長官会見要旨 (令和5年7月19日)

会見日時等

令和5年7月19日 14時00分~15時31分
於:気象庁会見室


発言要旨

 冒頭私から2点述べさせていただきます。
 1点目は、6月28日以降の梅雨前線による大雨についてです。まず、今般の大雨でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
 6月28日以降、活動の活発な梅雨前線の影響で、広い範囲で大雨となりました。九州北部地方、九州南部・奄美地方、中国地方、北陸地方では線状降水帯が発生し大雨となり、このうち7月10日には福岡県と大分県に大雨特別警報を発表しました。また7月14日から16日にかけても秋田県を中心に記録的な大雨となったところがありました。
 これら一連の大雨につきまして、各地の気象台からは自治体へのホットラインやJETT(気象庁防災対応支援チーム)を派遣するなど、積極的に自治体の防災対応の支援を行ったところです。
 報道機関の皆様におかれましても、防災気象情報を積極的に、かつ長時間にわたり危機感を伝えていただきまして、感謝申し上げます。
 また、既に猛暑となっている地域もありますが、今後、8月の最も暑い時期を迎えますので、熱中症への備えを万全にしていただきたいと思います。環境省と共同で発表している熱中症警戒アラートをはじめ、様々な気温に関する情報や環境省の暑さ指数等を活用いただき、皆様が置かれている状況に応じて適切な熱中症の予防対策をとっていただきたいと考えております。
 2点目は、子ども見学デーについてです。8月2日と3日の2日間、この虎ノ門庁舎を会場に、みなと科学館と合同で「夏休み子ども見学デー」を開催いたします。新型コロナウイルス感染症の流行のため、令和2年度は中止、3年と4年はオンラインでの開催でしたので、実地の開催は4年ぶり、この虎ノ門庁舎では初めてとなります。オペレーションルームの見学を始め、「雲作り実験」「南極の氷展示」「スタンプラリー」などのイベントを予定していますので、多くのお子さんに遊びに来ていただきたいと思います。
 また、全国各地の気象台でも、7月から10月にかけてお子さんを対象とした見学デー等のイベントを開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
 私からは以上です。


質疑応答

Q:今月は九州北部の大雨で大きな被害が報告されています。現在も東北や北陸の方で大雨が報告されています。近年このような災害級の大雨が増えている中で、雨の被害に遭う可能性の高い地域の住民の方に、今後の見通しや注意喚起も含めて呼びかけをお願いします。
A:6月28日以降、活動が活発な梅雨前線等の影響で、沖縄地方を除いて全国的に大雨となりました。特に7月1日から10日にかけては、九州北部地方、九州南部・奄美地方、中国地方で線状降水帯が発生しました。このうち7月10日の朝には、福岡県、大分県を対象に大雨特別警報も発表いたしました。この一連の大雨について、九州北部地方では、7月の月降水量の2倍を超える地点もありました。
 7月11日から13日かけては、西日本から北日本にかけての広い範囲で大気の状態が不安定となり、12日夜遅くには、石川県と富山県で線状降水帯が発生するなどの大雨となりました。また7月14日から16日にかけては東北付近に梅雨前線が停滞し、秋田県や青森県では平年の7月の総降水量を大きく上回る記録的な大雨となったところがありました。
 今後についてですが、東北地方では、明日20日夜にかけて雷を伴った非常に激しい雨が降り大雨となるところがある見込みです。秋田県や岩手県を中心に、これまでの大雨で地盤の緩んでいるところがあり、少ない雨量でも土砂災害の危険度が高まる恐れがありますので警戒を続けてください。また西日本から東日本では、概ね本日19日夜にかけて、雷を伴った激しい雨が降るところがある見込みです。最新の気象情報にご留意いただきたいと考えています。
 さらに、これから台風シーズンにも入りますので、全国で大雨や暴風への備えが必要になってまいります。気象庁や各地の気象台から段階的な防災気象情報の発表等により警戒の呼びかけを行ってまいります。
 報道機関の皆様におかれましても、防災気象情報や危機感の周知について、引き続きご協力いただきたいと考えております。

