長官会見要旨(令和6年4月17日)

会見日時等

令和6年4月17日 14時00分~14時56分

於:気象庁記者会見室

発言要旨

 冒頭私から、4点述べさせていただきます。
 1点目は、暑さへの備えについてです。
 昨日報道発表いたしましたが、環境省と共同で発表する「熱中症警戒アラート」について、今年は4月24日より提供を開始いたします。
 また、今年度から「熱中症特別警戒アラート」の発表が環境省にて開始されます。発表された際は、当庁も高温となる気象状況と見通しを伝えるため、高温に関する全般気象情報を発表し、暑さに対する注意喚起を行ってまいります。
 特に、本格的な夏を迎える前の時期でも、多くの人が十分に暑さに慣れていない状況で気温が上昇することがあるため、熱中症に注意が必要です。今週に入り、30度を超える気温を観測した地点が複数ありました。提供を開始する4月24日の前でも日々の最高気温を参考にしていただき、また、提供開始後も、日々の最高気温の他、環境省のホームページで公開されている暑さ指数を参考に、油断することなく、暑さ対策を実施していただきたいと思います。
 2点目は、「気象防災アドバイザー」についてです。
 アドバイザーは、気象庁が実施する育成研修を修了された気象予報士と、地域防災に関する職務経験のある気象庁退職者に委嘱していますが、先日4月1日に新たに91名※に委嘱し、全国で272名となりました。
 今回、福井県でも1名の方に委嘱させていただき、 47すべての都道府県に少なくとも1名はアドバイザーがいる状態となりました。
 令和6年度も育成研修を実施する計画であり、自治体がアドバイザーをより活用しやすくなるよう、更なる拡充を図ってまいります。
 また、現在、全国で3つの自治体(大阪府高槻市、北海道滝川市、佐賀県)に協力をいただき、アドバイザーによる自治体の気象防災の課題解決を試行検証する事業を実施しているところです。
 こうした取組を通じ、各地域においてアドバイザーの活躍の場を広げ、地域の防災力の向上を図ってまいりたいと考えております。
 3点目は、改正活火山法の施行と「火山防災の日」特設サイト開設についてです。
 4月1日に改正活火山法が施行され、「火山調査研究推進本部」が文部科学省に設置されました。当庁は、同本部において、「火山調査委員会」の共同庶務や関係行政機関、大学等の調査結果等の収集の任務に、しっかりと取り組むほか、「火山調査委員会」における火山に関する総合的な評価などを通して、本部に貢献してまいります。
 また、同法により、8月26日が「火山防災の日」と定められました。気象庁でも、今年の「火山防災の日」に向けて、重点的に普及啓発に取り組むこととしており、この取組の一環として、「火山防災の日」特設サイトを、4月1日に気象庁ホームページに開設しました。今後、「火山防災の日」に関するイベント情報など、随時、掲載内容をアップデートしていく予定です。
 最後、4点目は、「次世代の気象業務の柱」についてです。
 3月28日に第38回交通政策審議会「気象分科会」を開催し、「2030年の科学技術を見据えた気象業務のあり方」等のフォローアップを行った上で、今後、気象庁が強化して取り組んでいくべき施策の方向性について、ご審議いただきました。
 次世代の気象業務の柱として、現在推進中の主な施策である「線状降水帯に関する予測精度向上」、「地域防災支援業務の強化」等に加え、今後強化すべき施策として「台風情報の高度化」や「先端AIと協調した気象業務の強化」など、5つの施策が掲げられました。
 これらの方向性については、分科会でいただいたご意見等も踏まえ、検討を進めていく予定です。
 私からは以上です。

質疑応答

Q:では、幹事社から冒頭言及のあった暑さ対策についてお聞きします。当面の長期予報などを踏まえて、今年の夏の暑さは、どのような暑さになるのかという見通しを教えてください。また、お話がありました、今月24日から新たに運用が始まる、特に「熱中症特別警戒アラート」について環境省を中心に準備を進めていると思いますが、これまでと何が違うのかといった周知状況など運用の課題についてどうお考えでしょうか。また、気象庁でもあわせて全般気象情報を発表するということでしたが、どのように暑さ対策をとるよう対応を呼びかけていくのかお考えをお聞かせください。

