土砂災害警戒情報・土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)

土砂災害警戒情報とは

 土砂災害警戒情報は、大雨警報(土砂災害)の発表後、命に危険を及ぼす土砂災害がいつ発生してもおかしくない状況となったときに、市町村長の避難指示の発令判断や住民の自主避難の判断を支援するよう、対象となる市町村を特定して警戒を呼びかける情報で、都道府県と気象庁が共同で発表しています。危険な場所からの避難が必要な警戒レベル4に相当します。土砂災害警戒情報が発表された市町村内で危険度が高まっている詳細な領域は土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)で確認できます。

土砂災害警戒情報・土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)(令和3年5月21日、和歌山県・和歌山地方気象台共同発表の土砂災害警戒情報と当時の土砂キキクル)

 土砂災害警戒情報は、過去に発生した土砂災害をくまなく調査した上で「この基準を超えると、過去の重大な土砂災害の発生時に匹敵する極めて危険な状況となり、この段階では命に危険が及ぶような土砂災害がすでに発生していてもおかしくない」という基準を設定し、避難にかかる時間を考慮して2時間先までに基準に到達すると予測されたとき(土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)で「危険」(紫)が出現したとき)に速やかに発表しています。

 土砂災害によって命が脅かされる危険性が認められる土砂災害警戒区域等にお住まいの方は、警戒レベル4相当の土砂災害警戒情報が発表されたときには、土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)を確認し、遅くとも該当領域に「危険」(紫)が出現した時点で速やかに避難を開始することが大変重要です。周囲の状況や雨の降り方にも留意し、危険を感じたら躊躇することなく自主避難をお願いします。

土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)とは

土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)は、大雨による土砂災害発生の危険度の高まりを、地図上で1km四方の領域(メッシュ)ごとに5段階に色分けして示す情報です。常時10分毎に更新しており、大雨警報(土砂災害)や土砂災害警戒情報等が発表されたときには、土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)により、どこで危険度が高まっているかを把握することができます。

 「災害切迫」(黒)が出現した場合、土砂災害警戒区域等では、命に危険が及ぶような土砂災害が切迫しているか、すでに発生している可能性が高い状況となります。このため、避難にかかる時間を考慮して、土壌雨量指数等の2時間先までの予測値を用いて「危険」(紫)、「警戒」(赤)、「注意」(黄)、「今後の情報等に留意」(無色)の危険度を表示しています。

 土砂災害警戒区域等にお住まいの方々は、可能な限り早めの避難を心がけていただき、高齢者等の方は遅くとも「警戒」(赤:警報基準に達すると予想)が出現した時点で、一般の方は遅くとも「危険」(紫:土砂災害警戒情報基準に達すると予想)が出現した時点で、速やかに危険な場所からの避難を開始することが重要です。

 内閣府の「避難情報に関するガイドライン」では「土砂災害の危険度分布において危険度が高まっているメッシュと重なった土砂災害警戒区域等に避難情報を発令することを基本とする」とされています。市町村から発令される避難情報にも留意し、土砂災害警戒区域等の外の少しでも安全な場所への早めの避難を心がけてください。

土砂災害から命を守るために知っておきたいポイント

 土砂災害の被害を防ぐためには、一人ひとりが土砂災害から命を守れるように備えておくことが重要です。そのために知っておくべき、3つのポイントを紹介します。

(1) 普段から土砂災害の危険性が認められる場所を把握。

 土砂災害は、建物に壊滅的な被害をもたらし一瞬のうちに尊い人命を奪ってしまう恐ろしい災害です。急傾斜地や渓流の付近など、土砂災害によって命が脅かされる危険性が認められる場所は、都道府県が土砂災害警戒区域等に指定しています。ハザードマップ等を参照して、お住まいの場所が土砂災害警戒区域等に当たるかどうか、あらかじめ確認してください。これらの区域等にお住まいの方は、次の(2)・(3)のとおり、土砂災害から命を守るために建物からの立退き避難が必要となります。

