長官会見要旨 (令和5年6月21日)

会見日時等

令和5年6月21日 14時00分~14時15分
於:気象庁会見室


発言要旨

 冒頭私から2点述べさせていただきます。
 1点目は大雨と暑さへの備えについてです。今月に入りまして、6月1日から3日午前中にかけて梅雨前線が本州付近に停滞し、前線に向かって台風第2号周辺の非常に暖かく湿った空気が流れ込み、特に2日には四国や近畿、東海地方では線状降水帯が発生するなど、西日本から東日本の太平洋側を中心に大雨となりました。
 この一連の大雨につきまして、気象庁では、各地の気象台から段階的に防災気象情報を発表し警戒を呼びかけるとともに、 半日程度前から線状降水帯による大雨の可能性の呼びかけも行ったところです。また線状降水帯により非常に激しい雨が同じ場所で降り続いていることをお知らせする「顕著な大雨に関する気象情報」について、先月25日から最大で30分程度前倒しで発表することとしており、今回の大雨では、実際に前倒しで発表することができました。報道機関の皆様におかれましても積極的に危機感をお伝えいただきまして、大変ありがとうございました。
 現在、鹿児島県奄美地方で大雨となっていますが、これから梅雨の末期にかけて、広い範囲で大雨が心配される時期となります。各地の気象台が発表する注意報や警報等に加えて、土砂災害や洪水災害等の危険度がどこで高まっているのかを地図上に示した「キキクル」も活用いただき、早めの防災行動や防災対応をお願いしたいと思います。
 さらに、まだ体が暑さに慣れていない時期ですが、この時期は急激に気温が高くなることがありますので、熱中症への備えが必要です。環境省と共同で発表している「熱中症警戒アラート」をはじめ、気象庁が発表するさまざまな気温に関する情報や、環境省のホームページに掲載されている暑さ指数といった情報を活用いただいて、皆様が置かれている状況に応じて、こまめな水分補給や冷房の適切な使用など、対策をとっていただきたいと思います。
 2点目は、気象防災アドバイザー育成研修についてです。4月の会見でも紹介させていただきましたが、気象庁では、地域の気象と防災に精通した「気象防災アドバイザー」を自治体の防災対応に活用いただく取組を進めております。
 気象防災アドバイザーは、地元の気象台と連携しつつ、自治体の立場に立って、平時には地域の普及啓発活動などに取り組むとともに、災害時には防災気象情報をきめ細やかに解説し、自治体の避難情報の発令などの判断を支援する重要な役割を担っています。  現在191名の気象防災アドバイザーがいらっしゃいますが、より多くの自治体のご要望に応えられるよう、昨年度に引き続き、気象予報士を対象とした「気象防災アドバイザー育成研修」を実施し、新たな人材を育成いたします。
 近日中にこの育成研修の受講生募集を開始いたしますので、地域防災に貢献していただける意欲ある気象予報士の方に奮ってご応募いただきたいと考えております。
 私からは以上です。


質疑応答

Q:先月5月は、震度5弱以上が多発したのではないかと多くの国民が感じているところです。長官としてはどう受け止められて、そして、改めて国民に呼びかけたいことはありますでしょうか。また、5月の一連の地震を受けて庁内で新たに指示したことや対応したことがあればお願いします。
A:5月には、5日の石川県能登地方の地震をはじめとして、最大震度5弱以上の地震が6回発生いたしました。これらの地震は別々の5か所で発生いたしましたが、30日間のうちに、今回のように別々の5か所で震度5弱以上の地震が起きた事例は、過去10年でも2回ございました。またマグニチュード5以上の地震で見ると、ひと月あたりの発生回数の中央値は10回であるのに対して、5月は28回発生しました。しかし、過去にはさらに多くの回数が発生したこともあり、自然現象の揺らぎの範囲内であると考えております。なお、5月の5か所での地震の震源は距離的に離れていたり、メカニズムが異なっていたりすることから、これらの地震の間に直接の関連性はないものと考えています。現在の状況が特に異常であるとは考えておりませんが、日本国内では、いつどこで強い揺れを伴う地震が発生してもおかしくありません。引き続き、日頃からの地震の備えをお願いいたします。気象庁といたしましては、引き続き、日本周辺の地震活動を注意深く監視していきます。5月の地震発生状況については、今月8日に実施した「令和5年5月の地震活動及び火山活動について」の報道発表において、定例の資料に加えて、どの程度地震が多かったかに関する資料も提供しておりますので参考にしていただければと思います。

