長官記者会見要旨(平成30年4月18日)

会見日時等

平成30年4月18日(水) 14時00分~14時24分
於:気象庁会見室


発言要旨

  よろしくお願いします。
  私の方から2点お話をさせていただきます。気象庁では、昨年8月の「地域における気象防災業務のあり方」の提言を踏まえまして、地方公共団体や住民のみなさまの防災対応の支援に取り組むこととしてきておりまして、本日、この地域の防災支援にかかる具体的な取組の2点についてご紹介をいたします。

  はじめに、「気象防災アドバイザーの育成」についてであります。平成28年度に実施いたしました、気象予報士の活用モデル事業におきまして、気象予報士等の気象の専門家による防災気象情報の解説等が自治体における適切な防災対応につながることが確認されました。このことを踏まえまして、平成29年度の事業としまして、地方公共団体の防災の現場で即戦力となる気象防災の専門家を育成することを目的といたしました「気象防災アドバイザー育成研修」を本年の2月から3月にかけて実施いたしました。既に気象に関する専門的な知識をお持ちの本研修の受講修了者、57名でございますけれども、我が国の防災制度や地方公共団体の防災対応、防災気象情報の実践的な活用方法などを習得していただいております。この研修の受講修了者を気象防災アドバイザーと略称して呼んでいるわけでございますけれども、この気象防災アドバイザーの方々には、今後、平時においては「日々の気象解説」や「防災マニュアル等の作成・改善支援、あるいは訓練へのアドバイス」、大雨などの防災対応時におきましては「気象状況の見通し」や「気象庁の発表する防災気象情報」の解説などを通じて、地方公共団体の行う防災対応にご貢献いただけるものと期待をしております。

  次に、JETT(気象庁防災対応支援チーム)についてです。先月の会見でもお話をしましたように、大規模な災害が発生した場合、あるいは発生が予想されるような場合には、都道府県や市町村の災害対策本部などへ「気象庁防災対応支援チーム」、愛称が「JETT」(ジェット)でございますけれども、これを派遣することといたしました。JETTとして派遣された気象庁の職員は、現場のニーズや各機関の活動状況などを踏まえまして、気象・地震活動・火山活動等のきめ細かな解説を行うことによりまして、地方公共団体や関係機関の防災対応を支援することとしております。運用の開始は5月1日を予定しておりますけれども、例えば4月11日に土砂災害が発生いたしました大分県中津市に同日より職員を派遣して、気象の解説などを行っているところであります。派遣先のニーズに合致した適切な活動が行えるよう、万全な準備を進めていきたいと考えております。

  私からは以上です。

主な質疑応答

Q : 熊本地震から先週で2年、そして先日島根でも震度5強の地震があったわけですけれども、長官から改めて注意点をお話いただければ。
A : まず熊本地震から2年ということがございました。熊本地震では、災害関連死の方も含めまして多くの方が亡くなっておりますし、まだまだ復旧、復興の途上であります。亡くなられた方のご冥福、それから1日も早い復旧、復興を心よりお祈りを申し上げたいと思います。熊本地震については、2年が経過いたしましたけれども、一連の地震活動は全体としては減衰しつつありますけれども、例えば先月3月の地震活動をみますと、震度1以上の地震が6回発生するなど、活動はなお継続しておりまして、熊本地震以前の状態よりはまだ高い状態が続いております。現状程度の地震活動は当分の間続くとみております。また九州地方におきましては、過去マグニチュード6程度以上の地震の発生のあと数年のうちに、同規模程度の地震が発生した事例もあります。こういったことに留意して、対応をお願いしたいと思います。
 それから、4月9日に発生しました島根県西部の地震でございます。この地震につきましても家屋の損傷等ございます。被害にあわれた方改めてお見舞い申し上げたいと思います。今回の島根県西部の地震でございますけれども、中国地方の日本海側につきましては、今回起きたような地震が度々発生しております。近年ですと、2016年10月にございました鳥取県中部の地震マグニチュード6.6や、平成12年に鳥取県西部で発生しました、マグニチュード7.3の地震も同様でございまして、この島根県から鳥取県にかけましては、時折活発な地震活動が発生いたします。今回発生した島根県の西部を見ますと、今回の震源の付近から南東側の広島県北部にかけまして比較的活発な地震の活動域がございます。1978年、1930年にはマグニチュード6.1の地震がそれぞれ発生するなど、過去には最大マグニチュード6クラスの地震が発生している状況でございます。今回の4月9日の地震の発生以降、直後には4時間以内に最大震度4の地震が4回発生するなど震央付近で比較的揺れの大きな地震が発生したところであります。その後、地震活動はおさまってきておりますけれども、なお活発な状態で、1日~数日の間に震度1以上の地震を観測するという現状になっておりまして、この状況も当分続くものと考えております。先程も申し上げましたが、中国地方の日本海側では比較的地震活動が活発で、大きな規模の地震が発生後に、規模の近い地震やさらに規模の大きな地震が続いた事例もございます。このようなことに留意していただいて、引き続き地震に対する日頃からの備えをお願いしたいと思います。以上です。

