長官会見要旨 (令和5年2月15日)

会見日時等

令和5年2月15日 14時00分~14時21分
於:気象庁会見室


発言要旨

 私から4点述べさせていただきたいと思います。
 1点目は、2月6日にトルコで発生した地震についてでございます。2月6日、日本時間の10時17分、現地時間の4時17分、トルコでマグニチュード7.8の地震が発生し、その約9時間後の同じ日の19時24分、現地時間13時24分にもマグニチュード7.6の地震が発生しました。現地では多数の死傷者や家屋の倒壊など甚大な被害が生じています。犠牲となられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された方々にも心よりお見舞い申し上げます。
 2点目は洪水に関する危険度情報の一体的な発信についてです。現在、気象庁ホームページでは、中小河川の洪水危険度を伝える洪水警報の危険度分布、愛称「キキクル」を提供しております。また水管理・国土保全局では、大河川のきめ細かな越水・溢水の危険度を伝える、国管理河川の洪水の危険度分布、「水害リスクライン」を運用しています。明日2月16日から、これらを気象庁ホームページの洪水キキクルのページ上で一体的に提供いたします。
 これまで、ある地域の詳細な洪水危険度を把握する際、中小河川と国管理の大河川について、別々のホームページでそれぞれ確認する必要がありました。明日からの一体的な提供により、今後は気象庁ホームページ上で、その地域を流れる河川の詳細な洪水の危険度を一目で把握できるようになります。
 大雨の際は、自治体が発令する避難情報に基づき避難行動をとっていただくことはもちろんのこと、早め早めの対応を取れるよう、これらの情報もぜひご活用いただきたいと思います。
 3点目は、今週土曜日2月18日に開催する「巨大地震対策オンライン講演会」についてでございます。この講演会は、巨大地震による被害を軽減するため、地震・津波情報を最大限活用いただけるよう、内閣府等と連携して開催いたします。講演では、内閣府や気象庁から、南海トラフ沿いや日本海溝・千島海溝沿いで想定される巨大地震に対する被害軽減の取組や地震・津波に関する情報について解説するほか、有識者から巨大地震のメカニズムや地震・津波への備えと行動についてお話いただくなど、巨大地震や津波のサイエンスと防災情報を幅広く盛り込んだ内容となっております。
 4点目は、気象庁と気象ビジネス推進コンソーシアム、略称「WXBC」の共催で、来週水曜日2月22日に開催する「第7回気象ビジネスフォーラム」についてでございます。近年、我が国では気象災害が激甚化・頻発化し、企業の拠点やサプライチェーンにおける被害が生じており、今後も気候変動により気象災害のリスクが高まると予想されていることから、各企業ではこれまでの想定を超える気象災害の発生も見据えて対策を行うことが必要となっております。このような背景のもと、このイベントでは、企業活動における防災や事業継続をテーマとして、最新の話題や企業の取り組みを紹介いただくとともに、気象情報やデータ活用の展望についてトークセッションを行います。
 今ご紹介いたしました2つのイベントは共にオンラインで開催いたします。定員は1,000名となっております。また後日アーカイブの配信も行います。この機会に多くの方にご参加・ご視聴いただき、地震や津波への備え、また企業活動における防災や事業継続に役立てていただきたいと考えております。報道機関の皆様にも周知へのご協力をお願いいたします。

 私からは以上です

質疑応答

Q:非常に寒い日が続いておりますけれども、まもなく春が来るというところですので、この冬の寒さや雪の状況などを振り返ってみて、どのように捉えているか教えてください。
A:この冬の天候の経過を振り返りますと、12月の後半に強い寒気が流れ込みましたが、1月の半ばには全国的に寒さが緩んだ時期があり、1月下旬には再び顕著な寒気が流れ込むなど気温の変動が大きくなっております。また、2月10日から11日かけては本州の南岸を低気圧が通過したことにより、関東甲信地方の平地でも大雪となりました。気象庁ではこれらの雪に対して、事前の予測や雪の降り方に応じて段階的に防災気象情報を発表するとともに、関係機関と共同で大雪に対する緊急発表を行い、警戒を呼びかけたところです。

