長官記者会見要旨(平成28年6月28日)

会見日時等

平成28年6月28日(火) 14時00分~14時21分
於:気象庁会見室


発言要旨

 まず私から2点、お話をしたいと思います。
 第一点目は、まさに今、鹿児島で非常に激しい雨が降っておりますけれど、この梅雨期の留意事項についてでございます。
 先週、6月19、20日以降、梅雨前線に向かって南から暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、九州北部地方をはじめ西日本の多くの地点で、6月1ヶ月間の平年の降水量を上回る大雨となり、熊本県等では人的被害も発生しました。亡くなられた方のご冥福をお祈りすると共に、被災された方に心よりお見舞い申し上げます。
 梅雨前線は昨日から再び西日本から東日本付近に停滞し、西日本から東日本にかけての広い範囲で雨となっております。冒頭申し上げましたように、現在は鹿児島県で非常に激しい雨が降っております。宮崎県の南部といった所で非常に激しい雨が降っておりまして、昨日からの降り始めからは300ミリを超えるような状態になっておりますので、引き続き注意・警戒をしていただきたいと思っております。この梅雨前線ですけれども、当分今後も、梅雨前線に伴う雨が続きますので、最新の気象情報に留意していただきたいと思います。特に、災害が発生するような気象状況では、気象庁が時間を追って段階的に発表する気象情報・注意報・警報等、活用いただいて、早め早めの防災対応を心がけていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 また、平成28年熊本地震による揺れが大きかった地域では、大雨・洪水の警報・注意報や、土砂災害警戒情報の発表基準を引き下げた運用を継続しています。これらの地域では、これらの情報に十分注意していただきたいと思います。

 関連しまして、台風につきまして少しお話しをしたいと思います。今年は台風第一号がまだ発生しておりません。本日時点で既に、1998年、1973年に次いで、台風の発生が遅い年となっております。この台風の予報につきましては、今月15日に報道発表いたしましたように、近年の技術の改良による台風進路予報の精度向上を踏まえまして、今後発生する台風につきましては進路、予報円ですけれども、それから暴風警戒域をより絞り込んで予報するようにいたしております。台風接近時の防災対応には一層活用いただけると考えております。

 次に、熱中症予防をはじめとする夏の高温への留意についてでございます。この5月は全国的に気温が高い状態がありまして、6月に入りましても北海道を除き、平年を上回る気温で経過してきております。これから暑さの厳しい季節を迎えることでありまして、例えば、今後一週間は沖縄・奄美では最高気温が平年より高い、他の地域では平年並みか、平年より高い予想となっております。また、沖縄から九州、四国にかけましては、異常天候早期警戒情報が出ている通り、今週末からの旬の期間、高温の状態になることを予想しています。さらには、7月から9月にかけての3か月予報では、東日本から沖縄・奄美にかけまして気温が高く、北日本でも平年並みか高いと予想しているところでございまして、この夏は、高温に対する十分な注意が必要だと考えております。気象庁では、最高気温が概ね30度以上となる場合には天気概況の中で注意を呼びかけておりますし、さらに、最高気温が概ね35度以上、場所によってはそれより低い気温を設定しておりますけれども、その35度を超えると予想される場合には、熱中症の危険が特に高くなっておりますので、高温注意情報を発表することとしております。外出時、屋外や家庭等、それぞれの居場所や年齢、あるいは体調等に応じまして、熱中症の予防に活用していただければと思っております。私の方からは以上です。



主な質疑応答

Q 7月14日で熊本地震から3ヶ月となりますけれども、あらためて被災地でまだ有感地震続いているということもありますが、注意喚起、それと、先ほどおっしゃっておられましたけれども地盤の悪い状況が続いている中で、今後どういった点に注意しながら情報を提供していくかということ、2点教えて下さい。
A 熊本地震に関する注意・警戒、呼びかけについては、最近ですと6月9日に政府の地震調査委員会で評価が公表されておりまして、1ヶ月の間は、熊本地方や阿蘇地方では最大震度5強程度の余震の発生に十分注意が必要とされております。本日(6月28日)の朝9時の段階まで(一連の活動が始まった4月中旬から)2ヶ月以上経っておりますけれども、震度1以上の地震を1812回観測しております。なお、昨日もございましたけども、時折、震度3の地震を観測しており、この政府の見解に沿って余震に対する注意が必要だと思っております。雨ももちろん、先週末から降っておりますので、復旧活動を行う場合には、地震活動、降雨の状況に十分注意頂いて、安全を十分に確認して頂いて行動して頂きたいというふうに思っております。

