長官記者会見要旨(平成26年7月17日)

会見日時等

平成26年7月17日(木) 14時00分~14時30分
於:気象庁会見室


発言要旨

 本日は、先週の台風第8号の件と、緊急地震速報の改善、この2点についてお話させていだたきます。

 まず、最初に台風第8号についてです。
 「台風第8号」は、大型で非常に強い勢力で沖縄地方を通過し、その後、日本列島の沿岸に沿って東に進み、大雨や暴風、高波、高潮により、広い範囲で大きな被害をもたらしました。ここに、犠牲となられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、多くの被災者の方々にお見舞いを申し上げます。
 今回、台風第8号がおよそ910ヘクトパスカルの強度で沖縄地方に接近すると予測していましたので、宮古島地方と沖縄本島地方に波浪、暴風、高潮、大雨の特別警報を順次発表しました。これらの特別警報については、台風が北上して、特別警報の基準から外れたことから、順次、通常の警報・注意報に切り替えました。その後、強い雨雲が沖縄本島にかかり、数十年に一度の雨量になるという予測となったため、沖縄本島地方に改めて大雨の特別警報を発表しました。
 また、台風を取り巻く南寄りの湿った気流の影響で、全国的に大気の状態が不安定な状況となりまして、7月9日(水)には長野県の南木曽町で土石流が発生しました。同町付近では、非常に短時間に急激かつ局所的に猛烈な大雨となりました。長野地方気象台では、雨の状況に応じて、16時19分に大雨注意報を発表しましたが、結果として、大雨警報や土砂災害警戒情報を土石流の発生の前に発表することはできませんでした。今回のような急激かつ局所的な大雨への対応として、引き続き予測精度の向上や情報発表作業の迅速化に努めてまいります。また、警報や土砂災害警戒情報を事前に発表することが困難な現象において、自治体や住民の皆様には、気象に関する啓発活動を行うなど、地元の防災体制を支援し、早め早めの対応を心がけていただけるよう関係機関とも連携しつつ、取り組んでまいりたいと考えております。
 今回の台風第8号の接近に当たり、気象庁では7月7日(月)昼前にここ気象庁および沖縄気象台で、今後の台風の見通しや特別警報発表の見通しについて記者会見を行い、最大級の警戒を呼びかけるとともに、猛烈な風が吹く前に避難を完了させるなど、早い段階での安全確保を心がけていただくよう呼びかけたところです。
 さらに、適時の防災気象情報の発表に加えて、台風や大雨の見通しについて記者会見を実施したほか、電話によるホットラインにより自治体に今後の状況について直接的な解説も行いました。
 今回の特別警報の発表は、このような一連の段階的な記者会見や情報発表を通じた国民への呼びかけ、自治体等との連携を経て行ってきており、概ね適切ではなかったかと考えています。
 テレビ等のマスコミの皆様には、特別警報に限らず、台風関連の気象情報を積極的に長時間にわたり報道して頂き深く感謝を申し上げます。
 今回、このように二つの基準により、特別警報を発表しましたが、大雨特別警報を台風の強度による基準と、雨量による基準の二つの基準で運用していることについて、十分に理解されていないとのご指摘もいただいております。改めて、普及啓発を強化してまいりたいと考えております。
 何れにしても、時間を追って発表する気象情報、注意報、警報等の一連の防災気象情報を活用いただいて、早め早めの防災対応をとっていただくことが何よりも重要と考えております。そのような一連の情報の中で、特別警報や気象庁が行う記者会見等が果たすべき役割等について、今後の防災気象情報の検討において大切なテーマであると考えています。

 次に緊急地震速報の改善についてです。
 7月14日に、「今後の緊急地震速報の技術的改善について」と題する報道発表を致しました。この中で発表したとおり、平成23年東北地方太平洋沖地震で課題となった、巨大地震発生の際に強く揺れる地域をより適切に予測する手法ですとか、同時に複数の地震が発生した場合でも震源を精度良く決定する手法について、今後5年以内を目途に緊急地震速報の計算に導入致します。これにより、緊急地震速報の信頼性が一層向上することを期待しています。

