長官会見要旨 (令和5年3月15日)

会見日時等

令和5年3月15日 14時00分~14時17分
於:気象庁会見室


発言要旨

 冒頭私から2点述べさせていただきます。1点目は、気象業務法の改正についてです。先月、2月24日に、「気象業務法及び水防法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会へ提出されました。
 この法律案は、自然災害の頻発化・激甚化を背景に、洪水等の予報の高度化が求められていることを踏まえ、水防法等における都道府県が気象庁と共同して行う洪水予報の早期発表を図る仕組みの構築や、気象業務法における予報業務の許可制度の見直し等により、官民それぞれの予報の高度化・充実を図るものです。
 気象業務法に関しては、具体的には、洪水等の予報業務について、最新技術を踏まえて許可の基準を最適化し、技術上の基準により審査することとするとともに、防災に関連する現象の予報業務について、事前説明を受けた利用者に限り提供できるようにする等の措置を行います。
 今後も引き続き、国会における法案成立に向けて対応を進めていく予定です。
 2点目は、数値予報モデルの改良と線状降水帯予測スーパーコンピュータの稼働開始についてです。
 気象庁では、平成30年に策定した「2030年に向けた数値予報技術開発重点計画」に基づき、数値予報の技術開発を推進しております。この3月の改良では、数値予報の技術基盤である全球モデルの水平高解像度化、アメダス湿度計や船舶による水蒸気観測データの利用開始・拡充や局地モデル・メソアンサンブル予報システムの改良を実施します。この改良により、台風や前線に伴う強い降水や線状降水帯の予測精度などが改善します。
 また3月1日には、喫緊の課題である線状降水帯の予測精度向上のために、現在運用中のスーパーコンピュータの約2倍の計算能力を持つ「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」の稼働を開始しました。新しいスーパーコンピュータの高い計算能力を活用することにより、令和5年度には水平解像度2kmの局地モデルを半日前からの呼びかけにも利用できるようにします。また、令和7年度には水平解像度をさらに細かく1kmに高解像度化することを目指して、数値予報モデルの開発を進めます。
 このような取り組みを今後も継続し、台風や線状降水帯等の予測精度の向上及び情報の改善に順次つなげ、防災活動の支援の強化を進めてまいります。
 私からは以上です。

質疑応答

Q:先日、H3ロケット初号機の打ち上げが失敗いたしました。ロケットに搭載していた先進光学衛星(ALOS-3)は防災上も大切な衛星だと思います。衛星のユーザーの官庁として衛星の作り直しについて長官はどうお考えでしょうか。
A:まず3月7日のH3ロケットの打ち上げ失敗についてですけども、我が国の新しい基幹ロケットでありますH3ロケットの打ち上げ失敗については大変残念に思っております。同じ3月7日にJAXAにおいて対策本部が設置されたところでございますので、今後、原因究明がなされるものと考えています。H3ロケットの打ち上げ失敗に伴って「だいち3号」(ALOS-3)が失われたということになり、実際そのミッションの運用が遅れることになるわけですが、「だいち」シリーズの衛星に関しましては、気象庁では、現在運用している「だいち2号」による干渉SAR(合成開口レーダー)の解析結果を火山噴火予知連絡会での定期的な火山活動の評価等に利用しているところであります。今回、H3ロケットの打ち上げ失敗に伴いまして、「だいち3号」に期待していた高解像度の光学観測の運用も遅れることになります。これについては引き続き、気象衛星「ひまわり」をはじめとした他の衛星の観測データを利用していく予定でございます。一方で、噴火警報等の火山防災情報については、火山周辺に設置している地震計、GNSS、監視カメラといった様々な観測データをもとに発表しておりますので、「だいち3号」の運用の遅れが当庁の火山監視業務に直ちに大きく影響することはないと考えております。