(2) 雨が降り出したら警報等に留意。

 雨が降り出したら、自治体から発令される避難情報とともに、大雨注意報、大雨警報、土砂災害警戒情報等の発表状況にも留意してください。大雨注意報が発表されたら、土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)を使って、お住まいの場所の土砂災害発生の危険度の高まりをこまめに確認するようにしてください。

(3) 早めの避難が重要。

 (1)の土砂災害警戒区域等にお住まいの方は早めの避難が重要です。(2)の土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)において、高齢者等の方は遅くとも「警戒」(赤)が出現した時点で、一般の方は遅くとも「危険」(紫)が出現した時点で、(1)の土砂災害警戒区域等の外の安全な場所へ速やかに避難することが大変重要です。

大雨警報(土砂災害)の危険度分布で危険度の高まっている領域内の土砂災害警戒区域等では、命に危険が及ぶ状況となっており、避難行動が必要です

 避難をしようとしたときに、道路冠水や暴風等のために、指定緊急避難場所への移動はかえって命に危険を及ぼす状況となっていると判断した場合には、そのときに、その場所よりは相対的に安全な場所へ直ちに移動する等、次善の行動をとってください。例えば、自宅・施設等の崖から少しでも離れた部屋で待避したり、近隣の堅牢な建物に緊急的に移動することが考えられます。

 また、周囲の状況や雨の降り方にも注意し、自治体から避難情報が発令されていなくても、危険を感じたら躊躇することなく自主避難をお願いします。斜面の状況には常に注意を払い、普段とは異なる状況(一般に「土砂災害の前兆現象」と言います)に気がついた場合には、直ちに周りの人と安全な場所に避難するとともに、市町村役場等に連絡してください。

土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)の利活用

 急傾斜地や渓流の付近など、土砂災害によって命が脅かされる危険性が認められる場所は、都道府県が土砂災害警戒区域等に指定しています。土砂災害警戒区域等にある家屋などでは、次のように、自治体の避難情報とともに、「土砂キキクル」(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)を参考に自ら避難の判断を行い、早めの安全確保行動を心がけることが大切です。

  • 自治体から避難指示等が発令された場合には、土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)に関わらず、速やかに避難行動をとってください。
  • 土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)において「注意」(黄)が出現した場合は、避難行動の確認が必要とされる警戒レベル2に相当します。ハザードマップ等により、災害が想定されている区域(土砂災害警戒区域等)や避難先、避難経路を確認してください。また、今後の大雨警報(土砂災害)の発表に注意し、土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)で発表される危険度をこまめに入手するように努めてください。
  • 「警戒」(赤)が出現した場合は、高齢者等は危険な場所からの避難が必要とされる警戒レベル3に相当します。高齢者等の避難にかかる時間を考慮して設定された基準以上となっているため、土砂災害警戒区域等にお住まいの高齢者等の方は、自治体からの「警戒レベル3高齢者等避難」の発令に留意するともに、遅くともこの段階で自ら避難の判断をしてください。また、土砂災害の予測の困難さから、一般の方もこの段階から普段の行動を見合わせ始めたり、避難の準備をしたり、自発的に避難を開始することが強く望まれます。
  • さらに、「危険」(紫)(土砂災害警戒情報の発表基準に到達すると予想)が出現した場合は、危険な場所からの避難が必要とされる警戒レベル4に相当します。命に危険が及ぶ土砂災害がいつ発生してもおかしくない非常に危険な状況です。自治体からの「警戒レベル4避難指示」の発令に留意するとともに、避難指示が発令されていなくても自ら土砂災害警戒区域等の外の少しでも安全な場所への避難の判断をしてください。
  • その後、「災害切迫」(黒)が出現した場合、命に危険が及ぶ土砂災害が切迫しているか、すでに発生している可能性が高い状況となります。この状況になる前に、遅くとも「危険」(紫)が出現した時点で、土砂災害警戒区域等の外の安全な場所へ避難することが重要です。

