長官記者会見要旨(平成28年12月15日)

会見日時等

平成28年12月15日(木) 14時00分~14時23分
於:気象庁会見室


発言要旨

 それでは12月の定例会見ということで、私から何点か最初にお話させていただきます。

 まず最初に、緊急地震速報の改善について、お話しします。
 平成23年東北地方太平洋沖地震や平成28年熊本地震など、非常に活発な地震活動によりまして同時に複数の地震が発生した際には、これらの地震を適切に区別・識別できずに、震度を過大に予測する、こういう事例がございました。これを改善するための手法の開発・実用化を進めてきたところでございます。すでに、13日に報道発表させていただきましたように、この「同時に複数の地震が発生した場合」の緊急地震速報の技術的改善の運用を、昨日の14日から開始いたしました。これによりまして精度を向上させまして、過大な震度予測を減らすことができるようになります。
 また、あわせまして本年8月1日に最大震度7を予測しました緊急地震速報(予報)でございますけれども、この予報の誤情報に対する技術的な対処策につきましても、昨日14日に導入をしております。
 引き続き緊急地震速報の適切な発表に努めてまいりたいと、このように考えております。

 次に火山観測データの公開につきましてお話をいたします。本日報道発表いたしますように、今月の21日から気象庁が常時監視しております火山の観測データにつきまして気象庁ホームページに掲載をいたします。
 火山噴火予知連絡会の検討会に平成27年3月、日々の火山活動の監視に使用している観測データ、これを気象庁ホームページに掲載すべきとの提言をいただきました。
 阿蘇山につきましては、本年10月8日に噴火がございましたので、既に10月26日に先行的に観測データを公開しておりました。他の常時観測火山につきましても、火山観測データを気象庁ホームページに掲載すると、こういうことでございます。
 この掲載したページでは、火山性地震や噴煙の高さなど、火山活動の状況の短期的な推移、また長期的な推移を毎日更新して掲載いたします。現在の火山活動の状況を知りたい場合、あるいは発表されている噴火警報や火山活動に関する解説情報と併せて知りたい際には、今回掲載しますデータをご活用いただければというように思っております。
 また、阿蘇山の噴火警戒レベルの判定基準でございますけれども、専門家のご意見も伺いつつ、地元自治体とも連携しながら、10月8日の噴火に関する知見もあわせて精査・見直しを進めておりまして、年内には公表したい、このように考えております。
 引き続き、火山につきまして、しっかり観測・監視を行いまして、適切な情報提供に努めて参ります。

 次に、国土交通省で進めております生産性革命プロジェクトの「気象ビジネス市場の創出」に関してお話しします。
 国土交通省では、本年を「生産性革命元年」と位置づけまして、社会全体の生産性向上に繋がる施策を推進しております。国土交通省の「生産性革命プロジェクト」の一つといたしまして、先月でございますけれども「気象ビジネス市場の創出」が新たなプロジェクトとして選定をされました。
 このプロジェクトでは、産業界と気象サービスを行う側のマッチングあるいは気象データの高度利用を進める上で課題解決を行うなどの場といたしまして、「気象ビジネス推進コンソーシアム」を今年度中に立ち上げるという計画を考えております。気象庁では、利用者にとって使い勝手のよい気象情報の提供あるいは気象サービスを支援する環境整備など、新たな気象ビジネス市場の創出・活性化を促進する取組を進めてまいりたいと、このように考えております。
 この生産性革命プロジェクトにも関連しますけれども、数値予報に関するシンポジウムを年明け1月28日(土)に開催いたします。本日報道発表する予定でございます。このシンポジウムは、日々の天気予報や防災気象情報の技術基盤であります「数値予報」、これをテーマとしております。
 シンポジウムのパネルディスカッションでは、防災あるいは様々な社会活動における数値予報の利用の現状、あるいは可能性につきましてパネリストからご紹介いただきまして、数値予報の更なる利用の拡大、あるいは今後目指すべき技術開発等を討論いただきたいと思っております。
 このシンポジウムが、広く一般の皆様における、数値予報に対する理解、それから産業分野での一層の活用のきっかけになることを期待しております。

