長官記者会見要旨(平成30年1月18日)

会見日時等

平成30年1月18日(木) 14時00分~14時17分
於:気象庁会見室


発言要旨

  本年もどうぞよろしくお願いいたします。今年最初の会見ということでございますので、まず私の方から今年、平成30年の重点的な取組を簡単に紹介させていただきたいと思います。

  雨の降り方が局地化・集中化・激甚化しているなどの気象の変化を、近年「新たなステージ」と捉えまして、これに対応した防災気象情報の提供・改善、地域防災力の支援強化を進めてきたところであります。この取組でございますけれども、「社会に大きな影響を与える現象については危険度や切迫度をわかりやすく積極的に伝える」ということ、それから「防災意識社会を担う一員として関係機関と一体となって地域の気象防災に一層貢献していく」、こういった方向性に沿った取組でございます。本年もこの方向に沿いまして、観測・予測や防災気象情報の提供とその改良・技術向上、さらには地域における気象防災業務の実行・深化、気候変動の適応支援に取り組んでまいりたいと考えております。

  発生が懸念されます首都直下や南海トラフの地震などの地震・津波災害、そして火山噴火等への対応といたしましては、災害リスクの理解促進などを通じました地域防災力の支援、そして監視評価能力の継続的な向上による、地震・津波や火山に関する情報の的確な提供に取り組んでまいりたいと考えております。

  産業分野におきましては、気象データの効果的で幅広い利用を通じて生産性の向上を目指すという、国土交通省の生産性革命プロジェクトを進めております。今年も気象ビジネス推進コンソーシアムによりますフォーラム・セミナーの開催や、産業分野のニーズに応える気象データの提供などを通じまして、気象データの利活用の促進を拡大・深化させてまいりたいと考えております。

  また、仕事の進め方という観点でございますけれども、報道の皆様を含めまして、関係者の方との対話を通じ、ニーズの理解、連携協働の促進、そして気象業務への幅広いご理解を賜ることで、気象業務の一層の発展に努めてまいりたいと考えております。以上が本年の取組の方向性でございます。

  次に、本日発表いたしました、新しい国際協力の取組についてご紹介いたします。本日より、気象衛星ひまわりに関する国際協力を強化する取組といたしましてひまわりリクエスト(HimawariRequest)を開始いたしました。これは、気象衛星ひまわりの2.5分毎の機動観測を、外国気象機関からのリクエストに基づきました領域で行うものであります。世界で初めての取り組みとなります。諸外国におきまして、ひまわりの観測データが台風あるいは火山噴火等による災害リスク軽減に、より一層活用されると期待をしております。

  続きまして、近く開催予定のイベントを改めていくつか紹介をさせていただきたいと思います。 1月27日(土)でございますけれども、気候講演会「高校生と考える、地球温暖化とわたしたちの未来」を開催いたします。この場では、高校生が、気候、経済、国際社会の専門家、そして気象キャスターと、地球温暖化と未来の生活について議論していただき、発表していただくという内容になっております。

  次に2月2日、3日の2日間でございますが、体験型防災イベント「大地震へのソナエ」を開催いたします。今年のテーマは長周期地震動でございまして、長周期地震動の正しい理解、事前の備え、地震発生時の避難行動などの知識を高める機会として実施してまいりたいと思っております。大人も子どもも楽しめるプログラムを多数準備しておりますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

  それから次に気象ビジネス推進コンソーシアム関連の行事でございます。明日でございますが、1月19日にアイデアコンテストを開催することとしております。また2月13日に気象ビジネスフォーラムを開催する予定としております。内容は既に報道発表したとおりでございます。2月のフォーラムでございますけれども、講演とシンポジウム、コンソーシアム会員によるブース展示を行います。シンポジウムでは、気象データを事業で積極的に利用している企業やIoT分野等の学識経験者に、産業分野における気象データの利活用の可能性、ビジネスの将来展望を議論いただきたいと思っております。

  以上が各イベントのご紹介でございます。どうか関心を持っていただければ幸いです。

  最後に、雪に関する留意事項についてお話しをさせていただきます。先週でございますが、9日(火)から13日(土)頃にかけまして非常に強い冬型の気圧配置が続きまして、北日本から西日本の日本海側を中心に大雪となりました。来週でございますけれども、強い寒気の南下が予想されております。日本海側で降雪量が再び多くなると見込んでおります。普段から雪の降りやすい地域でも、降雪・積雪量が多くなりますと、交通機関の混乱や交通事故、除雪時の事故などが起こりやすくなります。気象台が発表する大雪や暴風雪の警報等もご活用いただき、引き続き、雪・風雪への万全の対策・対応をとっていただきたいとお願い申し上げたいと思います。

