長官記者会見要旨(平成29年10月19日)

会見日時等

平成29年10月19日(木) 14時00分~14時27分
於:気象庁会見室


発言要旨

  私から何点かお話させて頂きたいと思います。

  まず最初は、霧島山新燃岳についてです。霧島山の新燃岳では、9月下旬から火山性地震が増加しまして、10月11日には噴火が発生いたしました。その後は皆様ご案内のとおり、噴火の発生・継続、あるいは停止を繰り返すなどしておりまして、現在も活発な火山活動が継続している状況です。この間、気象庁では、火山活動の状況に応じまして火口周辺警報、あるいは臨時の火山の状況に関する解説情報、降灰予報等を発表して、警戒・注意を呼びかけてまいりました。また、現地に職員を派遣し、関係機関の協力を得ましてヘリコプターによる調査、また降灰状況の調査等を実施いたしまして、その調査結果を公表してきております。さらに、関係する自治体に対しましては、火山活動の状況につきまして丁寧に解説を行って、防災対応をしていただくよう、努めているところであります。現時点では、新燃岳火口からおおむね3kmの範囲で大きな噴石や火砕流への警戒を呼び掛けております。また、噴火時の風下側での小さな噴石や火山灰、火山ガスへの注意を呼び掛けているところであります。本日、13時より鹿児島市におきまして、火山噴火予知連絡会拡大幹事会を開催しております。霧島山(新燃岳)の火山活動について検討しておりまして、本日16時半から現地で活動の最新の見解等を公表するということにしております。引き続き、火山の専門家、地元自治体との連携を密にいたしまして、火山活動を注意深く観測・監視し、正確かつ迅速で、分かりやすい情報に努めてまいりたいと考えております。

  次に台風第21号についてです。既に皆様報道していただいているとおりでございますけれども、台風第21号は、現在、大型で強い勢力ということで、フィリピンの東の海上に位置し、今後発達しながら北上して、今週末から来週始めにかけまして日本に接近するということになっております。沖縄・奄美地方から西日本・東日本・北日本の広い範囲で大雨・暴風・高波・高潮となるおそれがございます。また、前線の影響で雨が続く西日本や東日本では、台風が接近する前から大雨となるおそれもあります。この時期は全国的に潮位の高い大潮の時期です。また、東海地方を中心に黒潮の大蛇行による潮位上昇もみられているところです。気象庁では台風情報を、地元気象台からは警報等の情報を適時に発表してまいります。これら最新の情報、警報等をご活用いただき、市町村から避難勧告等が発令された際には避難などの対応をとっていただくなど、災害から自らの身を守る行動をとっていただくようお願いしたいと思いますし、報道機関の皆様にもそのようにご協力をお願いいたします。

  次に、11月1日より運用を始めます「南海トラフ地震に関連する情報」についてお話しをいたします。先月9月26日に、中央防災会議防災対策実行会議が開催されまして、その席で「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ」の検討結果が報告されました。この報告、そして防災対策実行会議を受けまして、気象庁では新たな防災対応が定められるまでの当面の間、南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合に、「南海トラフ地震に関連する情報」を発表するということで、11月1日から運用を開始することといたしました。南海トラフの全域を対象といたしまして、大規模な地震発生の可能性を評価するにあたりまして、有識者から助言をいただくために「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を開催することとしております。気象庁では、南海トラフ沿いの地震に関する観測データの分析・評価結果、これを防災対応に活かすことができるよう、異常な現象を観測した場合等には速やかに評価を行いまして、適時的確な情報提供に努めてまいりたいと考えております。

  最後に、気象ビジネス推進コンソーシアムの活動についてです。本年3月に立ち上がりましたこのコンソーシアムの活動のひとつといたしまして、気象情報の種類・入手方法や利活用の事例等につきまして説明する入門的なセミナーを、気象庁の講堂にてこれまで3回開催いたしまして、多数の皆様に参加いただきました。この取組を全国に展開することといたしておりまして、今後、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡、沖縄の各都市におきましてセミナーを開催することといたします。直近では、大阪で10月31日、沖縄で11月9日を予定し、気象庁HPでもお知らせしているとおりでありますし、また他の都市についても開催日などをお知らせしていく予定としております。引き続き、このコンソーシアムの活動等を通じまして、産業分野における気象データの利活用による生産性向上の取組を進めてまいります。

  私からは以上です。

主な質疑応答

Q :新燃岳の活動に関しまして、活動が活発化してきていると、今日も拡大幹事会が開催されていますけれども、長官の活発化に対する個人的な受け止めと、今後の対応がありましたら教えてください。
A :今までの新燃岳の経過等につきましては既に先ほど申し上げたとおりでございまして、気象庁として火口周辺警報等を発表いたしまして、警戒・注意を呼びかけているところです。今後の火山活動の見通しをお答えすることは大変難しいことですけれども、火山活動が活発にこれまで経過をしてきている状況ですので、当面は警戒が必要であろうということでしっかりと監視をして取り組んでいく必要があると思っております。本日火山噴火予知連絡会の拡大幹事会がございますので、この見解もしっかりと踏まえながら取り組んでまいりたいと思っております。直近では2011年に準プリニー式噴火、あるいは爆発的な噴石を飛ばすような噴火もございましたので、2011年の経験等もよく踏まえながら、適切な対応に努めてまいりたいと、このように思っています。

