長官記者会見要旨(平成25年3月21日)

会見日時等

平成25年3月21日(木) 14時00分~14時20分
於:気象庁会見室

発言要旨

 本日の会見では、はじめに、東日本大震災から2年を迎えまして、先日開始しました新たな津波警報の運用についてお話しします。次に気象業務法改正ついて、また、長周期地震動に関する情報についてお話しします。終わりに、春先の発達した低気圧に伴い被害等が発生しておりますのでこれへの注意喚起と、さらに東北地方太平洋沖地震の余震への注意喚起についてもお話します。

 はじめに、東日本大震災から2年を迎えまして、ここに改めて多数の犠牲者の方々のご冥福をお祈りします。また、未だ30万人を超える方々が避難生活を余儀なくされていますので、多くの被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。
 気象庁では、東日本大震災の教訓を踏まえて津波警報を見直し改善を進め、3月7日から新しい津波警報の運用を開始しました。運用のための準備や周知・広報に報道機関をはじめ多くの関係機関にご協力をいただき、改めて深く感謝を申し上げます。
 気象庁としましては、東日本大震災の犠牲者に報い、さらに被災者の方々の想いに応えるためにも、新たな津波警報の的確な運用に努めて参ります。さらに、同時に「強い揺れを感じたら逃げる」などの自助についても津波警報の周知・啓発と併せて実施し、必ず避難に結びつけるという覚悟で、犠牲者ゼロを目指して継続した取り組みを全庁的に進めて参ります。
 報道機関の皆さまには、引き続きご協力をよろしくお願いします。

 次に、3月8日に閣議決定され、国会に法案を提出しました「気象業務法及び国土交通省設置法の一部を改正する法律案」についてお話しします。この法律案は、大津波や数十年に一度の豪雨などが予想される場合に、重大な災害が起こるおそれが著しく大きくなるために、危険性を分かりやすく伝えることを目指して、「特別警報」を気象業務法の中に新たに制度化しようとするものです。
 この特別警報については、発表基準について地方公共団体から意見を聴取することと、地方公共団体を通した伝達・周知の強化を法制化することになります。これらを法制度の面から裏付けることにより、従来の警報に比べて、地方公共団体との連携を一層強化したいと考えております。これにより国民の生命・財産を守るために、防災対策の効果をこれまで以上に高められるよう努力していきたいと思っています。なお、これまでの警報の枠組みで改善を進めてきました津波警報の「大津波警報」や、「噴火警戒レベル4以上の噴火警報」につきましては、まさに非常事態であるということを伝える警報ですので、法改正の趣旨から「特別警報」に位置づけることが相応しいと考えていますので、よろしくお願いします。

 次に、長周期地震動に関する情報についてです。今週18日に、今年度最後の「長周期地震動に関する情報検討会」を開催しました。この検討会で、長周期地震動に関する観測情報の階級の考え方や階級表についての一定の方向が出されましたので、今年度末には、ホームページを通じたプル(PULL)型の情報の発信を開始します。さらに、次年度以降には、観測情報に加えて緊急地震速報に対応する予報に関して、プッシュ(PUSH)型情報のあり方について検討を予定しています。

 終わりに、春先の低気圧や余震への注意のお願いです。
 3月に入り、今年も日本付近を相次いで低気圧が発達しながら通過し、全国的に強風が吹き、北日本では暴風雪となって3月上旬には悲惨な事故等、被害が発生しているところです。
 春先には、日本付近で低気圧が急速に発達し、暴風または暴風雪となることがありますので、注意をお願いします。例えば、昨年4月上旬には低気圧が日本海で急速に発達し、日本全国で記録的な暴風となっています。このため、引き続き春先の低気圧等について最新の気象情報に注意していただき、暴風等に対する警戒をお願いします。
 また、3月に入って気温が急に高くなる日も多くなってきました。北日本など平年に比べて積雪が多い地域も多く、雪解けによる雪崩や洪水に加え、土砂災害にも注意、警戒をお願いします。天気予報や気象情報でお伝えしている気温や雨、さらに雪崩等への留意事項をご利用いただくようお願いします。

 また、毎回お願いしています余震についてです。比較的に少なくなっておりますが、今後もまれに強い揺れや津波を伴う地震が発生することがありますので、引き続き注意をお願いします。また、周辺地域でも引き続き一部活発な地域がありますので注意をお願いします。