Q:線状降水帯のいわゆる直前予測が先月開始しまして、一部実測にはならなかったというところはありつつも、昨日や一昨日もしかり、概ね直後に実測で発生していると受け止めています。 こうした実運用を見まして長官はどのように感じていますか。また、今後の課題や展望についてお願いいたします。
A:冒頭にもお話ししましたように、6月2日から3日午前中にかけて梅雨前線が本州付近に停滞し、前線に向かって台風第2号周辺の非常に暖かく湿った空気が流れ込んだため、前線の活動が活発になり、6月2日に四国地方、近畿地方、東海地方では線状降水帯が発生いたしました。「顕著な大雨に関する気象情報」については、5月25日の最大30分程度前倒しして発表するという運用の変更後初めての発表となりましたが、実際に前倒しで発表をすることができており、大雨災害発生の危険度が急激に高まっている状況を少しでも早くお知らせすることができたものと考えております。気象庁といたしましては、「顕著な大雨に関する気象情報」が発表されたときには、地元自治体からの避難情報に従い、直ちに適切な避難行動をとっていただきたいことや、この情報を待つことなく、気象台が段階的に発表する防災気象情報を活用いただき、早め早めの防災対応や避難行動をとっていただきたいことなどについて、引き続き周知していきたいと考えております。

Q:いま奄美で大雨が降っていて、昨日は「顕著な大雨に関する情報」も出されました。半日前予測が出ない中での線状降水帯の発生となりましたが、この大雨に対しての率直な受け止めをお願いします。
A:奄美地方で非常に激しい雨が降っているということで、土砂災害警戒情報が奄美大島の広い範囲で発表されております。引き続き今夜にかけて警戒していただきたいと思います。今回の線状降水帯につきましては、半日程度前からの呼びかけというのはできておりませんでした。やはり難しい現象であったと思います。半日程度前から線状降水帯の呼びかけができない場合であっても大雨となる可能性がありますので、地元の気象台・測候所から発表される気象情報に引き続き留意いただき、早めの対応を取っていただきたいと思います。

Q:奄美では今後も雨が降り続くと思いますので、改めて住民の方への呼びかけをお願いします。
A:奄美地方は昨日から激しい雨の降りやすい状況が続いております。既に土砂崩れ等が発生している状況でございまして、まだまだ強い雨が続くという予想になっております。引き続き厳重な警戒をよろしくお願いいたします。

Q:新運用になった「顕著な大雨に関する情報」ですけれども、6月初旬の大雨のときの状況を見ていくと、当初から指摘されていましたけれども、予測の要素が入ってきたがために発表回数が増える傾向があるのではないかと思います。そのあたりの受けとめや、もし解析ができているようでしたら教えてください。
A:昨年の運用では情報の発表はしなかったけれども、今年は予測を加味したために発表している、という例があったということは確かでございます。「顕著な大雨に関する気象情報」を発表する際の主たる基準は3時間雨量ですが、今回の運用変更後は、これを2時間半以上の実況の雨量と目先30分以内の予想雨量も含めた解析を行っているという状況でございます。ということで、実際、これから強い雨が降り出すという意味の予測ではなく、既に非常に激しい雨が同じ場所で降り続いているという実況も踏まえた中で、大雨による災害発生の危険度が急激に高まっていることを、「線状降水帯」というキーワードを用いてお知らせするという情報でございます。そういう意味としての情報の運用としては適切であるというふうに考えております。

Q:気象庁の定義する線状降水帯が実際に出来ている、出来ていないに関わらず、大雨の状況をいち早く知らせるという点では、6月初旬のケースはうまく機能しているという受け止めでしょうか。
A:その通りでございます。

Q:活火山法が改正され、火山調査研究推進本部が文科省に設置される予定ですが、この改正を受けて気象庁として今後対応されることがありましたら教えてください。
A:6月14日の参議院本会議において、火山調査研究推進本部の設置などを柱とする「活動火山対策特別措置法の一部を改正する法律案」が成立しました。ご指摘のとおり、火山調査研究推進本部の体制を作るということで、これは来年の4月に発足するというスケジュールになっております。気象庁も非常に関わっていくことになりますので、来年の4月に新しい体制で仕事ができるよう、気象庁としても最大限貢献していきたいと思っております。

Q:近年、7月に大きな大雨災害が起きることが多いですが、もうすぐ7月になるということで、改めて大雨災害への呼びかけなどありましたらお願いします。
A:これから梅雨の末期を迎え、大雨が心配される時期となってまいります。特にこの7月の降水量は東日本と西日本で平年並みか多いという予想をしております。大雨が予想される際には、各地の気象台が段階的に気象情報を発表し、災害が切迫しているときには警報あるいは土砂災害警戒情報などを発表しますので、これらの気象情報に留意いただき、早めの防災対応をお願いしたいと思います。


(以上)

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