Q :台風に関してなんですけど、先ほどご発言ありましたけれども、改めて、かなりの勢力を保ったまま来そうだということと、前線を伴って長期間雨になるということで、かなり警戒した方がいいんじゃないかなと思っていて、地元の気象台が警報を出したりするので、自治体も対応してほしいということでしたけれども、ホットラインの活用もこれまでありましたけれども、そういったことも含めてですね、改めてどういった対応をとっていきたい等ありますか。
A :台風に伴う災害への対応につきましては、台風の進路について前広に早め早めの情報提供をさせていただいているところでございますし、今回であれば、前線も本州の南岸にあり、また北上して停滞するというようなことも予想されておりますから、早め早めに情報提供して、対応に努めていただきたいと思っております。
  いつも申し上げますけれども、明日が週末で金曜日でございます。それから土日になりますので、明日の段階で関係する地域に対しては、しっかりと気象台の方から地元で説明会を行って、改めて注意喚起をして臨みたいと思っております。今回、日曜日が衆議院選挙ということもございますので、そういった観点でも、今後どうなるかということをしっかりと提供して、あるいはまた皆様にもしっかりと報道していただくということが大変重要ではないかと今回は思っております。
  それから、もちろんそれぞれ台風が近づいてきて、あるいは近づく前からも大雨が降るということがございますので、時々刻々と変化する状況に応じて適切に警報、危険度分布をはじめとして関連する情報をしっかりと提供し、それぞれの自治体に対しては、地元の気象台がしっかりと解説をするといったことも、組織を挙げた対応として、今の時点で全国の気象台にしっかりと徹底してまいりたいというように考えております。

Q :国交省との中小河川の防災対策の連携についてお伺いしたいのですが、九州北部豪雨の教訓を受けてですね、いま国土交通省の中で簡易型の水位計を設置する話が進められています。ただ、九州北部豪雨であったり昨年の岩手県小本川の例を見ても、果たして水位計の実測を待っていて、十分に避難に間に合うのかどうかというところが非常に厳しいのではないかという指摘も出ています。その部分について長官のご認識をお伺いしたいのと、気象庁の洪水警報の危険度マップと国交省の監視カメラであったり、あるいは今用意している簡易型水位計であったり、そことの連携を含めた防災対策を考えられているのかどうか、いま内閣府防災であったり国交省の中との調整がもし進められているようであれば、そこについても教えてください。
A :まず、現在、国土交通省で簡易型の水位計の普及を目指す検討あるいは検討会が行われていることはもちろん承知しております。この水位計のデータを避難勧告等の避難に効果的に利用するということは非常に重要なことで、このための検討会だというように認識しております。水位計、あるいは水位計に限らずカメラなど、様々な手段を用いて、いわゆる河川の洪水に対応するということについては、今ご指摘のありました岩手県の災害、あるいは今年の九州北部豪雨の際にも様々に指摘をされ、検討されているところだと思います。
  本年1月に内閣府が改訂を行いました「避難勧告等に関するガイドライン」、この中にはいわゆる洪水予報河川や水位周知河川以外のその他の河川について、避難勧告等の判断基準の設定例を示していただいておりまして、その際は水位計やカメラ画像等の現地情報と合わせて、今後の水位上昇の見込みを判断するための情報として、流域雨量指数の予測値、すなわち私どもが言うところの洪水警報の危険度分布が挙げられているところでありまして、これらを総合的に合わせて活用していくことが非常に重要なのではないかと思います。
  もちろん私どもとしましては、洪水警報の危険度分布を活用するために、それぞれ地域を示してよく利用していただくということを引き続き周知をしながらやっていく必要があると思っておりますけれども、水位計の実測値等も合わせながら、しっかりと洪水対策に効果を発揮するように、国土交通省はじめ関係省庁とよく連携をしてしっかりとやっていきたいと思っております。