    大雨警報(土砂災害)の危険度分布の利用

    ※1 土砂キキクルに関わらず、自治体から避難情報が発令された場合には速やかに避難行動をとること。※2 災害が発生・切迫している状況を市町村が必ず把握することができるとは限らないこと等から、緊急安全確保は必ず発令される情報ではない。また、警戒レベル5相当情報が出たからといって、必ず緊急安全確保が発令されるわけではない。

土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)の判定の仕組み

 土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)は、土壌雨量指数等の実況値や2時間先までの予測値を用いて5段階に色分け表示しています。

  • 今後の情報等に留意(無色)・・・実況値及び2時間先までの予測値が大雨注意報の基準未満の場合。
  • 注意(黄)・・・実況値又は2時間先までの予測値が大雨注意報の基準以上となる場合。
  • 警戒(赤)・・・実況値又は2時間先までの予測値が大雨警報(土砂災害)の基準以上となる場合。
  • 危険(紫)・・・実況値又は2時間先までの予測値が土砂災害警戒情報の基準以上となる場合。
  • 災害切迫(黒)・・・実況値が大雨特別警報(土砂災害)の基準値以上となった場合。

 次の3枚のグラフのうち、右側のグラフのように土壌雨量指数の実況値が大雨特別警報(土砂災害)の基準値に到達し、「災害切迫」(黒)が出現した場合、命に危険が及ぶような土砂災害が切迫しているか、すでに発生している可能性が高い状況となります。避難にかかる時間を考慮して、真ん中のグラフのように2時間先までの予測値が土砂災害警戒情報の基準値以上となると予想された時点「危険」(紫)で速やかに土砂災害警戒情報を発表するよう努めています。土砂災害警戒区域等にお住まいの方は、遅くともこの段階「危険」(紫)で避難を開始することが大変重要です。さらに、高齢者等の方の避難に要する時間を考慮して、大雨警報(土砂災害)を土砂災害警戒情報よりも1時間程度早く発表できるよう基準値を定めており、左側のグラフのように2時間先までの予測値が大雨警報(土砂災害)の基準値以上となると予想された時点「警戒」(赤)で、高齢者等の方は危険な場所からの避難を開始することが大変重要です。

発表判断に用いる指標イメージ

土壌雨量指数の高解像度化について

 土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)では、危険度の判定に土壌雨量指数という指標を用いています。この土壌雨量指数の計算を行う領域(メッシュ)を、令和元年6月に従来の5kmメッシュから1kmメッシュに高解像度化しました。

  • 土壌雨量指数とは、降った雨による土砂災害危険度の高まりを把握するための指標です。降った雨が土壌中にどれだけ溜まっているかを「タンクモデル」という手法を用いて数値化したものです。
  • 新たな1kmメッシュの土壌雨量指数は、従来の5kmメッシュの土壌雨量指数から、元となる雨量の入力方法を改善しており、 1km単位のきめ細かな雨量分布が反映されるため、より適正な値となっています。
  • 新たな1kmメッシュの土壌雨量指数は、従来の5kmメッシュの土壌雨量指数との乖離を最小化するよう補正しています。土砂災害警戒情報や大雨警報(土砂災害)は、従来の基準をそのまま用いることにより、従来と同等のタイミングで発表可能です。
  • 雨量の解析予測誤差等を考慮し、土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)では、周辺3km四方で判定されたうち最大の危険度を当該1kmメッシュの危険度(最終的な判定結果)としています。

