長官記者会見要旨(平成18年12月14日)

会見日時等

平成18年12月14日(木) 14時00分~14時13分
於:気象庁会見室

発言要旨

この一年を振り返ってみますといろいろと災害がございました。気象の側面では平成18年豪雪、梅雨前線による大雨、特に7月の梅雨前線による大雨は平成18年7月豪雨と命名したわけでございますけれどもそれにより大きな被害がでました。

それから台風第13号による被害、この中では延岡市で竜巻が発生したというのが非常に大きいことであったかと思います。そして、10月に急速に発達する低気圧により大きな被害が、特に船舶などの被害がありました。そして、11月には寒冷前線に伴う大きな竜巻が発生し、被害があったということでございます。改めて被害を受けた方々にお悔やみとお見舞いを申し上げます。

地震火山の分野では、国内では震度5弱以上の地震が3回と比較的少なく、11月に千島列島沖の地震による津波が発生しましたが国内では大きな災害はなかったということでございます。しかしながら、外国では5月にインドネシアで地震による大きな被害が発生しました。地震災害はいつどこでも発生しうるということで注意を払う必要があると考えております。

このような災害に対して私どもは適切に防災気象情報を発表するということを旨としておりますが、今回一連の災害によって得られました教訓によりましてさらに情報の改善に努めていきたいと思います。

本年、情報の改善に関連して取り組んできました点ですが、緊急地震速報については8月から先行提供を開始しまして、既に200を越す機関で利用が始まっております。今後、12月22日に「第6回緊急地震速報の本運用に係る検討会」が開催され、一般提供開始の時期や利用にあたっての心得等についてご議論いただくということになっており、検討が進むということを期待しております。

気象の分野でも、来年度の実施に向けて新しい台風予報の表示の準備を進めておりますし、また、土砂災害警戒情報につきましても、全都道府県に向けての情報提供の拡大について準備を進めているところです。それから、千葉県柏市にある東京レーダー、これはドップラーレーダーですが、観測された風データが降水予報の精度向上に役に立つということを検証しましたので数値予報への利用を始めたところです。この内容につきましては後ほど資料を配布いたします。

それから、地球環境の分野でございますが、地球温暖化の現状などについて世の中の関心高まっていますが、今年一年の世界の平均気温につきましては、1891年以降5位という高温の状態です。この資料は後ほど配布しますが、今後とも監視が必要と考えています。

以上、年末にあたり所感を述べさせていただきました。

主な質疑応答

Q 先日の千島列島の地震による津波に関連して、津波注意報の解除のありかたなど、見直し作業を進めるとのことでしたが、今の段階で言えることはないでしょうか。
A まず、津波注意報解除の話ですが、基本的考え方としては防災上の安全を確保しつつ、過剰に防災対応しないということで処理するということです。あまりに過剰な注意を呼びかけて全ての人が避難を躊躇するようになるとまた逆効果となると考えています。
一方、津波予報の技術的な検討ですが、今回は震源や海底地形の位置関係から他の海岸や途中で反射してきた津波によって長時間潮位変動が続いたということは技術的に確認ができていますが、どのように津波予報に活用するかについてはさらなる検討が必要です。
それから、解除については、津波予報の活用という側面から関係機関とも今後協議して検討したいと考えています。消防庁でも自治体へアンケートの調査等を行うと聞いており、その結果などを含めまして改善のための検討に努めていきたいと考えております。

Q 緊急地震速報の22日の検討会ですが実用化に向けた最後のまとめの検討会という見方でよろしいでしょうか。
A そうなることを期待しております。

Q 一般提供の時期などについても検討されるということですか。
A 検討いただけるものと思っています。

Q 東海地震の監視活動についてこの一年振り返ってなにかありますか。
A 監視は日夜行っていますが、得られたデータに大きな変化はありません。地震学の立場からはスロースリップとかゆっくり滑りとか、技術的な解明が進んできました。このような努力は続けていき、何か起こったときにより的確な情報を提供できるよう努めていきたいと考えています。

Q 今年は竜巻ですとか、津波ですとか、予想がしにくいような現象が目立ったと私どもは感じるのですが、所感はいかがですか。
A 津波は、長時間潮位変動が続いた点など経験することは少ないことですが、我々の予測や観測技術の範囲内ではないかと考えています。しかし竜巻はその発生は今までも把握し、統計もしていますがこれほど大きな被害を生じ、私も、非常に驚いており、印象に残っております。また国民の皆様も関心があるので何らかの情報提供が必要と考えています。ただし、ご承知のように竜巻そのものの発生を予測するとか、追跡するとかという技術は現在ありません。次善の策として竜巻の発生の可能性を予測してその情報を提供し、防災あるいは減災に役立てることを今後検討したいと考えています。

Q 先ほどの東海地震関係ですが、ゆっくり滑りとか技術的に解明が進んでいるとのことでしたが監視能力が向上しているということですか。
A 監視能力の向上というより、今まであるシナリオに基づいて歪計のデータの変化が加速されるに従って東海地震の観測情報、注意情報、予知情報を発表していくことを想定していますが、歪計のデータの変化の見方にそれ以外のシナリオもありうることも検討していくということです。

Q 津波が反射波により長時間にわたり続く現象はこれまでもあったかと思いますが、実際の予報ないしは解除にその現象を反映するため、技術的な検討、例えば予測にあたって海底地形とかを付加していくことはありますか。
A 技術的に予測の精度を上げるための努力はこれからも取り組みます。ただ、津波は、10センチメートル単位で詳細に予測できるような現象ではないため、予報は最悪の事態を想定して発表しなければなりません。そのような津波予報に対して、防災行動を有効にとってもらうためには、防災機関側と気象庁の双方で互いをよく理解し合い、予報発表やその活用について詰めていくことが大事ではないかということです。気象庁としても、防災機関に対して、解除のタイミング等について意見を伺っていきたいと考えています。




(以上)

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