長官記者会見要旨(平成27年10月15日)

会見日時等

平成27年10月15日(木) 14時00分~14時30分
於:気象庁会見室


発言要旨

 台風第23号についてお話しいたします。
 先週木曜日(10/8)、超大型の台風第23号から変わった低気圧が日本の東海上を北上し、北日本を中心に広い範囲で大荒れの天気となりました。特に北海道では非常に強い風が吹き、暴風や高波、高潮などによる被害が報告されております。お亡くなりになられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、被害に遭われた方々に、心からお見舞い申し上げます。気象庁では、この台風の接近に際し、台風情報などにより、台風が温帯低気圧に変わった後も警戒が必要な旨を繰り返しお伝えし、地元気象台でも、関係機関への説明会を開催するなど丁寧な解説に努めたところです。報道機関の皆様におかれましては、台風から温帯低気圧に変わった後も、繰り返し警戒を呼びかけていただいたことに感謝申し上げたいと思います。

 次に火山についてです。
 今年度に入り、5月には口永良部島、6月には浅間山や箱根山(大涌谷)、9月には阿蘇山の噴火が発生しました。気象庁では、これらの火山を含め、現在も14火山に噴火警報を発表し、警戒を呼びかけているところです。気象庁や地元自治体が発表している最新の情報を入手し、それぞれの火山の状況の把握に努めていただきたいと思います。

 以上です。


主な質疑応答

Q 前回の会見でもお話しいただいた内容かと思いますが、改めてお伺いしたいと思います。先月10日、台風第18号から変化した温帯低気圧などによる関東と東北での豪雨被害が発生してから1か月が経過しましたが、このとき栃木・茨城両県で発令した大雨特別警報について、発令に至る経緯や活用についての事後調査、聞き取り調査を行うとのことでしたが、その結果が出ていれば、概要を教えていただきたいと思います。
A 先月も申し上げましたが、特別警報を発表したかどうかに限らず、警報を発表した場合などには、一連の情報発表について利活用の状況や改善の要望を把握し、今後の改善の一助とする目的で、聞き取り調査を行っております。先月の栃木県、茨城県、宮城県に大雨特別警報を発表した豪雨につきましても、現在、調査を鋭意進めているところであり、そのような結果を踏まえつつ、今後の改善に繋げていければと考えております。災害の直後ですと、なかなかこちらも調査に入れませんので、今まさに始めているところでございます。

Q この件について追加で質問したいのですが、自治体の対応について、茨城県常総市の対応について、先月の会見での長官のご発言で「気象庁から自治体へのいわゆるホットラインは2度行われており、警報の発表及び自治体の支援という点では、適切に実施できた」というお話があったかと思いますが、あくまで自治体側での問題なのでお答えしにくい部分もあるかと思いますが、伝達後の情報の活用の仕方について、現在検証しているとのことですが、常総市がいわゆる避難勧告を決壊した地域に出さなかったのですが、その点について、「鬼怒川の水があふれそうになっているという通報がなかった」という理由で、避難指示を出さなかったという状況があるということなのですが、こういったケースは他の自治体でもあり得ると思われますが、一般論として、最終的な避難指示を出すタイミングについて、職員の目視や住民からの通報をもとに判断することの是非について長官のお考えをお聞かせ下さい。
A なかなか答えづらいご質問ですが、まず住民の避難行動に関しましては、自治体の果たす役割は重要であると認識しております。そのため、気象庁では、現在、注意報・警報の発表はもとより、特に警戒が必要な市町村には電話連絡を行って危機感を伝えるなど自治体を支援する取り組みを積極的に進めているところです。気象庁としては、時間を追って段階的に発表していく防災気象情報などを有効に活用していただければと考えております。

Q 来年度概算要求で優先課題として掲げている「火山の監視態勢強化」について質問したいと思います。今年7月に成立した改正活火山法では、常時監視を開始する3火山を加えた計50火山で、火山防災協議会の立ち上げと避難計画の策定を義務付けするということですが、ただ、各種報道で明らかになっているところもありますが、今年3月の段階で、常時観測47火山すべてで火山防災協議会が設置されていますが、「ハザードマップ」は10火山で未策定で、さらに32火山では全ての周辺自治体で具体的な避難計画が作成されていない状態だったことが報道されております。やはり最終的に、警報伝達の態勢を整えても、自治体の的確な判断がなければ人命保護には繋げられないのではないかと思いますが、先ほどの話と重なる部分もあるかもしれませんが、最終的に自治体に期待する役割について長官のお考えをお聞かせ下さい。
A 繰り返しになってしまいますが、防災対策全般についても、自治体の果たす役割は重要であります。そういった認識のもと、自治体の防災の判断を支援するための情報の提供を適切に行っていきたいと考えています。さらに、火山については検討会の報告書、気象でいうと、さきの気象分科会での提言がございまして、このような提言に基づき、自治体の支援について一層進めていきたいと考えております。

