長官記者会見要旨(平成28年10月20日)

会見日時等

平成28年10月20日(木) 14時00分~14時25分
於:気象庁会見室


発言要旨

 本日、私からは阿蘇山の噴火に関して、お話させていただきます。
 阿蘇山では、10月8日01時46分に中岳第一火口から、昭和55年以来36年ぶりとなる爆発的噴火が発生しました。
 この噴火によりまして、大きな噴石が火口から1.2kmの範囲に飛散するとともに、降灰が、阿蘇市を中心として熊本県を超え、大分県、愛媛県、香川県まで拡がったことを確認しております。この降灰により、農業などへ影響があったと聞いております。関係する皆様にお見舞い申し上げます。
 この爆発的噴火の直後の01時50分に噴火速報を発表いたしました。さらに01時55分には火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2から3に引き上げ、警戒が必要な範囲を火口から概ね1kmから2kmの範囲に拡大したところです。
 今後も同程度の噴火が発生する可能性があり、火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石あるいは火砕流に警戒いただきたいと考えています。風下では、火山灰だけでなく、風の影響を受けまして小さな噴石が遠方まで風に流されて降ることがあるため注意してください。また、火山ガスにも注意が必要です。
 阿蘇山の噴火警戒レベルの判定基準については、これまでも精査・検討を重ねてきておりますが、今回の噴火の検証をいたしまして、年内を目処にレベル判定基準の見直し・公表を行いたいと考えています。
 引き続き、火山の専門家や地元自治体と連携を密にいたしまして、火山活動の監視や迅速な情報提供に努めて参りたいと考えています。


主な質疑応答

Q 今長官がおっしゃったように火山の噴火ですとか、豪雨、地震、いろいろ異常気象と言いますか、全国的に起きていますが、そうした中で、我々も野菜が不作であるとか影響がある、北海道の豪雨では農業に打撃、といった報道をしたのですが、「記録的」という報道で使う言葉があるのですが、気象でも使っていますが、記録というのが記録的ではない、日常茶飯事のような感じさえしている次第ですが、こうした中、気象行政では難しい立場があるかと思うのですが、こんな中で気象行政の今後のあり方とか展望みたいなものがあれば、私感でも構いませんが、あれば聞きたいなと思います。
A 大変難しい質問だと思いますが、まず地球温暖化の影響も受けて気象の激しさ、皆さん感じておりますし、私どもも機会があるたびにそのようなことは申しております。地震火山につきましても、長期的に見ますと、もちろん活動が活発であったり低下したりする時期があると思いますが、私どもの社会活動に影響を与えるような事案が頻発することが多くなっているという印象を私自身も持っております。「記録的」という言葉についてお尋ねがあったと思いますが、気象庁では、個々の場所に関して、例えば気象ですと、それぞれの地域、あるいは5kmのメッシュ格子といった設定を置きながら、何年に一度という統計上の処理をして、例えば50年に一度の場合、記録的な大雨であるということを発表してきているわけでございます。地点地点で言えば、「記録的」というのは間違いではないと思いますが、それを例えば日本全体として見ますと、「また『記録的』という言葉が出ているのか」と、こういう印象を持たれるのも確かかなと感じるところもあります。実際に自然現象として気象が激しくなっている、激甚化とか局地化とか集中化という言葉を使いますが、激しくなっていることが傾向としてあり、例えば1時間に50mm以上の雨が降るアメダス地点がこの30年かけて1.4~1.5倍ほどに増えているということがあります。全体として「記録的」と言っていいことが増えてきているということも事実ではありますし、私どもが統計処理をしてその地点地点で発表しているのは、一方で事実なのだと思います。そういったなかで、必要な防災対策、あるいは今お話がありましたように、気象は農業を始めとして様々な分野に関係しておりますから、いわゆる気象に関するリスク管理や、逆に気象の変化を早く捉えて対応していくということが気候変動に伴ってますます重要になってきているのだろうと思います。先ほど私自身が申しましたが、全国で見たときに「記録的」というのが頻発するという状況を踏まえて、またかと思っていただかないように、表現の仕方とか、あるいは私どもが情報を提供している仕方とか、さらには、社会が気象の観測や予測のデータをより良く使っていくような工夫というのをしていく必要があるということは皆さんも感じていると思いますし、私も、気象行政という観点から、そういう視点を持って、問題意識を持って取り組んでいく必要があると思っています。

