気象審議会中間報告

目次

  1. 背景
    • 1-1行政改革会議
    • 1-2中央省庁等改革基本法
    • 1-3中央省庁等改革の推進に関する方針
  2. 気象庁が行うべき気象業務
    • 2-1国の行うべき事務・事業の考え方
    • 2-2気象庁が国として提供すべき気象情報
  3. 民間気象事業者等への規制の緩和
    • 3-1民間気象業務の役割及び今後の発展
    • 3-2気象庁以外の者の行う気象観測の技術基準適合義務等
    • 3-3気象庁以外の者の行う予報業務の許可制度及び気象予報士制度
    • 3-4国内外の気象機関、船舶、航空機向けの観測成果の無線通信による発表業務の許可制
  4. おわりに

気象審議会中間報告

気象審議会では、平成11年9月14日、気象庁長官から、「21世紀の気象業務のあり方について」として、諮問第21号を受けた。

同諮問を審議するに当たり、中央省庁等改革基本法(平成10年6月)における気象庁関連事項が、今後の気象業務のあり方と密接に関連しており、これら関連事項に係る対応策の検討が必要であることから、本審議会では、まず、この対応策について調査・審議することにした。

今般、以下のとおり、気象庁が引き続き発表すべき情報の範囲、民間気象事業者等への規制の緩和の方向性について中間報告としてとりまとめた。

気象庁においては、本報告を踏まえて、民間気象事業者等への規制の緩和について早急に関係機関、関係団体等と連携・調整を図り、具体的な措置を講じることが望まれる。

なお、気象測器検定制度のあり方については、更に議論を深める必要があることから、引き続き調査・審議を行うこととする。

1 背景

  • 1-1 行政改革会議
    1. 21世紀にふさわしい、新しい行財政、社会経済等のシステムを創出するため、平成8年11月に設置された行政改革会議においては、21世紀における国家機能の在り方、それを踏まえた中央省庁等の再編の在り方、及び官邸機能の強化のための具体的方策について調査・審議を進め、平成13年1月1日の新体制への移行開始を目指す行政改革会議最終報告を平成9年12月にとりまとめた。
    2. 気象庁については、行政改革会議最終報告において、以下のとおり記述されている。
      • 現行の気象庁を継続する。
      • 気象庁が行う天気予報等の社会経済活動に必要な気象情報の提供(無償)の範囲は、公的な責任として必要なものに限定する。
      • 民間気象業者に対する規制(気象予報業務の許可、気象予報士の業務独占、気象測器の検定等)については、社会に対し広範な影響を及ぼすものに限定するなど必要最小限のものとし、規制緩和を進める。また、検定等については、民間の主体性にゆだねる。
  • 1-2 中央省庁等改革基本法
    • 行政改革会議最終報告の趣旨にのっとって行われる諸改革について、その基本方針を定めるとともに、その推進を目的とした中央省庁等改革基本法(以下「基本法」という。)が、平成10年6月に成立した。気象庁については、基本法第22条において、以下のとおり規定されている。
      • 気象庁が行う気象情報の提供は国が行う必要があるものに限定するとともに、気象業務を行う民間事業者に対する規制は必要最小限のものとし、また、気象測器に対する検定等の機能は民間の主体性にゆだねること。
  • 1-3 中央省庁等改革の推進に関する方針
    • 新たな各省設置法等の制定と併せて、平成11年4月27日に策定された「中央省庁等改革の推進に関する方針」のうち「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画」(以下「スリム化計画」という。)が閣議決定されており、気象庁については、以下のとおり記述されている。
      • 気象庁は、気象業務を行う民間事業者の負担軽減に努めるとともに、気象測器検定に関して、一定の能力を有する民間の機器検査を受けたものについては、国の検査を省略できる新制度を導入することによる減量、効率化を図る。

2 気象庁が行うべき気象業務

  • 2-1 国の行うべき事務・事業の考え方

      国が実施している事務・事業については、行政改革会議最終報告において、事務・事業の民営化、民間移譲を行うとともに、それが困難な事務・事業であっても、政策の企画立案機能と実施機能の分離という基本的な考え方に立って、実施機能については、実施庁及び独立行政法人を活用し、その自律的、効率的な運営の徹底を図る等、その実施主体について所要の見直しを行うものとされている。

      この場合、

      • 民間の主体にゆだねることが可能なものは、極力、民間の主体にゆだねる。
      • 一方、専ら強度の公権力の行使に当たるなど、国の行政機関が直接実施すべき事務・事業については、国が実施の主体となって実施する。
      • 民間気象業者に対する規制(気象予報業務の許可、気象予報士の業務独占、気象測器の検定等)については、社会に対し広範な影響を及ぼすものに限定するなど必要最小限のものとし、規制緩和を進める。また、検定等については、民間の主体性にゆだねる。