 以上で、冒頭発言とさせていただきます。


主な質疑応答

Q 先程新たな津波警報や特別警報についてお話がありましたが、来年度の気象庁としての課題や抱負についてお話しください。
A 来年度の抱負についてですが、東日本大震災から2年を迎えましたので、それも併せた所感という形でお話しさせていただきます。
 まず、来年度何が一番重要かについては、3月7日に開始しました津波警報を的確に運用していくことが気象庁としての最大の重要案件と考えております。特に巨大地震の判定技術や津波の予測技術、これは沖合津波計の利用技術も含みますが、これらについて現在現業で利用している技術に加え、早急にさらなる開発を進めて、順次可能なものから現業化し、津波予測の精度を高めていきたいと思います。
 次に、新たな津波警報の運用にも当てはまる基本的な考え方であります「受け手の立場に立って、わかりやすく簡潔に伝えて、危機感を共有して、行動に結びつけること」についてです。気象も含めて気象庁が発表するすべての防災情報についての共通の考え方となりますので、この方向で「防災気象情報の改善に関する検討会」を含めて情報の改善を進めていきたいと思います。なお、この方向は先程お話ししました気象業務法の改正案とも同じ趣旨になります。
 次に、情報の利活用の促進について、情報を発信する側からの一方的な発表では利用は進まず、ユーザーとの対話を進める必要があります。これについて、本庁だけでなく全国の気象台が一丸となって、教育関係者も含め関係機関と連携して取り組んでいきます。
 以上申し上げましたが、その基盤として技術開発を着実に進め、監視・予測技術の高度化を図ることが重要です。先程の巨大地震の判定技術や、沖合津波計の利用技術、さらには昨年スーパーコンピュータを更新しましたので数値予報の技術の高度化や、局地的な大雨等の監視・予測技術の高度化についても鋭意進めていきたいと思います。

Q 特別警報について早ければ夏頃に始まると聞いています。ある意味、急に出てきて、急に始まるというような印象が拭えないわけで、周知・広報も難しく、時間が足りないというところもあるかと思うのですが、その点いかがお考えですか。
A 先日の「防災気象情報の改善に関する検討会」でも唐突感があるなど様々意見をお聞きしておりますが、これについては手続上の問題として気象庁側でも十分認識しております。しかしながら、災害は待ってくれませんので、可能な限り早期に運用したいと思います。
 しかしながら、地方自治体等の相手がある問題ですので、丁寧に説明してお互いが共通の認識を持って対応できるようにしていきたいと思います。特に今回の場合は、発表基準について地方自治体の意見を聴取するという規定を法律上に書き込む案となっています。気象庁として責任を持って発表基準案を作成して、地方自治体に説明し、決定していきたいと思いますので、そのプロセスも含めて自治体と同じ認識に立てるように十分に努力したうえで、運用を開始したいと思います。
 先程申し上げましたように、大津波警報と噴火警報については現行の枠組みとして、これらの法的な位置付けを強化するという形で進めることを考えており、その点は問題ないとは思いますが、特に大雨等の特別警報につきましては今後丁寧な対応をしていきたいと思います。

Q 特別警報の基準については地方公共団体からも意見を聴取するとのお話がありましたが、今の準備状況やこれからの調整のスケジュール、具体的にどんな方法で進めるのか教えてください。
A 地方への説明状況については、地方の6団体といわれる組織、つまり知事会、市長会、町村長会とそれぞれの議会に対応する会の全体で6団体になりますが、1月から2月にかけてこの6団体に対して改正法案の趣旨を説明し、さらに要望や意見をお聞きし、それに対する回答等を行っています。2月には各気象台から都道府県へ個別に説明して、ご意見・ご要望や不明な点等についてお聞きしているところです。また、閣議決定後に、現在2回目の都道府県への説明を行っていて、都道府県でも年度末の予算時期で大変な時期ではありますが6割程度説明が終わったと聞いております。今後できるだけ早く年度内にでも2回目の説明が終わるようにしたいと考えております。
 さらに市町村につきましては、4月に入ってから全市町村を対象として、説明を各気象台から行いたいと思います。県等が、例えば市町村を集めて打ち合わせ会の場を設けていただけるという動きもあるようですので、できるだけ効率的・効果的な場を使って、改正法案の趣旨について説明していきたいと思います。
 次に、発表基準ですが、この基準については現在気象庁において鋭意検討を進めているところですが、法公布後すぐに地方公共団体にご意見を伺えるように、資料等の整理を現在事務方において進めているところです。いずれにしましても、法律公布後3か月で施行され運用することになりますので、その間に最大限の調整ができるように、事務的な手続を進めていきたいと思います。

Q 関連ですが、都道府県の説明も6割程度ということで、市町村の話もありましたが、この警報に関しては市町村への説明が非常に重要になってくると思っております。全市町村を対象に気象台から説明するということでしたが、具体的に例えば全市町村に個別に説明したりするのか、それとも何か一同に集めてやったりするのか、そういったところはいかがでしょうか。
A 都道府県と相談して進めておりますが、県によっては全市町村を集めていただけるようですし、また、テレビ会議システムを備えている県ではテレビ会議システム等を活用させて頂くなど、様々な方法を使って効率的に進めたいと思います。足を使って行脚していくことも考えられますが、最大限効果的・効率的な手法を探って、もれなくやっていく必要があると思います。

