長官記者会見要旨(平成22年3月18日)

会見日時等

平成22年3月18日(木) 14時00分~14時30分
於:気象庁会見室

発言要旨

 まずはじめに、2月中旬の松本空港および2月末から3月初めにかけての三宅島空港において発生した気圧の通報ミスに関しまして、関係者の皆様に大変ご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした。
 また、松本空港の件につきましては、事案の公表という点につきまして、私の注意が至りませんでした。重ねてお詫びを申し上げたいと思います。今後は、こういった事案につきましては、速やかに公表して参りたいと思っております。

 先月27日にチリ中部沿岸でマグニチュード8.8の巨大地震が発生しました。まずは、この地震により犠牲となられた、あるいは被災された現地の方々にお悔やみ、お見舞いを申し上げます。
 この地震により発生した津波は、翌28日午後に日本沿岸に到達しました。気象庁では、これに先立つ28日9時33分に、太平洋沿岸各地に津波警報等を発表し警戒を呼びかけたところでございます。特に、3メートル程度の津波が予想された三陸沿岸(青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県)には、大津波の警報を発表して厳重な警戒を呼び掛けました。
 観測された津波の高さの最大は、岩手県久慈港などで1.2メートルでございました。また、後日の現地調査では、陸上の建物等に残された津波の痕跡をもとに津波の高さを推定いたしましたところ、岩手県の陸前高田市で1.9メートルでした。
 予測した津波の高さと実際に観測されました津波の高さを比較いたしますと、多くの予報区で予測した津波の高さより小さな津波しか観測しておりません。このように津波の予測精度はまだまだ十分ではないというのが現状でございます。ただ、現在の予測精度等を考えますと、今回の大津波や津波の津波警報の発表は適切であったと考えております。
 今回の経験を踏まえて、引き続き津波予測精度の向上に努めてまいりたいと思っております。当面、海外の地震による津波について、想定する地震のパターンを増やしてまいります。、計算にあたりましては、より詳細な海底地形を反映してシミュレーションを行うことに加え、太平洋に存在するより多くの観測点と比較をするべく、シミュレーション結果をより多くの観測点について出力しておく、といった形で、津波予測のデータベースの改善を行うことをまず第一に考えているところでございます。


主な質疑応答

Q 津波の件なんですけれども、先ほど長官は(津波警報の発表が)適切だったということですが、当時、関田課長が「予測が少し過大だった。お詫び申し上げる」という表現を使って、私自身は予測精度はどの程度か分かっているものですから、お詫びする必要はないんじゃないかと内心思いながら聞いていたんですが、そしたら、翌日、閣僚の大臣の方々からお詫びする必要はないという意見もありましたが、その辺の按配というものを長官はどうふうにお考えですか?
A 関田課長は、津波予測技術という観点から、技術開発に携わっている者として、今の段階で必ずしも予測精度が十分でなかったという、彼の見解を述べたのだろうと思います。防災情報という観点からは、津波予測精度の現状等を踏まえると、今回こういった津波の警報を発表したことは、私としては最善だったと思います。

Q 空港の気圧の件は、たまたま2件続いたのか、気象庁の体制に何か問題があるのか、その辺はどうお考えでしょうか?
A 松本空港につきましては、障害が発生しそれをバックアップする際にミスが生じてしまいました。これは頻繁に起きるわけではありませんが、頻度の少ない事象に対してのバックアップが不足していたということかと思います。
一方、三宅島空港の場合は、火山ガスの関係で特殊な観測施設になっているところで、そこを点検する際に最終チェックに抜けがあって、このような事態を生んだと考えています。
 そういう意味で、日頃あまり起きないことに対してきちんと対応できるように、それぞれのトラブルが発生した直後に、すぐに指導文書を出しました。
 今、ご質問にあった組織的ということではないと思っていますが、このような短い間に2件続いたこと、また、航空官署における気圧の観測が航空機の安全運行にとって非常に重要なパラメータとなっていることを再度確認し、かつ点検体制を徹底したいと考えて、先週3月12日に総点検をするよう指示をしたところでございます。

Q 「組織的というものではないと思っている」とおっしゃったのですが、つまり気象庁の人材育成とか教育研修とか人員体制とか、そういう問題ではないという認識になりますか?
A 障害などのときにマニュアルに沿って対応すれば、きちんとした仕事ができると思われますが、慣れていない作業で慌ててしまったために起きたのではないかと思っていますので、組織的な問題ではないと思っています。

