長官記者会見要旨(平成26年6月12日)

会見日時等

平成26年6月12日(木) 14時00分~14時15分
於:気象庁会見室


発言要旨

 本日は、梅雨期の注意点、および熱中症への注意、この2点を中心にお話します。

 最初に、梅雨期の注意点についてです。
 先月5日に沖縄地方で梅雨入りしたのを皮切りに、先週金曜日、6月6日に東北北部の梅雨入りをもって全国的に梅雨に入りました。梅雨に入ってのち、全国的に大雨となっております。
 先週から今週にかけても、動きの遅い低気圧や前線の影響で、西日本の太平洋側と東海地方、関東地方などで500ミリを超え、6月の月降水量の平年値を大幅に上回る大雨となった所もありました。この大雨により、宮崎県、高知県、東京都、神奈川県、栃木県では避難勧告も発令され、また、土砂災害や浸水害の発生が報道等で報じられているところです。
 さらに、明日にかけても東日本・北日本を中心に大雨のおそれがあります。これまでの大雨により地盤が緩んでいる所がありますので、引き続き土砂災害などに御注意いただくようお願いします。
 毎年、この時期には、各地で集中豪雨等により河川の急な増水・氾濫、内水氾濫、土砂崩れ、竜巻等の突風により多数の人的被害及び住家被害が生じています。このような大雨の時には、気象庁が時間を追って段階的に発表する気象情報、注意報、警報等の防災気象情報、さらには地元自治体が発表する避難勧告等の情報に注意するとともに、川や崖など危険な場所には絶対に近付かない、あるいは、できるだけ早め早めの避難等、安全の確保するための行動を心がけていただきたいと思います。
 また、浸水あるいは氾濫が起こっている中での避難等は、かえって危険な状況等も想定されますので、そのような状況では、個人個人が置かれた状況によって各自判断していただいて、例えば家の中のより安全な場所に避難するという判断も含めて、状況を踏まえて身の安全の確保をお願いしたいと思います。
 いずれにしても、どのような避難等の安全確保行動を選択すべきかというのは、災害の種類により、さらには個人、個々の置かれた状況によって異なります。このため、国民一人一人が自らの判断を行うことが大切です。特に、日頃からの事前の準備として、避難先や安全確保のための行動について、個人個人が家族や地域とともに考え、備え、そしてその時に実際に身を守る行動に移せることが重要です。 
 気象庁としましても、全国の気象台において大雨等の状況を監視し、的確な予警報等の発表等に努めたいと考えております。

 次に熱中症への注意です。熱中症対策の一環として、先月20日より全国で高温注意情報の運用を開始しております。
 気象庁のホームページでは熱中症に関するポータルサイトを設け、高温注意情報に加え、主な地点の気温予測グラフなども毎日提供しています。
 今後、気温が高くなる時期を迎えますので、熱中症対策にこの情報を有効利用していただきますようお願いいたします。

 毎回お願いしております、「東北地方太平洋沖地震」の余震への注意についてです。
 毎回申し上げておりますが、余震活動は、全体的に次第に低下してきてはいますけれども、本震発生前と比べると依然活発な状況が続いており、これは当分継続するものと考えています。今後も、まれに強い揺れ、さらには津波を伴う地震が発生することがありますので、引き続き注意をお願いします。

 最後に西之島の活動についてお話させて下さい。
 西之島では、昨年11月20日に近海での噴火が確認されて以降、噴石の飛散及び溶岩の流出が継続しており、海上保安庁等の観測によれば、新たに形成された陸地は旧島と接続して、更に拡大を続けているところです。このため気象庁では、火口周辺警報を「火口周辺危険」というものから「入山危険」というものに引き上げて、島の中心から概ね6kmの範囲で警戒が必要であるとして、より一層の警戒を呼びかけたところです。従前からお願いしていることではありますが、西之島及びその付近の海域では、噴火に伴う現象により生命に危険が及ぶ可能性があるため、警戒するようお願いいたします。

