長官記者会見要旨(平成27年5月21日)

会見日時等

平成27年5月21日(木) 14時00分~14時30分
於:気象庁会見室


発言要旨

 本日はまず、今週18日から火山情報の見直しを行いましたのでそのことについて説明をしたいと思います。
昨年9月27日に発生した御嶽山の噴火災害を踏まえ、火山噴火予知連絡会に設置した「火山情報の提供に関する検討会」の本年3月26日に取りまとめられた最終報告を受けて、気象庁では、今週18日から火山情報について、二点、見直しを行いました。
 一つ目は、臨時に「火山の状況に関する解説情報」を発表する際には、火山活動のリスクの高まりが伝わるように、「臨時」の発表であることがわかりやすく伝わるよう発表することとしました。
 二つ目は、噴火警戒レベル1及び噴火予報におけるキーワード「平常」の表現を、活火山であることを適切に理解して頂けるように、「活火山であることに留意」と改めました。

 次に、箱根山大涌谷付近の火山活動についてです。
 箱根山の大涌谷周辺につきましては、5月6日午前6時に、箱根山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1から2に引き上げました。蒸気が勢いよく噴出している状況が続いており、10日に箱根町湯本で震度2を観測する地震が発生するなど地震活動も活発な状況が続いています。また、傾斜計や体積ひずみ計により地殻変動が観測されており、火山活動は活発な状態で経過しています。気象庁では、大涌谷に遠望カメラ、空振計を増設するなど監視を強化しています。なお、警戒が必要な範囲が大涌谷周辺に限られることを、気象庁が発表する火口周辺警報や解説情報の中でお伝えしてきており、報道機関の皆様におかれましても、これまでも警戒が必要な範囲について丁寧に対応いただいているところであります。引き続きご協力をお願いいたします。気象庁では、今後も火山活動をしっかり監視し、火山防災協議会と密な連携を維持し、わかりやすい情報の提供に努めてまいります。

 次に気象関係です。
 今週、沖縄と奄美が梅雨入りしましたが、これから6月にかけては全国的に梅雨に入るシーズンで、本格的な出水期を迎えます。気象庁といたしましては、時間をおって段階的に発表される気象情報、注意報、警報等を活用した、早め早めの防災対応をとっていただけるよう、周知・広報を強化してまいりたいと考えております。報道機関の皆様におかれましてもご協力をお願いいたします。
 また、今年も既に各地で夏日、真夏日となるところが出てきており、熱中症への備えが求められる時期になってきました。高温注意情報は、熱中症対策の一環として、環境省等の関係省庁との連携のもと平成23年から運用してきており、今年も5月12日から、最高気温が概ね35℃を超えると予想される場合に発表することとしております。また、今年からは、高温注意情報の発表に至らない状況であっても、最高気温が概ね30℃以上となる場合には、天気概況の中で注意を呼びかけることとしております。なお、気象庁のホームページに熱中症に関するポータルサイトを設けておりますので、熱中症対策に活用していただければと考えております。

 次に、東北地方太平洋沖地震の余震ですが、地震発生から4年が経過しておりますが、現在でも、余震域の沿岸に近い領域では、大地震が発生した以前の状況に比べて活発な地震活動が続いております。先週13日にも、宮城県沖の地震で震度5強を観測しました。今後も、規模の大きな余震により強い揺れ、さらには津波を伴うことがありますので、引き続き注意を宜しくお願いいたします。

 最後に、「気象業務はいま2015」の刊行についてです。
 「気象業務はいま」は、気象庁の一年の動きをご紹介するため、毎年6月1日の気象記念日にあわせて刊行しています。詳細は後ほど担当からご説明いたします。昨年の災害を踏まえ、今回は特集を二つ組みました。一つ目は「集中豪雨の実態と最新監視技術の動向」であり、昨年の「平成26年8月豪雨」の気象状況やその発生要因の解説、集中豪雨をもたらす積乱雲の監視に関する研究などを紹介しております。二つ目は「火山観測と火山防災の強化」であり、昨年発生した御嶽山の噴火の概要と気象庁の対応、火山噴火予知連絡会の評価・報告などをとりまとめていますのでご活用いただければと思います。

