長官会見要旨 (令和5年4月19日)

会見日時等

令和5年4月19日 14時00分~14時18分
於:気象庁会見室


発言要旨

 冒頭私から2点述べさせていただきます。
 1点目は、暑さへの備えについてです。昨日18日に報道発表いたしましたが、熱中症予防に資する情報である熱中症警戒アラートについて、今年は4月26日より提供を開始いたします。
 この熱中症警戒アラートは、熱中症の危険性が極めて高くなる暑熱環境が予測される場合に、国民の皆様に暑さに対する気づきを呼びかけ、予防行動を効果的に促すことを目的とするもので、令和3年より全国を対象に環境省と共同で発表しております。
 今年の夏の気温につきましては、北日本・東日本・西日本で「平年並」か「高い」と予想しております。このアラートを含めまして、環境省や気象庁から提供している暑さ指数や気象情報についても、熱中症の予防行動に活用いただけるよう、様々な普及啓発活動に取り組み、熱中症の予防に貢献してまいりたいと考えております。
 特に本格的な夏を迎える前の時期でも、多くの人が十分に暑さに慣れていない状況で気温が上昇することがあるため、熱中症に注意が必要です。このアラートが発表されていない場合でも、日々の最高気温や環境省のホームページで公開されている暑さ指数を参考に、油断することなく、暑さ対策を実施していただきたいと思います。
 2点目は、気象防災アドバイザーについてです。近年気象庁では、各地の気象台において地域の防災力の向上を支援する取組を強化しているところです。中でも、地域防災の最前線に立つ市町村の防災対応力を上げていくことは大変重要だと考えており、その取組の一環として、気象防災アドバイザーの拡充と活用促進に取り組んでおります。
 気象防災アドバイザーは、地域の気象と防災に精通したスペシャリストとして、気象庁が実施する所定の研修を修了した気象予報士や、一定の職務経験を有する気象庁退職者に委嘱するものです。気象防災アドバイザーを活用することで、気象台が発表する防災気象情報をもとにした避難情報発令の迅速な判断や、地域住民等に対する普及啓発の推進が期待されます。
 先日4月1日に、昨年度実施した研修を修了した気象予報士59名と気象庁退職者22名の計81名に、新たに気象防災アドバイザーを委嘱いたしました。これにより気象防災アドバイザーの委嘱者は191名となりました。
 昨年度中は、29名の気象防災アドバイザーが36自治体において活躍しましたが、今回委嘱者が増えたことで、市町村にとってより活用しやすくなったものと考えております。
 なお、今年度も気象防災アドバイザー育成研修を実施する計画で、地域防災に貢献する意欲のある気象予報士の方々にぜひ受講いただきたいと考えております。準備が整いましたら別途お知らせいたします。
 私からは以上です。


質疑応答

Q:今年もまた出水期が近づいてきました。長官は現場で数値予報や降水短時間予報などにも携わってこられました。豪雨や線状降水帯などの短時間予測の精度向上についてどのように進めていかれるのか、改めてお伺いしたいと思います。
A:近年、毎年のように全国各地で大雨の被害が多く発生しており、そのような被害の防止軽減のため、短時間予測の精度向上は喫緊の課題と考えております。 なかでも、顕著な大雨により甚大な被害をもたらす線状降水帯の予測精度向上を早期に実現すべく、庁を挙げて取組を強化・加速化しているところです。この線状降水帯の予測精度を向上させるためには、まず、積乱雲の発生に結びつく水蒸気をはじめとした大気の状態を正確に把握することが必要です。このため、最新の技術を用いた気象レーダーやアメダス等の観測機器の更新強化を前倒しで進めています。さらに、令和11年度の運用開始を目指し、観測能力を大幅に強化した次期静止気象衛星の整備を着実に進めてまいります。加えて、予測技術の高度化についても、大学等とも連携しつつ、スーパーコンピュータ「富岳」を活用した研究開発を引き続き進めます。そして、これらの研究により得られる高度化した予測技術については、計算能力の強化を進めている気象庁のスーパーコンピュータに速やかに実装してまいります。これらにより、線状降水帯の予測精度を向上させ、現状では関東甲信地方といった地方単位での半日前からの予測について、令和6年には県単位で、令和11年には市町村単位での情報提供を目指すなど、情報の改善に努め、防災・減災、国土強靱化におけるソフト対策としての重要な役割を果たしていきたいと考えております。

Q:冒頭発言がありました気象防災アドバイザーに関して、今抱えている課題や今後の取組の方向性について伺えますか。
A:課題といたしましては、委嘱者が都市部に多く地方に少ないという現状がございます。こういうこともあって、自治体での任用が十分に進んでいないということがあるかと思っております。気象庁といたしましては、引き続き育成研修や気象庁のOB/OG等への委嘱を通じてアドバイザーの拡充を図っていくということと、自治体での活用を促進するために、関係省庁とも連携して自治体への周知を図るということ、それから自治体の防災担当者にアドバイザーの助言の効果を実感いただけるような取組も考えていきたいと思っております。

