南海トラフ地震に関連する情報(定例)について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-
気象庁では、大規模地震の切迫性が高いと指摘されている南海トラフ周辺の地震活動や地殻変動等の状況を定期的に評価するため、
南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、地震防災対策強化地域判定会を毎月開催しています。
本資料は本日開催した評価検討会、判定会で評価した調査結果を取りまとめたものです。
次回は1月10日を予定しています。
なお、下記調査結果は本日17時00分に「南海トラフ地震に関連する情報(定例)」として発表しています。
報道発表日
平成30年12月7日
概要
現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
本文
最近の南海トラフ周辺の地殻活動
現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
1.地震の観測状況
11月2日に紀伊水道の深さ44kmを震源とするM5.4の地震が発生しました。この地震は、発震機構が東北東・西南西方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、フィリピン海プレート内で発生しました。
プレート境界付近を震源とする主な深部低周波地震(微動)を以下の領域で観測しました。
(1) 四国東部から中部:10月30日から11月9日まで
(2) 紀伊半島西部:11月3日から11月6日まで
2.地殻変動の観測状況
上記(1)、(2)の深部低周波地震(微動)とほぼ同期して、周辺に設置されている複数のひずみ計でわずかな地殻変動を観測しました。また、周辺の傾斜データにもわずかな変化が見られました。また、上記(1)の期間に同地域及びその周辺のGNSSのデータでも、わずかな地殻変動を観測しています。
GNSS観測等によると、御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺では長期的な沈降傾向が継続しています。
GNSS観測によると、2018年春頃から、九州北部でこれまでの傾向とは異なる地殻変動を観測しています。
2018年9月までのGNSS-音響測距観測によると、2017年末頃から、紀伊水道沖の海底でそれまでの傾向とは異なる地殻変動を観測しています。
3.地殻活動の評価
上記(1)、(2)の深部低周波地震(微動)と、ひずみ、傾斜、GNSSのデータに見られる変化は、想定震源域のプレート境界深部において発生した短期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
GNSS観測で観測されている2018年春頃からの九州北部の地殻変動は、日向灘北部のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
GNSS-音響測距観測で観測されている2017年末頃からの紀伊水道沖の地殻変動は、紀伊水道沖のプレート境界浅部におけるゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
上記観測結果を総合的に判断すると、南海トラフ地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すようなデータは今のところ得られておらず、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていないと考えられます。
(注)南海トラフ沿いの大規模地震(M8~M9クラス)は、「平常時」においても今後30年以内に発生する確率が70~80%であり、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から既に70年以上が経過していることから切迫性の高い状態です。
問い合わせ先
地震火山部地震予知情報課 担当 宮岡
電話:03-3212-8341(内線4576) FAX 03-3212-2807
資料全文
- 南海トラフ地震に関連する情報(定例)について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-(1)[PDF形式:6.1MB]
- 南海トラフ地震に関連する情報(定例)について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-(2)[PDF形式:5.8MB]
[上記の資料は、気象庁、国土地理院、海上保安庁、防災科学技術研究所及び産業技術総合研究所の資料から作成。
気象庁の資料には、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所、東京大学、名古屋大学等のデータも使用。産業技術総合研究所の資料には、防災科学技術研究所及び気象庁のデータも使用。]
参考資料
- 第14回南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、第392回地震防災対策強化地域判定会 気象庁資料(1)[PDF形式:5.3MB]
- 第14回南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、第392回地震防災対策強化地域判定会 気象庁資料(2)[PDF形式:7.0MB]
[気象庁の資料には、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所、東京大学、名古屋大学等のデータも使用。]