Q 先ほど、阿蘇山の話がありましたけども、レベルの判定基準の精査を行うという話がありましたが、今回の気象庁の噴火への対応を振り返られて、どのように認識されているでしょうか。
A もう皆さん、噴火の経過については、概ね私どもが8日以降発表しております阿蘇山の噴火活動に関する解説資料を逐次、3回、4回と臨時と定期を合わせて発表してきておりますので、どんな経過だったかということはご承知だというように思います。今回、全般的には一つは私どもが御嶽山の噴火災害を踏まえて、様々に提言を受けたことを一つ一つ確実にやっている中で、噴火警戒レベルの精査・見直しを全国でするという観点で、もちろん阿蘇山についてもやってきていたわけでございます。現行のものと、専門家の意見を聞きながら見直しをしっかりやってきている、そういう状況の中で、今回の10月8日を、あるいは前日7日21時以降の噴火もございましたけれども、迎えたわけでございます。これまで、現行の噴火警戒レベルの基準、それからほぼ専門家の意見を聞いてほぼ固まりつつある噴火警戒レベルの判定基準、その両方の基準から見た場合、いずれもレベル2のままで3に引き上げる状況ではないということであったことから、現実には1時46分の噴火の後にレベルの引き上げを行ったということが、皆さんよくご存じの事実でございます。
 噴火警戒レベルの話に後でもう一度戻りますけれども、御嶽山の噴火災害を踏まえた対応として噴火速報という、新しく噴火を即座に伝えるということをやり始めたわけですけども、概ねこれについては4分後ということでありますので、想定していた時間で発表できたものと思っております。また、これが発表できた大きなポイントは、やはりカメラを設置しておりまして、天候が良くなくてどれぐらい火山が噴火しているのかわかりづらい状態だったんですけども、近くに置いたカメラが非常に有効に機能したことから、想定しているよりも大きいということを判断するのが早かったんだろうと思います。これが1時50分で、噴火速報を発表することができたのではないかと思います。また、私ども、地元の専門家の意見を聞きながら噴火警戒レベルの検討をはじめ、活動の評価をしてきているわけでございますけれども、地震活動が若干増えているという状態なども含めまして、気象庁の参与とか地元の火山の専門家の意見も聞きながら、この7日の日を迎え、精査してこれで行けるのではないかと思っていた警戒レベルの判断基準でレベル上げに該当しないと見ていたところ、レベルをあげるような噴火が起こったということは事実として重く受け止めなければならないと思っております。そういった点を踏まえて、さらに精査中の警戒レベルの判断基準については、もう一度よく精査して、年内には新しい警戒レベルの判断基準を公表していくというように考えている次第です。