Q:今、地方で足りないというお話ありましたけども、アドバイザーを委嘱するような気象予報士や気象庁OBの方が地方に多いとは限らないといった状況が今後劇的に変わるというのはなかなか考えにくいと思います。委嘱する方の枠を広げる、あるいはハードルを下げるといった議論の必要性についてはどのようにお考えですか。
A:目標としましては、各都道府県に最低5名程度の委嘱者がいる状態に持っていきたいと考えておりまして、昨年度実施した育成研修につきましても、委嘱者の数が少ない地域からの応募者を優先させていただきました。今年度も育成研修を実施する予定ですけれども、地域偏在を解消するような方向で選考していきたいと考えています。また、今の段階では枠を広げるといったことについては考えておりません。

Q:熱中症警戒アラートに関連してお尋ねします。今、環境省を中心に法定化の動きあります。これまで全国での運用を2年間やってきて、その課題、例えば北日本などで一律に暑さ指数33で運用するのが果たして妥当なのかどうか。有識者からも疑問を呈するような声が上がっていますけれども、そちらには手をつけずに、今年も基準は同じ一方で、より上位の特別警戒アラートのような情報を出す動きもあります。この2年間の課題をきっちり見据えた上で今年も運用するというふうになっていないと感じるのですけれども、このあたりについて長官はどのように整理されていますでしょうか。
A:熱中症警戒アラートの基準に関しまして、暑さ指数と救急搬送者数に地域差があることを考慮して基準を見直すべきではないかという指摘があることは承知しております。一方で、全国で運用が始まった令和3年と令和4年はコロナの時期ということもあって、コロナが終わったときの人々の動きと若干異なる状況ということも考えられるかと思います。ですので、基準を見直すことが必要なのか、それをすべきかどうかということも含めて、今後慎重に進める必要があると思っております。いつ見直していくかということについては現時点では言えないところですけども、熱中症特別警戒アラートをどのような形で出していくかという議論もこれからですので、そういうことも含めて検討していくことになるもの思っております。

Q:最近の地震活動について、幸いなことにこの数ヶ月大きな地震は起きていないのですけれども、東北地方では先日も震度4の地震がありましたし、石川県の能登では群発地震も続いています。最近の地震活動の受け止めと今後の注意喚起について改めてお願いします。
A:石川県能登地方では、2020年12月から地震活動が活発になりまして、2021年の7月頃からさらに活発になっておりまして、その傾向は現時点でも継続しております。この活動で最大規模の地震は、昨年6月の最大震度6弱を観測したマグニチュード5.4の地震です。この地震につきましては、地震調査委員会の方で、「これまでの地震活動及び地殻変動の状況を踏まえると、一連の地震活動は当分続く」とされているところですので、地元の皆様におかれましては、現在の地震活動の状況を踏まえて、今後も強い揺れに備えた対策、具体的には家具の耐震固定などをしていただくようにお願いしたいと思います。それから東北地方に関しましては、東北地方太平洋沖地震の余震活動がまだ続いている状況、大地震の発生前と比べて地震活動が活発な状況が続いております。引き続き強い揺れに注意していただきたいというふうに思います。

Q:先月、浅間山の噴火警戒レベルが2に上がりました。火山の状況についてどのように見ていらっしゃいますでしょうか。
A:引き続き通常よりも火山活動は活発な状況というふうに考えております。引き続き噴火警戒レベルに従って、規制される区域には立ち入らないように注意をお願いしたいと思います。

Q:月末から連休を控えていますけども、連休中に国民の方に気をつけてほしいことがありましたらお願いします。
A:これまでの天候の経過を見ますと、3月は北日本と東日本では記録的な暖かさでした。4月に入っても全国的に気温の高い状況で経過しており、明後日ぐらいまでは気温がかなり高いという状況です。その後冷たい空気が入ってきやすくなるということで、来週24日頃からは気温がかなり低くなるところもある見込みです。ゴールデンウィークについては、ほぼ平年並みの気温というふうに予測しておりますが、最新の気象情報に留意いただきたいと思います。

Q:先ほどの熱中症に関連して、アラートをタイミングよく出していくということも大事だと思うのですが、高温については熱中症だけではなく、気温の上昇に伴う労働生産性の低下や経済活動への悪影響について世界保健機関や気象機関など色々なところが関与して研究を進めるということも始まっています。環境省や気象庁だけではなく厚労省など関係省庁も含めて広い視点からこの暑さの影響を検討し、害をなくしていくといった取組はこの先ないのでしょうか。
A:気候変動適応法の改正というのは、そういうところを狙ったものだと思っております。現時点でも熱中症等の対策は環境省と気象庁が発表する熱中症警戒アラートだけでは決してなくて、様々な省庁が政府一体となって進めているところですけれども、それを一層強力に進めていくという趣旨であると理解しております。ご指摘のとおり、極端な暑さの現象が世界中で起きておりますし、日本でも最高気温が40度を超えることも稀ではなくなっているという状況がございますので、今後とも国が一体となって対策を進めていく必要があると思っております。


(以上)

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