 最後に、毎回お願いしております「東北地方太平洋沖地震」の余震への注意についてです。
 余震活動は、全体的には次第に低下してきていますけれども、本震発生以前に比べると未だに活発な状況が続いており、今後も当分の間は続くと考えております。7月5日に発生した岩手県沖を震源とする地震により宮古市で震度5弱を観測しましたし、12日には福島県沖で発生した地震により津波を観測しました。今後もまれにこのような強い揺れでありますとか、さらには津波を伴う地震が発生することがありますので、引き続き注意をお願いします。

 以上です。


主な質疑応答

Q いま長官からも若干、指摘がありましたけれども、台風8号の沖縄の特別警報の件ですけれども、市町村ごとに、大雨、暴風、波浪、高潮という警報が、種別ごとに時間差を追って、発表されて、大変複雑で分かりにくいという声があります。それから、2つの基準によって大雨特別警報が出て、一旦解除されて、また出るということで、市町村で避難勧告等々にも影響を与えたというような状況でもあります。改めて、混乱と申し上げてよいかどうかは議論の分かれるところではありますが、その辺の受け止めと、今後の改善点は、今お話がありましたけれども、例えばシンプルにするとか、もし方向性がありましたら、お話いただけますでしょうか。
A 今回、台風による特別警報については、台風が北上して過ぎ去ったということで、影響がなくなったので、解除いたしました。その時点においては大雨警報への切り替え、あるいは土砂災害警戒情報を発表・継続しました。対象となる市町村に対しては直接電話をし、引き続き厳重な警戒を呼び掛けていました。予測がきちんとできなかったんですけれども、数十年に一度の雨量となるということが発生しましたので、数十年に一度の大雨という基準に照らして、発表したわけです。この点につきましては、台風の強度を基準とする特別警報を解除するという時点では、大雨による雨量基準を超すような、特別警報級の雨が降るという予想はしておりませんでしたので、結果的に一旦解除して、また発表するということになりました。この点は、まず2つの基準があるということが、十分周知できてなかったのが一つ大きいということと、もう一つは台風の場合には、事前にある程度時間を持って、特別警報の発表の可能性について今回も7日に述べさせていただきましたけれども、そういうことが言及できる場合があります。そういう場合には今後、その後にどういう状況になりうるか、色んな状況がありうるということを、十分にまずご説明しながら、自治体でありますとか、メディアの皆さんに事前の備えを支援していただけますように、こちらとしても努力していきたいと思います。

Q 同じく台風8号ですが、11日の午前5時前に千葉県富津市付近に再び上陸したと発表されたんですが、この時に首都圏に大雨や強風はあまりありませんで、手元のメモなんですけれども、午前5時5分には東京都の気象情報、台風の雨雲は概ね関東の東海上に抜けたため、東京地方と伊豆諸島で大雨の可能性は小さくなりましたと説明があったのですが、近県の埼玉などの府県気象情報ではこの説明が不十分なところがあって、当然この5時前という時間は通勤通学帯で、会社や学校をどうしたらよいかという判断が難しいところがあったと思うのです。そういったところで、やはり説明が不十分だったというような指摘もあるんではないかと思うのですが、その辺のところはいかがでしょうか。
A われわれ気象庁が発表する防災情報が住民の皆さまの生活に影響を与えているということは十分理解しているつもりでおります。ご指摘の情報が不十分ではなかったかというご指摘でありますけれども、これにつきましては我々通常、こういう台風などの一連の現象が終わりますと、検証・調査を行います、その中で、点検をしていきたいと思います。

Q 情報の抜けがあったとか、そういったところまでは検証は行っていないということでしょうか。
A そういうことは無かったと思うんですけれども、やれることがあったかどうかというのは、自治体の状況を良く調べた上で、さらに改善の余地があるかどうかというのは全体をよく把握した上でないと、なかなか判断できませんので、まずは検証・調査を進めたいと思います。

Q 先ほどもお話がありましたが、長野県の南木曽村の土石流災害では尊い命が失われたわけですけれども、警報が遅かったという声が現地から出てきているんですけれども、そこの辺りの受け止めと、気象庁の現在の技術ではどこまで対応できるのかというあたりを改めてお話いただけますでしょうか。
A 先ほども申し上げましたように、南木曽町付近では当日の16時から18時の非常に短時間の間に、急激かつ局所的な大雨が降りました。その状況に応じて気象台では16時19分に注意報は発表できたんですけれども、その後の作業を行っている段階で土石流が先に発生したということです。こういう場合は、現状の予測技術ではなかなか予測することが難しいと考えております。当然、予測精度の向上には日々努めてまいりますけれども、そういうことがあるということを十分、特に危険な渓流などがあるような所が中心になるかもしれませんけれども、住民の皆様に、予測ができない場合もあるということを十分お伝えして啓発して、早め早めに対応していただけるように努力していきたいと思います。

