風が山を越えて、しゃ面にそって山を下りてくるときに、山の下りた側で気温が高くなることがあり、そのような現象を「フェーン現象」と呼びます。
フェーン現象には、「湿ったフェーン現象」と「乾いたフェーン現象」の二種類がありますが、ここでは山で雨が降る場合の「湿ったフェーン現象」について説明します。
次の図のように、風は山に向かってふいています。
このとき風のふいてきたほう(風上側)の気温は25℃だとします。
この風が高さ2000メートルの山を上るとき、気温は100メートルあたりおおよそ1℃下がるので、この2000メートルの山の頂上では、風上側の平地より20℃すずしい5℃になります。
また、風が山を越えて下りるときはぎゃくに100メートルごとに気温はおよそ1℃上がるので、風が山を上る前と同じ高さまで下りてくれば、気温は山を上る前と同じ25℃になります。
ところが、山を上るときに空気の中に含まれる水蒸気の一部がぎょう結して水になり雲ができることがあります。
水蒸気が水になるときには、まわりの空気をあたためます。
そのため、山を上る途中で雲ができれば、山の頂上に達したときの空気は雲ができないときよりあたたかくなっています。
反対に、水が水蒸気になるときには、水蒸気が水になるときと同じ分だけまわりの空気を冷やします。
そのため、山を下りるときには雲の水が全部蒸発して水にもどり、風が山を上る前と同じ高さまで下りてくれば、気温は山を上る前と同じになります。
しかし、上るときにできた雲から雨が降ってしまうと、降った分の水は山を越えることができません。
このため、山を下りるときに蒸発する水が少なくなり、蒸発にともなって空気を冷やす効果が小さくなります。
その結果、山を上る前と同じ高さまで下りてきた風は、山を上る前よりもあたたかくなります。
雲ができない場合と同じように、25℃の風が2000メートルの山を越えることを考え、1000メートルの高さから雲ができはじめたとします。
1000メートルまでは雲ができない場合と同じく、気温は100メートル上るごとにおおよそ1℃下がるので、1000メートルの高さでは15℃になります。
雲ができてからは水蒸気が水になるときに空気をあたためるために、気温は100メートル上るごとにおおよそ0.5℃しか下がりません(この値は気温や気圧で変わります)。
このため、2000メートルの山頂での気温は1000メートルより5℃低い10℃になります。
雲になった水がすべて雨になって山を越えないとすると、風が山を越えて下りるときには雲がないので、気温は100メートル下りるごとにおおよそ1℃上がり、山を上る前と同じ高さまで下りてきた風は20℃あたたかい30℃になります。
このように、風が山を越えるときに雲ができて雨が降れば、山を上る前よりも下りた後の気温が高くなります。これが「湿ったフェーン現象」によって気温が高くなるメカニズムです。
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