長官記者会見要旨(平成17年10月20日)

会見日時等

平成17年10月20日(木) 14時00分~14時20分
於:気象庁会見室

発言要旨

昨夜茨城県沖を震源とする地震で震度5弱を観測しましたが、大きな被害もなくて幸いであったと思います。このほかには、国内では最近大きな災害を伴うような気象や地震・火山の話題がないところです。しかし一方で、パキスタンでの地震が起こっており、いつどこでも、大きな災害に見舞われても不思議ではないことを肝に銘じていきたいと考えています。

最近、ある広報誌に、座右の銘というか気にかけている言葉についての原稿を頼まれ、寺田寅彦の言葉とされる「災害は忘れたころにやってくる」を引用して思うところをまとめたところです。この言葉は一説によると寺田寅彦の言葉ではないとされているようですが、いずれにせよ災害対策に常に気配りを求めたもので、地震や津波等への常日頃からの心がけを説いたものです。ただ、最近の状況は、「忘れないうちにやってくる」とでも言うべきところかと思います。いずれにしても、防災気象情報については適時適切な対応を心がけていきたいと考えています。

運輸多目的衛星新2号(MTSAT-2)の準備が順調に進んでおり現在製作の最終段階に入っております。この新2号の整備と打上げをすすめて、1号とともに宇宙からの監視を盤石なものにしたいと思っております。今後も関連する進捗状況を適宜お知らせしますので、皆様におかれましても、国民の皆様へのおしらせについてよろしくお願いします。

主な質疑応答

Q:9月24日にひまわり6号が画像が取得できない状況が起きたが、その原因などの解明はできているのか。
A:メーカーを中心として、引き続き原因について調査中である。現在までのところ、機器が物理的に壊れた可能性は低いと見ており、特定の条件が重なったときに衛星に搭載してあるプログラムにエラーが生じるのではないかとのこと。最終的には、もう少し調査が必要ではあるが、今申し上げた状況であれば地上からの遠隔操作により修復できると考えている。衛星上の主要な機器は全て二重構成になっており、当日の障害時には、不具合が生じたプログラムを内蔵した機器をまず急遽、予備系に切り替えることで対応した。
Q:当日の障害は、カメラの動作の不具合と、電源とカメラとの間の通信系の不具合の2つがあったと当時発表されたが、どちらもソフトウエアの障害か。
A:現在までの調査によれば、いずれもソフトウエアの問題の可能性が高いと考えている。
Q:9月24日以降同じような障害は発生しているか。
A:起きていない。

Q:MTSAT-2の打ち上げ時期は。
A:今年度内の予定。
Q:MTSAT-2 の位置づけは。
A:MTSATは「運輸多目的衛星」であり、航空ミッション機能も持っている。MTSAT-2は、まず航空ミッションを遂行する上で重要な役割を果たすと聞いている。気象ミッションとしては、現ひまわり6号の運用終了後にその後継として正式運用を開始する予定であるが、それまでの間でも、ひまわり6号に不具合が発生したときに運用することとなる。

Q:昨年の台風23号で大きな被害がでてから一年になる。また、この9月にも台風第14号で27人の方が亡くなられ、初めて土砂災害警戒情報を発表した鹿児島県でも5人の方が亡くなられている。気象庁として今何が課題と考えているのか。
A:鹿児島県では土砂災害警戒情報を発表したが、その情報を有効に利用していただいた市町村と必ずしもそうでなかった市町村があったと承知している。防災気象情報を避難等に有効に利用していただくには、できるだけ迅速に情報を関係者に伝えることに加えて、その情報が持つ意味と情報を受けてどのように判断したらよいかについての理解を深めること等が重要だと思う。後者については、引き続き地方気象台から地方自治体などに対して、情報の内容を適切に理解していただくよう働きかけていく努力が必要であると考えている。
正確無比な情報が発表できれば担当者も迷うことなく対策の判断ができると思うが、実際には予測誤差や不確定さがあるため、この点を踏まえた対応が必要であることを理解いただく必要がある。
また、この台風の際も、近づいてくる前から地方気象台などから県等の機関に対して、風や雨の予想を説明する場を開いており、今後も引き続きこのような取り組みを続けていく必要がある。
市町村などの担当者に迅速に情報を伝えることについては、関係機関と連携して取り組む必要があるが、気象庁では今年度の予算により、市町村の担当者の方に気象庁が発表する情報をダイレクトに利用していただく施策を進めており、連携を強化していきたい。
Q:新潟県中越地震から1年になるので、コメントいただきたい。
A:未曾有の地震であったかと思うが、地震発生時やその後の余震などについて情報提供に努めてきた。この間の情報提供を通じて、住民や防災機関の皆様のニーズに沿った情報の出し方などについて改善を図っており、今後も引き続き改善に努めたい。
 また、被害をもたらすような地震については、いつでもどこでも起きうるという認識を常に持っていただくことが大切である。この間の災害などから国民の皆様の防災意識が高まっているように見えるが、冒頭でお話したように、「忘れた頃」ということになっては意味がないので、防災意識の維持・高揚に力を入れていきたい。
 さらに、この間の経過を見ていると、いろいろな防災関係機関との間の連携がかつてに比べて大いに活発になっているとの印象を持っている。

Q:富士山測候所の今後の運営方針はどのように考えているか
A:気象衛星やレーダーなどの整備という気象業務全体通して考えた場合、年間を通じて山頂に職員をおいて富士山での観測を運用する必要性はないと考えている。今後の施設の活用については、現在外部の方も含めて検討していただいているところであり、活用するとなれば、気象庁として、これまで培ってきた運用のノウハウについてお伝えするなどの協力をしていきたい。
Q:通年、人がいる必要はないと考えているとのことだが、夏の駐在の必要性については。
A:夏については施設の維持などでしばらく必要と考えている。
Q:今後の利用の判断を行うタイムリミットはいつごろか。
A:利用を目指している方々がどのような対応をされるのかが決まることがまず必要で、しばらくは今と同様夏季のみ職員が駐在する形態を継続することになると考えている。
Q:富士山での通年人をおいての気象観測の必要性は「なくなりつつある」のか。
A:職員をおいて実施する観測については必要性は無いと考えている。

(以上)

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