 以上です。


主な質疑応答

Q 箱根山の噴火警戒レベルが2に上がって約2週間経ちましたが、今後の見通しと注意すべき点について教えてください。
A 先ほども申しましたとおり、地震活動も増減を繰り返しながら続いています。傾斜計、体積ひずみ計、あと国土地理院の行っているGPSの観測を見ても、まだ変動が続いている状況ですので、まだ先は見通せない状況です。ただ、色々な観測データを総合しますと、警戒を要する範囲が大涌谷周辺の300mくらいの範囲で、隆起等の変化もその狭い範囲に集中していますので、当面はその付近で発生する可能性のある小噴火に注意していただければと思います。箱根山と言いますと芦ノ湖を含む大きな範囲、カルデラでありますが、実際に今注意を要するのは大涌谷周辺の、今のところはごく狭い範囲ですので、その辺を注意しながら注意深く見ていただければと思います。

Q 箱根ですが、今噴火警報レベルが2で、だいたい大涌谷周辺300mとのことですが、かなり観光地であることもあって、700mを超えるとかなり人が多いエリアということで、すごく近い場所というのが特徴的だと思うのですが、この点について長官はどのようにお考えでしょうか。
A 火山によって居住地や人間活動が非常にごく近い火山、そうでない火山がありまして、そういう意味で警戒レベルの考え方も、居住地への影響などを考慮して設定しているものです。したがって、今のところは狭い範囲ですが、今後の活動を注意してみながら、当面、箱根火山防災協議会とも十分連絡を取りながら今後の推移を見ていきたいと思います。したがって、例えば警戒レベル3、居住地の近くに影響するかどうかの判断にしても、火山ごとに大きく異なりますので、箱根山の場合には他の火山に比べると、もう少し小規模な変化でもレベル3を考えなければいけないということで、レベル3の設定はそういう考え方で設定しています。

Q 過去に近代観測をしている中では経験がないというところも大きな課題だと感じていて、いろいろな変化があったときにそれをどう評価するのか非常に難しい山だと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
A おっしゃるとおり非常に難しい話なのですが、極力過去の噴火履歴を、箱根山の場合は13世紀頃や明治時代にもあったと思いますが、さかのぼれるのは非常に小規模な水蒸気噴火でありますが、大規模となると3000年も昔になりますので、近代観測の参考にはある意味ではならない、過去の噴火履歴は全て、今の近代的な高感度の地震計や傾斜計のないときの噴火履歴ですので、小規模な水蒸気噴火などがあった場合にはこういうことが観測されるであろう、というある程度の類推でもって基準を定めたり見立てをしています。また、最近、噴火には至っていませんが、2001年など、地震活動や、地震活動に伴って多少地殻変動が見られたり、蒸気の噴出が強くなったり、噴火に至らなかった事例としては近代観測のデータがありますので、その両方を見ながらそれを超えるようであれば次のステップを考えるなど、間がないところをどう埋めるか、ということを専門家の皆さんと議論しながら監視しているところです。

Q 距離がすごく近いということと、一方で経験が非常に少ない山で評価が難しいとなったときに、なにかしら火山活動に変化があった場合の気象庁の対応としては、かなり安全ラインに立って対応するということになりますか。
A レベル3の基準の考え方は正にそういうところですが、非常に小規模な表面の現象でも、レベル3を検討するというような基本的な姿勢としてはその考え方で臨んでいくということです。

Q 箱根の件ですが、御嶽山の噴火を教訓として、ここまでの箱根山についての対応を自己評価していただくと、どのようになりますか。
A まず大事なところは正しく活動を理解していただいて、正しくおそれていただくことが大事です。そのために丁寧な情報提供をするという姿勢で臨んでいますので、その点は今のところはうまくいっているのではないかと思います。御嶽山があったからどうこうではありませんが、箱根山については、防災協議会の協議も含めてレベルをしっかり設定していて、その設定の基準に基づいて活動を評価してレベル2に上げて、その前後の情報提供も丁寧にやってきたので、これまでは箱根に対しては、自己評価は、担当部局がしっかりやってくれていると思います。
A (地震火山部担当)先ほどの活動履歴について補足させてください。先ほど長官からも説明があったように、明治・昭和以降、いくつか噴気や鳴動を伴うような活動はありましたが、最後の水蒸気噴火は、先ほど説明があったように12~13世紀のものが最後となっています。明治・昭和以降の噴火はありません。