 続きまして最後でございますけれども、雪に関する留意事項についてお話しします。
 先月24日には、関東甲信地方の広い範囲で雪が降りました。平野部でも積雪となり、東京都千代田区では、11月としては昭和37年以来54年ぶりの降雪となりました。
 また、先週末から北海道でも雪による交通障害なども発生しており、さらに、明日にかけましては、西日本などこの冬一番の強い寒気の影響で、平地でも降雪が予想されているところでございます。
 普段雪の少ない、あるいは雪に対して脆弱な地域で雪が降ったり、普段から雪の降りやすい地域でも降雪量が多くなりますと、交通機関の混乱や事故などが起こりやすくなりますので、気象台が発表する大雪や暴風雪の警報等も活用いただきまして、雪・風雪への万全の対策・対応をとっていただきたいと思います。


主な質疑応答

Q 一年間を振り返りまして、熊本地震や先月、福島県沖で地震があったり、あと、台風第10号の豪雨による被害などがありましたが、一年通しての所感とあと見えてきた課題等あれば
A まず、一年を通しての所感ということでございますけれども、今、お話にありましたとおり、今年も様々な自然災害が発生した年であったと感じております。4月の熊本地震、10月の鳥取県中部の地震、11月の福島県沖の地震もございます。それから、8月には相次いで台風が上陸、あるいはその台風に伴う豪雨等で被害がございました。災害により亡くなられた方のご冥福、そして被災された方の1日も早い復旧、元通りの生活について改めてお祈りを申し上げたいと思います。また、報道関係機関の皆様には、気象庁が発表する防災情報を迅速かつ的確に伝えていただいたと思っております。誠にありがとうございました。感謝を申し上げたいと思います。
 このように気象庁では、これらの地震、台風、豪雪、豪雨などの災害への対応をとってきておりましたけれども、加えまして業務の強化、あるいは情報の改善という観点で、4月には全国4箇所に火山監視・警報センターを設置いたしまして、火山の監視、あるいは評価体制を強化して参りました。11月にはひまわり9号の打ち上げは無事、成功いたしました。さらには、交通政策審議会気象分科会の提言を受けて進めておりますところの、新たなステージに対応した防災気象情報の改善の一環といたしまして、9月には記録的短時間大雨情報の迅速化、また本日から運用を開始しております竜巻注意情報の発表区域の細分化、そして先ほど冒頭でも言いましたけれども、昨日から運用いたしております、緊急地震速報の改善など、私どもが長年研鑽をし、技術開発を進めた結果、その成果が形として現れ、そのことで、自然災害への備えや、その支援を着実に進めることができた一年であったとも考えております。さらには、先ほど、また冒頭で申し上げましたけれども、国土交通省の生産性革命プロジェクトとして、気象ビジネス市場の創出をスタートさせ、気象庁と産業界との連携を深める施策の第一歩を踏みだせたこと、このことについても、意義深い年であったのではないかというように思っております。

Q 火山のデータのことなのですけれども、御嶽山噴火のあとで予知連の検討会が提言を出したのが平成27年3月で、かなり、今日までかかってしまったのですが、それについてはどうお考えですか。
A 平成26年の9月、御嶽の噴火がございました。それを受けて、平成27年の3月に、今、ご指摘がありましたように火山噴火予知連絡会の提言をいただきました。その提言内容、多岐に渡っております。ご案内のように、観測の監視体制の強化もございますし、また、情報を伝えるという意味で、噴火速報をはじめとする情報の強化というのもございました。それから、評価体制を強化していくという意味で人員の強化も含めてありました。それから今回公開します観測データの公開ということもございます。また関連しますけれども、噴火警戒レベルの基準の見直し、公表といったような施策もございます。非常に多岐にわたる分野について提言をいただく中で、観測施設の整備の強化は大変たくさんの整備をやって参りましたので、私どもとしてはいただいた提言を確実に、決してたゆむことなく、進めてきたものと思っております。場合によっては、今、ご指摘がありましたように時間がかかったのではないかというご指摘もございますけれども、この、観測データの公開につきましても、懸命にやってきた結果として今回の12月、年内の公表を迎えられたものと思っております。毎回申し上げますけれども、当初は来年の8月に整備、運用するところの火山のシステムの更新強化に併せてということも考えておりましたけれども、とにかく早くデータを公開するということで、今回に至ったというように思っております。