Q:この冬の寒さや雪について、ラニーニャ現象の影響がどのようにあったと捉えていらっしゃいますか。また、今後ラニーニャ現象の収束が予測されていますけれども、そのことが夏にかけての天候や大雨にどのように影響するとお考えでしょうか。
A:この冬につきましては、事前からラニーニャ現象の影響を受けるということが予想されておりました。12月の後半や1月下旬のような強い寒気の流れ込みには様々な要因が考えられますが、ラニーニャ現象の影響で偏西風が蛇行したことも一つの要因というふうに考えております。詳細につきましては、3月に定例の異常気象分析検討会の開催を予定しておりますので、専門家の先生方とも協力して分析を進めたいと思っております。それからラニーニャ現象についてですけども、現在収束に向かっている状況でございまして、夏頃には逆にエルニーニョ現象の発生という可能性も見えてきたところでございます。夏にかけての天候の見通しについては、来週の火曜日2月21日に3か月予報と暖候期予報を発表する予定ですので、その際に担当の方から詳しく説明したいと思います。

Q:最後の質問になりますが、東日本大震災からまもなく12年となります。これについての長官のお考えを教えてください。
A:東日本大震災から来月11日で12年を迎えることとなります。改めて、この震災で犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。また、この間、被災地の復興に尽力されてこられた方々に改めて敬意を表します。気象庁では、この大震災以降、地震津波情報に関していくつかの改善を順次実施してまいりました。津波警報に関しては、マグニチュードが8を超えるような巨大地震が発生した際に、最初に地震の規模の正確な推定ができていない段階でもしっかりと警戒を呼びかけるため、予想の高さを「巨大」として津波警報を発表することといたしました。また沖合の津波観測データを使い、精度良く津波警報の更新を行うための新たな技術も導入いたしました。緊急地震速報に関しては、同時に複数の地震が発生しても精度良く発表するための改善や、巨大地震の際に、震源から離れたところでも適切に発表するための改善を実施いたしました。また、今月から長周期地震動を緊急地震速報の発表基準に追加しております。今後とも地震津波情報の改善の努力を続けていきたいと思います。この地域は依然として東北地方太平洋沖地震の発生前と比べて地震活動が活発で、この状況は当面続くと考えられます。昨年3月16日にも、福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震が発生し、宮城県と福島県で最大震度6強を観測して、大きな被害が生じました。東北地方は元々地震の多い地域であり、マグニチュード7クラス以上の地震の発生確率が高いと評価されていることから、日頃から強い揺れや津波への備えをお願いしたいと思います。

Q:今月発生したトルコの大地震について、従来から気象庁では災害や気象の分野で国際的な連携をされているところですが、今回の地震を受けてトルコに対して、新たに協力していたり、あるいは今後協力するよう指示したことがありましたら教えてください。
A:トルコの地震に関しましては、国内的な対応ということでは、地震発生30分後に遠地地震に関する情報を発表いたしまして、国内的な初動対応に役立てていただいたものと考えています。それからトルコとの関係でございますが、トルコとは政府レベルで防災に関する協力関係を築いてきております。過去には気象庁の職員をトルコに出張させて、緊急地震速報に関する技術的な協力として講演を行ったという実績もございます。現時点では災害が発生した段階ということで特段の指示はしてはおりませんけれども、今後、政府間の枠組みの中で気象庁としてできる協力をしていきたいと思っております。

Q:今般、アメリカの上空で中国の偵察用気球ではないかとされるものが撃墜されるという事案がありました。中国は民間の気象用のものだという説明を崩していません。日本上空でも気球が目撃されていますが、従来から気象観測では国際的な協力があると思うのですけれども、中国からそういった気球が日本に飛来するといった連絡はあるのでしょうか。
A:通常の気象観測としてラジオゾンデによる観測というのは、気象庁をはじめ世界各国で行っております。このラジオゾンデの観測は、気球を飛ばしまして、これが上空で破裂して1時間程度で落下してくるというものですので、長時間同じ高度に滞留して観測するというようなものではございません。少なくとも気象庁ではそのような機器を使った観測は行っておりませんし、他の国からそのような観測を行うというような通知を受けていることはございません。