Q:光学観測がありますと、気象衛星「ひまわり」による常時観測と航空観測との間を繋ぐ存在として安価にウォッチできるのと、大雨の場合は、雲が取れた後のことではありますが、被災状況をすぐに把握することができますので、早く作り直してほしいという要望はないのでしょうか。
A:「だいち」シリーズについては、気象業務にも利用しているほか、国としての防災業務に活用していると承知しておりますので、これについては、引き続き、着実にこのミッションが継続あるいは高度化していくことを期待したいと思っております。

Q:わかりました。そもそも1999年にH2ロケット8号機で運輸多目的衛星、のちに打ち直して気象衛星「ひまわり」になりましたが、その打ち上げに失敗しております。国の主力ロケットでこういった防災関連の重要な衛星が失敗を重ねていることについては、どうお考えでしょうか。
A:国の衛星に関しては国の基幹ロケットを用いて打ち上げるのが政府の方針でございまして、その基幹ロケットの信頼性には非常に期待しているところでございます。運輸多目的衛星の打ち上げ失敗の際には徹底した原因究明を行っていただいて、その後、H2ロケットの高い信頼性を獲得していったという実績がございますので、今回もきちんと原因究明と対策がとられ、高い信頼性を持ったロケットへと対応が進められていくことを期待しております。

Q:気象業務法の改正によって防災情報の質や量がどんなふうに上がると考えてらっしゃるのか、また、民間の活躍がこれで本当にしやすくなるのかおっしゃっていただけますか。
A:今回の法改正によりまして、都道府県と気象庁が共同で行う洪水予報がより早期に提供されるということが一つの大きな改善点になると考えております。また、民間による多様なニーズに応じたきめ細かな予報がより提供されやすくなるということで、地方公共団体や住民、事業者等の適切な防災対応に繋がると考えています。民間事業者による洪水等の予報については、新しいシミュレーション技術等を的確に審査することによって、より多くの民間事業者が洪水予報に参入していただけると期待しております。

Q:今回の法改正によって、予報を誰がどういうふうに出すかという形は整ったと言えるのでしょうか。まだ残っている課題があるとしたらどんなところでしょうか。
A:令和3年に「洪水及び土砂災害の予報のあり方に関する検討会」において、洪水や土砂に関する公的な予報・警報、それから民間による予報の高度化に対して報告をいただいたわけですが、これら関しては、今回の法改正で達成できると思っておりますので、これ以上の課題は特にないと考えております。防災情報全体の見直しについては別途有識者に意見等をいただいているところですので、その検討の状況を踏まえて次なる制度の改善ということも視野に入れていきたいと思っています。

Q:4月から火山噴火予知連絡会が新しい体制で始まります。これについての長官の所感や期待を教えてください。
A:4月から火山噴火予知連絡会の体制を変更いたしまして、火山噴火予知連絡会の下に「火山活動評価検討会」、「噴火災害特別委員会」を設置するとともに「火山調査研究検討会」の準備会を設置することとしております。昨今の大学の研究環境、それから気象庁の業務体制といったものを反映して、火山噴火予知連絡会の体制を最適化することを狙ったものでございます。気象庁といたしましても、定常的な火山の活動の評価についてはある程度自分たちで行える体制が整ってきたと思っておりますので、こういったところはしっかりやっていくとともに、通常と異なるような現象が出てきたときには、直ちに専門家に相談できる体制を4月からやっていきたいと思っております。

Q:主に自民党議員の間から活火山法の改正に向けた動きが出ていますが、こういった議員立法による法改正を目指す動きについてはどのように受け止めていますか。
A:活動火山対策特別措置法の改正について、自民党の中で議論されていることは承知しております。これについては、議論を注視しながら関係府省とも連携して必要な対応を進めていきたいと思っておりますし、当然火山噴火予知連絡会の体制とも関わってくると思いますので、しっかり検討していきたいと思っております。

Q:今後、仮に火山本部のようなものが出来て、その調査研究部門をどこが所管するといったことは今後の議論ということですね。
A:はい。

(以上)

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