Q 先ほど公表の件に言及されていらっしゃいましたが、長官ご自身が至らぬ点があってという表現をされていましたけれども、松本空港の事案について、長官はいつお知りになって、一部報道があるまで公表されなかった経緯と理由を教えて下さい。
A 2月12日の件について、私が報告を受けたのは2月17日でございます。報告が遅くなっていたことについては、今後は速やかに行うよう厳重に指示したところでございますが、私が報告を受けた際に、この程度の影響であれば公表しなくてもよいだろうと思いました。私の判断のミスに尽きます。

Q この程度、というのは、具体的にはどの程度ですか?
A 航空機の高度に密接にからむQNH(海面校正気圧による高度計規正値)を打ち間違えたということに対して、私の認識が甘かったということです。

Q 認識が甘かったということは、それがどれだけ重要なミスかということに対して認識が甘かったということですか
A 公表するということに思いが至らなかったということでございます。

Q 公表する必要がないと判断したということですか?
A 結果的にはそういうことです。

Q 公表する必要がないと判断した理由がよく分からないんですけれど、単純なミスだったからということですか?この程度なら大丈夫という判断がよく分からないんですが。
A 結果的に大きな影響を生んでいなかったというところがあろうかと思います。

Q 飛行機が着陸をやり直して、40分遅れたわけですが、それは結果的にそんなに大きな問題ではないと判断されたのですか?
A その時点では、そう思っておりました。

Q これが例えば怪我人が出たりとか、そういった事態になっていたら、速やかに公表していたわけですか?
A そうです。

Q 今後は、遅れ程度でも気象庁のミスによって航空機に運行に支障が出た場合は、どんな場合でも公表していきたいということですか?
A はい。そうしたいと思います。

Q しつこくて恐縮ですが、12日に発生して17日に耳にされたというこの5日間のタイムラグはどうして生まれるんですか?
A 報告が上がってくる経路のところどころで遅れがあったことと、土日をはさんでいたということもあって遅れたものです。しかし、このような事案の報告が遅れるのは非常によくないことですので、速やかに報告するよう厳重に指示をしたところでございます。

Q 航空会社の方に、気象庁の方から正式にお詫びに行ったりはしたのですか?
A はい、行っています。通報ミスをしたその日に、担当官がJAC(日本エアコミューター)さんの方にコンタクトをとっていると聞いております。月曜日には空港分室長から謝罪に行っています。

Q 今、いみじくもこの程度と長官がおっしゃったのですが、5日間というタイムラグを見ると全庁的にこの程度という認識があったのではないですか?
A 全庁的にあったかどうかは疑問ですが、航空機の安全に関わる重要な観測をしているということを再認識させるため、重ねて指示したところでございます。

Q 日頃の業務として、コンピュータまわりのシステムを監視するという業務のウェイトが増えていると思いますが、職員の方も気象庁に入る時に思い描いた業務と、今椅子に座っている業務とのギャップがあるようにも思うのですが、どうお考えですか。
A どんなイメージを持って入庁されたかは、人それぞれだと思います。システムは、通常時は円滑に仕事をしてくれますが、障害を起こした時には、そばにいる人がうまい手を講じなくてはならないと思います。観測者はじっとパソコンを見ているだけではなく、航空官署においては目視観測を行っております。気象の変化が激しい時には、目視観測を行ってそれを入力し、システムで自動的に取り込まれた気圧等とともに通報するという仕事を行っているわけですから、大きな乖離があるかどうかは、人それぞれだと思います。

Q システムの話がありましたけれども、5月から市町村警報等の新しいシステムが入り、システムも複雑になると思いますが、いまどういうふうな訓練をしたりされているのでしょうか。
A 市町村警報につきましては、予報作業支援システムというものを導入して実際の作業を行いますが、現在、その実機を入れて訓練をしています。この訓練につきましては、半年以上前から、擬似的な環境での訓練、かなり実機に近い環境での訓練、実機が入って運用に非常に近い形での訓練、といったことを行っており、今、訓練の真っ最中だと思っています。

Q 訓練の最中に何かトラブルを起こさせてということは行っていますか?
A (予報部)市町村ごとの気象警報等の発表につきましては、予報作業の慣熟訓練の中で、可能な範囲で障害の状況も想定しつつ、本番に備えたいと考えているところでございます。