A:今年の夏についてですが、3月19日に発表した3ヶ月予報、2月20日に発表した暖候期予報では、真夏にかけて全国的に高温の予報を発表しておりまして、顕著な高温となる日が多くなる可能性があるというふうに考えています。また、4月23日に発表予定の3ヶ月予報をはじめ、今後発表する最新の情報を活用して、熱中症対策などをお願いしたいと考えています。それから、次に実際に高温が見込まれる場合の情報提供についてですけれども、気象庁では従前より、「高温に関する早期天候情報」や「高温に関する気象情報」、それから環境省と共同での「熱中症警戒アラート」の発表等を通じて、熱中症対策を呼びかけてきたところです。  周知に関するこれまでとの違いとしましては、新しく環境省から「熱中症特別警戒アラート」が発表されると、いうことになっています。これについては気象庁との共同発表という形ではなく、発表自体が環境省さんの単独の発表となりますが、気象庁としても、「高温に関する全般気象情報」の発表等を通じて、高温となる気象状況の見通しとその状況をしっかりと伝えて、暑さに対する注意喚起を行ってまいりたいと考えています。その具体については、昨日(16日)に報道発表にてお知らせしたところです。報道機関の皆様におかれても、国民の皆様への周知というところについて、ご協力を頂戴できればありがたいというふうに考えています。

Q:冒頭のトピックスにはありませんでしたが、線状降水帯の予測について今後県単位になっていくと思いますが、これをどのように活用してほしいかというところを改めて教えていただけますでしょうか。

A:線状降水帯の予測ですが、半日前からの呼びかけについては、これまで地方単位で、例えば、九州北部地方などの単位で行ってきたものを、今年の出水期から、府県単位にすることになります。この周知については、これまで行ってきたところですけども、府県単位の提供になりますと、発表する対象範囲が狭くなるので、より自分の地域に特化した形の活用をしていただけると考えています。一方で、範囲を狭めるということは、精度としては、地方単位で出してきたときよりも、一旦は精度が下がって見える部分もあるので、そういったところを合わせて、ご理解いただいて使っていただくことが大事かと考えています。府県単位での提供が、どのぐらいの精度になるのかというところについても、ご関心があるかと考えますけども、現在出水期前の運用開始に向け、準備を進めているところですので、来月の私の会見では、どのぐらいの精度になりそうかということも含めてお話をできるのではないかと考えています。

Q:2点ですが、まず1点目は、4月24日に涼風丸のお披露目式がありますが、それに合わせて改めまして、長官から、新しい四代目の凌風丸の新しい特徴と求められる役割を教えてください。

A:まず1点目です。凌風丸の見学会のご案内をさせていただいていると思いますけれども、先月のこの場でお話した通り、凌風丸は第4世になります。実は観測機器としては、すごく新しい機器があるというものではありませんが、機器について具体的に言うと、海上を測るものと海中を測るものがあります。海上のところですと、高層気象観測というゾンデをあげるものがありますが、これは変わりありません。それから、水中を図るものところでは、電気伝導度水温水深計、俗にCTDというものですが、それを3000m~4000mと沈めて、途中の海水を採取しながら、海上まで上がってきて分析する機能があるわけですが、その観測機能も大きく変わっていません。一方で、船が新しくなったことで、操船がしやすい技術が加わっています。例えば、その海洋の観測において、同じところにとどまることは結構難しいことで、3000m~4000mのところ沈めながら上がってくるまでやっていると、実は30分とか1時間単位の時間かかります。その間、同じ位置をキープするのは、私も船に乗っていたからわかりますが、相当難しい。そういう意味で操船技術が上がったところでは、観測をより円滑にできるようになったと考えています。  元々海洋の観測について、啓風丸と、今2隻あるわけですけど、その2隻を使って、半世紀以上にわたって太平洋のデータを取得してきていますので、それを安定的に継続することによって、気候変動などを分析する材料を着実に集めていくというところが期待されているということになります。  それから最近のところですと、線状降水帯の予測に関して、海上の水蒸気量の観測を行うことは極めて重要ですので、そういった観測を出水期を中心に実施していくということが大事だと考えています。

Q:線状降水帯に関しては、新しい凌風丸が観測することによって予測精度が上がるということになるのでしょうか?

A:観測測器自体は変わっていないところです。

Q:もう一点ですが、先ほど「火山防災の日」に関連してですが、いつから機構改革があったのか正確に把握してなくて恐縮なのですが、気象庁内部でも火山対策企画官が、札幌・仙台・福岡の管区ですね火山対策調整官が配置されているのは今年度4月1日からということですが、この役割この方々へどういった期待が込められているのでしょうか?

