長官記者会見要旨(平成20年9月18日)

会見日時等

平成20年9月18日(木) 14時00分~14時20分
於:気象庁会見室

発言要旨

現在台風13号が九州南部に近づいています。雨が降り続いているところもあります。今後も雨や風等に注意警戒をお願いします。
この夏は、台風はあまり接近しないで短時間に強く降る大雨が例年に比べて多数発生しました。被害を受けられ方には心よりお見舞い申し上げます。
気象庁は現在の技術としては最善の防災気象情報を発表したと思いますが、利用の側面で様々な課題が明らかになったと思います。
国民の皆様に、各種防災気象情報を有効に御利用頂けるよう周知広報につとめてまいりたいと思います。
また、短時間に強く降る雨の予測は非常に難しい課題ではありますが、気象庁としましても予測技術開発を進めて参りたいと思います。

10月1日で緊急地震速報の一般提供開始以来、1年が経過することになりますが、これまでに8回の緊急地震速報の警報を発表しています。
岩手宮城内陸地震におきましては、日頃の訓練が生かされて本当によかったという事例もありましたが、周知広報が不十分ではないかと考えられる事例もありました。
緊急地震速報をより有効に活用していただくために、緊急地震速報の特性・限界、さらに日頃からの地震に対する備えや訓練の重要性につきまして周知広報に努めて参りたいと思います。ご協力のほどよろしくお願いします。

すでに平成25年度を目途に気象庁本庁の庁舎が虎ノ門に移転するという計画が公表されていますが、今般、観測施設である露場(ろじょう)につきましても環境省の御協力を得まして、北の丸公園内に移転するということがほぼ決まりまして、明日の閣議で御了解を仰ぐ予定となっています。

先般以来お騒がせしていますが、人為的ミス等の発生を受けまして、気象庁業務信頼性向上対策本部を中心に対策を進めています。
今日も会議を行いましたが、緊急総点検は既に完了しており、今後は主に3つの取り組みを進めて参りたいと考えています。
一つはシステムの信頼性向上対策です。手始めとして各種情報の配信先の整合性確認を支援するツールの開発を行うなど、信頼性の高いシステムとなるよう努力したいと思います。
二つ目はヒューマンエラー対策です。既に有識者をお招きしてヒューマンエラーに関する講演会を行っていますが、全職員が理解できるものにしたいと考えています。
三つ目は職員の意識向上です。人間は必ずミスを犯すものではありますが、ヒューマンエラー対策として個々のミスから対外的トラブルを引き起こさないために、各業務の社会的意味や気象庁が目指す業務改善の大きな動きなどに関する情報共有を推進し、職員のモチベーションを高める取組みを進めています。そのため、研修の強化とともに、本庁の幹部職員が地方を視察する際に、ダイレクトトークと称する職員との直接意見交換などを行っています。また、各職場内で率直に意見交換を行う委員会のようなものを全国の各官署に設置する取組みも進めていきたいと考えています。

今後も皆様の信頼に応える防災気象情報の発信に努めて参りたいと思います。




 

主な質疑応答

Q.十勝の地震では、ほぼ全ての地域で緊急地震速報が間に合ったが率直な感想は?
A.緊急地震速報の原理的な特性から、震源のすぐ上では間に合わない、ということがあります。震源のすぐ上で間に合わないからやらない方がいいというものではなく、少しでも減災に役立てばいいという考えから導入されたものであり、その点を御理解頂ければと思います。

Q.緊急地震速報の導入から一年経つが、総括すると?
A.導入にあたっては、ネガティブな面に関する懸念もあったが、こうした点は解消しつつあるように思う。緊急地震速報という名前はかなり浸透したと考えているが、数秒から数十秒しかないものを有効に活用してもらうには、その特性や利活用策に関する理解が必要である。何も知らない人に役に立たないと言われることがないよう、利用促進に向けた周知広報を進めていく必要があると考えている。

Q.緊急地震速報での技術的なとりくみの中で、民間の会社が地震計をとりつけたりしているが、どう思うか?
A.予報業務許可事業者は46となり、また鉄道などでは自前で地震計などつけ緊急地震速報と合わせて利用するところもあり、きめ細かなサービスや利用のため独自な技術的とりくみは結構なこと。その上で、緊急地震速報のシステムは、防災科学技術研究所と協力して地震計800箇所のデータも活用するなどしており、緊急地震速報の原理を扱うシステムとして、国民の安全のための社会基盤のように活用していくのがよいと思う。

Q.信頼性向上のため、取り組むとした3つの課題とは、システム信頼性向上とヒューマンエラー対策と何か?
A.職員の意識の向上のための仕掛けです。

Q.平年よりも新規事業が少ないような気がするが次期ひまわりの影響がでているのか?
A.特にありません。例年通り気象業務の三つの柱として主要施策の要求をしております。なお、海底ケーブルの整備が一段落するなど個々の事項での変動はあります。

Q.気象庁の仕事はどんどん増えているのに人は増えない中で、さらにリストラのようなことをするとモチベーションを維持できないのではないか?
A.新規業務を行う時には増員要求も行っています。また、モチベーションの維持については、先ほどお話したように業務信頼性向上対策本部の課題としても積極的に取り組んでまいりたいと考えています。

Q.緊急地震速報の二年目の周知広報の内容や方法について考えているか?
A.二年目は、緊急地震速報の原理や特性.限界などをよりご理解いただくとともに、利活用に必要な日頃からの取組みの重要性などをより積極的に周知広報してまいります。その一環として、緊急地震速報開始から一周年を記念した講演会なども開催する予定です。



(以上)