「気象業務の評価に関する懇談会」(第2回)の概要

  1. 日時 : 平成13年10月3日(水)15:30~17:30
  2. 場所 : 気象庁大会議室
  3. 出席者 :
    委員
    石田 東生  筑波大学社会工学系教授
    小林 昂   日本テレビ放送網株式会社取締役執行役員専務(日本民間放送連盟放送小委員長)
    小室広佐子  東京国際大学講師
    平 啓介   東京大学海洋研究所教授
    田渕 雪子  三菱総合研究所主任研究員
    (座長)廣井 脩  東京大学社会情報研究所長
    森下 俊三  東日本電信電話株式会社代表取締役常務取締役
    気象庁
    長官、次長、総務部長ほか
  4. 議題
    1. 気象業務チェックアップのための業績指標(素案)について
    2. 気象業務のレビューの進め方について
  5. 議事概要
    1. 平成14年度概算要求の概要を説明
    2. 国土交通省の事前評価のうち気象庁関連部分(豪雨水害対策、アジア気候センター)を説明
    3. 3つの評価方式(アセスメント、チェックアップ、レビュー)を前提としたうえで、気象業務の評価に関する業績指標等の設定について、委員と気象庁の発言概要は次のとおりです。

    <目標をもった業務運営への取組み方式>

    (委員)

    • 気象庁と国民との接点になっている業績指標について目標を設定するに当たっては、あわせて目標達成のために、どのように業務改善するかの取組みを示していかないと意味がない。業務改善という内部マネジメントについて、気象庁では今後どういう形で取組んでいくと考えているのか。

    (気象庁)

    • トップダウンによる業績指標とボトムアップによる職場の具体的な業務目標はセットで、業績指標に係る目標達成のために、各職場で具体的な業務目標を掲げ、また、業績指標に直接関わらないものであっても、アウトカム目標に関連する施策について、あわせて業務目標の設定を行う予定。

    <コスト意識>

    (委員)

    • 人件費は、税金であり、業務遂行のためには必要なお金だというコスト意識を持つことが重要である。指標ごとにコストを見積もるのは、今すぐは無理と考えるが、コスト意識を持って評価に取組むことが大事である。これを認識するための良い機会としてこの評価を位置付けてほしい。

    (気象庁)

    • 業績指標案に対して、目標値を達成するためには、場合によっては、組織全体としてパワーシフトが必要となり、そのパワーシフトが効率性というフルーツを生むと考えている。気象業務は技術開発がベースであり、業績指標との関係でコストパフォーマンスをどのように考えるかについては、少し時間をかけたい。

    <アウトカム目標との関連性、満足度調査の必要性>

    (委員)

    • 気象業務の各分野をカバーし、一覧性を持った業績指標の案としているが、パブリックコメントを踏まえて国民のニーズから自ずと軽重・メリハリがなされるのではないか。情報官庁の気象庁が、防災の一翼を担う立場から、アウトカム目標(災害による被害の軽減)について、直接的に死者を何人減らすという具体的な目標を設定できないので、被害の軽減に直接因果関係がある業務の改善事項を業績指標案とした結果、メリハリを付け難くなった事情は理解できる。
    • アウトカムつまり国民にとっての成果との関連で、目標設定をしていくという考え方は非常に良い。ただし、成果の測り方について、行政側が一方的に決めるのではなく、何が成果であるかは、謙虚に国民に聞くことが一番である。また、アウトカムが国民にもたらされる成果とするならば、満足度を積極的に測っていく方法を早く採用すべきである。
    • 気象行政のサービス全体についての業績指標とするため、次のステップには、統一的に気象情報に対する満足度について実施すると良い。気象情報が災害時にどのように使われ、どこに不満があるのかを調査した結果、精度・予測の仕方、情報の輻輳があげられた例がある。満足度で重要なのは誰が使うかにある。予算をかけなくてもモニター制度のようなことを行えば十分把握可能である。
    • アウトカム目標の災害の軽減に係る業績指標として精度向上に重点を置くことは、大事なこととは思うが、アウトカム目標を達成するには、情報の伝え方に係る業績指標があるべき。国民、自治体や放送局への伝え方の改善によって、効率的にアウトカム目標を達成することになると思うし、それが満足度の向上にもつながると思う。
    • 満足度調査をした場合、気象庁のキャッチフレーズにある「より早く、より正確に、わかりやすく」の中で、わかりやすさの観点の満足度が特に重要と思うので留意してほしい。
    • 満足度については、グループインタビューやワークショップなどして、どこにニーズがあるのか、何に業務の重点を置くかは、行政側が白紙にしてみていくという動きがある。気象庁として戦略計画的にやらなければならない業務の中で重点としてどれを選ぶかという際のデータとしては満足度調査が重要であると思う。

