長官記者会見要旨(平成21年4月1日)

会見日時等

平成21年4月1日(水) 17時00分~17時30分
於:気象庁会見室

発言要旨

 4月1日付で気象庁長官に就任いたしました櫻井邦雄でございます。よろしくお願いします。

 国民生活の安心・安全を確保するため、気象庁は様々な情報を発表しておりますが、こうした防災情報を国民の皆様にお知らせし、ご理解をいただくためには、報道機関の皆様のご協力が不可欠です。日頃から、こうした情報・知識の周知にご協力いただいておりますことに感謝を申し上げますとともに、引き続きこれからもご支援を頂きたいと思っているところでございます。

 私達の仕事では、気象・水象・地象に関する情報を皆様にお届けするということが重要なアウトプットでございます。その情報の中身を充実することがとても大切なことと考えています。例えば、地震や火山ということを考えましても、国内で地震がないという地域はないわけでございますし、全国に多くの活火山がございます。そういう意味で、地震、そして地震にまつわる津波、あるいは火山噴火による被害の軽減ということに関して、地震、津波、噴火といった防災情報について引き続き、発表の迅速化、精度の向上、内容の充実ということを意識して仕事をしていく必要があろうかと思っております。

 それから、気象につきましても、局地的な大雨といった短時間に変化する現象から、地球温暖化のようなスケールの長い変化まで、様々な情報を発信しておりますが、こういった情報についても充実を図ってまいりたいと考えております。ただ、情報というものは皆様もよくご存知のように、観測し、そのデータを集めてきて解析をして、そして予測したりして、総合的な判断をして情報としてお届けするといったプロセスを踏んでおりますので、情報の充実というのは出口だけのところであるというわけではありません。観測から情報発表に至るまでの各プロセスのバランスをとってうまくやっていかなくてはいけません。そう簡単に答えがでるものではありませんが、鋭意、力を入れて参りたいと思います。

そうした点で、近々見えておりますところでは、台風進路予報の5日先までの延長、局地的大雨から身を守る方法の利活用、これは情報をどのように使ったらいいかということですが、これらを推進していくこと、気象レーダーの更新時間を少しでも短縮して局地的な大雨に対応していくとか、緊急地震速報の様々な啓発活動、利活用のリーフレットの提供といった皆様がご利用頂けるような環境を作っていくこと、地球温暖化の観測・監視体制の強化といったことも当面の具体的な課題と思っております。

こういった新しい情報を取り入れまして、皆様に情報を単に出すだけではなかなか使って頂けませんし、私達も「いったいどうしてこの情報が役に立つのか」ということを含めてご説明し、利活用方策も含めてご理解頂きたいと思っています。それから、情報というのは往々にして「必ず当たる」というところを出発点に動かれることが少なくありませんが、時にははずれることもあります。そういった限界をも認識した上でご利用いただけるということが理想ではないかと思っておりますので、そういった意味での周知広報活動に引き続き努めて参りたいと思います。

大きなところは、このように考えております。

また、先月9日に発生しました(財)気象業務支援センターの気象情報配信システムに発生した配信遅延につきまして、3月13日に監督命令に出しましたところ、支援センターからの回答が昨日31日に提出され、現在、内容を精査中でございます。今後、こういったことがまた発生することがないように、防止策を確実に実施していくべく指導して参りたいと思っております。

私からは以上です。どうぞよろしくお願いいたします。


 

主な質疑応答

Q. 昨年は「ゲリラ豪雨」などの言葉のように局地予報の重要性がクローズアップされたが、局地予報の取り組みについて、どのように考えているか?
A. 降るだろうと思って予報や警報を発表しますが、発表してもすぐに現象が終わってしまったり、大丈夫かなと思っているときにザーッと降る、これは現場の予報官も非常に苦労しているところです。
御指摘のありました局地的な大雨、さらには集中豪雨といった比較的寿命の短い現象は、激しい現象ですので、大きな災害をもたらすことも少なくありません。私としては早くその部分に力をいれて良いものにしていかなければと思っています。それには観測を充実することと予測システムを充実すること、その両方でが必要ではないかと考えています。例えば、先ほどお話したようにレーダーの観測間隔を細かくして実況を早く獲得していくこと、また、レーダーのドップラー化をすすめて、風の3次元的な分布を把握し実況の解析を丁寧にしていくこと、また、数値予報モデルをできるだけレベルアップして、数値予報の改善を図っていくこと、そういった方向でこれからいろいろと準備をして参りたいと考えています。