Q 10月に入りまして、上半期が終了したということで、上半期を終えての振り返りと、下半期に向けての方針やお考えがあればお聞かせ下さい。
A 今年前半を振り返ってみますと、火山と気象のそれぞれで激しい現象がございました。
 火山で言いますと、昨年の御嶽山の噴火から1年が経過しましたが、その後も、箱根山大涌谷や、桜島、阿蘇山をはじめ多数の火山で活発な火山活動が見られました。中でも、5月29日に、口永良部島で火砕流を伴う爆発的噴火が発生して、噴火警戒レベルを一番上の段階である「5」に引き上げるという状況になりました。このような中で、御嶽山の噴火を受けてではありますが、火山噴火予知連絡会の下に置かれた検討会が3月に最終報告をまとめていただきまして、それにもとづいて、8月4日から「噴火速報」の運用を開始しましたし、それ以外の火山情報の改善を進めてきました。観測強化につきましては、現在、火口付近への観測施設の新設等、火山観測点の増強を進めているところです。
 気象関係では、先ほどもありましたが、9月9日から11日にかけての「平成27年9月関東・東北豪雨」がありまして、このときは台風第18号から変わった低気圧などの影響で記録的な豪雨となり、堤防が決壊するなどの甚大な災害が発生しました。この現象に関しては、先ほども出ましたが、気象状況を解説する資料の提供や台風説明会の実施、さらに、特に警戒が必要な市町村には電話連絡を行って危機感を直接伝えるといったことを着実に行いましたので、この点については、適時・的確な支援ができたのではないかと考えております。
 これからですが、まだ南の方に台風がございますが、台風シーズンや出水期も終わりに近づいている状況ですが、気を緩めることなく取り組んで参りたいと思います。
 地震、津波に関しては、いつどこで起こるか分からないところですが、昨年11月に震度6弱を観測しました長野県北部の地震が記憶に新しいところでありますし、さらには先月17日にチリ中部沖の地震で日本の広い範囲で津波が観測されました。気象庁では、今後とも引き続き、地震・津波・火山の観測・監視をしっかりと行い、適時・的確な情報提供を行って参りたいと思います。
 また、火山に関しては、先ほども申しましたとおり、火山観測点の増強整備を鋭意行っておりますが、確実に実施して参りたいと思います。
 気象についても繰り返しになりますが、昨年の広島市の豪雨等を踏まえて、本年7月に交通政策審議会気象分科会により、新たなステージに対応した防災気象情報と観測・予測技術のあり方に関する提言をいただきました。気象庁では、この提言を踏まえて、防災気象情報の改善について可能なものから早期に実現できるよう所要の準備を進めるとともに、観測・予測技術の向上についても全力で取り組んで参りたいと思います。

Q 火山についてお伺いしたいと思いますが、口永良部島や箱根山など噴火警戒レベルが上がっている山について、今後、噴火警戒レベルや警報を下げる判断はどのような検討をされるのでしょうか。
A 噴火警戒レベルについては、地元とも合意をいただいた一定の基準を設けて、それにもとづいて上げ下げを行っているところですが、どちらも難しいのですが、特に下げる方につきましては、基本的には上げる前の状況に戻ったときということが原則なのですが、再び活発にならないかどうか、という判断がなかなか難しいということもあり、これまでもこの場の機会に申し上げたように、決定打がなかなかない場合が多いので、時間を掛けて、月単位くらいで状況の変化を見ながら監視していくという状況が続いております。この活動状況は、実際にはいずれの火山も若干の低下傾向が見られるかと思いますが、そのようなところは非常に慎重に検討していく必要があると考えていまして、時間を掛けて、月単位で見ていくだけではなく、多くの専門家から多角的な検討をいただくことも非常に重要だと考えています。そのような認識のもとに、来週21日に火山噴火予知連絡会が開催されますので、この場で、口永良部島、あるいは箱根山についても議論をしていただくこととしております。