Q : 地震発生後の記者会見の中で、「規模の近い地震が続発した過去の事例」について詳細にご説明していただいていますけれども、これを始めた理由、どういった経緯でやっているのかということと、この情報発表に関する長官の所感を教えてください。
A : 今、ご質問にありましたように、地震発生直後の会見などにおきまして、規模の近い地震が続発する過去の例があるなどについて、説明を追加して防災上の対応を呼びかけているところでございます。これは平成28年、2年前の熊本地震を踏まえた対応でございます。ご案内のように、熊本地震では、4月14日にマグニチュード6.5の地震が発生し、2日たたないうちに、より規模の大きなマグニチュード7.3の地震が発生いたしました。それまでは内陸で発生した地震のうち、マグニチュードが6.4以上の地震につきましては、その地震が本震であるとして余震の注意を呼びかけるという、本震-余震型を前提とした地震発生の見通しを述べていたところでありましたけれども、その見通しだけでは十分ではなかったという状況でありました。この教訓を踏まえまして、政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会におきまして、大地震後の地震活動の見通し、そして様々な事例に対応できるように、防災上の呼びかけの検討を改めて行っていただいて、その報告書が同年平成28年8月に取りまとめられました。気象庁はこれを踏まえて、地震発生後の防災上の呼びかけ等を行うこととしております。
 少し長くなりますけれども、具体的には、大地震が発生した後、統計的には1週間程度、特に2日から3日の間は比較的大きな地震が発生しやすいこと、そして地域によっては、同程度の規模の地震が発生した事例があることなどに言及をして地震への注意を呼びかけることとしておりますし、また周辺の活断層の存在にも留意する呼びかけを行うということもしております。その上で、地震活動が本震―余震型で推移をし、一週間程度以降も、さらに活発な活動が継続しているような場合につきましては、余震確率に基づきまして地震活動の見通しを分りやすく伝えることとしているのが現状でございます。引き続き、地震調査研究推進本部の報告書の趣旨に沿った防災上の呼びかけをして参りたいと思います。
 この情報の発表ですけれども、地震の発生の仕方が、先程も申し上げましたように、本震―余震型だけではなく、続発性を持っていたり、あるいは群発性を持っていたりするという、様々な起こり方があることを踏まえまして、過去の事例やその地域の特性、さらには活断層の存在や、その活断層の長期的な発生確率などの知見も活用した上で、大きな地震が発生した場合に、その後の地震への注意を喚起するということであります。防災上の呼びかけとしては、現在の地震学の知見・実力を踏まえた対応であると理解しております。したがいまして、普段から大きな地震に備えることはもちろんですけれども、いざ大きな地震が発生した場合には、こういった続発の事例などがあったことなどを呼びかけてまいりたいと思いますので、その内容にご留意いただきたいと思います。

Q : 冒頭にJETTの話がありました。特に自治体への支援だったり、あるいは気象ビジネスへの支援だったり、気象庁の業務が多様化していると感じています。そういった中で効率的な業務運営に向けた取組や長官のお考えがあればお願いします。
A : 冒頭でも申し上げましたけれども、近年の災害の対応等を踏まえて、地域における防災対応に対して、気象台の役割が一層重要になっているということを踏まえて、昨年8月、「地域における気象防災業務のあり方」の提言を受けました。その提言の中のひとつとしてJETTの創設などがありますし、それに関連する取組も順次進めていかなければならないのではないかと思っております。
 また、気象ビジネスの支援の件ですけれども、これにつきましても、昨今の社会情勢を踏まえるならば、様々な分野における一層の生産性向上が課題となっていると理解しております。その一方で、気象の観測・予測のデータの産業の各分野における利用には、まだまだ伸びしろがあると考えておりますので、その利活用を図ることによりまして、さまざまな分野における生産性向上に寄与していくことも気象庁の役割であろうかと考えております。このため、昨年立ち上げた気象ビジネス推進コンソーシアムなどを通じまして、気象ビジネス支援に取り組んでいるところであります。
 こういった気象庁の業務の多様化ということについてご質問いただきましたけれども、これまでも、最新の科学技術を取り入れながら、社会のニーズに応えていくという観点で、業務の強化をしてまいりました。また、一方で、同じく最新の科学技術を踏まえながら、時代に即して、効率的な業務運営にも努めてきている面がございます。今後も引き続き、行政機関として、業務の強化、それから効率化の双方について適切に取り組んでいく必要があるのだろうと思っておりますので、そのような形で、不断に点検し、見直し、検討ということをやっていかなければいけないのではないかと思っております。