Q. 民間による気象業務も定着してきた印象があるが、気象庁と民間気象会社の関係について、どのような関係がよいと考えるか?
A. 以前、気象業務法の改正が行われ、気象予報士ができた時代に私もその仕事にたずさわっていたこともあり、民間事業者のご活躍にはかねがね関心を持っています。国の機関というものは一人ひとりの固有の要望に応え切るというのは大変難しいので、気象情報の取得ですとか、活用方法のコンサルテーションですとか、我々の出す汎用的な情報をユーザの目的に深く踏み込んでコンサルテーションに近いことをして良い情報を作ってお渡しするということを民間事業者に期待しているところです。要望が多様化していて、情報を元にどういう判断をするか、こういうふうに使えたらいいのにといったところがたくさんあるのではないかと思います。民間事業者の方々も色々苦労されている部分だと思いますが、そういった部分で活躍していただいて、私たちはどちらかというとその材料となる情報と防災気象情報の提供に力を注ぐというのがいい流れではないかと思っています。

Q. 昨年、気象庁はミスが相次いだ時期があって、当時の長官が現場の仕事量が増えているという主旨の発言をされたと思うが、地方の官署を含めて現場の仕事がどんどん増えていく一方で人がどんどん減っていく。このような状況の中で、どのような工夫をしていきたいと考えているか? また、そもそも本来重要な使命を負っている気象庁の人員がジリ貧になっていっている現状をどう考えているのか?
A. 私が気象庁に勤めて40年近くになりますが、その間に確かに人員はかなり減ってきたと思います。それは現在の通信・情報処理・観測技術といったものが当時と比べれば大きく違っていますので、そうしたものを活用することで高度かつ密度の高い情報提供が比較的少ない人数でできるようになってきたのだと私は理解しています。もし、昔と同じスタイルの仕事をして人がどんどん減るならこれはきついと思いますが、例えば、予報の支援資料が充実してきているとか、観測データの表示方法を工夫することで、今まででしたらとても解析できないようなことも理解できるようになってきていますので、私としてはむしろいい刺激になっているのではないかと思っています。仕事の密度がもしかすると多少は高くなってきているところはあるかと思いますが、良い情報を良く考え良い判断につながっていくような一種の緊張感が出てきているとも思います。

Q. 仕事量は増えているのか?
A. 仕事量をどういうふうに見るかだと思いますが、質が変わっているとは言えますが、量となると一概には評価ができないと思います。

Q. 北朝鮮のロケットの打ち上げの日が近づいてきて、周辺の気象情報の関心が高まっているが、気象庁はどのように情報収集しているのか?
A. 気象庁には世界中の気象データが常に集まっていて、そのデータを基に大気を解析し、予報を出していますので、それをベースにだいたいこんな様子だろうと推測することはできます。ただ、アメダスや地上気象観測といったデータを合わせた上で発表する国内の天気予報と違って、同じような詳細な判断を行なうのは難しいのですが、大体こんな様子だろうとある程度はお答えできていると思います。

Q. だいたいどんな様子なのか?
A. 現時点での見通しでは、4日から8日にかけて当該地点付近では大きく天気が崩れる日はない見込みです。これは広域な大気の流れに基づいた判断ですので、局地的な影響によって変わりうることもあります。また、予報は対象となる期間が先になればなるほど予測が難しくなってきますので、日が近づくにつれて予測が変わってくる可能性はありますが、現時点ではそのような見通しです。

Q.  先日のGOSAT打上げを例として、地球温暖化等の時間的に長いものを対象とした海や広域の観測については、気象庁だけではできないと思うが、関係機関との協力はどう考えているか?
A.  おっしゃるように、海や広域の観測につきましては私どもだけでは全然話にならないと思います。海洋のデータに関しては各研究機関と観測データを共有し、交換するという体制が既にできあがっていますので、それにより広汎なデータを集めて解析するということを行なっております。また、衛星につきましても、色々な目的で上がっている衛星については場合によってはその機関との協定を結んでデータを相互利用したり、あるいは国外であればオープンにされているデータを利用して総合的に解析するということを行なっております。


(以上)

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