土砂災害警戒情報の利用上の留意点

  • 土砂災害警戒情報が発表されたときに実際に危険度が高まっている詳細な領域は、土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)で確認できます。土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)と合わせてご利用ください。
  • 避難等の判断は、土砂災害警戒情報のみで行うのではなく、土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)において危険度が高まっている領域内の土砂災害警戒区域等に絞り込んで行う必要があります。
  • 土砂災害警戒情報は、降雨から予測可能な土砂災害のうち、避難指示等の災害応急対応が必要な土石流や集中的に発生する急傾斜地崩壊を対象としています。しかし、土砂災害は、それぞれの斜面における植生・地質・風化の程度、地下水の状況等に大きく影響されるため、個別の災害発生箇所・時間・規模等を詳細に特定することまではできません。また、技術的に予測が困難である斜面の深層崩壊、山体の崩壊、地すべり等は、土砂災害警戒情報の発表対象とはしていません。
  • 土砂災害警戒情報の基準は、土壌雨量指数と60分雨量の2指標の組み合わせを用いて設定されています。(「土砂災害警戒情報の基準設定及び検証の考え方」[PDF形式:約3.85MB](令和5年3月 国土交通省砂防部 気象庁大気海洋部 国土交通省国土技術政策総合研究所)参照)。都道府県と気象台はこの方式により設定された共通の基準で、土砂災害発生の危険度の高まりを監視しています。

土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)の利用上の留意点

  • 土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)は、土砂災害警戒情報や大雨警報(土砂災害)等を補足する情報です。大雨注意報・大雨警報(土砂災害)・土砂災害警戒情報・大雨特別警報(土砂災害)と合わせてご利用ください。なお、大雨警報(土砂災害)等は、気象状況等を総合的に判断して発表するため、これらの発表状況と土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)は完全には整合しない場合もあります。
  • 大雨特別警報(土砂災害)の発表状況と土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)は、次の理由により整合しない場合があります。
    • 大雨特別警報(土砂災害)は、過去の多大な被害をもたらした現象に相当する土壌雨量指数の基準値に到達する1km格子が概ね10個以上まとまって出現すると予想され、かつ、激しい雨がさらに降り続くと予想される場合に発表します。
    • 土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)は、過去の多大な被害をもたらした現象に相当する土壌雨量指数の基準値に実況値が到達したときに「災害切迫」(黒)を表示します。
  • 防災対応の判断に役立てていただくために、危険度が頻繁に変化することがないよう、過去30分間の最大危険度を表示します。
  • 避難等の判断は、土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)のみで行うのではなく、危険度が高まっている領域内の土砂災害警戒区域等に絞り込んで行う必要があります。なお、該当する領域(メッシュ)の周辺の危険度も参考にするなど、危険度の面的な広がりにも着目してください。
  • 平坦で土砂災害が発生しえない領域や、建物がなく定住者がいないなど定常的に人が活動していないため重大な被害を及ぼす土砂災害の危険性が認められない場所では、大雨警報(土砂災害)、土砂災害警戒情報及び大雨特別警報(土砂災害)の判断基準は設定しておりませんので、これらを意味する「警戒」(赤)、「危険」(紫)、「災害切迫」(黒)の表示となることはありません。このような場所で活動をする場合は、「雨雲の動き」等で最新の状況を確認するとともに、危険な場所から離れることが重要です。
  • 土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)では、降った雪が積雪として地表に蓄えられる過程やこれが融けて地中に浸み込む過程は考慮していないため、降雪時・融雪時は土砂災害発生の危険度を正確に表現できていない場合があります。
  • 土砂災害発生の危険度を判定する際、国土交通省「解析雨量」を用いていますが、レーダーの電波が雨雲以外のものから反射されることなどが原因で、実際の降水よりも遥かに強い降水が狭い範囲に解析される場合があり、土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)でより高い危険度の判定となることがあります。

土砂災害警戒情報・土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)を解説する動画やリーフレット等

「土砂災害警戒情報」「土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)」を避難開始の判断に役立てていただくためのポイント等を、動画やリーフレットにまとめました。

【リーフレット】土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)の活用 ~土砂災害から命を守るために~