長官記者会見要旨(平成30年6月27日)

会見日時等

平成30年6月27日(水) 14時00分~14時22分
於:気象庁会見室


発言要旨

  よろしくお願いします。私から四点お話させて頂きます。

  最初に、6月18日に発生いたしました、大阪府北部の地震についてです。この度の地震によりお亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
  気象庁では、この地震について発生直後から逐次地震の発生状況などの情報を提供するとともに、ポータルサイトを開設するなどしまして、地震活動、降雨の状況への注意を呼びかけてきたところです。また、JETT(気象庁防災対応支援チーム)を地元自治体に派遣しまして、気象の見通しの解説など、復旧活動等の支援を行ってきたところです。
  この大阪府北部の地震は、その発生数は減少してきております。この3日余りでは、震度1以上を観測する地震は発生しておりませんけれども、震度1とならない規模の地震は継続して発生しておりまして、当分は今回の最大震度6弱の地震の発生前よりも活発な状況が続くと考えております。また、今回の地震が発生した地域周辺には、ご案内のように複数の活断層帯がありますので、こういった点に留意をしていただきたいと思います。揺れの強かった地域では、家屋の倒壊や土砂災害などの危険が高まっておりますので、今後の地震活動や降雨の状況に十分注意をして、身の安全を図るよう心がけていただきたいと思います。また、日本全国、いつどこで強い揺れを伴う地震が発生してもおかしくありませんので、この機会に改めて、日頃からの地震への備え・点検をお願いしたいと思います。

  次に、熱中症と梅雨期の大雨への対応についてです。この数日、暑い日が続いております。また、本日もいくつかの府県では、高温注意情報を発表している状況です。また、今年の夏は全国的に気温が高くなると予想をしているところです。気象庁では、最高気温が概ね30℃以上となる場合には天気概況におきまして、また、地域にもよりますけれども、最高気温が概ね35℃以上を超えると予想される場合には高温注意情報を発表して、熱中症の注意を呼びかけていきますので、こうした情報もご活用いただき、十分な備えや対応をお願いしたいと思います。
  また、本日、北日本や新潟県では、大雨が予想されておりますように、これから梅雨末期にかけまして、各地で大雨になりやすい季節を迎えます。災害が発生するおそれがあるような気象状況では、気象庁が時間をおって段階的に発表します気象情報、注意報、警報と合わせまして、今月20日から提供を開始しました雨量分布の予報であります「降水15時間予報」、それから昨年度から提供開始しております土砂災害・浸水害・洪水に関する「危険度分布」などの情報を、防災対応や安全確保にご活用いただくよう、お願い申し上げます。

  次に、気候変動に関する懇談会についてです。気象庁では、文部科学省と共同いたしまして、「気候変動に関する懇談会」を新たに立ち上げて、本日、その第1回会合を15時半から開催することとしております。気候変動につきましては、その影響が顕在化する中で、いわゆる「気候変動適応法」が成立しまして、その対策を強化するなどしているところであります。本懇談会を通じて、我が国の気候変動の実態と見通しに関する研究から分析・評価、そして、それらの成果の利用促進などを、関係機関とともに積極的に貢献してまいりたいと考えております。

  最後に、昨日気象庁ホームページで公開いたしました気象データの有効活用事例の創出の取組についてです。気象庁では、様々な産業分野における気象データを利用した生産性の向上や気候リスク管理の優良事例の創出に取り組んでおります。今般、全国清涼飲料連合会と大手家電流通協会の協力を得まして、2週間先までの気温予測データを販売計画に活用する実験を行いまして、商品販売の機会ロスの削減や、消費者の需要にタイムリーに応えることが可能とわかりました。引き続き、気象ビジネス推進コンソーシアムなどを通じて、様々な産業分野で気象データを活用していただけるよう取り組んでまいりたいと考えております。