      と整理し、かつ、

      • 国が実施している事務・事業の中で、上記のいずれにも該当せず、国自らが主体となって直接実施しなければならないものではないが、民間の主体にゆだねた場合には、当該事業が必ずしも実施されるという保証がなく、実施されないときには、国民生活や社会経済の安定等に著しい支障を生ずるものについては、その公共的性格にかんがみ、独立行政法人を設けて、その実施を行わせることにより、事業の確実・適正な実施を確保する。

      としている。

      また、次の3つの類型に該当するものは、国が自ら主体となって直接実施しなければならない事務・事業とされている。

      1. 私人の権利義務に直接かつ強度の制限等を及ぼす公権力の行使に当たる事務・事業
      2. その性質上、国が自らの名において行うのでなければ成立しない事務・事業
      3. 災害等国の重大な危機管理に直結し、直接国の責任において実施することが必要な事務・事業

  • 2-2 気象庁が国として提供すべき気象情報

      上記の考え方を踏まえ、総合的な気象業務の健全な発達を図り、気象業務の目的である災害の予防、交通の安全の確保、産業の興隆等公共の福祉を増進するため、気象庁は引き続き国の機関として、次のとおり防災及び国際的な業務を基本として気象情報を作成・提供すべきである。

      1. 注意報・警報等の防災気象情報
      2. 国、地方公共団体、企業、国民等が防災対応を行うために必要な、気象、地震、火山、津波、高潮、波浪、洪水等に関する情報

        (例 気象等の注意報・警報、台風情報、地震・津波情報、火山情報、これらを補完し又は一体的に提供されることにより防災効果を高める大雨等の気象情報 等)

      3. 国際的な責務・貢献として作成・発表する気象情報
      4. 条約等の国際的取り決めや国際的な連携・協力により行う監視・予測等に関する情報

        (例 船舶・航空機向け情報、オゾン層に関する情報、地球温暖化に関する情報 等)

      気象庁は、上記①及び②の情報については、国の機関として責任を持って作成・発表して行くべきである。

      また、次の③及び④については、上記の①及び②の業務を実施するに当たり必要な基盤を活用することによって、効率的に作成・発表できることから、引き続き国の機関としても実施することが適当である。

      なお、気象情報に対する国民・社会からの多様化かつ増大するニーズに的確に応える観点から、これらの③及び④の情報の作成・発表については、積極的に民間活力の導入を図るべきである。

      1. 国の政策等に必要な基盤的情報
      2. 農業、食糧、水資源管理、環境等の重要課題に密接に関わる情報であって、必ずしも国自らが行わなければならないものではないが、その性質上、中長期的な技術開発や先行投資が必要となるなど、民間では対応が困難なもの

        (例 異常気象等に関する気候情報、季節予報 等)

      1. あまねく国民が享受すべき共有財産としての性格を有する気象情報
      2. 我が国全体の社会・経済活動、国民生活の安定等の観点から、あまねく国民が享受すべき共有財産としての性格を有する情報であって、防災気象情報等と密接又は一体不可分な関係を有していることから、これらの業務の一環として効率的に作成・提供することが可能であるもの

        (例 天気予報、週間天気予報 等)

      自然災害から国民の生命・財産を守るために発表される防災気象情報については、社会的な混乱回避等のため、気象庁が国として一元的に発表してきている。「重大な災害の起こるおそれのある旨を警告して行う予報」(気象業務法第2条)である警報や、「災害が起こるおそれがある場合に、その旨を注意して行う予報」(気象業務法施行令第4条)である注意報は、いずれも想定される災害の規模は異なるものの、災害の起こるおそれのある旨を伝えることを前提としており、引き続き、気象庁が一元的に発表することが適当である。

      また、気象庁は、数値予報技術の高度化等による予測精度の向上等を進め、それらの成果を踏まえ、防災気象情報を一層的確に発表するため、注意報・警報の発表区域・基準等について所要の改善を進める必要がある。