Q 本日、河野太郎防災担当大臣が大震法の前提となっている東海地震の予知の可能性だったり、法律に基づく強化地域の枠組みのあり方を検討するためのワーキンググループを設置したということを発表されたんですけども、これまで気象庁で30年以上毎月判定会を招集する等して、警戒に当たられてきたと思いますが、今回抜本的な見直しに向けた動きが出始めているということに対する所見と、これまで実際警戒にあたられてきた気象庁の立場から現行の枠組みに何か課題等を感じおられているところがあれば教えて頂けますでしょうか。
A 中央防災会議において、南海トラフ沿いの大規模地震に関するワーキンググループに設けられて、検討が行われるということは承知しております。検討内容の詳細については、内閣府が事務局でございますので、そちらにご確認頂きたいと思っておりますけれども、現在の大震法に基づきまして、今お話がありましたように、直前予知の可能性があるとして私どもは、地震防災対策強化地域に指定されている東海地域において想定される東海地震を、その前兆を捉えて情報を出すべく24時間体制で地震活動や地殻活動を注意深く監視し、判定会の委員にも集まって頂いて検討を続けているところでございます。行政機関という立場から言えば、現在の大震法を踏まえて最大限努力していくというのが、私ども気象庁の基本的な立場であろうかと思っております。今後、今お話がありましたように、中央防災会議において、南海トラフ全体を見る中で、地震の予測等に関する最新の科学的知見を踏まえて、この地域における地震観測や地震の評価に基づいた防災対策、防災対応のあり方等が検討されるものと思っております。気象庁としては、検討結果を踏まえて適切に対応していく必要があるというように思っております。その中には、例えば政府委員として検討にも参画するわけでございますので、今後検討される中で、必要な知見等を提供していきたいというように思っております。現時点において、具体的な検討に入っているわけではございませんので、私自身、特にコメントするということはありません。

Q 火山データの公開について聞かせてください。今月14日の噴火予知連絡会の後の記者会見で、藤井先生や石原先生の方からも地震回数や微動等のデータを早急に公開すべきという風なお話があったかと思います。その時は、火山課長もできるところから進めていきたいという主旨のお話をされていたと思うんですけども、その後の取り組みの進ちょく状況はいかがでしょうか。また目途も含めて。
A  今、お話がありましたように、火山噴火予知連絡会の中の火山情報の提供に関する最終報告で、火山活動の監視に活用しているデータを、一般の人が見て活動状況がわかるように解説を加える等工夫した情報とした上で、アクセスしやすい形で気象庁ホームページに掲載する、との提言を頂いたところでございまして、そのための公開の準備・検討を進めているところでございます。当初は、私どもが火山の監視・処理を行うシステムの更新を来年の8月に予定しておりますので、それらの中で実現をするというのが一番妥当ではないかというように考えておりますけども、一方で、やはり対応として急ぐ必要があるではないかということでございますので、それまでの間に何かできないかを検討させて頂きました。例えば、地震回数のグラフ等、観測データについて一般の方が理解しやすいように加工して、現在の計算機のリソースの中で提供可能なものは、前倒しして気象庁ホームページ等で提供していくということを考えていきたいと思っております。その際には用語集、あるいはよくある質問等の解説も付して、少しずつ改善していくことにはなると思いますけれども、そういったわかりやすい情報として公開していきたいというように思っております。今のところ、年内には何か形が出るように公表させて頂ければというところでございます。

Q 提供可能なものから公開していくということなんですけども、例えば地震回数のグラフとおっしゃったかと思うんですが、そういう方法みたいなところである程度進んできているところがあるんでしょうか。数字として出すものではなくてグラフとして出すとか、そういったところで考えていらっしゃるんでしょうか。
A やはりわかりやすいということになるので、火山解説情報のような中で言葉だけよりも一目見てわかりやすいような図にするという工夫もありますので、そういったものは可能な限りやっていきたいと思っていますし、また年内に何とか公開したいと思っていますけども、その後も皆さんの、報道機関の方もそうですし、地元の火山防災協議会のメンバーの方の意見も聞きながらよりよいものに順次していきたいと思っております。

Q まだグラフで出すとか生の数字を出すというところが決まっているものではないのでしょうか。
A グラフで出すのはもちろん出します。一番分かりやすいのは皆さんがよくご存知の地震回数グラフ、微動のグラフは微動が出ないとなかなかグラフにならないので、地震回数グラフは非常に分かりやすい例だと思います。

