長官記者会見要旨(平成22年11月24日)

会見日時等

平成22年11月24日(水) 14時00分~14時15分
於:気象庁会見室

発言要旨

 定例会見を約一週間延期させていただきました。これは、11月17日に韓国の済州島で行われた地震災害軽減に関する気象庁・中国地震局・韓国気象庁による第5回の長官会合に出席していたためです。会合の結果につきましては11月18日に報道発表した通りです。
 気象に関連する課題は、国連の専門機関である世界気象機関(WMO)において、各国の担当機関の代表により解決にあたることができますが、地震に関連する課題については、そういった専門機関がありませんので、日中韓という、近隣で地震の観測と情報の発表を担っている3カ国の機関が、定期的に集まって情報交換を行うということが、課題の解決に向けた第一歩として良いのではないかと思います。

 本日、第52次日本南極地域観測隊の本隊が、南極昭和基地に向けて出発します。この観測隊には気象庁から16年ぶり3人目となる宮本仁美観測副隊長兼越冬隊長他職員6名が参加しています。気象庁から越冬隊長を派遣するのは大変名誉なことで、この話が決まった際にもこの場でご報告したかと思いますが、宮本さんには越冬隊長としての職責を十分に果たしてくれるものと期待しています。また、他の隊員におきましても、50年以上にわたって先輩方の努力によって引き継がれてきた定常的な気象観測を引き継ぎ、正確な気象データを取得してくれるものと期待しています。

 もう一点ですが、来る12月1日に昨年に引き続いて緊急地震速報の全国的な訓練を内閣府と連携して実施します。緊急地震速報は、情報を見聞きしてから強い揺れが来るまでの時間が非常に短く、この間にあわてずに自分の身を守る行動をとるためには日頃からの訓練が重要です。情報を見聞きしたときに何をすべきかをあらかじめ考えておかないと訓練にはならないのですが、国民の皆様におかれては、ぜひこの機会に、緊急地震速報を見聞きされた時の行動について、実際に体を動かしてご確認いただき、地震に備えていただきたいと思います。短い時間で確認できることですので、ぜひ試みていただきたいと思います。
 なお、昨年の訓練の際には地下鉄が想定外に停止してしまう事例が生じました。今年はこのようなことが無いように、私どもとしましては関係の事業者の方々などと連絡を取りながら、慎重に準備を進めてきているところです。
 訓練のやり方としては、ご自身で模擬的に訓練報を出して訓練をされることも可能ですし、私どもが流す訓練報を利用して訓練することもできます。私ともが流す訓練報を利用される機関におかれましては、訓練の前に改めてその手順等をご確認いただき、円滑に有意義な訓練を行っていただきたいと思っております。報道関係の皆様におかれましては、かねてより緊急地震速報につきまして広報・周知にご協力を行っていただき厚く御礼を申し上げます。この12月1日の訓練につきましても、より多くの方々に訓練を実施していただけますよう、周知についてご協力いただければ幸いです。


主な質疑応答

Q 12月1日の緊急地震速報の訓練についてですが、昨年地下鉄が止まったというトラブルがあって訓練自体があまり周知されていなかったというところが問題点としてあったかと思いますが、もうひとつは末端の端末はだれが持っているか、どれくらいの方が受信しているかというところがあまりよくわかっていないということが問題点として挙がったかと思うのですが、今年訓練を行うに当たってそのあたりの面でなにか対策等を考えていらっしゃったら教えていただきたいと思います。
A まず、訓練の周知については、訓練報が流れる情報の伝達ルートの上流からたどっていく形で、訓練報を受ける方々を把握することができます。しかし、去年はこの形で「訓練をやりますが大丈夫ですよね」という同意をとることをスタートした時期が、訓練の時期にかなり迫っておりましたので、完全なご了承を取って訓練報を流すということが必ずしもできなかったと思います。
 その反省から、今年度についはかなり早い時期から、「12月の1日にこういう形で訓練報を流すことができます。皆さんが訓練報を流される場合、末端でご利用になっている方も十分に承知の上で訓練報を流すようにお願いします。」ということをお話ししてきているところです。そういう意味で、去年に比べればかなり丁寧にやってきていると思います。ただ、その緊急地震速報は、その伝達形態が様々でなかなかユーザーを完全に把握できない性質のものもあります。不特定多数に情報が流れる放送メディア、携帯電話については、今回この訓練報は流れません。そのほか、インターネットなどを使っている場合、その性質上、末端での利用の把握が難しいところはありますが、極力去年の轍を踏まないように最善を尽くしているところです。
 それから、「訓練報が来ると思っていたのだけれど、ふたを開けてみると来ない。調べてみると、自分が配信を受けている情報配信事業者さんが、訓練報を配信していないということが後でわかった。」というようなご意見もありました。このことにつきましても、私どものホームページにおける記載というものを、より少しわかりやすくする改善を行いました。

