長官会見要旨 (令和5年10月18日)

会見日時等

令和5年10月18日 14時00分~14時12分
於:気象庁記者会見室


発言要旨

 冒頭私から2点述べさせていただきます。

 1点目は、緊急地震速報についてです。地震が発生した直後に、各地の揺れの強さや到達時刻を予測し、可能な限り素早くお知らせする緊急地震速報は、平成19年10月の一般提供開始から今月1日で丸16年となりました。
 気象庁では、先月9月26日に震源推定手法について、従来のIPF法を含む複数の手法の併用から、「改良を加えたIPF法」に一本化する運用を開始し、揺れの過大な予測の低減を図っております。引き続き、緊急地震速報の精度向上のための技術的改善を実施してまいります。
 この緊急地震速報については、見聞きしてから強い揺れに襲われるまでの時間がごくわずかであり、その短い間に、慌てずに身を守るなどの防災対応をとるためには、日頃からの訓練を通して実際に行動をとり経験することが重要です。
 気象庁では内閣府・消防庁とともに、緊急地震速報を見聞きした際の行動を確認するための全国的な訓練を来月11月2日に実施予定です。この訓練は、毎年2回、国の機関や地方公共団体、学校、民間企業等や個人にも広く呼びかけて実施しているものです。
 地震発生時に自らの命を守るため、国民の皆様には積極的に訓練に参加いただきたいと考えておりますので、より一層の利活用の活動に拡大に向け、報道機関の皆様にも周知等に引き続きのご協力をお願いいたします。

 2点目は、環境省等の関係省庁と共催で、来週の月曜日、10月23日に開催するIPCCシンポジウム「IPCC第7次評価報告書へ向けて ~未来のために今私たちが行動しよう~」についてです。
 このシンポジウムでは、気候変動に関する理解を深めてもらうために、第7次評価報告書サイクルの副議長等をお招きし、IPCC第6次評価報告書の知見を紹介いただくとともに、第6次評価報告書の振り返りと、第7次評価報告書に向けた取組や展望について議論いただきます。多くの方にご参加をいただき、気候変動の影響をともに意識し考える機会にしたいと思っております。報道の皆様にも周知へのご協力をよろしくお願いいたします。

 私からは以上です。

質疑応答

Q:10月5日と9日に、鳥島近海で震度1以上の揺れが観測されないのに実際には津波が観測され、津波注意報が発表されるということがありました。一般の人は地震があって津波というふうに思っていますので、今回のケースを踏まえて津波注意報・警報に対しての心構えや注意すべき点などについて改めてお願いします。
A:鳥島近海では10月2日以降、地震活動が継続し、この活動に関連して、10月5日と9日に津波注意報を発表しました。これら津波注意報を発表した事例では、震度を観測する陸域から離れた場所での地震活動でしたので、震度1以上を観測することはありませんでしたが津波を観測しております。10月9日の事例では、地震の規模自体も大きくありませんでした。今回のように、地震の揺れを感じなかったり震度1以上の観測がなかったりといった場合でも津波注意報・警報を発表することがあります。そのような場合においても、津波注意報を見聞きした場合には海辺から離れる、津波警報の場合はより高い安全な場所へ避難するなど、直ちに対応をお願いしたいと思います。

Q:9日の鳥島近海の地震については、詳しいメカニズムの詳細はまだわかっていない状況かと存じます。気象庁として、今回の地震や津波のことについて調査あるいは観測強化などの予定があれば教えていただければと思います。
A:今回の事例では、地震や津波のメカニズムが明らかになっておらず、現在、地震調査委員会において地震に関する検討が行われております。専門の先生方において、より地震波形の詳細な分析等が進められると期待しております。そういった中でメカニズムが明らかになっていくことを期待したいと思っております。

Q:地震調査委員会の方での対応ということで、気象庁として何かされるということは特段、今のところはないというところでしょうか。
A:当面、鳥島近海では地震活動が継続していることから、今回の経験を踏まえ、地震活動に変化が見られた場合には、津波を含めて迅速に情報が発表できるように注意深く監視を続けていきたいと思っております。

Q:各省庁において補正予算の話が出てきている時期ですので、気象庁で何か目玉となるような取組がありましたら教えていただけませんか。
A:経済対策の指示が総理から出されているところですので、その内容について各省庁において検討をしているというところです。発表できる時期になりましたら発表していきたいと思っております。

Q:鳥島近海の地震については、震度1以上を観測しなくて急に津波注意報が出たということで、基本的には自治体の話だとは思いますが、注意報が届かなかった層がいるとか、放送が届かなくて避難行動に結びつかなかったといった事例がもし確認されていましたら教えていただけないでしょうか。
A:特にそういった個々の事例について承知はしておりません。ただ、先ほど申しましたように、震度1以上の揺れが観測されていない状況の中で津波注意報や津波警報が出るということは十分ありうることですので、そういったことについては周知に努めていきたいと思っております。

Q:鳥島近海の地震について伺います。今回の気象庁の対応については、地震調査委員会の平田会長も「珍しいことではあるが、できることはきちんとやっている」というふうにお話になっていました。改めてですけれども、今回の対応について気象庁長官としてのご認識を伺います。
A:今回は地震の規模や震源等から津波が発生するということは予測できませんでしたが、地震活動があるということは認識しており、注意深く津波あるいは潮位の変動について監視していました。そういう中で実際に有意な潮位変動を観測したことから迅速に津波注意報を発表したという一連の業務の流れについては、十分適正に行ったと思っております。

Q:線状降水帯の半日前予測について、2024年から発表単位を狭めることを計画されていますけども、予定通りに進んでいるのでしょうか。
A:現在のところ、計画を変更する、あるいは延期するということは考えておりません。来年の出水期には実施できるように準備を進めていきたいと思っています。

Q:今年の線状降水帯予測の実績について所感をお願いします。
A:先月の会見でも少しお話ししましたが、今年度の出水期の実績については、9月29日時点でまとめた資料を気象庁ホームページに掲載しております。この数字を見ますと、昨年度あるいは運用開始前に想定していた予測精度よりは良くなっておりますが、これだけで明確に改善できていると判断するのは少し早いと思っております。引き続き、着実に予測精度向上に向けた努力を続けていきたいと思っております。

Q:鳥島近海の地震については、鳥島近海の観測点が少ないというところがネックだと思います。気象庁として観測点を増やすといった話は出ているのでしょうか。
A:今回も地震波形自体は検知できていて、その波形が特殊だったことから震源を決めることが難しかったということです。特に地震の観測体制が脆弱ということではなかったと理解しています。今後、メカニズムのより詳細な分析が出てきた段階で、どういう対応の必要があるのかないのか、また検討していく段階も来るものと思っております。

(以上)

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