 私からは以上です。


主な質疑応答

Q 2点あります。熱中症についての注意喚起がありましたけれども、農業者に対するメッセージをいただきたいです。それから、今週の長雨ですけれども、エルニーニョ現象が発生する年は長雨になる傾向があるというように言われていますが、それとの関連性をお伺いします。
A まず、農業者への注意ですけれども、高温が実際に発生するような状況においては高温注意情報だけではなく異常天候早期警戒情報等で早め早めの警戒や注意を呼び掛けているところですので、そういう情報をうまく使っていただいて、農業関係の高温対策にしていただければと思います。
 次にエルニーニョについてですが、エルニーニョはこの夏に発生するという予想を今のところしており、かなり発生の確率があると考えておりますが、まだ、その段階にはありませんので、今の長雨がエルニーニョによるものかというと、今のところはそうではないという風に考えています。

Q 西之島の警戒範囲が昨日をもって6kmということで範囲が明確に示されましたけれども、西之島に実際に近づくことでの危険性といのは、雲仙岳などの教訓もありまして、当然警戒というのは必要だと思うのですが、一方で調査観測という面からみると、ある程度近づくことは当然必要になってきて、先日の火山噴火予知連絡会でも会長が「いま行かなければ観測する機会を逃してしまう」というようなお話もありまして、総合観測班を立ち上げるという話がありましたけれども、その警戒6kmという範囲と、総合観測班の兼ね合いと言いますか、観測を今後どのようにしていくのかということについて、気象庁としてのお考えをお聞かせください。
A 6kmはご説明したとおり、海底のどこで噴火するか分からないということと、噴火した場合に水深が500mより浅いところでは海上まで影響が及ぶ可能性がある、海上まで影響が出たときにサージが発生して2km位の範囲は危険だと、そういうところを勘案して6kmとしました。
 もうひとつの点は、確かに火山学において、こういう噴火が発生したときに、それをどう観測し研究するかということと、火山学者の身の安全をどう確保するかというのが、世界中みても常に議論があるところです。総合観測班においてはどういう観測があり得るか、可能かどうかということも含めて、まずは検討し可能であれば計画を立てて実施に移すという手順ですので、今すぐ観測できるものがあるのか、それは6kmの外側か内側かというところは、今後の検討によりますけれども、基本的には観測者と研究者の身の安全を当然確保することが重要であると考えています。

Q 火山噴火予知連絡会の会見のときのお話では、ある程度警戒が呼び掛けられている範囲であっても、特別の安全対策をとった上で、近づくということはあり得るというような話も出ていたのですが、観測の中で6kmの中に入るということも場合によってはあり得るということでしょうか。
A 今の段階では申し上げられないのですけれども、過去の色んな噴火においても観測をするときに、色んな観測データを見ながら現地観測が可能かどうかというのを、安全性を常に判断しながら、それをリアルタイムで情報を伝える態勢をとりながら観測をした例も過去にはあります。海底火山、地上に顔を出していますけれども、海底がどのような状況にあるのかというのは、陸上の火山とまたひとつ困難度が高いようにも個人的には思いますので、その点も含めて総合観測班の中で検討していただけるものと考えております。

Q ここ数日の日照不足と大雨が農作物の生育にどのような影響を与えるというようにお考えでしょうか。
A (地球環境・海洋部担当)6月上旬は西日本を中心に日照時間が平年の半分前後というような状況になっていますが、6月の10日間位の平均状態ですと、この程度になることはそれほど珍しいことではないということで、農作物に大きな影響を与えるような状況では無いというように今のところは考えておりますが、このような状況がまだ続くようですと、今後影響が次第に現れてくる可能性もありますので、気象庁といたしましてもその辺り注意深く監視していきたいと考えております。

Q 出水期を迎えたので改めて、特別警報の関係で去年伊豆大島の災害の際に基準についていろいろ批判がありましたけれども、今年も特に基準を変更するという考えは無く、従前通りの基準でやっていくという考えでしょうか。
A 今の時点で基準を変えるという予定はありませんが、去年の出水期での事例や、関係自治体等のアンケート調査等も踏まえて、じっくり考えて検討していきたいと思います。

Q 少なくとも短期的に何か変えるというのではなくて、中長期的にはその可能性というのはあるのでしょうか。
A 当然、技術的な改善も必要ですし、色んなご要望をいただいているのは承知しておりますので、そのことが技術的に可能かどうかも含めてある程度時間をいただいて検討すべき問題と考えています。


(以上)

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