      同時に、防災気象情報の効果を最大限に発揮するためには、国、地方公共団体、報道機関等の連携を強化する必要がある。

      さらに、防災気象情報の有効活用を進めるためには、国民一人一人の気象、地震、津波、火山、海洋等の諸現象及びそれに伴う災害への理解の促進も必要不可欠である。

      気象庁は、イに述べた気象情報を作成・発表するため、以下の観測・監視体制の構築・維持に更に努める必要がある。

      1. 世界気象機関(WMO)等との協力に基づく、気象、海洋、地震・津波等についての全世界的な観測網・情報通信網
        (例 地上気象・高層気象観測網、気象衛星観測網、全球気象通信網 等)
      2. 我が国において防災気象情報を的確に発表するための基幹的な観測網・情報システム
        (例 気象資料総合処理システム、アメダス、気象レーダー、静止気象衛星、気象資料伝送網、緊急防災情報ネットワーク、震度観測網、津波地震早期検知網、地震活動等総合監視システム、地震津波監視システム 等)

3 民間気象事業者等への規制の緩和

  • 3-1 民間気象業務の役割及び今後の発展
    1. 民間気象業務を巡る経緯

      平成4年3月の気象審議会答申第18号においては、急速に進歩する情報化社会の中で新しい時代に相応しい気象情報サービスを展開するため、気象庁のみならず民間部門及び関係機関が連携して総合的な気象事業を行うことが望ましいとしている。

      同答申を受け、平成5年5月に気象業務法の一部が改正され、気象予報士制度、気象庁の保有する各種データの民間等への配信を担う民間気象業務支援センター制度等の民間気象事業推進策が導入されるとともに、

      • 気象庁発表の予報のテレビ等における解説業務の自由化
      • 一般向け天気予報(局地)の許可
      • 許可基準の明確化、申請書類の簡略化、事務処理の迅速化

      等の予報業務許可制度等の見直しが行われた。

      民間気象業務支援センター制度は、予報業務その他の民間における気象業務の健全な発達を支援するため、気象庁が収集した気象観測データや数値予報資料等を配信する事業を行うものであり、(財)気象業務支援センターが、気象庁より指定を受け、当該業務を行っている。

    2. 民間気象業務の現状

      上記の新たな制度導入により、現在、民間気象事業者は、気象庁から提供される数値予報資料等を活用することにより、以下のような事業を展開している。

      テレビ等のマスメディアを通じた分かりやすい情報の提供

      コンピュータグラフィックスを用いたテレビの天気番組作成、新聞やラジオ向けの気象情報の編集・加工、気象予報士による解説等を行い、わかりやすく利便性の高い情報の提供を行っている。

      企業等への個別情報の提供

      流通業や製造業の経営戦略の基礎となる商品の売れ行き予測等個別の企業活動の具体的な目的に応じた気象情報の提供、気象情報を利用したコンサルタント業務等を行っている。

      新しい情報メディアによる気象情報の提供

      CATV、コミュニティ放送、インターネット、携帯電話、車載型交通情報通信システム等、様々なシステムを活用した、きめの細かな気象情報の提供を行っている。

    3. 民間気象業務の今後の発展

      民間気象業務は、近年の予報技術力の向上や情報通信の発展により様々な分野で気象情報サービスを提供してきており、その役割はますます重要となっている。

      また、情報通信技術の急激な発達と相まって、個人レベルにおいても、これまでの一方向的な情報提供を受けるだけではなく、自らの判断で必要とする情報を取捨選択するようになるなど、国民各層のニーズがより多様化・個別化してきている。

       

      これらの多種、多様なニーズに対応するため、民間気象事業者等による、インターネット、デジタル放送等の最新の情報通信技術を活用した気象情報サービスの提供に大きな期待が寄せられている。

      増大する多様なニーズに対応した気象情報の提供を実現するためには、気象庁と報道機関、民間気象事業者等との連携・協力が必要不可欠である。

      気象庁は、民間気象業務の健全な発達を図るため、引き続き、業務の遂行過程において作成した中間成果物としての数値予報資料等を含め、保有する気象情報を積極的に公開する等、民間気象事業者の支援を適切に行っていく必要がある。

      また、民間気象業務の振興のためには、民間気象業務支援センターに対して、気象庁保有の各種気象データを民間気象事業者が利用できる環境が整備・拡充されるよう必要な助言・指導を行う必要がある。

  • 3-2 気象庁以外の者の行う気象観測の技術基準適合義務等
    1. 正確な気象情報を作成するためには、気象業務の基本となる観測の精度が確保されることが必要であることから、気象庁では、基幹的な観測網を自ら構築し、精緻かつ厳密な基準に従い、精度の高い気象測器を用いて観測を行っている。
    2. 気象庁以外の者の行う観測は、基本的にはそれらの者の自由に任せるべきであるが、政府機関や地方公共団体の行う観測、観測成果を防災目的又は発表目的に利用する観測等、影響が広範囲に及ぶものについては、その公共性と気象庁の発表する情報との整合性も図る観点から、その観測精度を維持する必要がある。
    3. このため、降水量・気温・風速・風向など基本的な気象要素に限り、一定の技術上の基準に従って観測を行わなければならないものとしている。