  私からは以上です

主な質疑応答

Q : 2点あります。一つは、大阪府北部の地震ですけれども、大阪で震度6弱以上を観測したのは初めてということがありましたけれども、起きたときに長官ご自身がどう思われたかという率直な感想をお願いしたいと思います。あともう一つは、九州北部豪雨から間もなく一年経とうとしておりますけれども、それについてのご見解をお願いします。
A : 6月18日に大阪府北部で最大震度6弱の地震が起こったときですけれども、まず、しっかりと情報を提供していることを確認させていただき、そして、被害が大きくならなければいいのだがと、率直に思った次第です。それと同時に、地震活動が起こっている中で、しっかりとタイムリーに情報を出していくこと、地域の要請等にしたがいまして、あるいは要請がなくてもかもしれませんが、しっかりと復旧対応ができるように、気象庁として取り組んでいく必要があると思いました。いずれにしても、マグニチュード6程度の地震について言えば、日本全国どこでも発生するわけですので、被害が少なくあってほしいと思うと同時に、改めてこういうことを捉えて地震への対策を皆で考えていく、心がけていく機会にしていかなければならないと思います。
  それから、九州北部豪雨については、昨年の7月5日から6日にかけて、記録的な大雨となりました。ご案内のように、甚大な被害が発生いたしました。まだ、なお復旧が十分でないというところもございます。改めて亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された方に心よりお見舞い申し上げます。また、1日も早い復旧、元の生活に戻ることをお祈り申し上げたいと思います。
  この九州北部豪雨ですけれども、甚大な被害をもたらした要因としては、いわゆる「線状降水帯」が形成され、それが長時間にわたって維持され、猛烈な雨が同じ場所で降り続くといった現象であったことについては、皆さんご案内のとおりであります。また、この豪雨ですけれども、やはりその後の振り返り、点検等しますと、住民のみなさんの迅速な避難を促すために、地域としての防災意識の向上を日頃から図っていくことが非常に重要である、「地域の防災力」の強化だと思いますけれどもそういったようなこと、それから、中小河川における水害が発生したということですので、この危険性について、情報提供の強化をしいていかなければならない、こういった取組が求められるようになったと承知しています。
  気象庁としては、まず線状降水帯のような集中豪雨をもたらす現象の予測精度を一層向上させていくという取組、技術開発にしっかりと取り組んで行かなければならないと考えております。また、情報提供、あるいは地域防災力強化の支援の観点からは、昨年度から開始しました「危険度分布」など、気象情報が防災対応の現場で効果的に役立てられるよう、利用されるよう、平時からその意味や有効な使い方などを分かりやすく解説していく取組、そしてホットラインなどを通じた気象台が持つ危機感を確実に伝えていく取組を推進していかなければならないと思っております。また、今回JETTを立ち上げましたので、自治体等へのJETTを派遣した支援にも取り組んでいきたいと思います。

Q : 今も少しお話出ましたけれども、危険度分布、去年九州北部豪雨の直前に本来やるという予定だったんですけれども、そのあと開始してそろそろ1年経ちますが、洪水警報の危険度分布等の1年振り返って、去年の豪雨対策、対応そのあたりの検証と、今抱えている課題、今後に向けてさらにどういったところを改善していきたいとか、そういった部分はありますでしょうか。
A : まず危険度分布の公開ですけれども、ちょうど九州北部豪雨の直前に公開をさせて頂きました。もちろん公開する前から、様々な機会を通じて自治体等にご利用いただくようにご説明をしお願いをしていた部分もありましたけれども、九州北部豪雨が公開の直後ということもありましたので、それが十分に活用されたかどうかということは、検証をしっかりとしていかなければならない、こういう課題があったと思います。多くの皆さんがご存知のとおりだと思いますが、改めて、この危険度分布につきまして補足しますと、大雨によってもたらされる土砂災害、それから浸水害、洪水害について、そのリスクの高まりをそれぞれの災害に応じて指数を用いて評価をした上で、地図上に5段階で分かりやすく表示をするというものであります。この情報を活用していただくことで、災害の発生度が高まっている地域を分かりやすく、自らのこととして把握していただくことができるわけですので、自治体も、また住民の方もご活用いただきたいということで、この危険度分布を立ち上げたわけです。
  昨年7月の九州北部豪雨、それから同じく7月に秋田県でも大雨がございました。こういった事例で、実際にこの危険度分布とその現場の状況がどうであったかというその確認、検証をやらせていただいております。その結果、例えば、5段階の危険度のうちのもっとも危険度の高い、私たちが言っている「濃い紫」が出現した場合、出現した河川の7割において、河川の氾濫や河岸の損傷などの被害が実際に起きているということを確認しております。もちろん、それに加えてそれぞれの大雨のときに、どの程度どういうことが起こるかということをそのつど検証することとしておりまして、引き続き大雨が発生したときに、被害の状況と危険度分布の関係の調査などをタイムリーに行って、精度改善に努めて参りたいと思っております。それから、やはり活用をしっかりしていただかなければならないということがありますので、これをどのように使っていますかというようなアンケートをするわけですけれども、昨年7月の秋田県の大雨のときの洪水の事例では、当日気象台から直接電話を差し上げた複数の市町村におきまして、実際に「洪水警報の危険度分布」を確認したうえで避難勧告等の判断に活用したというようなお話は伺っております。また、都道府県が市町村に対して、避難勧告の判断に係るガイドラインを提示しているわけですけれども、そのガイドラインに危険度分布の活用を載せていただく、あるいは市町村ごとに定めている地域防災計画にも、この危険度分布の避難の判断への活用を記載していただくというようなことも進めておりまして、すでにいくつかの市町村においてそういう記載がなされているように聞いております。いずれにいたしましても、冒頭申し上げました、しっかりとこの危険度分布が活用されることが重要ですので、市町村の地域防災計画への記載をはじめとして、様々な機会を通じて一層有効に理解いただけるように努めて参りたいと思います。