Q その議論を踏まえた上で気象庁としても判断していく、という形でしょうか。
A 基本的には、議論にもとづいて気象庁がレベルの上げ下げの判断を行うのですが、下げる判断に足る材料が出てくれば、ということになりますので、今のところはその議論の成果を待ちたいと思います。

Q 今の噴火警戒レベルに関係して、お伺いします。5月の口永良部島の警戒レベルが「5」に上がったことについて、噴火から半年が経ち、いろいろな火山学者の研究が進んでいる状況です。その中で、ある火山学者の方は5月29日に噴火して気象庁がレベルを上げたけれども、その6日前に上げられたと主張している人がいます。彼は、気象庁の対応はおかしかったのではないかと指摘しています。なぜかと言いますと、既に3月の時点で、例えば現象として火映が見られたり、火山ガスの濃度が高くなったりしており、1年くらいのスパンで見ておかしいということを観測していたということで、6日前の地震で、もう上げると判断ができて、それを福岡管区気象台に「今すぐレベルを上げなさい」と連絡したと聞いています。それに対して管区気象台は、まだ判断できないとして上げなかったが、6日後に噴火が起こって上げました。これはいろいろ議論があると思いますが、気象庁としても看過することができない場面だと思います。現場に張り付いている研究者と、遠くでデータだけ見ている気象庁側で、対応に相違があった、意識の差があったということは、気象庁としても考察するに値する場面だったのではないかと思いますが、これに対して気象庁としては、その判断について議論する場を設けたりする考えはないのでしょうか。
A 結果を見て、6日後に噴火したではないかということであれば、まさにそういった議論があるかもしれませんが、地震が起こった時点で、確実に数日後に噴火するということはなかなか言い切れなかったのではないかというのが1点と、もう一つは、現場と遠方で、というお話がありましたが、3月から気象庁職員は口永良部島に駐在しており、現地で観測を行っておりましたので、その指摘は当たらないのではないかと思います。

Q その上で、気象庁の判断と、現場で駐在されている研究者、気象庁側と研究者で見識がなぜ違うのか、どうして差異が出るのか、ということについてどうお考えでしょうか。
A なかなか答えが出る話ではないと思います。6日前の段階で、その地震活動をどう評価するかというのは非常に難しい話で、地震だけで判断できるものでもありませんし、総合的に判断していく必要があるものだと思います。火山活動について、地震があったか、なかったかだけで判断できるわけではない、ということも火山学者の中の認識も共通だと思います。大きめの地震が起こったときに、それを決定打とするのが良いのか、それだけに頼ってはいけないのか、というのは、まだ議論があるものだと思います。ご指摘されている火山学者のご意見が火山学会の全てであるということではないと思います。

Q 今の話に関連して、先ほど、行政側とは、どういう現象が起きたらレベルを上げるという合意がなされているという話がありました。それでは、研究者側とは、どういう現象が起きたらレベルを上げるという共通の基準は今の段階ではないという認識でしょうか。
A ないというわけではなく、地元というのは行政という意味ではなく、基本的には、地元の火山防災協議会に諮って、こちらが提案してご意見をいただいて決めていく、という話です。その中には当然、火山学者も入っていますので、その意味で火山学者のご意見も取り入れているという面があります。もう一つは、例えば学会と気象庁で議論をして、各火山の基準を決めていく場があるかというと、そういった全体を議論する場はないです。ただ、噴火警戒レベルという考えを導入するにあたっては、気象庁も当然、参加して検討した検討会の中で、火山学者の意見も多く聞きながらこの考え方を取り入れたところですので、基本のところで考え方として火山学者の意見も取り入れ、火山ごとでは、火山防災協議会で、そこの火山を研究対象とされている研究者のご意見も踏まえつつ、基準を決めて、それを運用している、というのが現状だと思います。

