難にどうつながっていくかということが非常に重要だということをおっしゃいましたが、特に今年の夏の豪雨災害、台風も来ていましたが、気象庁の会見の中でも危険度分布をしっかり活用して避難に結び付けてください、避難をしてくださいということを強くおっしゃられております。ただ、ガイドラインも含めてなんですが、今の自治体の避難指示だったり避難勧告というのが、危険度分布と紐づいていないような状況があるかとは思います。内閣府のワーキングも始まりますが、それに対して気象庁としてどういうふうにのぞまれるかということをお願いします。
A : まず、その検証をしていくという立場から言えば、いまおっしゃったように実態として危険度分布が利用されているのかいないのか、役立っているのかいないのかというその事実を把握することから始まるのだろうと思います。その上で、現在私どもが提供しうる情報としては、もちろん危険度分布を私どもとしては推奨していますが、私自身はガイドラインには現在も相当位置づけられているようにも思いますけれども、より適切な位置づけが必要であれば、それは今回お願いし、検討の結果として頂きたいと思っておりますし、それだけで十分なのかどうかということも含めて、虚心に状況を見てこのようにした方がいいのではないかというようなことがあれば、そのことについても検討の成果にして頂くよう努めていきたいと思っています。

Q : 先ほどの西日本豪雨の特別警報の質疑の中で、自治体ということだと思うんですけれども、それなりに理解し活用してもらっている感触は得ているというお話をされていましたけれども、それは何か気象庁としてアンケートとかして基づいているものなのか、それとも色んな方から報告とかで聞いている限り長官として個人的にそういう気がしているというレベルの話なのか、それだけ教えていただけると。
A : なかなか難しい質問ですけれども、お聞きしている部分もあれば、私どもが出している土砂災害警戒情報と避難勧告等が出されるタイミングの関係とか、いくつか検証しているデータを見てそういう印象は持っているということです。

Q : 胆振東部地震のことでひとつ伺うのですけれども、当時、震度計のデータがかなりたくさん未入電であったと思います。政府の初動対応の中では、そういったデータがかなり重要になってくると思うんですけれども、今回このようなことが起こったことについて、どのように長官として受け止めてらっしゃるのかということと、今後何か対策として考えていらっしゃることがあるのであれば教えていただけないでしょうか。
A : 政府の初動、あるいは政府に限らず地方自治体もそうだと思うのですが、初動の対応において、その地震による揺れをしっかりと把握し提供していくということが非常に重要だと考えております。ご案内のように、阪神・淡路大震災のときに後日に調査結果として震度7を公表したということもあり、初動として震度7を速報していなかったという教訓を踏まえて、気象庁も震度計を整備・強化し、関係する機関あるいは地方公共団体も整備していくという中で、今、日本でいえば4000点を超えるような震度観測網ができあがってきているという状況です。その中で今回は、震度5弱以上と考えられる17点で、気象庁の観測点が1点とそれ以外の観測点十数点が、いわゆる地震直後には発表できなかったという状況でした。気象庁の観測点につきましては、地上の通信回線で通報するということに加えて、全ての観測点でバックアップ機能として、衛星通信も活用して情報を収集するというような態勢にしておりました。今回その厚真町の観測点につきましては、おそらく地上の通信回線の影響だと思いますけれども、通信できない状況、それから衛星回線につきましては衛星に電波をあげる所のアンテナ等に不具合があったということで、集めることができなかったということでして、今一度、少なくとも気象庁の持っている機能については点検をしていかなければならないと思っています。
  そのことと同時に、集めることのできないという地点こそ危ないのだということが、初動の対応としてご理解いただくというか、その情報を使っていただくため、未入電と私ども呼んでいるのですけれども、地震直後に、特に震源の近くで未入電になっている震度のデータが入ってこない地点があるということについて必ず言及をし、可能であればおおよその推計される震度を伝えるということで、バックアップのバックアップといいますか、そのような機能も持たせて、今回はそれもさせていただいたということであります。したがいまして、大きな揺れのあとには停電が起こる、通信回線はダウンする、そういう中でできる衛星で集信、それでもできないならばそれを補完する推計の震度等を使って、どこが入電していなくて、推計の震度を使って、ここがおそらく震源付近でありながらデータが入ってきていないので、非常に大きな揺れになっているということを反射的あるいは間接的に伝えていく、そういう構造に元々しておりますので、そういう構造の中でより良い震度の推計も含めて、より良く運用できるように、まずは集めるところから、そして集めたデータをより良く処理し、集められなかったデータについてもカバーするようより良く言及するため、しっかりとしたチェックをやらねばならないということで、これは現場に指示をしたいと思っております。

Q : 過去、震度7がこれで5回、すぐに震度7が出せなかったのが3回、2勝3敗みたいな形になっているのですけれども、これってあまりいい数字ではなくて、今おっしゃったように停電などで未回収のデータが出てくる状況がこれだけあるわけです。現状、衛星回線でのバックアップもあるし、推計震度の分布図も出していますが、これで十分なのか、それとももう一つ何か努力をして、未入電自体を減らすというのはお考えでしょうか。やっぱり、未入電って続いてしまうのかと思うのですが。
A : 毎回こういう地震がある度に、考えてやれることをやってきて、当初は衛星回線が限定された地点であったものを気象庁の全部の観測地点に拡大するとか、あるいは停電があっても動くようにバッテリを長寿命化するとか、色々なことをずっとやってきたわけであります。もちろんしっかりと通報できるようにすることは大事ですけれども、今ある態勢についてコストパフォーマンスがどうすればあがるかということに対して努力をしていく必要があるのではないかと思っております。今、お話ありましたように、絶対何が何でも収集できるようなハード等を用意するいい案があれば、私どもとしては考えていかなければいけないと思っておりますけれども、相当やるべきことをやってきた上でどうすればいいかというところに、今なっているのではないかと思っております。

Q : そういう意味でいうと、大きな地震に関しては、今回みたいに、もしかすると震度7の可能性があるというところを会見でおっしゃっていたようなことが今後も続くということでしょうか。我々もそれを含んでおくというお考えでしょうか。
A : もちろん震度7を収集できるよう努力しますけれども、未入電のところで推計震度の精度も上げ、推計で見て7かもしれないということを、どの程度確信を持って言えるかによるのだと思いますけれども、しっかりと言えるような技術の研鑽もあわせてやっていく必要があるのだろうと思います。

Q : 南海トラフのプレート境界のコアの掘削につきまして、JAMSTECが「ちきゅう」という海洋掘削船を使ってやろうとしています。いよいよ来月出港ということですが、プレート境界のコアを掘削するということで新たな知見であったり、防災上必要な情報であったり、今後期待できる部分があると思います。それについて、気象庁としての期待があればお聞かせください。
A : 今お話のあった、「ちきゅう」を使って南海トラフ沿いでコアを掘って研究しようとしている動きについては承知しております。非常に専門性が高い部分もあって十分に理解できているかどうかわかりませんけれども、例えば南海トラフにおける地震の発生のメカニズムがこれまでどうなっていたかということなどについては、ある意味、そういう一つ一つの積み重ねによって知見が得られていく面があると思いますので、そういったことをやっていただくことはすごいことだし、いい成果が出ることを期待したいと思っております。

(以上)

このページのトップへ