南海トラフ地震関連解説情報について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-

気象庁では、大規模地震の切迫性が高いと指摘されている南海トラフ周辺の地震活動や地殻変動等の状況を定期的に評価するため、 南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、地震防災対策強化地域判定会を毎月開催しています。 本資料は本日開催した評価検討会、判定会で評価した調査結果を取りまとめたものです。 次回は2月5日を予定しています。
なお、下記調査結果は本日18時00分に「南海トラフ地震関連解説情報」として発表しています。

報道発表日

令和3年1月8日

概要

現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。

本文

最近の南海トラフ周辺の地殻活動

現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。

(注)南海トラフ沿いの大規模地震(M8~M9クラス)は、「平常時」においても今後30年以内に発生する確率が70~80%であり、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から既に70年以上が経過していることから切迫性の高い状態です。



1.地震の観測状況
(顕著な地震活動に関係する現象)
 南海トラフ周辺では、特に目立った地震活動はありませんでした。

(ゆっくりすべりに関係する現象)
 プレート境界付近を震源とする深部低周波地震(微動)のうち、主なものは以下のとおりです。
   (1)四国西部:12月11日から15日
   (2)四国中部:12月15日から18日
 これとは別に以下のとおり、プレート境界付近で浅部低周波地震(微動)及び浅部超低周波地震を観測しています。
   (3)紀伊半島南東沖:12月6日から継続中



2.地殻変動の観測状況
(ゆっくりすべりに関係する現象)
 上記(1)、(2)の深部低周波地震(微動)とほぼ同期して、周辺に設置されている複数のひずみ計でわずかな地殻変動を観測しました。周辺の傾斜データでも、わずかな変化が見られています。
 上記(3)の浅部低周波地震(微動)及び浅部超低周波地震とほぼ同期して、周辺の複数の孔内間隙水圧観測で地殻変動に起因するとみられるデータの変化が観測されています。
 GNSS観測によると、2019年春頃から四国中部でそれまでの傾向とは異なる地殻変動が観測されています。また、2020年夏頃から紀伊半島西部・四国東部でそれまでの傾向とは異なる地殻変動が観測されています。加えて、2020年夏頃から九州北部及び九州南部でそれまでの傾向とは異なる地殻変動が観測されています。

(長期的な地殻変動)
 GNSS観測等によると、御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺では長期的な沈降傾向が継続しています。




3.地殻活動の評価
(ゆっくりすべりに関係する現象)
 上記(1)、(2)の深部低周波地震(微動)と地殻変動は、想定震源域のプレート境界深部において発生した短期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
 2019年春頃からの四国中部の地殻変動、2020年夏頃からの紀伊半島西部・四国東部での地殻変動、2020年夏頃からの九州北部及び九州南部での地殻変動は、それぞれ四国中部周辺、紀伊水道周辺、日向灘北部及び日向灘南部のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
 これらの深部低周波地震(微動)、短期的ゆっくりすべり、及び長期的ゆっくりすべりは、それぞれ、従来からも繰り返し観測されてきた現象です。
 上記(3)と類似の浅部低周波地震(微動)及び浅部超低周波地震は、これまでにも観測されています。これらの現象と想定震源域のプレート境界におけるゆっくりすべりとの関係については今後も観測・研究が必要です。

(長期的な地殻変動)
 御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺で見られる長期的な沈降傾向は、フィリピン海プレートの沈み込みに伴うもので、その傾向に大きな変化はありません。




上記観測結果を総合的に判断すると、南海トラフ地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すようなデータは得られておらず、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。


問合せ先

気象庁地震火山部地震火山技術・調査課大規模地震調査室 担当 宮岡
電話:03-6758-3900(内線5244) FAX 03-3584-8643

資料全文

参考資料

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