    (気象庁)

    • ・国民の声(期待)の殆どが、気象庁が発表する情報に対して精度向上、リードタイムの延長を求めている。技術のベースラインで設定しないと、アウトカム目標を着実に達成できないので、やや技術立脚型の指標案となっている。国民の満足に対する期待値は十分把握できていない。パブリックコメントでは様々な意見があると思うので、それから検討するチャンスがあると思う。また、業績指標案のほかに、満足度についても把握していくよう工夫して検討したい。

    <大雨警報>

    (委員)

    • 局地的な豪雨による浸水災害が問題となっており、災害時の出動を考慮した場合、大雨警報の発表区域の細分化は、重点的にクローズアップしてほしい。
    • 大雨警報の適中率については、利用者によって、100%当確とまではいかないが適中率の向上に期待する立場と安全性を重視して適中率の向上にはこだわない立場の双方がある。

    <利用可能な情報量・技術資料>

    (委員)

    • 利用者側のアウトカムにはなっていない供給型のアウトプット指標が多いなかで、表現も含めて利用者の立場から指標を設定する工夫が必要である。

    <研究・技術開発の重要性>

    (委員)

    • 気象業務は、研究・技術開発が重要な任務であることを考えると、技術開発の推進はもっと強調すべきではないか。その技術や研究を上手く評価する指標が重要である。研究・技術開発に係る評価を上手くやっていかないと気象庁の技術開発などの基礎体力が衰えるので、是非指標として表現してほしい。

    (気象庁)

    • 案に示している業績指標以外にも研究・技術開発で評価の指標とすべきものがあると考えられるが、今回の案は技術開発に立脚し、かつ、アウトカムとの関係に着目できるもの、又は、各業績指標の下支えとなっているファンダメンタルなものを指標案としている。なお、気象庁には、研究部門として気象研究所があり、研究開発については、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(閣議決定)に基づき別途実施する。

    <技術・研究部門への情報提供>

    (委員)

    • 技術・研究分野への支援も大事である。データを集める機能を有している気象庁は、大学や研究機関への気象データの提供、活用促進も指標とできるのではないか。大学・研究機関において利用可能な気象(地震)情報の量というのは業績指標にならないか。
    • 気象庁は、これまで、各種のデータ数そのものを工夫して増えてきており、研究分野にも、予報業務にも貢献する観点からは、気象庁の保有するデータの提供は極めて重要であり、人類の知的財産であるとの観点からも、気象庁にはそれらに貢献する重要な責務があると思う。

    (気象庁)

    • ・気象庁は、気象業務上、観測・作成した各種の情報を100%公開しており、全てのデータが利用可能である一方、コンピューター可読形式にすることを推進することは利用者にとってもアクセスの容易さ・利便性を与えることは確かであり、過去データの電子媒体化の促進は指標となり得る。

    <パブリックコメントの方法等>

    (委員)

    • パブリックコメントの方法については、広く国民や利用者から意見を出して頂けるような工夫をしてほしい。
    • 指標名を読んで内容がわかるように工夫できないか。わかりやすいかそうでないかを聞くような工夫をしてほしい。
    • 外部要因とアウトカム目標の達成に向けた関係機関との役割分担・連携とは区別した記述とすべきではないか。

    <気象業務のレビュー等の方法>

    (委員)

    • 気象業務のレビューの手法の検討は、専門的な内容を含むので、委員と個別に相談して進め、また、満足度の調査・研究についてもレビュー同様の進め方で行うと良い。

    (以上)

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