Q :先ほど冒頭にご発言があった南海トラフのワーキングについてご意見を聞かせていただきたいのですが、11月1日から新しい情報を発表されると思いますが、これまでの東海地域と比べてかなり範囲が広くなると思います。影響等も非常に大きいのかなと思うのですが、改めてどんな情報発信をしていくか、気象庁としての意気込みというかそういったことをお聞かせいただけないでしょうか。
A :南海トラフ地震に関連する情報の提供を11月1日から始めるということを申し上げました。これまでの地震の情報体系は、地震が発生した後で緊急地震速報、津波警報等を発表して、即座の対応をお願いするという取組をしっかりやってきたわけでございますけれども、それと同時に東海地震に限定した形で、地震の発生するおそれがあるかどうか評価して情報提供してきたわけでございます。
  今ご質問がありましたように地震の発生する可能性の高まりといったようなことを、南海トラフ全域について情報提供するという仕組みが立ち上がるわけでございます。もちろん今回11月1日からの取組は、新しい防災対策を中央防災会議、あるいは内閣府等で南海トラフ全域どう取り組んでいくかという検討が引き続きなされていく中の当面の間として、11月1日から今でも役に立てるようなことをしっかりやっていこうというようなことでございます。11月1日からは、私どもがこれまで東海地域を対象に取り組んできた知見を南海トラフ全域で、もちろん西の方になりますとひずみ計が設置されてない等ございますけれども、南海トラフの周辺にある観測データをよく見ながら、そのデータに異常があった場合には、まずはしっかりと異常があることを皆様にお知らせしていく。そのお知らせをした結果として、今後どのような防災対応をしていただけるかというのはまだまだ検討の余地はございますけれども、日頃の地震への対策を改めて再確認していただく等のために、適時的確にその異常の状況を提供していく。そして評価検討会を開催して、その高まりの状況について分かる範囲ではありますけども、情報提供することで、地震発生の可能性の高まり具合について、高まりの程度をどの程度言うか大変難しい話ではありますけれども、その状況をお知らせすることで、防災対応をしっかりとっていただくための支援となるように努めていきたい。また、今後の防災対応が検討されますので、そういったことと合わせながら、私どもの提供する情報の内容充実についても11月1日で終わるわけではなくて、11月1日をスタートとして進化させていく必要があるのではないかと考えております。

Q :もう一点確認ですが、新しく評価検討会が設けられるということで、一方で東海地震に関するいわゆる判定会の二つの組織、判定会は残り、一方で南海トラフ全域で評価検討会を作るということだと思いますが、判定会と新しい組織の両者があるということがちょっと分かりにくいんではないかという指摘もあると思いますけども、その点について長官のお考えを聞かせていただけますでしょうか。
A :南海トラフに関する評価検討を行うということで、その検討の内容というんでしょうか、手法といいますか、アプローチについてはこれまで判定会を開催しながら、分析をやってきたデータやその手法は同様でございますので、ある意味、判定会の機能を持って、検討の対象とする範囲を広げているというような運営が実質的なんだろうと思います。そういう意味で、南海トラフの評価検討会の中で、東海地域も合わせてやるということからすれば、引き続き判定会というものは、法体系上は残っているわけでございますので、その中で一体となって行うということで、効果的かつ効率的な検討ができるものというように思っております。

Q :これまでの予知情報のような確度の高いものが出せないという中で、また世界的に見ても何か現象が起こる前の段階でこういった情報を出すというのはかなりめずらしいかと思うのですが、実際に発表されるようになると、可能性がどのくらいのものか例えば普段よりも何倍高いですとか、どれくらいの可能性で起こり得るかという詳細の情報が出せない中で、相対的に起こる可能性が高まっているという情報を発表すると、やはりパニックになるといったような可能性も考えられるのかなと思うのですが、特にこれまでのような予知情報ですと、企業であったり自治体であったり個人というのは、事前の計画に基づいて何をすれば良いかが定まっていたかと思うのですが、当面の間であれば、特に事前の計画が定まっていないということになりますので、そういった中でどう対応していいか分からずパニックになるのか、もしくは誰も何も対策をしないということになってしまうのか、そういったことに対して、気象庁長官として国民であったり事業者であったり、どういうことを伝えたいとお考えか教えてください。
A :今回、11月1日から南海トラフに関連する情報の運用を開始するにあたりまして、私どもがどんな内容の情報を発表するかということについては、内閣府さんと連携をとりながら、それぞれの地元でご説明をさせていただいているところでございます。
  今パニックというお話がございました。やはりある時に突然発表するというよりは、なんでもそうだと思うんですけれども、日頃から南海トラフに関連する情報が出るんだと、そういう意味では定期の情報を出させていただきますけども、なんかあったときにはこんな情報が出ていくんだということをよく周知し理解をしていただくことが大変重要なんだと思います。
  一方、先ほども申し上げましたとおり具体的に南海トラフ全域に対してどういう防災対応をとるのがいいかというのは並行して検討が進んでいくわけでございますので、こういった検討を踏まえながら、私どもとしてはよくリンクした形でどういった情報の内容であればいいかということを進化させていくといいますか、ずっと考え続けていくといいますか、ということをやっていく必要があると思っております。
  事前の計画がどうこうという話は、今も申し上げましたように、内閣府等が進めるわけでございますので、そこで必要となるような場合には私どもがどんな情報を出すかというようなことを一緒になって検討しなければいけないと思いますし、そういうことについては引き続き努力をしていきたいというように思っております。
  いずれにしましても、単純にこの情報を出すとこんな対応ですというような、今までのような枠組みではなくて、もうちょっと複雑な対応かもしれない、そこはよく分からないんですけれども。大変難しいことを、我々はやらなければならないということで、非常にチャレンジングな取組なんだろうと思っております。日頃から地震に対する備え、どんな情報が出るのか、どんなことが起こり得るのかということを住民の皆様、地域の関係する団体の皆様とよく共有しながら、全体として防災対応力を上げていく。そういう中で私どもが情報を出すことで、少しでもお役にたてるような、日頃の地震に対する対応を再確認していただくような機会になるというのが当面の設定でございますので、そういったことがより効果的に機能するように努めていきたいと思っております。

(以上)

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