Q 今、レベルのお話があって、御嶽の後の検討会の時にも言われていたことですけども、今回も明らかになったのは結局事前に噴火を確実につかむというのは非常に難しいことが今回もわかったと思うんですけど、それで御嶽以降の教訓としてわからない中でどう火山に関する情報を出していくのか、ということで臨時の解説情報というものができたりしたわけですけども、今回臨時の解説資料が噴火後に出ましたけども、なかなか情報は9時の噴火の後4時間ぐらいたってようやく解説資料が出たら、すぐ噴火をしてしまったという事態がありました。一般にデータが公開されていない現状では、火山活動を知る術というのは、気象庁が出してくる情報でしか市民とか僕らも受け取る術が無くてですね、そうなってくると、わからないという前提にたつのであればもう少し積極的に火山活動に関する情報を出すであるとか、すごくしっかりとしたフォーマットで作っていただいているんですけれども、あれを例えば気象の業務のように、単文で出すとか、色んな工夫の仕方があるんじゃないかと思うんですけども、先ほど長官も社会のあり方に応じて検討すべきだとお話してましたけども、そのあたりはどのようにお感じになっているでしょうか。
A 今のご質問の、まず最初にあった火山に関する解説情報の話でございますが、御嶽山の噴火災害を踏まえて、状況の変化があった場合に、レベル上げには至らなかったとしても、解説情報を臨時で出すということで注意喚起をしていく、ということが提言の中に含まれておりました。この点につきまして、阿蘇におきましても、この運用としては考えておりました。それはまさにレベルが、それまでは2だったわけですけども、2から3にあげねばならないな、というような検討に入った際には臨時で出そうと、このように決めていたわけでございまして、結果として、解説情報では無くて解説資料という形で出たということがありますので、今回のレベルの判断基準の見直しと合わせて、どういうタイミング、どういうぐらいの状態になると臨時の解説情報を出すかということも合わせて検討するんだろうと思っております。その時に、迅速性を重視して、内容をどうすればいいかみたいな話も今あったようにも思うんですけども、そのあたりも検討する中でどういったことがいいかというのは少し考えていかなければならないんだろうと思います。2番目は、データをもっとオープンにすべきだということだと理解いたしましたけれども、確か6月の会見でもご意見をいただきまして、データを防災関係者、あるいは登山者を含む一般の方にも見ていただくようなことを進めていくべきだという指摘は、先ほどから申し上げている御嶽山の噴火災害を踏まえた検討会の中でも言われておりましたので、その準備を進めております。6月に申し上げましたとおり、できることから、ということなので、年内に全国の火山について、できる範囲ではありますけれども、データを公表して地震回数とか微動の回数とかといったことになると思うんですけども、公表して見ていただくという環境をまず作り上げていかなければならないというように思っております。それはそれで、年内ということで、データ公開を目標にして更にその後充実をしていこうと考えておりますけども、阿蘇山につきましては、今回こういう形でレベル上げをしましたので、来週にでもどの程度詳しいものをあげられるかどうかわかりませんけども、やれることからやるという意味では、来週から阿蘇山については一般の方に、自動で色んなものを作るというのはなかなか難しいので、やれることからやっていきたいと思っております。

Q まさに今、来週からやれることをということだったんですが阿蘇山については、具体的に目途がたって言えるのはどのようなところか。
A 毎日の地震回数の分布等といったようなところだと思います。ただ、そうやってデータを出すことで、かえって安心させることもあり、これ非常に難しい話なんだと思います、正直言いまして。例えば今回、阿蘇につきましては、9月の下旬から10月に入りまして地震回数が若干増えておりますけれどもその増えている範囲というのは今まで噴火していないか、噴火しても規模の大きくない噴火の際の地震回数程度でありますから、それだけを見ていただくことでかえって安心と思われることもありえ、難しいところがあると思います。そのあたりを慎重に考えながら、出来る事からやっていくというようになるんだろうと思います。地震回数だとか、担当者、何かありますか。
(地震火山部火山課担当:例えば今でもガスの情報は提供していますが、同じ場所で見られるようにします。)


Q ひまわり9号が11月1日に打ち上げということで、長官の言葉で、どのように予報が変わってくるのかを教えていただけますか。
A 先月の9月2日に11月1日に打ち上げることを報道発表させていただきました。ひまわり8号の運用が昨年の7月7日に開始をいたしまして、私ども気象関係者に限らず、報道のみなさんのご協力もあって、ひまわり8号、性能のいいところ、非常に微細なところまで見られるとか、高頻度で観測できるところを周知していただきました。昨年の7月7日に運用を開始して、ビジュアルで、可視あるいは赤外で見ると同時に、私ども、数値予報に活用し、予報の精度が上がったということは、今年の3月に報道発表させていただいた記憶があります。そういう意味で、ひまわりは、我が国の気象の監視・予測にとって、予測力・監視力を飛躍的に高めた、またさらに一層活用の可能性のある衛星だと思います。ひまわり8号は全世界的には次世代衛星ということで、アメリカ・欧州等も準備をしているところであり、日本が一番に上げ運用を開始しておりますので、そういったひまわりの有する能力・知見を全世界に提供していく使命もあるのだろうというように思っています。その中でひまわりが具体的に画像をとれている範囲はアジア太平洋地域の30カ国を上回る地域であると思いますけれども、ひまわりを使うことで、アジア太平洋地域において具体的に気象機関等が利用し、それぞれの国で提供されることで、その国の安全・安心にも大いに貢献できていると思っております。ひまわり9号は、11月1日に打ち上げ予定になっていますけれども、8号と同等機能でありますので、それを確実に打ち上げて運用させることで、平成41年までの静止気象衛星による確実なサービスを出来るようにしてまいりたいと思っております。


(以上)

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