Q 技術に則すれば南木曽村の発表体制というのは適切であったとお考えでしょうか。
A きちんとやっていたと思います。改善できる余地があるのかどうか、これは、今の時点では無いかなと思うのですけれども、いずれにしてもこういう事例があれば、それを必ず検証して、次の雨のステップとして調査していく、それを何かしら、改善に繋げていきたいと思っていますけれども、今のところそういう改善できる余地というのは、今のところはないかもしれないなというのが、私の個人的な感想です。今のところはそう思っています。

Q 特別警報の話ですけれども、まず、台風と、大雨の雨量予測での、2つの基準での特別警報の発表について十分に理解されていない部分もあって、今後も普及啓発をという風に仰っていまして、普及啓発という中でも、住民の中に伝わるのは大雨特別警報という言葉として伝わるわけで、2つの基準があるんですよと言われても、分かりにくいことに違いはないと思うんですけれども、それぞれで警戒事項も違ってくると思うんですが、風と一緒に来る雨なのか、大雨なのか、そういう面で普及啓発は重要だとは思うのですが、運用というか基準そのものを見直す必要はないのかという点についてはどうお考えですか。
A 今の時点では、一つの事例だけで、基準を変えるというのは、必ずしも適切ではないのかなと思います。まずは、いま仰ったように同じ特別警報という名前ですけれども、取っていただく行動が若干違うとすれば、そこを強調しながら、普及啓発をしていくというのが、重要なことかもしれません。まずはそういうのを努力をして、もし不都合な事例が重なれば、そのときに改めて、検討することになるかなと思います。

Q 概ね適切に発表されたと仰っていたと思うのですけれども、ただ、先にもあったように、市町村ごとに台風の特別警報が出るという予告があった上でではありますけれども、波浪、暴風、高潮その後に大雨特別警報が出て、解除のタイミングもややバラバラというところで、このタイミングが良かったか、悪かったかというのは今後の議論だと思うんですが、一概に概ね適切と言えたかどうかという部分では少し疑問が残ると思うんですが、その辺りはどうでしょうか。
A 特別警報の基準というのは甚大な災害が起こる可能性が高いという観点でそれぞれの現象ごとに定めておりまして、実際にその現象の予測でありますとか、実測、観測した状況を勘案して、それに応じてしっかりと発表をしております。それを複雑であるとか種類が多いとかお感じになるようですけれども、それぞれの現象での、甚大な被害を及ぼす可能性のある危険度に応じて基準を設定しておりますので、それぞれについて適切に適正に、客観的かつ科学的に判断を行ったという意味で、概ね適切だったということです。ただ、それが結果的に住民の方々の防災行動に結びつかなかったとすれば、それはよく今後検証したうえで、それに対応するものが別の指標としてあり得るかどうか、そういうものは検討することになるかもしれません。今のところはそういう材料を持ち合わせておりませんので、科学的に、過去の経験等に基づき定めた基準に則り作業したと思っています。

Q 市町村への聞き取り調査などはされないんですか。
A します。それは今後ですが、しっかりやるにはそれ相応の時間がかかりますし、気象庁だけでなく他の機関ももし調査を行うなら上手く連携をとってやりたいと思いますので、その辺を連携をとりながら今後やっていきたいと思います。

Q 今の話ですと、また台風が同じような進行を辿った場合に、例えば特別警報一度出したものを引っ込めて、また数時間後に特別警報を出すというようなことも十分考えられるかと思いますが、そこに手を着けようという考えは今ないんですか。
A これはなかなか難しい問題だと思うんですが、防災の情報にとってジレンマといいますかそういったものがあるのは、仮に風も雨も止み、台風が遠くに過ぎ去って、だけど今後予想はつかないけれども大雨が降るかもしれないという場合に、恐れをもってずっと特別警報を引っ張るのが本当にいいのかどうか、それもひょっとしたらデメリットがあるかもしれないし、一旦解除して出すことによるデメリットがあるかもしれない。よく見極めていきたいと思います。当面はこういうこともあり得るということを、事前によくご説明をして、こうして警報で繋いだわけですけども、警報が出ている間は、基準が下がって安心されるかもしれないけどそうではなくて警戒を緩めないで欲しいということも含めて、伝えていきたいと思います。