Q : 中小河川の防災はすごく今までも難しくて、それを指数というものを用いてシミュレーションをして、20,000河川、すぐ生活圏にある河川も氾濫する危険性を3時間も前から出せるというのは素晴らしい技術だというふうに我々も思っているし、地域の人も思っていると思うのですが、一つ疑問なのは、国交省が持っている水位計のデータというのを加味すれば、もっと精度が高まるのではないかと、今はバラバラに情報が入ってきているような、自治体だとそういう状況もあるのですが、そのあたりは例えば一緒になってもっといいものを作ろうとか、どういう風にお考えなのかお聞かせいただけますか。
A : 例えば、これまで危険度分布を公表するにあたっては、国土交通省と連携をして、一緒に表示する工夫をさせていただきました。一つは、指定河川洪水予報については、共同で出した内容をしっかりと危険度分布上に反映するということを、もう既に昨年の公開時からやっているということがありますので、危険度分布開始前についても、それまで共同で実施している洪水予報の成果を反映する形でやっております。また、昨年の九州北部豪雨等を踏まえて、国土交通省が簡易型の水位計を開発して、全国の5,000カ所以上に展開しようとしているということがございますので、今でも国土交通省あるいは県とともに共同で洪水予報をしている所にそういったデータを利用する、あるいは共同で行う区間の延長等にそのデータを活用していく、そして、そういった活用した成果を危険度分布にも反映をしていく、こういう大きな流れの中で私たちが一緒にやっておりますので、別にバラバラでやっているわけでもなく、連携をしながらお互いの情報を交換しながら、よりよくなるようにしていけばいいことを進めておりますし、今後も当然していくと思います。

Q : 今の、中小の20,000の河川へ直接水位のデータは計算に入っていないと思うのですが、そういったことをすればもっと、例えばどのタイミングで増えてくるみたいなことも、精度が上がるのではないかと考えているのですが。
A : 一つは、例えば、洪水の危険度分布を出すにあたって、流域雨量指数を計算するわけですけれども、その流域雨量指数を計算し、指数がいくつになるとその河川が危ないか、もっと分かりやすくいえば、どういう色付けをすればいいか、濃い紫なのか紫なのかということの基準を決めなければならないわけでありまして、その基準を決めるにあたって、それぞれの河川のこれまでの観測データ、あるいは被害のデータ等も活用した結果として、洪水の分布の色が付けられているという意味では、既にその水位データを反映しながら進めているということであります。その反映をしながら進めると同時に、その都度その都度チェックをしながら、良かったかどうかというのも見ていかなければならないし、新たに河川に水位計を付けようとする場合は、その利用について一緒に考えていく、そういう一貫した連携は取れているし、より一層取っていかなければならないと思います。

Q : 是非、リアルタイムで組み込むような方法も考えていただければと思います。その方が便利だと思います。
A : 技術開発項目の一つだと思っております。

Q : 聴覚障害者の方に対する手話通訳の導入ですとか、以前こちらでもお伺いしたと思うんですけれども、文字情報の導入とかその辺に関しては今後どういう形で取り組まれるようになるのか、教えていただければと思います。
A : 2月にこの場所で試験的にやらせていただいたと思いますが、その後、そのときに出た課題、専門用語をどうするかといったようなこともありますので、そういった課題も検討しながら、秋頃を目途にどうするかは決めていきたいと思います。

(以上)

このページのトップへ