Q:今年も例年に増して暑さが増していて、7日には静岡県で10人が熱中症の疑いで搬送され、ランニング中に倒れて意識不明という方も報告されています。これから夏が本格化する中、今後の暑さの見通しや熱中症対策などの呼びかけをお願いいたします。
A:既に猛暑となっている地域もありますが、これから1年間でも最も気温が高い時期に入ってまいります。熱中症については、人それぞれの体調や行動、作業環境等の様々な要素が原因となりますので、日頃から最新の気象状況や環境省のホームページで公開されている暑さ指数を確認いただき、それぞれの状況に応じた熱中症対策をとっていただくことが重要です。また熱中症対策については、関係府省庁が連携して、政府一体となって取り組んでおり、当庁は環境省と共同で熱中症警戒アラートを発表する等の取り組みを行っております。熱中症警戒アラートが発表された場合には、「不要不急の外出は避け、昼夜を問わずエアコン等を適正に使用する」「身の回りの暑さ指数を確認し、行動の目安にする」「喉が渇く前にこまめに水分補給をする」「高齢者や子どもなど熱中症にリスクが高い方へ、身近な方から声かけを行う」等の熱中症予防対策を徹底いただきたいと考えております。

Q:今シーズンも線状降水帯が発生しました。改めて線状降水帯発生の予測は見逃しが多く難しいと感じています。線状降水帯予測について、技術的・防災的な呼びかけの課題についてどのように考えているのか改めてお聞かせください。
A:線状降水帯の予測、特に半日前からの可能性の予測については、まだまだ技術が未成熟であり、技術の改善に努めているところでございます。可能性が高いと見込まれる場合には積極的に線状降水帯発生の可能性について呼びかけてまいりますが、半日前の呼びかけができない場合もございます。この場合でも段階的に警報、土砂災害警戒情報等の防災気象情報を発表してまいりますので、この防災気象情報や自治体から発表される避難情報等に留意して避難行動をとっていただきたいと考えております。一方で、「顕著な大雨に関する気象情報」の新たな運用、 昨年度より30分程度前倒しして発表する、これについてはかなりの程度で出来ていると考えております。この30分ということですけども、線状降水帯では大雨の危険度が急激に悪くなるということがございますので、少しでも早く呼びかけをするということについては、ある程度出来ているのではないかと考えております。

Q:今年の梅雨を振り返って、線状降水帯の半日前予測の情報が出されていないことで、本来伝えたかった危機警戒感が伝えにくかったということはないでしょうか。これは当初から指摘されていた課題でもあるかと思いますが、いかがでしょうか。
A:線状降水帯によって非常に危険な状況が起こるということが、ある程度社会においても理解されてきていることから、線状降水帯が発生すると予測できる場合には積極的にそれをお伝えして危機感を高めていただきたい、こういう趣旨で半日前予測の情報を発表しているところです。しかし、大雨災害は線状降水帯以外でも当然発生しますので、段階的に発表される防災気象情報を的確に活用いただき、また地元の市町村から発表される避難情報にも留意いただき、警戒は怠らないようにしていただきたいと思います。

Q:今回の東北の雨は、ひたひたと長雨型で、気象庁が重視している線状降水帯のパワーワードを使う前にいろいろと災害が起きました。そういった意味で、実際の気象庁の呼びかけと被害との間にギャップを感じるという声もあるのですが、その点についてはどう思われますか。
A:やはり、線状降水帯だけに注目するのではなく、その他の現象、今回の秋田の大雨に関しては、一時的に猛烈な雨が降るという形ではなく、強い雨がある程度長時間続いて大雨災害が起こるという形でした。これに関して、秋田地方気象台の情報では「警報の基準を大きく超えるような大雨となる」といった表現を用いて警戒を呼びかけたところですので、そういった表現も工夫しながら危機感を伝えていきたいと思います。

Q:秋田の浸水被害ですが、ハザードマップを見ると、浸水が想定される地域が結構広がっていたと思われるのですが、それでもやはり被害が出て事前の災害防止策に繋がらなかったように思われます。今後台風シーズンを迎えますのでハザードマップの活用について呼びかけがありましたらお願いします。
A:洪水あるいは浸水の被害については、ご自分が住んでいるところにはどのような危険があるのかということをハザードマップ等で確認していただくことが非常に重要だと思います。自分のところに潜在的な危険があるということを認識した上で防災気象情報を的確に使っていただくということが必要だと思います。