Q 箱根山に関係してお尋ねします。先日、神奈川県の黒岩知事が現地を訪れました。そのときの対応策として複数挙げていましたが、そのうちの一つとして、観測機器を新たに設置すると言っていました。これについて、どこにどれだけ設置するか詳細は固まっていないようですが、これに関係して気象庁の方に何か連絡があったのか、ということと、既に気象庁も温地研も箱根山に観測点がありますが、これ以上増やして役に立つような見方ができると思うのですが、長官としてどのように理解してますでしょうか。
A 活動評価は温地研や専門家と行っていると思いますが、観測の強化については、
 (地震火山部担当:神奈川県からは具体的にはないです)具体的なアプローチはないにしても、気象庁としては先ほど申しましたように、大涌谷の状況が詳細に掴めるようにカメラを設置しました。元からあった所はある程度離れた所なので大涌谷の詳細が見えないため、必要があって設置しました。空振計も少し離れた東側にあって、より近いところでより小規模な噴出や活動でも掴めるように、より近いところで、方向も北側に、気象庁の監視としてより強化するということで設置しておりますが、それは神奈川県との調整をした上でということではありません。

Q では知事が言っている新しい観測機器を付けるというものが、必要かどうかということはそもそもどうなのですか。
A それは温地研の方とよく議論をしてからだと思います。同じところに設置しても意味がないですから、気象庁と温地研と合わせてトータルとしてより詳細に監視できるように、必要な点があれば、それは神奈川県が強化されても、気象庁が必要に応じてしてもいいと思っていますが、まだ打ち合わせもしていませんのでなんとも申し上げられません。

Q 今の段階での必要性はどうなのでしょうか。
A 今の活動については、気象庁は必要なものを設置して、地震活動についても両方のデータを合わせるとある程度状況は詳細に掴めていると思っていますが、さらにより詳細に掴めればもっと分かるものが出てくると思いますので、そこはよく議論して対応したいと思います。

Q 議論する機会を作っていくということでしょうか。
A 少なくとも今データを持ち寄って活動評価の議論を一緒にやっていますので、その中で必要性が見えてくれば協力していきたいと思います。

Q 箱根の関連ですが、御嶽山の教訓を踏まえて自己評価をされていましたが、直接、または間接的にでも、御嶽山の噴火があって色々経験も出たりして、今回の箱根の一連の対応でここが今までより改善したという点は、長官として御嶽を踏まえてここが改善したのではないかというところがありますか。
A 御嶽山の場合と箱根では、御嶽山の後にレベルを上げたところは他の火山でもありますが、決定的に違うのは、残念ながら御嶽山のときには2に上げる基準に全くいかなかった、と今でもそう思っています。箱根の場合は基準に達して上げています。それは予め決めていた基準で、それに対応してやっています。ひとつ、御嶽の教訓を踏まえるとすれば、レベル2に上げる前の情報の出し方で、もう少し強いメッセージを出せなかったか、というのが反省点としてあります。それで、検討会でも情報の出し方として定常的に出している解説情報ではなくて何かしら変化があったから臨時に出すのだ、ということを分かるように込めることで、よりこちらの思い、レベル2には上げられないまでも、少なくともいつもと違う活動が起こっているということを認識しやすいようにする、という意味で、臨時、というものをなるべく目立つようにします。もう一つは、あのときは、情報を見たが最後に「平常」というキーワードだから大丈夫かと思ったという方もいらっしゃったと聞いていますので、そこは「平常」ではなく、活火山であるということを認識していただく意味で、長いキーワードですが、「活火山であることに留意」と変えました。あと、まだ箱根山の対応で具体的に出てきているわけではないのですが、色々決めたことがあります。例えば、基準を公表します。例えば、レベルを下げるときも、下げ方も含めて、防災対応の手順を地元の防災協議会の方々としっかり共通認識を持つように火山防災対応手順を作ります。もう少し時間が必要ですが、地道に積み上げていって、こちらの判断が、なぜ上がったのか上がらなかったのか、というところが透明に理解されるように今後していきます。まだ表に出せていませんが、その作業は地道に少し時間をかけてやっていきたいと思います。