Q 受信端末がいくつくらいあるかということは、大体は把握できているのでしょうか。
A これは、それぞれの配信事業者さんのお仕事の中身にかかわることなので難しい面があり、うまく把握するところに至っておりません。
 (注:会見ではお話しておりませんが、平成22年3月31日現在、緊急地震速報の専用受信端末の出荷台数は約21万台です。)

Q 先ほどのお話の中で関連なんですけど、率直なところで12月1日に訓練を行うということ、時期として長官はどのようにお考えですか。例えば9月1日と合わせて行うという考えもあるでしょうし、この間の検討会などでも、地域ごとにやったって良いのではないかという話も出ていましたが、まあ、始まった日の12月1日にされたかと思うのですが、これまでの経緯等をご覧になってのご意見を下さい。
A できればもっと訓練の頻度を増やしたいところですが、影響が大きいのでなかなか頻度を上げるのは難しく、当面は現状の1年に1回程度の頻度が妥当かと思います。しかし、本来はもっと頻度を上げて訓練を行ったほうがよい趣旨からして、いつやってもよいということであれば、12月1日というのは、緊急地震速報を警報として発表するようになった日ですので、この日に訓練を行うことが特段悪いとは思いません。一方、月に一度程度日付と時間が決まっていて、緊急地震速報が発表されるとこんな音が鳴りますということが周知できれば、これは非常にいいことだろうと思うのですが、とんでもない音がすると受け止める人もいるので、なかなか簡単ではないと思います。
 訓練はいくつかの役割を持っていて、一つは実際に机の下にもぐったり、例えばこの部屋だったら今、何をしたらいいかを考えていただいたりすることがあります。そしてそれを実際にやってみると、意外に腰が痛かったり、もぐるのに時間がかかったりするなど、課題が出てきます。それから、物を積み上げているところに気がつくなど、日頃からの備えを点検するという意味での訓練のメリットもあると思います。もう一つ、訓練報を使うことについては、実際にどんな音が鳴るのか分かるということがあります。これは本来訓練報を受信する以外の方法で試していただいても良いのですが、情報の持っている意味合いがかなり大きいので、訓練という傘の下で試していただく方が安心かもしれません。定期的に番組の中で音を出して下さっている放送局もあると聞きますし、ホームページでクリックすると音が聞こえるもの、それから携帯電話の一部には試すことができる機能を持った機種もあると聞いております。こういったことを含めて、緊急地震速報の周知を進めていかなければならないと思います。

Q 速報を重視しているということもあって、この間の福島のように、最初に決定した震源がだいぶ違ってしまうとか、範囲が違っているとか、あるいは、結果的に間に合わなかったじゃないかというような批判をこれまでも受けてらっしゃるかと思うのですけれども、それでもこれを出すことの重要性みたいなものを、きちんと取り組んでいくことの大切さみたいなものはどういうことでしょうか。改めてお願いします。
A 地震の際に、ほんの少し前でも、これから地震が来るという情報があるだけで、かなり混乱を避けられる可能性があって、このシステムが出来上がっていると思います。実際には、非常に短時間で解析して情報を発表しますので、情報の精度が十分でなく空振りをすることが何回かあって、速報が来たのにほとんど揺れないということをご経験された方もあると思います。それから、震源に極めて近いと原理的に間に合わないので、揺れたのに間に合わないというクレームも出ると思います。ただ、これまでの地震による災害の状況を見てみますと、例えば家の中の家具が倒れたり、物が落ちてきたりすることで被害が出ることも少なくありません。実際にそれで命を亡くされた方もいらっしゃいますから、そういった被害を少しのことで避けられる可能性があるのなら、それは有意義ではないかと思います。うまく使えば命が助かることにつながる情報ですので、情報の限界とメリットをご理解いただいた上でご活用いただきたいと思います。


(以上)

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