Q 今の質問は、全体状況を見極めて改善するべき点は改善するというのは良く分かるんですが、これから本格的な台風シーズンを迎えるにあたって、やはり直ぐに直すべきところは直すという点で必要かと思うんですけれども、その辺りをどういう風に受け止めていらっしゃいますか。
A 明らかにこれは直すべきということがあれば直しますが、それはまだ具体的に見えておりませんので、ここではどうするどうしないということはお伝えしません。

Q 昨日九州電力の川内原発の関連で規制基準案が原子力規制委員会でも了承されました。川内原発の周辺には巨大噴火の痕跡が複数あるわけですが、今後観測を強化して前兆を捉えるということになっているんですけども、ただ専門の研究者の方、火山噴火予知連絡会の藤井会長初め巨大噴火の長期的な認知は不可能というような見解をこれまでも示しておられるんですが、気象庁として巨大噴火の前兆を捉えるとかモニタリングでどこまでできるのか、今の限界について見解を教えていただけますか。
A なかなか巨大な噴火についての経験がないものですから、できる、できないとはなかなか申し上げられないんですけれども、気象庁としては火山周辺の住民の安全、火山噴火から身を守るという観点での防災情報として火山情報を適切に発表していきたいという考えであります。それ以上は、できる、できないというのは私にとっては言える状況にはありません。

Q 質問を変えます。今後気象庁として何か体制を変えるとか、新たに取り組むことは何かありませんか。
A 原発を視点としてとか、対象としてそういうことを行う考えは今のところありません。

Q 特別警報関連の質問に戻りますが、今回いくつかの市町村で一回目の特別警報が解除された後に避難勧告を解除したという経緯がありまして、そういう中には土砂災害警戒情報や大雨警報が継続しているのに解除したところもあったということがありまして、それに関しては仰ったように普及啓発云々もあると思うんですが、ある意味特別警報が避難勧告のトリガーになってしまっているような現状は実際見えたような事例である気がするんですが、その点についてはどのようにお考えですか。
A その点については先般まとめられた内閣府のガイドラインでも、特別警報ではなくて警報の段階から早め早めに判断する、というガイドラインになっていると思いますが、その辺が浸透していくように各地の気象台としても努力していきたいということです。

Q 2回目の大雨の特別警報のときに、特別警報が注意報に切り替わるまでにその後かなり長時間引っ張ったと思うんですけれども、それは市町村ごとにバラバラと解除になっていきましたけれども、実際にそこでまだ特別警報が出ていてももう雨自体はもう降っていなくて、野球の試合をやっていたようなところもあったりして、そういう状況まで引っ張られて、そのあと特別警報が解除になったと。そういう運用の仕方もあって、特別警報じゃなければ避難をしなくてもいいのかと思ってしまわれる、そう想像される面もあるんですけれども、解除のタイミングが適切だったのかということも含めてもう一度お願いします。
A その点については、現象が終わりましたので全体をもう一回調査して、その発表解除のタイミングでありますとか、それに対する自治体のご意見等を伺いながら全体を見てはっきりとした対応をすることになると思います。

Q 沖縄県の自治体、全市町村を対象にということかと思いますが、聞き取り調査をされるということですが、具体的な時期と、二つの基準があるということで普及啓発ということで例えば気象台から市町村向けの説明会を開くとか、その辺の具体策を教えていただけますか。
A まだ時期は決まってないと私は承知しているんですけども、やり方としてはアンケート調査が普及啓発にも効果があると思いますので、両方相まってやっていけるのではないかと思います。時期についてはまだ決まっていません。

Q 特別警報を解除してから警報は出ていたということではあるんですけども、それで一部の避難勧告を解除したところもあると。そのような自治体が判断をしたことについては、気象庁としてはどういう風にお考えですか。
A それは色んな状況を勘案してのことだと思いますので、それについてどうこう言う訳にはいかないと思いますが、その辺も含めて調査していきたいと思います。

Q それは先ほどの周知徹底が図れてないところも一つ一端にあったかなということですか。
A あったかもしれないし、地形とか色んな状況を勘案して危険は去ったという風に判断されたかもしれないし、そこのところは調べてみないと分かりません。


(以上)

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