第89回火山噴火予知連絡会
全国の火山活動について
2001年2月以降の全国の火山活動状況は以下のとおりです。
三宅島では引き続き多量の火山ガスの噴出を伴う噴煙活動が継続しています。別紙のとおり統一見解を発表しました。
有珠山では火山活動が低下し、マグマの供給は終息しましたが、小規模な噴出を伴う活動が、限られた地域で継続しています。
樽前山では地震活動が一時活発化し、火口の温度も高い状態が続いています。
岩手山では地震活動、地殻変動等に大きな変化はないものの、噴気活動は活発な状態が続いています。
吾妻山では低周波地震が発生するなど地震活動が活発になっています。
磐梯山では、山頂直下を震源とする地震、および浅い低周波地震が引き続き発生しています。
これらの火山では、今後も火山活動に注意が必要です。
1.北海道地方
1)雌阿寒岳
火山性地震は2000年8月以降やや多い状態が続いていましたが、2001年4月以降になって、南方域で一時的な増加が時々見られるようになりました。
ポンマチネシリ96−1火口の噴煙量は1999年11月以降少ない状態が続いています。
2)十勝岳
・62−2火口は活発な噴煙活動を続けています。
・地震活動は低調な状態で経過しました。
3)樽前山
・火山性地震の一時的な増加が時々見られました。
・A火口の温度は、5月に641℃が観測され、高温の状態が続いています。
・ドーム南西火口では活発な噴煙活動が続いています。
4)有珠山
・金比羅山火口群のK−B火口での小規模な噴出を伴う活動は、変動を繰り返しながらも、全体的には昨年に比べて小さくなってきています。この活動に伴う火山性微動の振幅、空振も小さくなってきています。
・西山西麓火口域では弱い白色噴煙と周辺での地熱活動が継続しています。
・地震活動は噴火前の状態に戻りました。
・西山西麓を中心とする地殻変動は、わずかな沈降に転じています。また、有珠山山体全体は収縮を続けています。
・これらのことから、マグマの供給は停止し、2000年3月に始まったマグマの活動は終息したと判断されます。
・なお、金比羅山火口群と西山西麓火口群では、同様の活動が当分の間継続すると考えられますので、これらの火口付近では引き続き注意が必要です。
資料1:空振パルスの時別回数および日別最大振幅の時系列図
資料2:気象庁A点で観測された火山性地震の発生状況(2000年3月1日〜2001年5月24日)
資料3:有珠山活動状況(北大・理・地震火山研究観測センター火山活動研究分野)
資料4:GPS連続観測 有珠山周辺基線図
5)北海道駒ヶ岳
2月以降、火山性微動は発生せず、昭和4年火口の噴煙量も少なく、火山活動は静穏な状態で経過しました。
2.東北地方
1)岩手山
4月1日の小松倉山付近を震源とするマグニチュード(M)1.7、5月2日の滝ノ上付近を震源とするM2.9の火山性地震により、雫石町長山で震度1を観測しました。
黒倉山山頂の噴気の高さは3月に200mに達するなど、岩手山西側の噴気活動は活発な状態が続いています。
地震回数には大きな変化が見られませんが、岩手山西側の姥倉山から黒倉山の噴気活動は活発な状態が続いていることから、水蒸気爆発などが発生する可能性のある状態が依然として続いています。今後も火山活動の推移を注意深く見守る必要があります。
資料1:岩手山活動一覧
2)吾妻山
振幅の小さい火山性地震が時折、一時的に増加しました。5月21〜22日にも一時的に増加し、51回の火山性地震が観測されました。
山体直下の浅いところが震源とみられる低周波地震が3月28日から発生し始め、4月の月合計で40回となりました。5月に入っても、低周波地震が断続的に続いています。
このように、地震の回数が増加し、低周波地震も時々発生するなど活動がやや上向いてきました。今後、火山活動の推移を注意深く見守る必要があります。
3)安達太良山
遠望観測装置(監視カメラ)によると、2月9日に沼ノ平の噴気の高さ300mを観測しました。噴気の高さが300mに達したのは、2000年2月19日の300m以来です。
資料1:吾妻山月別地震回数/日別微動回数/現地観測点
4)磐梯山
4月28日に火山性地震が多発し、この日の回数は114回に達しました。一日の地震回数が100回を超えたのは、2000年8月15日の地震活動活発化以来です。
火山性微動は2月に5回、4月に2回観測されました。
このように、地震活動が一時活発化し、低周波地震や火山性微動が時々発生するなど活動が依然として活発であることから、現時点では、小規模な水蒸気爆発の可能性は残っています。今後も火山活動の推移を注意深く見守る必要があります。
資料1:震源分布図/日別地震回数と積算回数グラフ
3.関東・中部地方
1)那須岳
5月3日、18日に地震の回数が一時的に増加しました。
2)浅間山
2月中旬から4月中旬にかけて、短い期間に一時的に地震が急増する活動を繰り返しました。
2000年11月下旬以降増加した噴煙量は、引き続き多い状態になっています。
3)富士山
- 4月から5月にかけて、低周波地震の回数が増加しました。震源は1月までと同様、山頂北東側の深さ15km付近で、特に変化はありません。
- 地殻変動観測では特に変化は観測されていません。
- これらのことから、ただちに噴火等、活発な火山活動に結びつくものではないと考えられます。
資料1:富士山月別低周波地震回数/日別低周波地震回数
資料2:富士山周辺の地震活動1,高周波地震の震源分布等/低周波地震の震源分布等
資料3:最近の富士山の地震活動2001年4月1日〜5月23日(防災科学技術研究所)
資料4:最近の低周波地震活動(2000年1月1日〜2001年5月23日)(防災科学技術研究所)
4)新島・神津島
- 地震活動は新島・神津島付近から三宅島付近にかけて、低調ながらも続いています。
- 地殻変動は、完全な停止には至っていません。
5)日光白根山
- 3月31日に山頂付近の深さ約10kmを震源とするM4.9の地震が発生しました。この地震を含めて、一時的に地震が多発しました。このように地震が多発したのは、1999年11月以来です。
6)三宅島
・別紙のとおり統一見解を発表しました。
4.九州地方
1)九重山
4月23日に陸上自衛隊の協力により実施した上空からの観測で、硫黄山南斜面に青白色の噴煙が確認されました。
5月7〜9日にかけて九重山の北西約5kmを震源とする地震が多発しました。
2)阿蘇山
2000年11月29日に中岳第一火口の南側火口壁の一部で観測された赤熱現象は、現在も継続しています。
4月6〜7日に南側火口壁下で土砂噴出(1ヶ所)が観測されました。
3)桜島
南岳の爆発回数は、2月4回、3月4回、4月2回、5月は27日までに7回でした。
4)薩摩硫黄島
体に感じない微小な火山性地震が多い状態が続き、日に約40〜100回発生しています。
2000年12月5日から観測されている間欠的な火山性微動は継続中です。
島内で降灰が時折観測されました。
5)諏訪之瀬島
5月10日から噴火活動が活発となり,島内で多量の降灰が観測されました。また,噴火に伴う連続微動も観測されました。
5月12日には爆発地震が4回観測されました。
5.海底火山
1)福徳岡ノ場
2月16日に、南北に延びる幅約20m、長さ約90mの帯状で薄い黄緑色の変色水域が確認されました。2月26日にも、小規模の薄緑色の変色水域が確認されました。
3月5日に、幅約200m、長さ約200mの濃黄緑色の変色水域が観測されました。翌6日にも、その変色水域の西南西に幅約200m、長さ約800mで西南西方向に広がる濃黄緑色の変色水域が観測されました。