      また、観測精度の維持を図るため、これらの者が観測施設を設置した場合には、その旨を気象庁長官に届け出させるとともに、気象庁長官は、これらの者に対し、観測方法についての助言、指導等を行っている。

      この他、観測成果の相互利用によって、気象業務の効果的な遂行、気象に関する観測網の確立を図るため、気象庁長官は、上記の届出を行った者に対し、気象の観測の成果を報告することを求めることができることとしている。

    4. 気象業務の健全な発達、効率的遂行等の観点からは、これらの気象庁以外の者の行う公共性の高い観測の技術基準適合義務及び観測施設の設置の際の届出制度は、引き続き維持することが適当である。
    5. 一方、これら気象庁以外の者は、それぞれの必要性に応じて、観測を行っていることを踏まえ、現行においても観測の技術基準は、気象庁自らが行う観測に比較して緩やかなものとなっているが、気象観測に関する規制の緩和の観点から、さらに、技術基準に従うべき観測種目の必要最小限化等を図る必要があるほか、届出事務手続きについても、引き続き、簡素化に向けた見直しに努める必要がある。
    6. また、観測者の自主性をより重視する方向で、観測に関する指導・支援のための所要のガイドラインを提示することが適当である。

  • 3-3 気象庁以外の者の行う予報業務の許可制度及び気象予報士制度
    1. 予報業務の許可制の必要性及びその運用
    2. 近年の社会・経済活動の発展、国民生活の豊かさの向上と生活様式の多様化、新しい情報通信時代の到来等に伴い、気象情報に寄せられる国民の期待とニーズはますます増大している。

      一方、こうした役割を持つ気象等の予報業務については、

      • 近年の予報精度の向上に伴い、国民の予報に対する信頼性が向上していることから、不正確な予報が流布することによる被害は従来に増して社会・経済活動の広範囲に及ぶこと、
      • 予報等を利用する国民の側からみると、その精度及び提供主体の能力について的確に判断することが困難であること、
      • 一度発表された気象情報は、即時に流通することから、不正確な情報が流通した場合、後から訂正を行ったとしても、事後的な回復は困難であること、

      という特性を有している。

      気象庁以外の者が行う予報業務については、

      • 気象庁が発表する注意報・警報等の防災気象情報との整合性を確保すること、
      • 国民の期待する「正確な気象情報の提供」を確保すること、

      が極めて重要であるが、イにあるような特性を有していることから、これを全く自由にすることは適当ではない。

      そのため、許可制度の下、気象庁以外の者が予報業務を行おうとする場合に、あらかじめ気象庁長官がその者の技術的能力等について事前にチェックすることが必要である。

      気象庁以外の者が行う個々の予報内容について事前のチェックを行うことは、およそ現実的ではないことから、あらかじめ、予報業務を行おうとする者について、技術的能力等を審査することにより、それらの発表する予報の精度が担保される必要があり、今後とも必要最小限の規制として、予報業務の許可制を維持することが適当である。

      気象庁は、許可制度の運用に当たっては、数値モデルを利用した予報技術が確立していると認められる予報分野に係るものについて、これを積極的に許可していくべきである。

    3. 気象予報士制度の充実
    4. 予報の精度は、「現象の予想」をどのような方法で行うかに左右される。「現象の予想」には、数値予報資料の利用など高度の技能を要することから、気象庁以外の者が行う予報の精度を人的な面から担保するため、気象予報士制度が設けられている。この制度は、民間予報業務における中核的な技術者を確保する制度として定着してきており、今後とも維持する必要がある。

      併せて、気象予測技術は急速に進歩してきており、気象予報士に対して、気象業務に関連する技術についての指導・啓発活動、技術研修・再教育等を行う体制の整備が重要である。

    5. 気象予報の予報区設定の自由化
    6. 平成7年には、気象審議会答申第18号及び気象業務法の一部改正を受け、「当面、局地、すなわち市町村程度の範囲の区域又はそれより狭い区域」である局地のみを対象として、気象予報について一般向け予報の許可が行われるようになった。これは利用する地域に限定した局地的な予測情報に対するニーズが大きく、民間部門の活躍が最も期待されたこと、平成8年3月の計算機システムの更新による格子間隔20㎞の数値予報モデルの運用開始を踏まえ、技術的に確立した分野から一般向け予報を開放することが妥当であったこと等の理由によるものである。

