長官記者会見要旨(平成22年1月21日)

会見日時等

平成22年1月21日(木) 14時00分~14時20分
於:気象庁会見室

発言要旨

 今年もどうぞよろしくお願いいたします。

今月4日、東京大学名誉教授でいらっしゃいました溝上恵(みぞうえ めぐみ)先生がお亡くなりになりました。溝上先生には、昭和60年4月から平成20年3月まで、23年という長い期間にわたりまして地震防災対策強化地域判定会の委員をお願いし、特に平成8年以降の12年間は会長の重責をお願いしておりました。

 先生は、東海地震の発生の仕組みに立ち返って監視を行なうことが極めて重要であるとの観点から、大地震の直前にゆっくり動き始めた断層の動きを「前兆すべり」という形で捉えるという現在の判定基準を作られるとともに、東海地震の予知情報、注意情報、観測情報という現在の情報体系の構築に関しても適切にご指導いただくなど、東海地震予知体制の強化・高度化にご尽力をいただきました。  ここに謹んで先生のご冥福をお祈りいたします。

 日本時間の今月13日早朝、ハイチの首都ポルトープランスのすぐそばでM7.0の地震が発生しました。この地震は、震源が浅く都市のすぐそばで発生したという点で、阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震と似たところがございます。現地では多数の死傷者や家屋の倒壊など甚大な被害が生じています。犠牲となられた方々に深く哀悼の意を表します。

さて、今年5月から、気象庁では大雨や洪水などの気象警報・注意報について、市町村を対象として発表したいと思っています。これは、市町村長が行う避難勧告等の防災活動を支援することを大きな目的としていますし、あわせて住民の方々にも、実際に住んでいらっしゃる市町村にどんな気象警報・注意報が発表されているかがわかりやすくなるメリットがあると思っています。これによって、少しでも集中豪雨などによる災害の防止・軽減に役立てばと期待しています。詳細につきましては、今日この後、報道の皆様への説明会を開催いたしまして、詳しく説明させていただきます。

 最後に、昨年12月1日に実施した緊急地震速報の訓練の結果につきましては昨年の12月15日に一度担当の方から御説明し、前回の会見のときにも皆様から色々なご意見を頂きました。どうもありがとうございました。  その後もさらに訓練の参加者からご意見を伺うなど、訓練の評価や課題それからその対応についてとりまとめを進めて参ったところでございます。今日その結果がまとまりましたので本日夕方報道発表させていただきます。詳しくはそちらの資料を御覧下さい。今回の訓練の中で明らかになってきた課題を改善して、引き続き訓練に臨んでいきたいと思っています。



主な質疑応答

Q.市町村ごとの警報・注意報は5月からということでしたが日にちは決まっているのですか?
A.近日、報道発表を予定していますので、その際にお話させて頂けると思います。

Q.5月というのは決まっているのですか?
A.はい

Q.連休明けですか?
A.連休以降です。今の段階は、「5月」という表現にさせて下さい。

Q.今度の報道発表は、日付も含めてということですか?
A.はい、予定ということで入れさせて頂けると思います。

Q.年頭の記者会見ということで今年の抱負、市町村警報の導入などありますが、その他何かありましたらお願いします。
A.既に平成21年度の予算の中で整備が進められていて、それが花開いて皆さんに直接関係するような業務の筆頭としては、市町村を対象とする警報というのがあります。また、現在竜巻注意情報を発表していますが、これをもっときめ細かい形でお届けできないか、すなわち、ナウキャストタイプの図情報にして竜巻の発生確度をお届けできないか検討しています。さらに、雷の情報についても似たような形でできないかということを検討していまして、今年中にはなんとか実現していきたいと考えています。静止気象衛星につきましては、整備予算が認められており、着実に整備を進めてまいりたいと思っています。あとは平成22年度の予算が認められればということですが、引き続いての衛星の整備、地震火山関係では緊急地震速報の精度を高めるために地下深いところの地震計を使うこと、気象関係では予報のキーとなるようなスーパーコンピュータといったものについても予算要求していますので、予算を頂いたら対応していくということになると思います。地球環境につきましても、12月に平成22年度予算案を説明した際にお話させて頂いたと思いますが、海洋観測体制の強化ということを考えています。そういったことが今年の大きな課題かなと思っています。