Q : 昨年11月から暫定の運用で始まった南海トラフに関連する情報、臨時情報ですが、4月12日から、国の方の防災対応の検討会が始まりました。モデル地域を3つ選んだ中で色々な課題も議論され始めましたが、長官のご意見があれば教えてください。
A : まず、経緯については、何度も申し上げているところで、簡潔に述べさせていただきます。昨年の9月に中央防災会議の防災対策実行会議の下で検討された報告書を踏まえて、地震の予知そのものは難しいだろうけれども、異常等の現象が観測された場合、それを何とか防災に生かしていくということをしなさいという、概ねそういう趣旨の検討がありましたことを踏まえて、11月より、取り急ぎといいますか、それまでのノウハウを踏まえて、南海トラフ沿いの地震に関連する情報を運用するという取組を始めさせていただきました。その段階でどういった形で防災対応に繋げていけばいいかということについては、まだまだ検討途上にあったというように認識しておりまして、当面は日頃からの防災に関する対応の確認をしていただきたいということでありました。内閣府に中心となっていただいて、全国のモデル事業が3か所ですか、高知、静岡、そして中部圏で進められていると承知しています。そのような中で、今回、中央防災会議の防災対策実行会議の下で新たなワーキンググループが設立されて、今ご紹介のありました、4月12日に第1回の会合が開催されたということでございます。必ず地震が起こるということではなくて、相対的に発生の可能性が高まっているという状況の中で、どういう防災対応が可能かというような検討をしていただけることになっておりますので、私どもの情報がどのように使われていくかということをよく注視といいますか、オブザーバとしてしっかり見させていただきながら、またその中で私どもができることがあればさらに進めていく必要があると思っています。検討が進むことを期待しているという状況です。

Q : 大分の中津で起きた山崩れが発生から1週間ということで、行方がわかっていない方もいらっしゃるのですが、今回、大雨とか地震が頻発するところでない所で山崩れということだったんですが、これについての長官の受け止めと、そういった中で、気象庁で何ができるかというのは難しいところもあると思いますが、先程少しありましたJETTの活用も含めて、具体的な見解がありましたらよろしいでしょうか。
A : 11日、早朝4時前後だったと思いますけれども、突然の大規模な土砂崩れといいますか、崩壊があったということでありまして、この点につきましても、まだ見つかっていない方もいらっしゃるということですので、1日も早く捜索により見つかることをお祈り申し上げている状況です。この原因につきましては、今、国土交通省の研究機関等を始めとして調査をされていると承知しており、そこについては、注意深く見ていく必要があると思っております。
 それから、雨も降っていない、地震も起こっていないという状況の中での事象ですので、なかなか私どもとして何かをできるというようなことではない、ということでございます。他方で、土砂法の枠組の中で警戒区域等の設定という話がございますので、気象庁の所管ではないのですけれども、そういった設定の流れの中で、危ない地域に住んでいるんだということを自覚していただくことが重要なのではないかと思います。気象庁として何ができるかというと、地域に寄り添うという、「地域における気象防災業務のあり方」を踏まえた対応でいくならば、まずは駆けつけて何ができるかを考えていくということが重要で、今回もその流れの中で、2名が朝晩交代で、現場で気象の解説をすることで、協力をさせていただいているという状況です。それ以上何ができるかはなかなか難しい部分があります。

Q : 現在、大分地方気象台から職員の方が、2名、中津市に入られているという認識でいいですか。
A : 福岡管区気象台管内ですので、大分プラス福岡からなど、様々な組合せがあると思いますけれども、対応している状況です。

Q : 常時、2名の職員の方が、市役所にいらっしゃるんですか。
A : 現在は市役所です。現地の対策本部でも活動しておりました。

Q : 気象情報の予測というのは、二次災害を防ぐために、というような認識でいいですか。
A : おっしゃるとおりです。円滑なオペレーションを支援するためです。

Q : 財務省の方でセクハラ事案が大いに話題になっていますが、気象庁として幹部の方に限らず、職場内でのハラスメント対策がどのような状況なのか、それから今後どうしていくかということも含めて教えてください。
A : ハラスメントには、パワハラ、セクハラ等があるかと思いますけれども、対策として本庁、あるいは各管区で研修を行うといったこともしておりますので、そういった取組を引き続きしっかりと進めてまいりたいと思います。

(以上)

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