平成12年11月1日 19:15

気 象 庁

第87回火山噴火予知連絡会
全国の火山活動について




 2000年5月以降の全国の火山活動状況は以下のとおりです。

  三宅島では6月26日から火山活動が活発化し、7月に山頂噴火・陥没が発生しました。
その後8月には規模の大きな噴火が発生しました。9月以降は多量の火山ガスの噴出を伴
う噴煙活動が継続しています。別紙のとおり統一見解を発表しました。
 三宅島から新島・神津島周辺の海域で6月下旬から8月にかけて活発な地震活動と顕著
な地殻変動が観測されました。
 有珠山では、次第に火山活動は低下していますが、現在も2つの火口からの噴火活動が
継続しています。別紙のとおり統一見解を発表しました。
磐梯山では山頂直下を震源とする地震が4月下旬頃から増加し、8月に入り急増しました。
 北海道駒ヶ岳では9月に2回、10月に1回小規模な噴火が発生しました。
 樽前山では火口温度が高い状態が続き、地下での熱消磁を示す全磁力変化が観測されました。     
 岩手山では地震活動、地殻変動等に大きな変化はないものの、噴気活動は活発な状態が
続いています。
 これらの火山では、今後も火山活動に注意が必要です。

1.北海道地方
 1)雌阿寒岳
  ・ 8月以降、地震回数がやや増加しています。
  ・ 火口の温度は1999年(最高:10月697℃)より低下したものの、高温状態を維持しています(10月で459℃)。
  ・ 全磁力観測によると、1999年秋に観測された熱消磁が帯磁に転じた可能性があります。
 2)十勝岳
  ・ 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いています。火口温度は高温状態を維持しており、
   9月には観測開始以来最も高い温度(537℃)を観測しました。
  ・ 地震回数は少ない状態で経過しましたが、6月にやや規模の大きな地震が発生し、その直後
   に地震が一時的に増加しました。
 3)樽前山
  ・ 地震回数は少ない状態が続いていますが、8月上旬に一時的な増加が見られました。
  ・ A火口は1999年5月以降、温度上昇が続いていましたが、本年5月以降は、低下傾向が見ら
   れます。火口原西側地熱域ではその後も地中温度の高い状態を維持していますが(90℃前後)、
   地熱異常の拡大傾向は停止しました。
  ・ 1999年から2000年にかけて熱消磁を示す全磁力変化が観測されたほか、山頂ドームを中心と
   する自然電位の正異常域の拡大傾向も見られました。
  ・ GPS観測では、昨年から山頂ドーム付近の膨張が観測されていましたが、本年5月と10月
    の観測ではほぼ停滞しています。

 4)有珠山
  ・ 統一見解を発表。
 5)北海道駒ヶ岳
  ・ 7月以降、昭和4年火口で噴気活動が活発な状態になりました。
  ・ 9月4日、同火口から小規模な噴火が発生しました(1998年10月以来約2年ぶり)。
   さらに9月28日、10月28日に小規模な噴火が発生しました。これらの噴火はいずれも水蒸気
   爆発と考えられます。
  ・ 地震回数は少ない状態ですが、火山性微動が3回の噴火時と9月12日、10月24日に観測
   されました。
  ・ 火山灰に付着する火山ガスの成分から1996年の噴火時に比べ温度の高い火山ガスが関与して
   いると思われます。
  ・ 辺長測量の結果によれば1996年以降、山頂火口近傍の収縮が続いています。
  ・ このように北海道駒ヶ岳では、1996年3月の54年ぶりの噴火以降、1998年10月および本年9月、
   10月と小規模な噴火が発生しています。1929年の大噴火の前には1919年から1924年にかけて9回
   小規模な噴火を繰り返した例もあり、今後さらに地震・地殻変動や火山ガス・火山灰の組成分析等
   のデータを総合的に監視し、火山活動の推移を注意深く見守る必要があります。
   北海道駒ヶ岳関連図

