長官記者会見要旨(平成24年2月16日)

会見日時等

平成24年2月16日(木) 14時00分~14時15分
於:気象庁会見室

発言要旨

 本日の会見では、はじめに今年の冬の大雪についてお話しして、続いて、先週10日に開催しました「交通政策審議会気象分科会」による気候情報にかかわる提言と、同じく先週7日に公表しました「津波警報の発表基準等と情報文のあり方に関する検討会」による津波警報の改善にかかわる提言の二つについて、今後の気象庁の取り組みの方向性も併せてお話しします。

 はじめに、今年の冬は度々厳しい寒波にみまわれ、低温と特に日本海側の地域を中心に大雪となっております。雪崩や除雪作業中の事故などにより多くの方がお亡くなりになっており、ここに心よりご冥福をお祈りいたします。また、大雪による除雪作業や低温などにより厳しい生活を余儀なくされている方々、さらに東日本大震災、長野県中部の地震等の被災地では、大雪と低温が重なり厳しさがさらに増しております。改めてお見舞い申し上げます。
 今後しばらくは大雪や低温に注意が必要です。一方で、これから春に向かって気温が急上昇する日もあり、雪崩や屋根からの落雪などによる事故に引き続き注意をお願いします。

 次に、「交通政策審議会気象分科会」における気候情報にかかわる提言についてお話しします。昨年1月よりご審議をいただいておりましたが、一時「東北地方太平洋沖地震」への対応のために中断し、先週10日(金)に「気候変動や異常気象に対応するための気候情報とその利活用について」というテーマで提言をほぼとりまとめていただきました。
 今月中には先週の分科会におけるご審議を踏まえた上で最終的な提言としていただけるよう、現在作業を鋭意進めているところです。
 気象庁としましては、本提言を受けて、季節予報などの気候情報を社会・経済活動のリスクの軽減に向けて具体的に活用いただけるよう、利用者との対話を進め、関係機関とも連携・協力してその活用策の創出とその普及に努めて参ります。提言の中では「開発プラットフォーム」という少し難しい言葉になっていますが、この「開発プラットフォーム」の実効性を高めて、より具体的な利活用を進めていく考えです。また、昨年タイで発生した洪水のような事例も踏まえ、世界の異常気象に関する情報の発信を強化するとともに、途上国を中心としての国際支援についても強化して参ります。

 続いて、津波警報の改善の取り組みについてお話しします。
 昨年6月から有識者を交えた検討を開始し、9月12日には中間的な報告として技術を中心にして津波警報の改善の方向性についてとりまとめました。引き続き、残された課題を検討するために、「津波警報の発表基準等と情報文のあり方に関する検討会」を設置し、昨年10月より3回にわたり検討を重ねました。これによって、先週2月7日(火)に最終的な提言をとりまとめていただきました。
 今後、この提言に沿って津波警報を改善し、準備が整い次第運用を開始したいと考えています。新しい津波警報の運用開始のためには、気象庁の計算システムの改修が必要ですが、さらに警報を伝達いただく国、都道府県、市町村、放送機関、民間事業者等多くの関係機関があり、その準備も必要となります。このため、これらの関係機関とも調整しつつ、運用開始に向けた準備を進めて参ります。
 さらに、津波警報については、今回の改善策も含めてその周知・啓発が極めて重要ですので、関係機関とも連携し、気象庁の全国の気象官署を十分活用し、庁全体として組織的に取組を進めて参ります。

 最後に、「東北地方太平洋沖地震」から1年近くが経過し、余震は次第に少なくなってきましたが、引き続き、まれに大きな余震が発生する可能性、場合によっては震度5弱以上の揺れ、さらに津波が発生する可能性もありますので、引き続き注意をお願いします。
 また、今後しばらくは大雪や低温に注意が必要です。昨日、大雪に関する気象情報を発表していますが、19日頃にかけて日本海側等で大雪の可能性がありますので注意をお願いします。気象庁の発表する天気予報や気象情報、注意報・警報をご活用願います。

 以上、私からのお話を終わらせていただきます。


主な質疑応答

Q 震災から間もなく1年ということで、長官からもお話がありましたが、この1年近くの間に津波警報のあり方とか長周期地震動の件とか様々に改善が行われてきていると思います。改めまして1年ということで、今後も含めてどのように取り組んでいかれるかということと、現時点で懸案とされていることがあれば教えてください。
A まず、現時点の懸案ですが、東北地方はまだこれから復旧・復興の段階で、現在様々な気象情報を提供して復旧・復興を支援しています。地盤沈下している地域もありますので、通常の気象庁のプロダクトに加えて、例えば高潮による浸水や異常潮などの情報を強化する、さらに復旧・復興を行う担当者に向けて災害に関係する気象情報を伝えることなどを行っています。まずこの点について引き続きしっかりと復旧・復興を支援できるように努めて参ります。
 1年を振り返っての今後の取り組みについては、「東北地方太平洋地震」だけではなく台風12号等でも、気象庁の発信する様々な情報について、これをいかに受け手の立場に立って発信していくかということが大きな課題と認識しています。地震・津波だけではなくて気象も含めて、今後ますます受け手の立場に立って実際の行動に結びつくような情報とするよう、気象庁だけではなく関係機関とも連携して改善を進めていきたいと思っています。

Q 先日、長周期地震動の検討会が開かれました。その中でも情報を簡潔にすべきだという方向性が出ていますが、情報を出すにあたってタイミングや内容はどのようにすべきであると長官はお考えでしょうか。
A 現在は、緊急地震速報、震度速報さらに震源震度に関する情報等、数分から十数分の極めて短時間のうちに続けて情報を発表しおりますが、これらの情報の中でいかに簡潔で分かりやすく、新たな情報加わっても混乱が無く伝えられるかという点を精査する必要があると思います。検討会でも様々なご意見をいただいていますが、それぞれ極めてもっともなことだと思っていますので、現在の地震情報に新たに加えても、混乱が無い形で簡潔に分かりやすく伝えられるよう、精査していきたいと思います。

Q 検討会では、予測情報的なものの必要性ということを述べられている方もいましたが、この点は今後検討していくということでしょうか。
A 超高層ビル等では長周期地震動が数分から今回は最長で10分程度続いたということもありますので、その揺れる前の段階から情報が提供できれば、行動を起こし安全を確保でるということもありますので、次年度以降、予測情報についてのあり方についても検討して参りたいと思っています。
 付け加えますと、一般向けということと、高度利用者向けという実際に当庁の様々な情報を使ってさらに分析をして高度に利用することについて、利用者による整理もしていく必要があります。さらに、メディア等を通じてプッシュで即時的に出していくような情報と、インターネットを通じて自らが欲しい時に取りに行く情報と様々ありますので、そういうところも含めて整理をしていく必要があると思っています。

Q 津波警報の改善についてですが、いよいよ正式に提言がとりまとまり、動き出し始めたところかと思います。実際に正式に動き始めてみて、難しさを感じているポイントとか、いろいろなところとの調整もあるかと思うのですが、お感じになっている点があればお願いします。
A 提言がとりまとまりましたので、これからは具体的にシステムに組み込んでいくことになります。システムの改修は、これまでも行ってきていますが、外との関係・結びつきが極めて強いということで、多くの関係機関では当庁の情報の変更によってシステム改修等が必要になります。この点は全国的に十分調整していかなくてはいけないことで、かなり大きな課題だと思っております。
 併せて、津波警報についての考え方と具体的な避難行動とをどう結び付けていくかということについての周知・啓発を、これは気象庁だけではなくて自治体や学校関係者等とも連携し強化して行く必要があると思っています。



(以上)

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