  私からは以上です。

主な質疑応答

Q :「南海トラフ地震に関連する情報」の運用開始から2か月あまりが経ちました。現時点での課題認識とそれをどう改善していくか、お考えがありましたらお願いします。
A :昨年の11月1日より気象庁では「南海トラフ地震に関連する情報」の運用を開始いたしました。この南海トラフ地震ですが、発生すれば極めて甚大な被害が広範囲に及ぶことが想定されております。気象庁としましては、緊急地震速報、津波警報等の情報とともに、「南海トラフ地震に関連する情報」を適時的確に発表し、被害の軽減に貢献してまいりたいと考えております。この南海トラフ地震につきまして、南海トラフ自体が非常に広範囲であること、おおむね100年から150年間隔で繰り返して発生している、ということはわかっておりますけれども、発生の時期は大変ばらつきがあります。また、発生のパターンにも多様性があることが知られております。このような発生の多様性等を踏まえると、大変難しい解析・評価をしなければならず、解析・評価技術の更なる向上が必要であると考えております。平成30年度には、南海トラフ全域の地殻変動をモニタリングするための調査を行い、観測体制の検討を進めてまいりたいと考えております。また、現在、内閣府を中心として、静岡県、中部経済圏、高知県をモデル地区といたしまして進められております防災対応の検討にも積極的に参画しまして、この「南海トラフ地震に関連する情報」がより効果的に活用されるように、引き続き努めてまいりたいと考えております。これらを通じまして、南海トラフ地震による災害の軽減が図れるよう着実にしっかりと進めてまいりたい。 以上でございます。

Q :先ほど、報道発表のあった外国気象機関からのリクエストに応じた、ひまわりリクエストなんですけども、国交を結んでいない北朝鮮だったり台湾だったりそういった国や地域も区別なく、すべての機関に協力要請があれば応えると、そういった対応をされるんでしょうか。
A :ひまわりリクエストにつきましては、世界気象機関(WMO)と連携しながら進めてまいりますので、国際協力の一環として適切に対応して参りたいと思っております。なお、機動観測をする場所以外に、日本付近も2.5分間隔でずっと観測していまして、今ありました国・地域については、この2.5分ごとの日本域観測の中で見ることができる、というように理解しております。

Q :機動観測の場所は可変となっていますが、ひまわり8号9号から見える範囲の中であれば、どこにでも動かせるということですか。
A :そのとおりです。1000km×1000kmの範囲を、2.5分ごとで機動観測を行うということで、見える範囲については、事前に登録をしていただいて、台風観測などの日本でどうしてもやらなきゃいけないことがなければ、その領域の観測をして、データを提供するということです。

Q :1月5日の緊急地震速報のふたつの地震をひとつにという案件がありましたが、長官から一言と、技術部会に向けてその後解析を進めるとおっしゃっていましたけれども、その後の状況がわかれば教えていただけますか。
A :今お話ありましたように、1月5日の11時2分に茨城県沖の地震、それから富山県西部の地震、ほぼ同時といいますか、3秒ほど違うタイミングで起こったものをひとつの地震として処理して、関東地方を中心に緊急地震速報を発表し、予測が過大であった、こういう状況でございます。緊急地震速報については、極めて短時間で揺れを予測するということで、技術的な限界もある中で、私どもが提供していることころです。社会的に非常に影響の大きな情報でありますので、予測精度の向上が何より重要でありまして、それに引き続き努めていかなければならないと思っております。 そういう観点で、1月10日に有識者による会議「緊急地震速報評価・改善検討会」を開催した際に、今回の事案についてご説明を申し上げ、改善方策等についてもご意見をいただきました。そして、今ご質問がありましたように、具体的にソフトウェアといいますか、プログラムをどうしていけばいいのかということにつきましては、非常に技術的なこともございますので、2月中旬、13日だったかと思いますけれども、開催する予定のこの「緊急地震速報評価・改善検討会」のもとにございます技術部会において、さらに具体的な予測手法の改善方策について検討するということにしております。緊急地震速報において、ふたつの地震を区別できるようにするといったような工夫を一昨年の12月からやってきている状況ではありますけども、例えばそれをふたつのまま処理をする方がいいのか、ひとつとして処理をするのがいいのか、様々なケースを想定してソフトウェアのロジックを検討しなければならないと思っております。その辺りを技術部会に向けてさらに深めた上で検討いただき、可能なものについては、年度内にプログラム改修をする中で反映していきたいと思っておりますし、引き続きよく確認し、チェックをしながら進めてまいりたい。精度向上は、先ほど申し上げましたけれども、非常に重要ですので、しっかりと着実に努めてまいりたいと考えております。

Q : 1月5日にあった時に、私もこの場で担当は違うと分かりながら質問したことなんですが、今回緊急地震速報が流れたわけなんですが、それで実際は震度5が来なかった。それに関する訂正のようなものを気象庁として流す考えはあるのかどうかということでした。1月10日に開かれた有識者の会議でも同じ質問が出ていたんですが、気象庁からはそれに対する答えは正確には何も出なかったと私も傍聴して見ていたんですが。要はどういうことかと言いますと、今回はなかったんですが、新幹線を止めるような自体になったとします。ところが気象庁から解除が出ない限り新幹線が動かないままずっと待ってしまうということになりますので、そういう時は気象庁だけでなく内閣府等も当然絡んでくると思うのですが、そのあたりはどのようにお考えなのかを、今の段階で結構ですので、お願いします。
A :1月5日の共同取材や、それから1月10日の際にも、いまご指摘のありました問題認識がなされたということは承知しております。これまで私どもが緊急地震速報を発表するにあたって、その後に例えば、震度速報が出ます、地震情報が出ますということでフォローアップができるというように思っていたというのが一つと、それから実際に落雷などを原因とする誤報であれば、取り消しを出すという仕組みがある中で、今回ご質問のありましたように、様々な関係者がご利用いただいている中で、社会活動を速やかに再開するといいますか、そういうために何か必要なのではないかというのが、課題認識として今回提示されたというわけであります。今の仕組みの中でどこまでできるか、何が足らないのか、関係する方ともよく話しながら、対話を進めながらどういったことができるかは考えていかなければならないというのが、今の私自身の認識です。


(以上)

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