      最近では、(財)気象業務支援センターを通じ、数値予報資料とともに、気象庁発表の予報・警報等防災気象情報を理解する上で不可欠な防災上の留意事項などをとりまとめた解説資料も積極的に提供していることから、民間気象事業者の予報技術が向上してきている。

      平成7年以降、これらの気象庁から提供される数値予報資料等の民間気象事業者における利用技術も向上しており、予報区設定を自由化し、多様なニーズに対応可能とすることにより、民間気象事業の振興を図る必要がある。

      これにより、市場原理に従った民間の創意工夫が刺激され、民間気象事業者のサービス内容の拡充などにより、身近で、分かりやすい気象情報サービスが提供されることが期待される。

    7. 1週間を超える長期の気象予報
    8. 気象庁は、1週間を超える長期の予報である季節予報として、1か月予報、3か月予報、暖候期予報及び寒候期予報を発表している。これらは、農業等の産業を始めとする社会的要請を受け、行われてきたものであるが、現在でも1か月予報を除き、必ずしも予報精度は利用者が期待する水準には達していない。

      しかしながら、社会の高度情報化・国際化にともなって、季節予報を含む気候情報へのニーズは一層高まっているため、国内外の気象機関や研究機関において、気候予報のための数値予報モデルの開発が精力的に進められており、精度向上の見通しが開けつつある。

      そのうち、1か月予報については、平成8年から導入された数値予報技術を活用したアンサンブル予報により予報精度が向上し、さらに、平成12年度末に予定している計算機更新により予報精度が利用者の期待に応えるものと考えられる。

      したがって、気象庁は、このような技術開発の成果を踏まえ、1か月予報について許可を行うこととするのが適当である。

      また、気象庁は、(財)気象業務支援センターのオンラインデータ配信システム等の数値予報資料提供体制の充実やアンサンブル予報技術の移転のための気象予報士の研修など資質向上体制の構築に向け、関係者を交えた検討を行う必要がある。

      1か月を超える長期の予報についても、気象庁は、予報精度の向上に向けて、必要な数値予報技術の開発を進め、それにより精度が向上したものから積極的に予報業務の許可を行い、民間気象事業の振興を図るべきである。 

      この他、国民の気象情報に対する理解の増進、民間気象事業者の技術力の向上を図るため、気象庁発表の季節予報についての解説資料を含め、様々な気候情報を積極的に提供していく必要がある。

    9. 観測値の収集要件の簡素化
    10. 予報業務を行う者が、予報精度を確認することができるよう、原則として予報を行う最小単位の対象区域ごとに、その区域内の少なくとも1カ所以上の地点の観測値を収集することとしている。

      平成7年以降の民間気象事業者における予報業務の実績、気象庁が平成12年度末に予定している計算機更新後の格子間隔10㎞の局地数値予報モデルの運用開始等を踏まえると、観測値の収集要件については、急峻な山岳地域の気象予報を行う場合等必要最小限のものにするなど、民間の予報業務がより弾力的に運用できるよう見直しを行う必要がある。

  • 3-4 国内外の気象機関、船舶、航空機向けの観測成果の無線通信による発表業務の許可制
    1. 気象庁は、国際的な責務・貢献の観点から、気象、地象、津波、高潮及び波浪についての航空機及び船舶の利用に適合した予報及び警報を行うとともに、国内外の気象機関、船舶又は航空機において受信されることを目的として、観測の成果、予警報事項等の気象情報を無線通信により発表している。
    2. 国内外の気象機関、船舶、航空機に利用されることを目的として無線通信により発表される観測成果は、国内外の気象機関が予報等の気象業務を遂行したり、船舶又は航空機が自己の判断で航路を決定したりする際の前提となるものである。
    3. しかし、当該観測成果を受信する側では、その精度を即時に確かめるすべがないため、不正確な情報が無線通信により発表された場合、気象機関における気象業務の遂行と船舶又は航空機の航行の安全に支障を来すおそれがあるなど、その及ぼす影響はきわめて大きい。

    4. そのため、気象庁は、「気象庁以外の者で、その行った気象の観測の成果を国内外の気象機関、船舶又は航空機において受信されることを目的とする無線通信により発表する業務を行おうとするもの」について、許可制により、その技術能力を事前に審査することとしている。
    5. この必要性については、現時点では変わらないと考えられるので、引き続き、許可制を維持することが適当である。

おわりに

本審議会では、引き続き、気象測器検定制度について調査・審議を深め、早急にとりまとめるとともに、本報告を踏まえた上で、21世紀初頭の10年程度を見据えて、我が国の気象業務がいかに在るべきかについて、幅広い見地から審議を行うこととする。


[ 以 上 ]

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