Q:先週末の秋田の大雨は、線状降水帯もなくダラダラ長い雨が広範囲で続いたという印象ですが、結果的に河川の氾濫が相次ぐなど被害は大きいものになりました。気象庁の事前の呼びかけ、あるいは大雨が降っている中での呼びかけ等の防災対応について不足はなかったか、長官の評価や受け止めを率直にお聞かせください。
A:今回の秋田県を中心とした大雨については、地元の秋田地方気象台において、大雨となった15日の前々日の13日から大雨に関する気象情報により、15日頃の大雨について警戒の呼びかけを開始しました。前日14日の午前中には、この大雨の見通しについて自治体向けに説明会を実施するとともに、その内容を報道発表する等の対応を行いました。また、14日夕方の気象情報においては「警報基準を大きく超えるような大雨となる」というような表現を用いて、より一層の警戒を呼びかけており、地元の報道機関においてもこの表現も用いながら危機感をお伝えいただいたものと考えています。その後も段階的に防災気象情報を発表し、厳重な警戒を呼びかけるとともに、自治体にはホットライン等で防災対応の支援を行いました。このように地元の気象台としては、やれることはやってきたのではないかと考えておりますが、当然課題もあるものと思います。この点につきましては、自治体とも連携して振り返りを行い、引き続き、防災気象情報や自治体への支援の改善に取り組んでまいりたいと思います。

Q:いま長官がおっしゃった課題として、現時点ではどのようなことをお考えですか。
A:一つ言えることは、秋田県を中心に大雨となるという予測はかなりの程度当たっていたとは考えるのですが、秋田県内でどのような雨の分布、雨の強くなるところがどこになるのかということは、なかなか事前にはわからないというところもございます。こういったところをより精度高く予測していくという技術的な課題は引き続きあると思っております。情報の発信については、自治体等とともに振り返りを行って課題を抽出していくことになると思います。

Q:秋田の大雨について、東京の気象庁の対応として共同取材や事前の報道機関向けの説明会も開かれないまま結構な浸水被害が出たという印象を持っています。報道機関を通じた呼びかけのあり方としては、福岡の大雨の対応と比べるとちょっと少なかったと率直に感じているのですが、長官はどのように受け止められているでしょうか。
A:福岡のときは、線状降水帯に代表されるように、短時間で非常に激しい雨や猛烈な雨が降って急激に災害の危険度が高まるといった気象状況を想定していたところですが、今般の秋田については、一気に警戒度が高まるというよりは段階的な情報発表がある程度有効な例と思っていたところです。また、大雨の中心がほぼ秋田県となるということもありまして、地元での対応を最大限行うという考えで対応したところです。

Q:結果として、その対応は十分だったと思われますか。
A:この部分はなかなか難しいところで、県内での降り方の分布の結果によって、秋田の市街地で広い範囲で浸水をするという結果になりましたが、その結果については必ずしも予見はできなかったと思っております。

Q:そのような中、秋田や岩手を中心に明日まで雨が降り続くということですけれども、この1週間ほどの状況を踏まえてどういう警戒を呼びかけたいか、改めてお願いいたします。
A:東北地方では、明日夜にかけて非常に激しい雨が局地的に降る可能性がある状況が続いています。このため、これから少ない雨でも土砂災害の危険度が高まることが想定されますので、決して気を抜かずに警戒を続けていただきたいと思います。

Q:東京の気象庁で共同取材や共同会見を開くと、そのインパクトがすごく強くて、全体的に警戒感が高まるのですが、東京で会見あるいは共同取材を開く厳密な基準はあるのか、もし基準があるのでしたら、秋田のような事例を受けてそれを変えることはあり得るのか教えてください。
A:クリアな基準というものを作っているわけでは必ずしもありません。大雨の影響範囲、期間や程度、特別警報級の可能性が出ているのか出ていないのか、といったことを総合的に勘案して東京で記者会見等を行うかどうかを判断しています。今回の秋田のことについては今後しっかり検証して、このような被害の発生が予見できるのであれば、東京での対応ということも考える必要があるのでないかと今は考えています。しっかり検証したいと思います。

Q:秋田の場合は、短時間に一気にではなくて、じわじわと降り続けたわけですけれども、こういう時こそ気づきにくいというのが住民にもあると思います。そこを気づかせるための工夫が要ると思うのですが、改善として考えられることはありますか。
A:先ほど申し上げましたように、警報基準を大きく超えるような大雨になるといったキーワードを使って地元でも呼びかけておりまして、そのキーワードを使って報道機関にも危機感をお伝えいただいたと思っております。より伝わる表現については、いろいろ相談しながら改善できるものは改善していく必要があると思います。