Q.冬の天候についてなんですけれども、寒候期予報や3か月予報では基本的には暖冬もしくは暖冬傾向という予想でしたが、12月半ばから世界的に寒波が襲来したり、最近はまた暖かくなってきているんですが、暖冬予想に対する信頼と、今後の見通しの変更についてどのように見ていますか?
A.気候の予報は色々難しいところもございまして、寒候期予報を出す時点においてはエルニーニョ現象が天候を支配する大きなファクターだろうということを念頭において「暖冬寄り」という予報が出たものと思っています。実際は、北極振動という現象が解析されておりまして、寒気が入りやすい状態が比較的長く続きました。エルニーニョ現象という一つの力ともう一つ大きな別の力との間のせめぎあいの結果で、このような状態に至ったと聞いております。エルニーニョ現象というのはある程度持続性がありますので、そういうものを使うと季節予報の見通しというのは可能性があるわけですが、北極振動はいつどこからどの程度の強さが起こってくるのかは研究が緒についたところというふうに聞いております。  今回は、一週間ほど前からは、センスが逆になる、すなわち暖かい方向になるということを言えていたようですけれども、非常に長い前からこういう現象が起こるというのは、まだ予測が難しい現状だと思っています。
 どういう現象がどう効いてくるのかは、色々なデータの蓄積で少しずつわかってきている、それからそういう状態をある程度再現することもできつつあるということは、長い道のりを一歩ずつ進みつつあると思っています。

Q.いわゆる冬の期間とされる2月まであと一週間ですが、暖冬傾向という見方は変えないのですか?
A.(地球環境・海洋部)気温の変動が大きい状態ですが、沖縄奄美では平年を下回っていますがあとはほぼ平年程度という状況です。今後の状況を見ましても、今特に変えるということは考えていません。

Q.12月25日に桜の開花予想をやめるという話があって、測候所の廃止についても最終年度分の発表がありました。一方、気象研究所は気象庁の組織として残ることになりました。気象庁が国の組織としてやるべき業務について、どのように考えていますか。業務の縮小・廃止が非常に目立つがそういう方向でいいのかどうかを含めて、何かありますか?
A.国の機関としての気象庁の使命は、自然現象を観測・監視・解析・予測して、災害の防止軽減に役立つこと、あるいは地球温暖化の対策の推進に寄与していくことが大きな骨だと思っており、国としてやらなければならないことは、そういうことだと思っています。もう一つは、昨今の技術、気象学の理解の深まり、情報通信技術・観測技術の進展、そういうことを踏まえますと、今までと同じことを続けていく必要は無いという分野も出てきていると思います。従って、皆様から見ると組織が無くなったというようなものにつきましては、役割を終えていったもの、あるいは、一方では少し力を落としても、もっと大きい果実が取れるところにパワーシフトして業務を変換しているというふうに私は考えています。

Q.気象研究所が国の機関として残ることはどう受け止められていますか?
A.基本的には、気象研究は気象業務の基本でございます。すなわち、我々は自然現象を対象として仕事をするわけですから、科学技術が大きな背景となっていて、そこに技術開発・研究が極めて重要であることは論を待ちません。それをどういう形で進めるかという問題だと思います。独立行政法人化というのもそれなりに研究の促進にメリットがあるのではないかと思っていますし、そういう意味で私たちはこれまで法案を提出してきたところでございます。一方、国研は国研なりに、それなりのメリットがあろうかと思います。今後は当面、国立試験研究機関として業務を続けていくわけですが、その良さを生かし、また独立行政法人化を検討した際に出てきた課題をポジティブに活用して、さらに研究開発がすすむことを期待しています。それから、この後どうするかは政府の方針ですので、そこがクリアになった時点で、また考えることかなと思っています。

Q.気象警報の市町村単位での発表について大きな枠組の変更になると思いますが、これからどんな準備をしていくのか。また、一般の国民に周知が十分でないと思いますが、どういう普及・周知をしていくのか。そのあたりをお願いします。
A.後ほどの説明会でも詳しい説明があろうかと思いますが、私の理解している範囲でお話させていただきます。今はご承知のように二次細分区域を単位として警報が出ていますが、市町村単位で組み替えますので、私たち自身としてそういう情報を発表できる環境を用意しなければいけません。予報作業に使われるシステムの導入や慣熟が現在行なわれている段階でございます。次に、受けていただく方、放送していただく段階での問題ですが、市町村となりますと二次細分と比べて4、5倍に、情報量が増えます。それを細かく表示するということが一つの大きな課題だと思っています。
 市町村の防災担当者にお届けする仕掛けは我々の方で用意していますので、そこでは何々市町村には何が出たということが伝わる仕掛けが出来上がっています。
 一方、テレビ・ラジオといったマスメディアでは、情報を表現する量に限りがあろうかと思いますので、我々としては従来の二次細分的な要素で伝えていただくのもやむなしと思っています。その他のメディア、携帯電話あるいはインターネットが普及かつ拡大していまして、細かな情報は、そういう媒体にとっては得意な分野ですので、それらの媒体を通じて情報も伝わっていくのではないかと思います。それから、一般の方々への啓発については、リーフレットを作ったり、折に触れて報道して頂いたり、そういうような形で普及啓発を行なっていきたいと思います。


(以上)

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