報道発表資料
                              平成13年2月5日
                              気 象 庁                           

         第88回火山噴火予知連絡会

   全国の火山活動について

 2000年11月以降の全国の火山活動状況は以下のとおりです。

  三宅島では引き続き多量の火山ガスの噴出を伴う噴煙活動が継続しています。別紙
のとおり統一見解を発表しました。
 有珠山では火山活動は次第に低下していますが、ごく小規模な水蒸気爆発が継続し
ています。
 北海道駒ヶ岳では2000年11月に小規模な噴火が発生しました。
 岩手山では地震活動、地殻変動等に大きな変化はないものの、噴気活動は活発な状
態が続いています。
 磐梯山では、山頂直下を震源とする地震や浅い低周波地震が回数は減少したものの
引き続き発生しています。2001年1月30日には比較的大きな振幅の火山性微動が発生
しました。
 これらの火山では、今後も火山活動に注意が必要です。
1.北海道地方
1)雌阿寒岳
・ 2000年8月以降、地震回数がやや多い状態が続いています。
2)十勝岳
・ 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いています。
・ 地震回数は少ない状態です。
3)樽前山
・ 2000年11月中旬、2001年1月上旬及び中旬に地震回数が一時的に増加しまし たが、噴煙等の表面現象に異常は見られませんでした。
・ A火口の温度は2000年11月の観測で453℃を観測しました。1999年より低下 したものの、高温状態を維持しています。
・ 1999年1月に噴煙活動が再開したドーム南西火口は活発な噴煙活動が続いて います。
4)有珠山
・ 地震回数は1日当たり数回以下で推移し、地震活動は、2000年9月以降引き 続き低いレベルを保っています。ほぼ、昨年の噴火以前の活動レベルに戻っ ているとみられます。
・ 一連の噴火活動で見られた北西山麓を中心とする地盤の隆起は徐々に鈍化し、 2000年7月末にはほぼ停止し、沈降に転じました。その沈降傾向も徐々に鈍 化しながらも、現在も続いています。
・ 金比羅山火口群では小規模な水蒸気爆発が継続し、火山灰混じりの噴煙噴出 のほか、炸裂型噴火に伴う噴石等の放出を断続的に繰り返しました。しかし、 噴火活動に伴う火山性微動及び空振は、2000年12月以降徐々に振幅が低下し ており、噴石等が火口外に放出される頻度は少なくなっています。
・ なお、2000年11月下旬に金比羅山火口群(K-B火口)で、噴煙活動が停止 気味になり、この間に土砂噴出を伴うやや強い爆発が2回発生しました。そ の後、噴煙活動は以前の様な連続噴出の状態に戻っています。
・ 西山西麓火口群では弱い噴煙活動と地熱活動が継続しています。
・ 以上のように、深部からのマグマの供給は停止していると考えられますが、 火口から500m程度の範囲では、噴石や地熱活動に対する警戒が依然必要です。
資料7:有珠山の空振時系列(2000年4月-2001年1月)(pdf:45KB)
資料8:気象庁A点NS成分で観測された噴火活動に伴う火山性微動の振幅レベルの推移(pdf:42KB)
資料9:気象庁A点で観測された火山性地震の発生状況(pdf:27KB)
5)北海道駒ヶ岳
・ 2000年11月8日に、昭和4年火口から小規模な噴火(水蒸気爆発)が発生し ました。
・ 火山性微動は2000年11月8日の噴火時と11月4日、2001年1月17日に観測し ました。地震回数は少ない状態です。
・ このように北海道駒ヶ岳では1996年3月の54年ぶりの噴火以降、1998年10 月および2000年9月、10月、11月と小規模な噴火が発生しています。1929 年の大噴火の前には1919年から1924年にかけて9回小規模な噴火を繰り返 した例もあり、今後さらに地震・地殻変動等のデータを総合的に監視し、火 山活動の推移を注意深く見守る必要があります。
資料10:北海道駒ヶ岳月別地震回数(1966年7月-2001年1月)及び日別地震回数(1996年1月-2001年1月)(pdf:32KB)
2.東北地方
 1)岩手山
・ 地震回数は1日当たり0~15回で、地震活動に特に大きな変化はありませんでし た。2001年1月27日~28日に小規模な群発地震活動が山頂近傍で発生しました。
・ 2000年6月中旬から観測され始めた黒倉山から姥倉山付近が震源とする単色地 震は、10月以降も散発的に観測されています。
・ 火山性微動は2000年11月に2回観測観測されましたが、12月以降は観測されて いません。
・ 岩手山東側のやや深いところを震源とする低周波地震や、モホ面付近を震源とす る低周波地震は引き続き観測されています。
・ GPS観測では、大きな変化はみられません。
・ 黒倉山山頂の噴気の高さは2000年11月と12月に一時的に200~250mに達するな ど、岩手山西側の噴気活動は依然活発な状態が続いています。
・ このように地震回数には大きな変化が見られませんが、単色地震も引き続き発生 していること、姥倉山から黒倉山の噴気活動は活発な状態が続いていることから 水蒸気爆発などが発生する可能性は依然として続いており、今後も火山活動の推 移を注意深く見守る必要があります。