A:これまで気象庁の役割で大きいところは地震であろうと火山であろうと、現象をきめ細かく観測・監視して、予測ができるものについては予測をするということになります。地震だと予測というと津波になりますし、火山だと前兆現象がある場合があります。それ以外に、これまで地震の方については、「地震調査研究推進本部」がありました。「地震調査研究推進本部」の設置根拠というのは地震防災対策特別措置法という阪神・淡路大震災の後にできた法律があって、それ基づいて設置されていますが、地震の予知は難しいという状況においても、その地震のデータを細かいものまで収集することによって、何か今後の地震の調査研究等に役立てることができないかということで、全国の大学なども含めた、データの収集を気象庁が行うということを担うことになっています。それは本庁だけではなく各地方を地域センターと位置づけてやるようになっています。  今回4月1日付で「火山調査研究推進本部」ができましたが、基本的には地震と同じ建付けで役割はほぼ同じです。火山に関しても、観測・監視・予測をしていくとともに、本部に対して収集したデータを報告するという任務となります。火山についても地域センターが割り当てられていますので、これについて各管区がセンターになっているということです。地震・火山と、双方について、性格的に似た任務ということになりますが、それに合わせて、組織改革をして、名称も地震と火山で同様にする形にさせていただいたということです。

Q:地震津波対策兼務の火山対策調整官ということでしょうか。札幌・仙台・福岡に配備されている火山対策調整官の方々っていうのは地震津波対策調整官も兼務されているということでしょうか。

A:(地震火山部)各管区等におきましては、地震津波対策調整官と火山対策調整官という形でそれぞれ配置しております。本庁の方は地震火山部管理課の方に地震津波対策企画官と火山対策企画官という形でそれぞれ4月1日から配置をしているという形になります。

Q:現地の方々は、例えば口永良部島とかのデータを正確に取って、文科省の調査研究本部にデータを報告する、そのためのデータを収集するような役割を担っているということでしょうか。

A:(地震火山部)そうした役割も今後は担っていくということになるかと思います。先ほどの長官からもお話がありましたけれども、従来から火山の監視ですとか、情報発表等してきましたので、火山センターが置かれているような管区には、火山関係の調整官を置いていました。今回、その調整官の名前を変える形で新たに火山本部・火山調査委員会への寄与というところ含めて今後は対応していくという形になります。

Q:火山本部に関連してですけれども、昨日、火山本部の政策委員会の初会合が行われて、長官も出席されていたと思いますが、その中の委員会の最後のあたりで、今111ある活火山の選定を、今後は政策委員会の下にぶら下がる部会で決めていくような方針だというお話あったかと思いますけれども、これまで活火山の選定は予知連がやっていたかと思いますし、予知連と火山本部との役割分担というのがどうなるのか、予知連がどうなっていくのかというところについて長官のお考えをお伺いできればと思います。

A:これは本部ができることになって以降、庁内的にも少しずつ検討はしてきているところです。大事なことは火山防災なので、国の政府の防災業務として、抜けが生じるってことは絶対あってはならないわけです。一方で、行政として、重複があることもよろしくない。ですから、円滑に移行するということが、大事なのだと思います。そういったところで、一言で申し上げれば、火山噴火予知連の役割は縮小することになるということです。  今お話のあったその活火山の選定が「火山調査研究推進本部」に移るということについて、昨日の政策委員会で異論を唱える方はいなかったと理解しています。この他、移行すると思われるものは、突発的な噴火があったときに、有識者の方が集まって、その分析をしますが、従来の予知連ですと噴火災害特別委員会という名称で開こうとしていたわけですが、実際開いたことありませんけど、この機能というのも、本部の調査委員会に移っていくのだろうと考えています。  ですから、あとは何を予知連に残すのかということになりますけど、本部や委員会での具体的な取り組みを踏まえつつ、最終的に何が残るのかというところを検討していきたいと考えています。

Q:先ほどの4つ目の次世代気象業務の中で、今後について台風情報の高度化とか先端AIを使った気象業務の強化ということをお話しいただきましたが、細かいことはこれから議論するとしても、長官の思い描くこういった技術を使った理想的な気象業務の形っていうのはどんなものなのか、お話いただければと思います。

A:基本的には、技術の高度化と、見せ方の工夫というやり方がありますけれども、台風情報の高度化については技術の高度化っていうところを、まずは頑張って、そういった中のところで、どういう見せ方ができるかだと思っています。今後注目するべきで、難しいところでは、やはりAIでどこまでできるのかというところです。深層学習とか生成AIというのをさらに活用していくといったところで、どのような業務改善が可能かということは、まずは検討していきたいと思います。ただ、課題の1つとして判断過程がブラックボックス化する場合があるので、結果的に当たればいいじゃないかということがあるかもしれませんが、そういうところも踏まえて見ていかないといけないと思っています。例えば、将来的にAIが予報官に取って代わるのかなど、そのように思う方もいらっしゃると思いますけど、現在の想定では、予報官の判断の支援というところまでじゃないかと考えています。効率化できるところはAIなり、自動化なり長所を活かし、予報官と両立していく、というのが今のイメージです。