Q 桜の開花予想を気象庁としてやめられたのですが、その後、民間事業者がいろいろな予想を出して、結果的に今年は高知がものすごく早かったのですが、民間の予想を長官が見られて、どのように感じられていますか?
A 昨年までは開花予想を行っていた立場で拝見すると、 (民間事業者さんが)それぞれ工夫をしていらっしゃるなと思います。前回も、前々回も似たようなご質問がありましたが、私としましては、表示方法や発表される場所など、さまざまな創意工夫が行われていて、そしてお互いに競い合うような形で使いやすい予想が出てくることはいいことだと思っています。

Q 津波の話で、「私としては最善だと思っている」という話だったんですが、長官としてはお詫びの必要はなかったとお考えですか?
A お詫びの中身だと思います。技術開発する立場でもっと良い予測ができたらいいのにという観点と、限られた情報の精度の中で防災情報を出していくという観点があり、防災情報の観点では我々としては最善を尽くしたと思っていますが、先ほど申し上げましたように予測精度については決して十分だとは思っていませんし、できればこれを改善していきたいと思っていますので、シミュレーションによるデータベースの充実を図っていきたいと考えています。

Q 関連なんですけど、防災情報を出す上では謝る必要はなかったと思ってらっしゃるということですが、技術担当として課長が個人で謝ったということについてどのようにお考えですか?
A 彼のパーソナリティらしいなと思います。一生懸命やっているからそういうことになるんだと思います。

Q 津波の警報の関係で、当日、原口総務大臣がツイッターでまもなく警報が出るとか警報を解除されるとかということを逐次情報発信されていて、気象庁が警報を解除する前に総務大臣の方でまもなく解除されるということを情報として出していたということがあったようなんですけれども、防災情報の一元化という観点から情報発信のあり方について、長官の御意見をお伺いしたい
A 我々自身、記者会見で予告していますし、それをテレビなどでご覧になってツイッターに載せるのであれば全く問題ないと思います。事実関係を、私はきちんと知りませんので、それ以上のコメントはできません。

Q 経緯の確認はしてらっしゃらないのですか?
A しておりません。

Q 防災情報一元化ということを日頃唱えてらっしゃる立場としては、その辺はあまり馬鹿にできないことかと私は思うのですが、そういう認識は持ってらっしゃらないのでしょうか?
A 少なくとも、私どもが出した情報を「こんなのが出た」と流される分には、ソースが明確であれば一元化されているわけなので問題ないと思っています。

Q  それを以前に見通しとして出されていたということが言われているケースについてなんですが。
A それは事実として知りませんのでコメントできません。

Q それをだから確認するということにはならないのですか?そう言われている中で。ウェザーニューズの件と一緒にしようとは思いませんが、閲覧者数の多い有名な大臣のツイッターで、そういう情報が前もって流れているというのは、それは閣内であっても気象庁に一元化されないことになるんじゃないかと受け手としては特に変わらないと思うのですが、確認しようとは思いませんか?
A 今は確認する気はありません。

Q 必要性はあまり長官として感じていないということですか?
A そうです。ただし、予告情報というもののあり方をこれから考えていかなくてはならないと思っています。

Q 当時、会見等で警報が解除されるまでは絶対に避難はやめないで下さいと関田課長をはじめ訴えてらっしゃる中で、総務大臣から「間もなく警報は解除される」とあると、「ということは危険性は低下したんだな」というように読んだ方は判断をされるのではないかと思います。すると避難行動をやめて帰宅される方も出てくることも十分考えられると思うので、締めるところは締めればいいかと思うんですが、あまりそういうお考えはないですか?
A 憶測でしかないのですが、時間的にすごく間があると問題ですけれど、たぶん、そういうことではないのですよね。「1時間先に解除するだろう」ということが流れるのはよくないと思いますが、そういうことではないのでしょう?

Q 時間は関係ないと思うのですが
A 今おっしゃられているようなことであれば、そんなに大きな時間差がなければ、実質的な問題は起きないのではないかと思います。

Q 今回、民主党政権になって初めて、全国的な規模で危機対応を迫られるという事態だったと思うのですけれど、前政権と比べて、気象庁から情報伝達の仕方だとか、情報の吸い上げられ方で変更になった点は具体的にありますか?
A 危機管理のルートで情報共有をしているので、そこは同じだと思います。

Q 例えば官邸とか対策室とかに出す人間を増やすようになっただとか、違う人間を入れるようになったとか、細かな点かもしれませんが変更になった点はないでしょうか?
A  (企画課)官邸と色々と情報共有をしていますが、特段、新政権になって変わったことはございません。


(以上)

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