資料11:岩手山日別地震回数(東北大学松川観測点による)及び微動回数(同)(pdf:23KB)
2)吾妻山
・ 地震回数が2001年1月17日に一時的に増加しました。
・ 遠望観測装置(監視カメラ)によると2000年11月に3回、12月に1回、八幡焼噴 気孔で噴気の高さ30mを観測しました(9月にも1回観測)。
3)安達太良山
・ 遠望観測装置(監視カメラ)によると2000年11月に3回、12月に1回、沼ノ平の 噴気の高さ200mを観測しました(10月にも1回観測)。
4)磐梯山
・ 山頂直下を震源とする地震は、2000年4月下旬頃から増加し8月にピークに達し て以降減少していますが、引き続き消長を繰り返しながら発生しています。
・ 火山性微動は2000年11月に1回、12月に1回、2001年1月には3回観測されまし た。1月30日には比較的大きな振幅の火山性微動が発生しています。浅い低周波 地震は12月に8回、2001年1月に2回観測されています。深い低周波地震(深さ 30km前後)は観測されませんでした。
・ GPS観測では、大きな変化はみられません。
・ 噴気活動等の表面現象には、特段の変化はみられません。
・ これらのことから、2000年8月に比べて現時点では小規模な水蒸気爆発の可能性 は低くなっていますが、低周波地震や火山性微動が時々発生するなど活動が依然 として活発であることから、今後も火山活動の推移を注意深く見守る必要があり ます。
資料12:磐梯山活動一覧(地震日回数、マグニチュード、その他)(pdf:22KB)
3.関東・中部地方
1)新潟焼山
・2000年7月以降、噴気の多い状態が続いています。
2)浅間山
・ 2000年10月下旬以降地震回数がやや多い状態で経過しました。2001年1月に入っ て地震回数はやや減少傾向を示しています。火山性微動は観測されませんでした。
・ 2000年11月下旬以降噴煙量が増加し、噴煙活動もやや活発な状態です。
3)富士山
・ 2000年10月以降急増した低周波地震は11月、12月も多い状態が続きましたが、 2001年1月に入ってやや減少しました。
・ 震源はこれまでと同様、山頂北東側の深さ15km付近で特に変化はありません。
・ 地殻変動観測では特に変化は観測されていません。
資料13:富士山周辺震源分布図(防災科学技術研究所資料)(pdf:177KB)
資料14:富士山で観測された振動の継続時間と最大振幅の時系列図(防災科学技術研究所資料)(pdf:50KB)
資料15:富士山日別低周波地震回数(1997年10月-2001年1月)(pdf:14KB)
4)伊豆大島
・ 地殻変動観測によると、島の膨張傾向が引き続き観測されています。
5)新島・神津島
・ 地震活動は2000年12月6日に神津島の北側でM3.8の地震が発生するなど、神津島 から三宅島間を中心に低調ながら続いています。
・ 地殻変動の変化は、ほぼ停止しているものの、完全な停止にまでは至っていませ ん。
6)三宅島
・統一見解を発表。
7)硫黄島
・ 2000年9月より地震活動の増大と地殻変動(GPS)の傾向の変化が認められま した。
・ 2001年1月に摺鉢山の噴気量増大と亀裂の拡大が観測されました。
4.九州地方
1)阿蘇山
・ 2000年11月29日に南側火口壁の一部で赤熱現象が観測され、現在も継続していま す。
・ 孤立型微動回数は2000年10月下旬以降減少しています。
・ 中岳第一火口の火口底は全面湯だまりが続き、湯量は減少傾向が続いています。 南側火口壁下では噴湯現象を観測しています。
2)雲仙岳
・ 2001年1月18日から20日にかけて雲仙岳の西約5kmを震源とする地震が多発 しました。
3)桜島
・ 2000年10月7日に被害を伴う爆発が発生して以降、11月中頃まで噴火活動がや や活発化しました。その後は比較的静穏な状態です。
4)開聞岳
・ 2000年12月13日に山頂付近で噴気を観測しました。
・ 地震活動には特に変化はありません。
・ 今回の噴気は、その温度・成分及び地震活動の調査結果から判断して、火山活動 活発化の兆候とは認められません。
5)薩摩硫黄島
・ 地震回数は多い状態が続いており、1日当たり約30~100回発生しています。2000 年12月5日から振幅が小さく間欠的な火山性微動が観測されています。
・ 島内では降灰が時折観測されています。
6)諏訪之瀬島
・ 2000年12月20日に従来から噴煙を上げている御岳火口の東側斜面に新しい噴出 口が形成されているのを確認しました。12月29日には小規模な噴火があり、30日 にかけて島内で多量の降灰がありました。降灰は12月21~23日、2001年1月18~ 19日にも観測されています。
・ 地震回数は1日当たり0~4回で推移し、火山性微動は12月29~30日に振幅が大 きくなりました。
5.海底火山
1)福徳岡ノ場
・ 10月31日に北西方向へ帯状に延びる青白色及び黄緑色の変色水とその北西側に 扇状に拡散する幅約800m、長さ約2,000mのごく薄い変色水域が観測されました。
・ 12月25日に青色から薄緑色の東西方向長さ約1kmの変色水域が観測されました。