Q 今回の箱根のときは、まだ臨時と明記した解説情報の発表のタイミングの前でしたが、実質的に臨時と明記したような感じの火山課の対応や地元との連携の仕方ができていたのかなと思いますが、そのように受け取ってよいでしょうか。
A 3月26日に最終報告をいただいて、なぜ5月18日なのかというところに結局掛かってくるのですが、情報でのキーワードの入れ方を変えるには、項目を立てたり、本当の表題を直すとなると、受け手のシステムへの影響などがあるので、影響のない範囲で今何ができるか、というところで、最終的にはこちらのシステムを変えて、受け手でも受け取れるように、という最終段階になりますが、今回はその中間で、明記はするけれども、一般の方々、マスコミや自治体の方も含めて、それで影響がないことを確認した上で書き込むようにしました。箱根はその前の段階だろうというのは正にそのとおりで、さらに影響の無い範囲、本文の中で自由に打ち込む部分で、例えば「活火山であることに留意してください」とか「これは臨時の情報です」という、システム内でフォーマットで受け取り方を決めているところに影響がない範囲でできるのは本文だけでしたので、まず本文だけで箱根の対応を行い、本文の前後に項目を立てて入れるという対応が受け手の皆様が大丈夫だという確認を取った上で今度は18日にやりました。そして今度は、こちらも受け手もシステムを少しいじってもらわなければいけないのですが、それを含めてもう少し目立つようにするのが後に控えています。段階を踏んでいる中で箱根は一番最初の段階のところで対応させて頂きました。

Q 機動観測は、結構頻繁ですが。
A これは御嶽山のときの自己反省です。結果的に御嶽山のときも現地に行って何か分かったのかというと、結果的には否定的なんですけども、基本的な火山監視をする姿勢として、何か異常な現象、例えばあのときで言えば地震活動の高まりがあったら、もう少し現地の山の方々と意思疎通をするだけではなくて、自ら現地に行って噴気の状況を確認するというのが、やはり一番基本的なスタンスであることを再確認して、これは御嶽山を契機に元に戻したと言いますか、一昔前よりも機動の出し方が少なかったなという反省の元に御嶽山以降の火山については異常があれば極力現地に行って状況を確認するということをやっています。

Q 海上保安庁で、西之島の少し離れた場所で、4km×2kmの割と広範囲の変色が見つかったということですが、受け止めはいかがでしょうか。
A 詳細は把握していませんが、そのような報告は受けていまして、海上保安庁では航行警報を発表しています。
A (地震火山部担当)昨日午後8時頃に電話連絡を受けたのですが、概要としては5月20日15時頃、航空機による西之島の火山活動の観測中に薄い黄緑色の変色域が同島南西方沖約10kmの海上に確認されました。ただちに巨大噴火のおそれはないものの、航行安全に万全を期す観点から航行警報を出す予定であるという連絡を受け、実際に本日0時に航行警報が発表されました。火山活動としては情報を出すレベルではないと判断しており、気象庁火山課としては対応を取っておりません。

Q 長官の受け止めとしては。
A 今、説明があったように、西之島から10kmほど離れたところなので、今のところは西之島そのものの火山活動とは直接関連は薄いかもしれないという認識で、新たに火山情報は出さないという報告は受けています。通常の対応だと思っています。

Q 桜島についてですが、今日、4300mの噴火がありました。それを受けて気象庁でも監視体制を強化するかどうか今のところお考えどうでしょうか。
A (地震火山部担当)4000m超えが6時16分と10時20分です。これに伴って航空路火山灰情報を発表しています。噴石はさほど飛んでいません。噴石の飛散の範囲・距離を見て、つい最近では8日に3合目まで続けて飛んだときには臨時の解説情報を出していますが、今回はそこまでの対応ではないと認識しています。

Q 西之島ですが、乗っていた専門家の方は西之島におけるマグマの上昇が活発になっているのではないかと見解を示されていますが、そのお話を踏まえても特段ないですか。
A (地震火山部担当)踏まえた上で、なんらかの情報を出すまでに来ているレベルではないと判断しています。


(以上)

このページのトップへ