Q 目処が年内というところなのですが、これはなぜそこまで時間が掛かってしまうのでしょうか。
A  例えば、聞かれるかもしれないので先に言うのですが、蔵王山ですと、地震活動が活発になったことから、防災支援資料として地元の自治体にメールとかあるいはFAXでお知らせしていました。それをもう少し分かりやすい形で提供できないのか、との要望にこたえて、昨年の4月末から地元の気象台のHPに地震回数やグラフを掲載しているところでございますので、火山活動の状況に応じて、場合によってはそういうこともやる必要があればやっていかなければいけないと思っています。いずれにしても、全国の火山に対して、一律と言いますか、ある程度均質な情報提供という観点で言えば様々な準備を含めると年内くらいは掛かるのではなかろうかと思っています。

Q それは全国の火山に対して品質を保った情報を出す上でそのような時間が掛かるということでしょうか。
A はい。だから活動が活発になったときに、何か特別な対応をすることを否定するものではない、ということはご理解いただければと思います。

Q 活動が活発になったときに、地元の自治体や火山防災協議会と情報を共有されるということとはまた話は別なのかな、と思っていまして、それはそれで必要だと思うのですが、それを否定するものではないのですが、地震の回数や微動の回数といったデータを誰もが見られるようにしておく、それを見て登山者が登山についての判断をされるとか、そういったことが必要だと思いますし、そういったことをしていくことがホームページでの公開ではないでしょうか。
A 誤解がないように申し上げますと、蔵王山で言いますと、きっかけが地元への提供をFAXやメールで行っていたことを、要望もあるということも踏まえて、ホームページで自治体向けだけではなくて、今お話があったようにこともございますので、そういった必要性も踏まえて必要なときはなんとかならないかと思っています。

Q 最後に、一つ例を挙げますと、磐梯山で今月10日に火山性地震が53回ということがありまして、気象庁からその情報が外に出たのが、10日に発生して1週間後の17日の週間火山概況だったわけです。やはり50回というのは一時的な活動だったと私もその後聞いてはいるのですが、噴火警戒レベルを、今は1ですが、それを2に上げるための一つの目安、もちろん総合的に判断することだとは思いますが、一つの目安としてあるのが50回、レベル2に上げる基準がですが、そういった情報、地震が起きていたという情報が外に出たのが1週間後だったというところでは、それだけ情報が外に出て行くのがそれだけ掛かってしまうのは少し問題があるのではないかと思いますし、それが年内とおっしゃいましたが、そういった状態が今後もずっと続いてしまうと、気象庁から情報が速やかに出ないと思ってしまうのですがそのあたりは。
A 今ご指摘があった件については、この件も含めてですが、火山に限らないのですが、情報を提供していく、パブリックにしていく観点で、一つ一つが勉強であり、課題を踏まえて対応していく必要があると考えていますので、今いただいたご意見については、火山の監視、情報を提供していくということで参考にさせていただきたいと思います。

Q 先ほど幹事社からの質疑にもありましたが、中央防災会議の南海トラフのワーキンググループが設置ということで、関連してお考えの確認をしたいのですが、現状において、東海地震の直前予知の可能性についてはどのように認識をされているか、伺いたいと思います。
A 1978年に大震法ができて以来、その後の知識・知見を踏まえて、東海地域に発生する東海地震を予知するための様々な工夫をしてまいりました。その中で現在は前兆すべりをいかに捉えるかということに大きなポイントがあるのだろうと思っています。前兆すべりがどの程度の確度で起こりうるか、あるいは検出しうるかということは様々な考え方があると思いますが、私どもは、それがどの程度のものがあるか明確に言っていただける方もいるわけではない中ではありますが、その前兆すべりをしっかりと捉えて、速やかに必要な情報を提供していくことが任務だと思っていますので、そこに懸命に取り組むのが今の考え方です。

Q 3年ほど前の平成25年には予測可能性の調査部会があって、ここで確度の高い予測は困難だという少し厳しい見解が出ているのですが、こういったことを踏まえてご見解としてはどうでしょうか。
A 予測・予知を全く否定されているとは思っておりませんし、今の法の下でやるべきことを一生懸命やるということなのだと思います。

Q 先ほどおっしゃったように、今回のワーキンググループには気象庁からも政府委員として参加されるということですが、議論へのご期待を改めてお聞かせください。
A まだ具体的に検討が始まっているわけではないので、今の時点で特に何か具体的に申し上げることはないと考えています。


(以上)

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