Q 今の口永良部島の場合ですと、基準では、2回大きな地震があったらレベルを上げるという形になっていたかと思いますが、それを1回しかないから上げないという判断だったかと思いますが、その他に総合的判断ということもあって、その火山に一番詳しい人の意見を聞くべきではないかと。この前の箱根山のときには気象庁の判断についてお尋ねしたら、箱根山に一番詳しい方がそうおっしゃっているということであったので、やはり、その火山に一番詳しい専門家の意見に耳を傾けるべきではないかと思いますが。どうも上げるほうも下げるほうも硬直化しているのではないかという感じがしますがいかがでしょうか。
A 硬直化と捉えるかどうかですが、基本的には、地元も含めた、実際に影響を受ける方、住民などと共通の認識の上で運用をしなければいけないというのが一番だと思います。どうしても総合的判断が入ってくるのは事実ですが、今はなるべく、言い方を変えると不透明と言われる基準はなるべく明文化して透明化していこうという作業を進めておりますので、基本はそういうところだと思います。基準がある中で、どう2回のうち1回だったから、というところをあえて、まだ1回だけれども、と踏み込むかどうかというのは、その現場にいる人、気象庁の人も含めてですが、専門家も含めた議論の末に最終的には決まっていくものだと思います。地元の先生のご意見をこちらが全然聞かないということはなくて、基本的には議論をして、共通の認識を持ち、地元の協議会のコアメンバーだけでも共通の認識を持って、レベルの上げ下げを行っていきたいというのが、基本的な姿勢です。

Q 火山学会で学者が皆さんのいる前でそういった不満を漏らすということは地元の連携がうまくいっていないのではないかと推察したのですが、そのようなことはないのでしょうか。
A 非常に厳しいご意見を常々いただいておりますので、今回に限らずご指導いただいておりますし、普段から、地方気象台に多くの火山担当者がいますし、口永良部島では現地にも駐在させていますので、気象台職員と先生方との意思疎通というのは非常によくできている火山ではないかと思います。その延長上でご意見を他の方が聞いている場でもおっしゃったのかもしれませんが、それは、そういうことを言い合える環境が逆にあるからではないかという見方もあるのではないでしょうか。非常によくできている場所だと私は思っています。

Q 関連して、透明化をしていく作業というのは、内閣府の検討会でもそうすべきだ、という話があったかと思いますが、いつ頃までに基準を出していくお考えでしょうか。
A 今、研究所から人を併任させて行っておりますが、どのような状況と言ったらいいでしょうか。
A (地震火山部担当)現在鋭意進めておりまして、一部公開できるところからやっていきたいと考えておりますが、そもそも公開するにあたっては分かりやすくしなければいけないこともあり、基準というのは、公開されても分かりにくいということもあって、分かりやすくすることから始めているところで、鋭意取り組んでいるという状況です。
A 火山ごとに地元の協議会にまず示してご意見を伺うステップが必要だと思いますが、そういう段階ですか。
A (地震火山部担当)はい。基本原案はもちろんありますので、それを進めているという状況です。

Q 先日の台風第23号から変わった低気圧で、長官が先ほど冒頭でおっしゃられたように、地方情報や府県情報で、温帯低気圧化後も警戒が必要だということを強く伝えたとのことで、まさにそのとおりだと思いましたが、やはり台風の看板を下ろすというイメージのインパクトが大きい、これまでも検討されているかと思いますが、大きいし、テレビであれば、台風情報が出なくなることによって暴風警戒域や強風警戒域の円が描けなくなったりすることもあるので、気象庁で台風から温帯低気圧に変わった後も、情報で呼び掛ける以外に図や見た目も含めて情報の出し方の工夫の検討はされたりしていないのでしょうか。昔から言われてきたことだとは思いますがいかがでしょうか。
A 台風という看板が下りたとたんに、皆さんの防災の意識が下がるのが非常に我々としても困って、台風と言える間はなるべく台風と少し長めでも言い続けようという気持ちは当然あるのですが、もう一つは、国際的な基準があって台風でなくなったのに台風と言い続けることは信用問題に関わるという点と、今おっしゃったように、防災の注意警戒を呼び掛ける上で不都合があるというご意見との間で、いろいろ考えているところです。基本的には今回の気象分科会の提言で、なるべく分かりやすい情報提供という方針がありますので、台風でなくなった後の表示の仕方については、提言の中ではなかったわけですが、警戒を呼び掛ける範囲と期間について、なんらか分かりやすく表示できるように、それは台風に限らず、大雨や風も含めて、暴風や大雨などと切り分けたときの警戒すべき状況はどうであるかということを、なるべく分かりやすくしていきたいという、分解した形になりますが、そういうものが、今後、今の問題提起も含めて改善できればと思っています。


(以上)

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