Q 気象業務法の改正では、気象庁は警報するというところまでで、避難行動まで言及するものではないと思っていますが、特別警報を新たに作る趣旨とか意義としては、やはり緊急性を伝えて避難に結びつけるというところがゴールかなと認識しています。警報と避難というものをリンクさせるために、周知・広報と重なる部分がありますが、どのようにお考えでしょうか。
A 例えば、現行の警報でも津波警報で避難したり、噴火警報の場合は避難や避難準備に結びつけて発表しており、津波と噴火の警報については既に避難等と連携した発表の仕方が現行の警報でも結果としてできています。ただし、現行の警報の枠組みは自治体との関係はあくまでも任意ですので、今回の制度化によって、新たに気象庁側に義務付ける、自治体から意見を聞くということを義務付けていくことを考えています。
 また、大雨等につきましても、地域防災計画によっては警報で避難準備等というところもありますが、警報も含めて、特別警報について避難行動とどう結びつけていくかということにつきまして、意見聴取する段階でお互いに認識が共有できて、地域防災計画等に明示的に記載されていくことに発展していくことを期待しております。

Q 具体的に緊急性を伝えることで避難に結びつくようにと説明されましたが、実際に特別警報が出たら避難することについて、もう少し踏み込んでお話しいただけますか。
A 大雨の場合は津波等よりもかなり複雑で、時間を追って現象が変わります。例えば、3月5日に開催した第3回の「防災気象情報の改善に関する検討会」では避難のトリガーになる情報としてスイッチ情報と言われていましたが、一概にすべて“特別警報”イコール“スイッチ情報”ということは難しいのではないかと考えております。
 一方、気象庁の情報、例えば台風、大雨等につきましては、2日から3日ぐらい前から全般気象情報から時間を追って順次階層的に情報を発信していますので、それらを含めてどのように都道府県や市町村の防災対応に位置付けていただけるのか検討を進めていきたいと思います。特別警報、警報、それのみを取り上げて避難行動等と直接結び付けるというのは、大雨等の場合はかなり難しいと考えていますので、情報全体の時系列としての流れと都道府県や市町村の防災対応というものをどうリンクさせて、最終的に特別警報をどのように機能させるかという点でお話しできればと思います。

Q 都道府県や市町村などの自治体からは、要望とか、意見とか、懸念していることとか伝えられていることはありますか。
A 市町村側から見ると、現在の気象業務法では公衆等に「周知させるよう努めなければならない」と規定されており「努力義務」ですが、改正法案では「周知させる措置をとらなければならない」と義務になりますので、「防災気象情報の改善に関する検討会」でも指摘されていましたが、財政措置についてのご要望等が多かったと感じております。また、発表基準について、まだ具体的に示していないところもあり、その点がわかりづらいとのご意見を伺っております。

Q 財政措置になりますと、気象庁だけでなく、消防庁や他の省庁とも関わってくると思いますが、このあたりの連携とか他の省庁への呼びかけとかは行うのでしょうか。
A 今回の法案等につきましては、消防庁にも事前にお話しし、意見交換しております。消防庁には防災行政無線に関わる制度があり、国土交通省の中にも様々な制度がありますので、これらと連携するよう気象庁としても働きかけたいと思います。
 また、例えば携帯電話のエリアメールとか様々な手段がありますので、法令上は書かれていませんが、そういう様々な手段が普及していくように、気象庁自らとしても関係機関への働きかけに努力していきたいと思います。

Q 特別警報に関して、専門家の中には警報の軽視につながってはいけないというような指摘もあると思います。少し先程のお話と関連してくると思いますが、警報と特別警報の差とか、警報の認識を改めてどう伝えていくのか、そのあたりをお伺いします。
A まさしく、法律上の定義に行きあたると思いますが、警報は、実際の過去の経緯から発表基準を定めて、重大な災害が発生するという基準で発表しております。市町村を対象に、当該地域にある程度の災害が起こる現象を基準にしていますので、警報が発表されましたら相応の対応を取っていただくことが必要であると思っています。特別警報につきまして、局所的とかそういうものではなくて、九州北部あるいは一昨年の台風第12号による紀伊半島の豪雨のように比較的広域に多くの雨が降り大規模な災害が起こるというような現象を想定しております。これらの違いについては十分、発表基準を定めるときに市町村等に認識を共有いただいて、それぞれに対応した防災行動を取っていただくよう努めていきたいと思います。

Q 今、「警報を発表したら相応の対応を」とお話しされましたが、そこがまさに難しいところで、相応の対応というと具体的には、特別警報のほうがむしろ分かりやすいかもしれないと思うのですが、いかがですか。
A これまでの警報の場合、市町村によって地域防災計画での明示の仕方が違いますので、その点は十分にお話ししていく必要があると思います。実際に、防災体制の最初の立ち上げにとどまるところ、避難の準備を行うところもあるでしょうし、それらは地域によっても違うでしょうから、気象情報全体の体系についてしっかり説明して、位置付けを検討いただくということになると思います。これらについては、今現在検討いただいている「防災気象情報の改善に関する検討会」の中でも、情報体系全体の中での情報と避難等の対策との理想的な対応についてご議論いただきたいと思います。


(以上)

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