2.東北地方  1)岩手山   ・ 地震回数は、本年4月頃から特に大きな変化はありませんでした(1日当たり3回程度で推移)。   ・ 黒倉山から姥倉山付近を震源とすると思われる単色地震が、6月中旬から観測され始めました。   ・火山性微動回数は、6月2回、9月1回、10月1回で少ない状態です。   ・ GPS観測では、岩手山西側で微少な地殻変動が継続しています。   ・ 黒倉山山頂の噴気の高さは6月と8月に一時的に250mに達し、姥倉山から黒倉山では新たな    噴気孔群や地熱地帯の拡大が認められるなど、岩手山西側の噴気活動は依然活発な状態が続いています。   ・ このように地震回数には大きな変化が見られなかったものの、単色地震が観測されたことや姥倉山から    黒倉山の噴気活動は活発な状態が続いていること、岩手山西側の微少な地殻変動が続いていることから    水蒸気爆発などが発生する可能性は依然として続いており、今後も火山活動の推移を注意深く見守る必要があります。    岩手山関連図1岩手山関連図2 2)吾妻山   ・ 9月29日、遠望観測装置(監視カメラ)によると八幡焼噴気孔で噴気の高さ30mを観測しました。    同火口で噴気を観測したのは、平成3年3月以来です。  3)安達太良山   ・ 9月20日の現地観測によると、沼ノ平西方で新たな噴気個所が確認されました。    また、泥水噴出など表面現象の活発な状態が継続しています。   ・ 10月14日、遠望観測装置(監視カメラ)によると沼ノ平から噴気が高さ150m上がっているのを確認しました。    監視カメラにより噴気が確認されたのは本年2月19日以来です。 4)磐梯山   ・ 山頂直下を震源とする地震が4月下旬頃から増加、8月15日には日地震回数が403回に達し、1965年の観測開始以来    最も多くなりました。その後、地震回数は消長を繰り返しながら減少しています。   ・ 山頂直下を震源とする低周波地震や火山性微動および深い低周波地震(深さ30km前後)は散発的に観測されています。   ・ 噴気活動等の表面現象や地殻変動データなど他の観測データには、特段の変化は見られません。   ・ これらのことから、8月に比べて現時点では小規模な水蒸気爆発の可能性は低くなっていますが、低周波地震や    火山性微動が散発するなど地下での火山活動が依然として活発であることから、今後も火山活動の推移を注意深く見守 る必要があります。    磐梯山関連図1磐梯山関連図2

3.関東・中部地方  1)新潟焼山  ・7月15日以降、噴気の多い状態が続いています。 2)浅間山   ・ 9月18日から23日にかけて地震回数が急増しました。地震回数は19日の431回をピークに次第に減少し、24日以降は    数回から十数回程度の平常の状態に戻りました。火山性微動は観測されませんでした。   ・ 表面現象に特に変化はありませんでした。  3)富士山   ・ 山頂北東側の深さ15km付近で継続的に発生している低周波地震が9月から10月にかけて増加しました。   ・ 地殻変動(傾斜)観測では特に変化は観測されていません。  4)伊豆大島   ・ 7月16日に島の西海岸から西方海域で、26日に島内北西部で地震活動が一時的に活発化しました。   ・ 地殻変動観測によると、島の膨張傾向が引き続き観測されています。  5)新島・神津島付近の地震活動について   ・ 6月26日に三宅島の火山活動が始まって以降、三宅島から新島・神津島付近にかけての海域で、活発な地震活動が    続きました。特に神津島の東方海域においては7月1日に発生したM6.4を最大にM4~5クラスの地震が多発し、    顕著な地殻変動が観測されました。これは神津島の東方海域の地下での岩脈状マグマの活動に伴うものと推定されます。   ・ 8月下旬以降、地震活動は次第に低下し、地殻変動も鈍化しました。また、9月以降、地震活動はさらに低下し、    地殻変動もほぼ停止しています。   ・ 今回の一連の岩脈状マグマの活動はほぼ終息したと考えられます。  6)三宅島   ・統一見解を発表。 4.九州地方  1)阿蘇山   ・ 8月に一時的に孤立型微動回数が増加し、地下活動がやや不安定な時期がありました。   ・ 中岳第一火口の火口底は全面湯だまりが続き、湯量はやや減少しました。南側火口壁下では噴湯現象を観測しました。    7月3日に土砂噴出を確認しました。  2)霧島山   ・ 新燃岳を震源とする地震が7月4日から増加しました。6日の147回をピークに10日まで多い状態が続きました。   ・ 高千穂峰御鉢を震源とする地震は6月中頃までやや多い状態が続きました。   ・ 表面現象に変化はありませんでした。 3)桜島   ・ 噴火活動は比較的穏やかで、特に6~7月は爆発がありませんでした。   ・ 10月は10日前後に噴火活動がやや活発となり、特に7日16時42分の爆発では多量の噴煙を5,000m以上上げ、    鹿児島市内でも3~4mmの火山れきを含む大量の降灰があり、桜島町では1~3cmの火山れきが多数落下し、    車のガラスやビニールハウスを破損する被害がありました。この爆発以降、噴煙活動が活発化しています。  4)薩摩硫黄島   ・ 地震回数は多い状態が続いており、1日当たり約50~120回発生しています。10月21日には、島内で少量の降灰がありました。   5.海底火山  1)福徳岡ノ場   ・ 7月26日に長さ約900mの青白い変色水域が観測されました。   ・ 10月13日に幅約150m、長さ約1,800mの帯状で緑色の変色水域が観測されました。