Q:気象業務法の改正によって民間も土砂災害や洪水の情報が出せることになりましたが、より良い防災に繋げていくといった観点から、彼ら民間の役割への期待についてお聞かせください。
A:今般の気象業務法改正で洪水や土砂についても予報業務許可の基準を作り、予報業務の運用についても定めました。洪水や土砂の予報業務については一般に向けての予報ではなく、個別の利用者に向けての情報提供ということを想定しています。事前にどのような対策ができるのか、どの程度の可能性があるときにどのような対策をとるのか、個別の事業所等の置かれた場所によって違ってくると思いますので、今回の法改正によってきめ細かな対応が可能になると思います。

Q:20日ぐらいまでの見通しを最初の方でおっしゃいましたが、大雨については20日で一息ついてもよいという意識でいても大丈夫でしょうか。
A:20日には、梅雨前線が本州の南海上まで下がるという状況になっております。その後、梅雨前線としては不明瞭になっていきますが、日本付近には湿った空気が入りやすい状況が続きますので、必ずしも手放しで良いということではないと思います。引き続き最新の気象情報に留意していただきたいというところです。

Q:長官がおっしゃった秋田の雨に関する検証ですが、検証結果は公表するお考えがありますか。また、そのスケジュールについて教えてください。
A:大雨のシーズンが終わってから振り返ることになると考えています。自治体とも連携して振り返りを行いますので、その内容をどのような形で公表するのかについては今後の検討になると思います。その結果、どういう改善を行いますということについては当然発表をしたいと思います。

Q:梅雨明けの前から40度近くまで暑くなってしまうようなことが、去年も今年も起きています。温暖化の影響もあると思いますが、このようなことが今後も続く、定着していくことになるのでしょうか。
A:昨年も梅雨の半ばに非常に猛暑になりました。これについては、温暖化がなければあの規模の猛暑にはならなかったであろうといった研究結果が得られています。ただ温暖化が進行しているから毎年のようにこうなるかというと、これはまた別の問題でして、年ごとの気象状況の違いに応じて現れてくるということが考えられます。ただ、ベースとして地球規模の気温が上がっているということは間違いありませんので、その部分の下駄が履かされるということについては間違いないと思います。

Q:去年は記録的な早さで梅雨明けの発表をして、その後訂正、実際には梅雨は明けていなかったということになりました。そのことを踏まえて、今年の梅雨明けについて発表基準を変更したといったことはあるのでしょうか。
A:そのようなことはありません。梅雨期のトータルの天候経過を見て、どこを梅雨明けとみなすのがいいのかということは、最終的に全て見てみないとわからない部分があるのですが、梅雨明けの発表において、今後の天気の見通し等も勘案しながら判断していくということについては、去年、確定値と速報値に差があったからといって基準を変えたということはありません。

Q:温暖化の影響などで梅雨明けの判断が難しくなっていると長官はお考えですか。
A:年ごとの違いというのがやはりあって、梅雨時期に雨がずっと続いた後に晴れが続くといった、いわゆる教科書的な年というのはむしろ珍しいと思っております。いつの年でもその時々の気象経過と予測を用いて梅雨明けを判断しますので、その年に応じた難しさはあると考えています。

Q:今年は猛暑と豪雨が同時に発生しているように見受けられます。先ほど温暖化が背景にあるといったお話もありましたが、このような極端な気象現象が起きている中での気象予測や注意を呼びかける難しさについて、長官の受け止めを教えてください。
A:個々の豪雨のイベントについて、このイベントは温暖化の影響であるとは即断できないということがあると思います。一方で、短時間に降る強い雨の頻度は、アメダスの観測を始めた当時と比べて概ね2倍になっているといった統計的事実がありますので、今まであまり大雨災害が起きてこなかった例えば東北や北海道においても大雨被害は十分起こりうるということを念頭に置いて情報発表もしますし、その情報を受け取って行動に移していただきたいと思います。

Q:秋田の大雨に関して先ほど、「気象庁本庁の対応について今後しっかり検証し、被害の発生が予見できるのであれば東京での対応が必要だと思っている」と発言されました。この東京での対応というのは、いわゆる気象情報の文言を変えていくということなのでしょうか、それとも記者会見や共同取材で直接呼びかけるような対応が必要ということなのでしょうか。
A:東京で記者会見をすると全国的な危機感がぐっと上がるというご指摘が先ほどありました。それを踏まえると、情報の文言ということもさりながら、それをどのような形で社会に発信していくのかということについても、いろいろご意見を伺いながら改善していくべきものは改善していく必要があると思います。

(以上)

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