Q 今の火山の観測データの件ですけども、近年の火山災害を見ますと、例えば事前の予測が難しかったり突発的に噴火するような現象もあったと思いますし、そういった意味で日頃からこういった活動を見ておくということが一つ重要なんだと思いますが、これをホームページへ公開するということで、利用される方には、どういったことを気にしながら、どういったように観測データというものを利用していただきたいですか。
A 利用者の皆様、様々な関係者がいると思います。一つは地元の防災関係機関の皆様、協議会等に入っていただいている自治体の方、あるいはそこにお住まいの住民の皆様がいらっしゃいます。特にこの皆様に関しては、日頃の防災対応という観点で定期的に見ていただくということを是非お願いしたいと思っています。それから御嶽の噴火災害を踏まえまして私どもが登山者向けホームページというのを設けましたけれども、火山周辺に行かれる登山者の皆様につきましても、登山者向けホームページの一連の流れの中で、それぞれの火山の状況がどうなっているかというのを事前に見ていただくというようなことも是非お願いしたいと思っております。
 比較的短期の推移と長い期間の推移を両方示しておりますので、この火山観測データの見方と言うんでしょうか、地震の回数が増えたとか減ったようなことで一喜一憂すると、これはこれで対応として大変難しいところもありますので、定期的にご覧いただいて、あるいは中長期的にも見ていただいて、今はこれまでの活動の範囲内であるとか、あるいは活動とちょっと違ってきているかなと感じ取れる能力と言いますかそういうことも合わせて一緒につけていく必要があるのかなと思っております。そういう観点で今回火山の観測データを公開いたしますけれども、引き続き、このデータの見方と言いますかこの辺りを共に学んでいくということ、あるいはまだ発表途中でありますけれども、噴火警戒レベルの判断基準ですね、判定基準の公表等と共に、そういうものを一緒に見ながら学習していただくと、そういうことを進めて行くことが必要なんじゃないかなというように思っております。

Q そうすると今のご意見で言うとですね、予知連の検討会の提言の中で、分かりやすくホームページの中で公表するという表現があったと思うんですが、報道発表資料に例が載っていますが、一般に見る人がなかなかその火山活動評価っていうことも、難しい側面もあるとは思うんですけども、分かりやすく伝えられているかという点において、これで十分だと考えてらっしゃるのか、長官としてのお考えはどうですか。
A 分かりやすくお伝えすることは、大変難しいことなんだと思います。火山観測データを、本当に、生のままと言いますか、地震計の記録、あるいは傾斜計の記録そのものを表示しても、分からないとおっしゃられる方が多いと思います。それはまさに私達と利用する皆様の背景とする知識の温度差と言いますか、差を無くしていく小さくしていくのが重要なんだと思いますので、是非報道関係の皆様も、もっとこうやった方がいいというようなことがあれば、そういった意見も踏まえながら、改善を出来ることはしていくのだろう、というように思っております。現在のところ、例えば地震回数とか噴煙の高さといったことを日別で表示するような、棒グラフ等で表示するようなことをしておりますけれども、これにあとどういう情報をセットすると分かりやすいのかというようなことについは尚試行錯誤しながら、あるいはご意見をいただきながらやっていく必要があるのかなあというように思います。

Q 関連ですが、先ほど、利用する人の想定で、こういう人に利用してほしいという話の中で、住民や自治体の人がさらにデータを見る力を付けていってもらいたいという話をしていたのですが、そういう力を付けていってほしいと思っているのは、主に自治体の担当者をイメージしておっしゃられたのでしょうか。
A 大きく三つ、自治体の防災担当者の皆様、まさに協議会を構成している防災機関の皆様が一つと、現にそこにお住まいの住民の皆様が二つ目、それから、その山に行かれる可能性のある登山客の皆様、こういった皆様が想定されると思います。特に防災関係機関の皆様ですと、相当見方がだんだん深まっていく可能性、日常的に勉強して意見交換もしますので、深まっていく可能性はあると思います。また住民の皆様も、うちの市の、うちの町の山だということがございますので、時々関心を持って見ていただくことも必要かなと思います。そういう意味で、火山ごとに設けている協議会の枠組みや、あるいは枠組みに拘らないで、地元の気象台等がデータの見方について共に学習する機会を設けていくのもいいのではないかと私は思います。

Q 学習する機会を気象庁として設けていくということですか。
A 例えば出前講座のようなものもございますし、協議会のメンバーで集まったときに、今このようなデータが出ているけれど、それはこういうことですよ、という解説をしたり、あるいは地元の自治体の防災関係者の方がその気象台またはセンターに、このデータはどうなのでしょうか、というような日頃からの情報交換をやっていただくことで見方が深まると思いますし、私どもも、もっとこういった情報提供の仕方があるのかな、と気付きに繋がっていくこともあるのではないかと思っています。



(以上)

このページのトップへ