Q:2030年ぐらいにはある程度そういういった技術も、導入されていくというような時間軸でしょうか。

A:気象庁の中で頑張って2030年までにというものもあるでしょうし、AIみたいに社会全体として発展途上みたいなものは2030年の段階で、気象庁として完成させます、というのは多分言えなくて、どの程度取り込めるかという、分野かなというふうに思っています。

Q:もう一つアドバイザーが順調に増えていて、最初は全都道府県に設置したいと言っていたところ、とりあえず、目標を果たせたと思うのですが、これは今年も同じぐらいのペースで、増やしていくというお考えでしょうか。

A:同じようなペースで良いかどうかというところもあります。気象庁では、今年度中に気象防災アドバイザーを各県に5名配置したいっていう目標を掲げています。例えば、先ほどの福井県、私の出身地なわけですが、現在1名委嘱されたわけですが、今年度、福井県を5名にするというのは容易じゃないのだと思います。ただし、目標としては各県で5名配置なので、それに向けては、予報士については、育成研修を受けていただくことについて、受講の呼びかけを頑張っていくってことや、もう一つは気象庁の退職者なので退職者への呼びかけということになりますけど、こちらも一層進めていくことで、人材の更なる確保を図りたいと考えています。

Q:2点質問です。「火山防災の日」が今年からスタートするということなのですが、一応、「火山防災の日」の約1ヶ月後に御嶽山の噴火被害からの10年という節目があると思います。そこに関して、火山防災の日に絡める・絡めないにかかわらず何かそこにフォーカスした取り組みとか発信とかをしていくというものがもしこの今の段階で何かを考えられるものがありましたら、お伺いできますでしょうか。

A:「火山防災の日」は8月26日ですけれど、その日だけに特化して取り組みを行うのかというと、そうではないと考えています。「火山防災の日」と関連して、今、御嶽山に特化した動きの有無について、地方も含め伺ってはいないですが、8月26日その日に特化するものではなく、特定の火山に特化するのでもなく、一定の広がりの中で、火山防災の普及啓発に取り組むことと考えます。さらに言うと、8月26日っていうのは9月1日の「防災の日」に近いので、そういう意味では、火山防災に特化せず、地震も含めてとか、他の災害も絡めたところで、色々な普及啓発ができるのだったらそれも一つの案であろうと思います。それは気象庁だけの話じゃなくて、国であるとか、自治体であるとかその辺と連携しながら、もちろん、一緒にやることもあるだろうし、それぞれで企画されるものもあるのだろうと考えています。

Q:台湾で起きた地震に関して、津波警報が出てというところで、今、気象庁の中で長時間津波の情報提供のあり方について報告書がまだ案の段階ではあるとは思うのですが、そういった情報提供に関して議論がされていた最中での津波警報となったという点、そういった視点で何か振り返りがありましたら、お願いできますでしょうか。

A:検討会については津波の警報等が長時間継続する場合などを扱っており、能登半島地震の場合などは該当すると考えますけれど、台湾の地震の場合は、地震が起こったのが8時58分ぐらいで、9時ぐらいに津波警報を出しましたけど、記憶では10時40分に、比較的早めに注意報に切り替えて、その後もうお昼ぐらいには注意報も解除しているので、台湾の地震の事例が検討会との関連があるということではなかったかと思います。逆に、短い時間で済んだので、ある意味スムーズに、情報の変更ができたというふうに考えています。

Q:熱中症に関して伺います。今月でも真夏日のところがでたり、熱中症の患者自体が既に増えているという状況です。メインの所管は環境省ではありますけれども、「熱中症警戒アラート」の運用が来週からというところのスケジュール感が適切だったかという長官のお考えと、あと来週運用開始されるまでのこの1週間、どういうふうに熱中症の危険度を我々は知って注意していけばいいかというところを教えてください。

A:例年、ゴールデンウィーク前ぐらいから提供開始しているところであって、今年も環境省と調整して来週開始となったということです。ただ、実際ご指摘があった通り、冒頭でもお話しましたけど、今週に入って既に最高気温が30度以上、いわゆる真夏日になったところが複数ヶ所でてる状況です。  今年は準備期間の都合がありますので前倒しは困難ですが、来年以降、開始を早めた方がいいのではないかということについては、環境省と調整をするお話かなと思っています。  今年はというところですが、冒頭でもお話したとおり、「熱中症警戒アラート」が提供される前であっても、日々の天気予報や、週間予報、さらには気温には2週間予報もありますので、そちらの方も参考にしながら、明日・明後日とか、週末の行動など、例えば、外でのイベントや旅行などを考える際に、参考にしていただければありがたいと考えています。

(以上)