Q:これまで通知を受けたことはないということですが、選択肢としては、やりうる、国際法上は取り組めるものなのでしょうか?
A:通常のラジオゾンデの観測ですと、その観測機器が場合によって他国の領域に入るという可能性はあるかとは思います。

Q:改めて確認させていただきますが、これまで中国含む他国から長期間滞留するような気象観測を行うという通知を気象庁が受けたことはないということですね。
A:受けたことはございません。

Q:先週、気象庁は東京23区にも大雪警報を発表され、前日の共同取材でも警報級の大雪になる可能性に言及されていました。大雪警報の発表後、割とすぐに注意報に切り替わったと思うのですけれども、23区に大雪警報を出したことについて、それが適切だったかどうか長官の受け止めと、首都圏での大雪の予報は難しいということは言われておりますけれども、その予測精度は年々上がっているものなのか教えていただければと思います。
A:2月10日から11日にかけて前線を伴った低気圧が本州の南岸を進んだということで、10日には関東甲信から東北地方の太平洋側の広い範囲で雪が降ったという状況でございます。こういった大きな気圧系の推移はかなりよく予測できていたと思います。一方で、東京地方は23区も含めて大雪警報を発表したわけですけども、結果的には多摩地方では警報級の大雪となったわけですが、23区、都心では積雪とはなったものの1センチ以上の積雪とはならなかったという状況でございました。ご指摘のとおり、どの範囲まで大雪となるかという見極めは直前においてもなかなか難しいのが実情でございます。今回は警報級の大雪となる範囲が23区と多摩地方の境界ぐらいでした。これがどこまで都心に向かって広がるのかという見極めは事前にはなかなか難しかったという状況でございますが、都心でも十分大雪となる可能性があるという状況下で警報を発表したということでございます。大雪に関しましては、これまでの雪の状況や今後の雪の状況を面的に把握できるような「今後の雪」という資料を気象庁ホームページで提供するようになっておりますし、雪の予測についても改善はしてきていると考えておりますけども、細かい局地的な雪の分布についてはまだまだ改善の余地があると思っております。

Q:中国の気球に関してですが、例えば日本の領空に気球が入ってきた場合、気象庁としてはそういった事実を察知することはできるのでしょうか。
A:特にそれを察知するということはありません。できないと思います。

Q:ゾンデの分布を把握する過程で、異質なものが飛んでいることにたまたま気づくといったこともないですか。
A:我々が自分で揚げたゾンデについては、どこに到達してどこに落下しているかということを把握していますが、外国のものについては把握しておりませんので、実際どういうふうに飛んでくるかは分からないということになります。

Q:となりますと、当然ながら、異質なものが空に飛んでいることを覚知したら官邸に連絡するといったルートはないということですか。
A:はい、ありません。

Q:トルコの地震についてですが、トルコと日本とでは建物の耐震基準や防災情報の内容が違うということは把握しております。ただ、直下地震の恐ろしさや比較的大きな地震が続いたという点に国民の関心が高まっています。改めてこの地震への備えという点で長官からどのような呼びかけをされたいでしょうか。
A:今回、マグニチュード7.8という、内陸で起こる地震としては非常に規模が大きい地震でございました。トルコもプレートの境界、プレートが複雑に入り組む地帯でございまして、日本と状況が似ているというところはございます。熊本地震の例もありましたように、一度大きい地震が起こった後、その後にまた同程度の地震が起こることも十分考えられます。日本では、どこにおいても大きな地震は発生しうる、発生しないということはない、ということでございますので、日頃からの地震への備えが非常に重要と思っております。改めて日頃からの備えを確認していく機会にしていただければと思います。

(以上)

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