長官会見要旨 (令和4年10月18日)

会見日時等

令和4年10月18日 14時00分~14時24分
於:気象庁会見室


発言要旨

   冒頭私から一点お話をさせていただきます。日本海溝・千島海溝沿いの大地震について、後発の巨大地震への注意を促す情報を気象庁が発信することになったということについてです。
   9月30日の中央防災会議におきまして、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画が変更になりました。切迫性が高いと指摘されている日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震につきまして、今後はこの新しい計画に基づいて対策が推進されることとなっております。その中で、想定震源域やその周辺で大きな地震が発生した場合に、気象庁が後発の巨大地震に備えるよう注意を促す情報を発信し、これを受けて自治体等が住民に向けて日頃からの備えの再確認と迅速な避難体制の準備を呼びかけることが新たに盛り込まれたということでございます。
   後発の巨大地震への注意を促す情報でございますが、これは高い不確実性を伴うものでございます。ですけれども、1人でも多くの人の命を救うために、不確実性が高い状況のもとで過不足なく適切に防災対応をとっていただこうというものでございます。
   この情報を発信したときに自治体や企業、住民などが混乱することなく適切な防災対応をとっていただくためには、情報の内容や情報が発信された際にとるべき防災対応を日頃から事前に理解していただくことが重要だと考えております。
   このため、気象庁は内閣府などと連携をいたしまして、後発地震への注意を促す情報だけではなく、日本海溝・千島海溝沿いで発生が想定される巨大地震の概要や平時から実施すべき地震への備えも含めて周知啓発をこれから集中的に進めてまいりたいと考えております。報道機関の皆様にもその周知等についてご協力をいただければと思います。
   どうぞよろしくお願いいたします。私から以上です。

質疑応答

Q : 先日、北朝鮮のミサイル発射後、気象レーダーに雨雲の切れ目のような線が映っていたことにより、SNSでミサイルの軌道ではないかと推測する投稿が相次ぎました。ミサイルとは無関係ということですが、改めて気象レーダー画像を利用する際の注意喚起をお願いできないでしょうか。
A : 今お話がございました通り、10月4日に函館付近の気象レーダーの画像に雨雲の切れ目のような線が見られました。これは函館レーダーから見て北西の方向に標高の高い山がありまして、その地形の影響で雨雲が見えないという状況になっていたことが原因でございます。実際にはこの雨雲レーダーのプロダクトというのは函館のレーダーだけではなく周辺のレーダーも使っていますので、いつもこの切れ目が出ているというわけではありませんけれども、特に雲が低いようなときに起こることがございます。
 私どもとしては、こういう低い雲についてもできるだけこういうことが解消できるように、レーダーの観測技術やレーダーデータの活用の仕方について技術開発に取り組んでいるところでございます。
 ただ、なかなか完全には除去できないというようなところですので、天気予報や防災気象情報につきましては、このレーダーの画像だけではなくてアメダスの観測データや気象衛星あるいは数値予報といったものも使って問題なく発表しておりますので、こういった情報も併せてご活用いただければと思います。

Q : 緊急速報メールの関係で何点か聞かせてください。緊急速報メールのうち噴火警報等については、この12月末で配信を終了するという発表がありましたけども、まず、それに対しての長官の所感を教えてください。
A : 気象庁は、災害に関する危機感を住民の皆さんや自治体あるいは社会全体にお伝えして、そこでの判断や対応を支援しているということでございます。そのためには、私達が順次発表している防災気象情報を早めに、そして地域を絞り込んでお伝えするということが重要だと考えております。こうした考えに基づいて不断の見直しを行っているわけですけれども、今後特に地方自治体、私達の情報を活用して避難情報を発令しているわけですけれども、その的確な発令をしっかりと支援していくということ、それから最近は報道の皆さんにも割合お使いいただいているキキクル、この活用を進めたいと考えておりますし、特にそのキキクルの情報をプッシュ型でお知らせするようなサービスを民間の事業者さんにも協力いただいて進めております。こういった取り組みを強力に進めていきたいと考えているところでございます。一方、気象などについての特別警報を緊急速報メールでお伝えするということについては、その対象となる市区町村が記載されていないなど危機感をお伝えするという先ほどの考え方からすると十分ではないという課題が明らかになってきております。そういったことから、気象などについての特別警報を緊急速報メールで配信するということについては、今年の12月末に終了するということにしたというものでございます。一方で、防災のアプリなどが普及してまいりまして、防災気象情報の提供環境というのはかなり充実をしてきております。そのため気象庁の緊急速報メールがなくても、住民の皆さんに特別警報はしっかりと伝えられているというふうに考えているところでございます。

Q : 情報の受け取り手である住民にとっては、情報の受け取り手段が一つ減る形にはなるかと思います。確かに情報を受け取る手段はかなり充実してきているというのは、近年の状況としてあると思うのですけど、一方で全ての国民がアプリを入れているわけではもちろんないですし、防災行政無線についても、例えば雨音で聞こえなかったりといった状況もあったりして、その他の手段でも全ての国民に情報が届いているかどうかというところはまだ課題があるかと思います。そういった中でも、今回やめても良いという判断に至った理由を改めて教えてください。
A : 防災アプリのようなサービスが充実してきているということに加えて、昨年、私どもが緊急速報メール配信の見直しについて報道発表をした際にいろいろご心配の声も聞かれましたので、今回、全市区町村を対象にアンケート調査を実施いたしました。この中で特別警報については必ず緊急速報メールや防災行政無線、場所によっては戸別の受信機も含めて適切な手段で住民にお伝えをいただいているということが確認できました。こういったことをもって特別警報を住民にお伝えするということについてはしっかりなされていると考えたところでございます。

Q : アンケートに関してですが、全市区町村に聞いたということですけども、その中でこの配信の終了の是非については多分問うてはいなかったと思うのですけど、去年10月の報道発表以降、行政の方とか特に住民の方から不安の声があった中で、それでも住民の方も含めて廃止しても良いかどうか意向を聞かなかった、そういった判断の理由もあわせて教えていただけますか。
A : 元々昨年、配信の見直しを検討して進めていくにあたって、市区町村の皆さんにもお話をさせていただきました。そのやり取りの中で配信をやめてもらっては困るという声は全く出てきませんでしたので、配信をやめるのをやめてほしいというようなご意向はないものというふうに判断をいたしました。今回アンケートを行うに当たりましても、設問に淡々と答えていただくということでは、実際にどう考えていらっしゃるかということがなかなか分からないところも多かったものですから、かなりのヒアリングをさせていただきました。その中でも、緊急速報メールでの伝達ということについては課題こそお話いただいたところはありましたけれども、これをぜひ続けてもらわなければ困るといったようなご意見は出てこなかったというところでございます。

Q : 冒頭発言にありました後発の巨大地震への注意を促す情報についてお聞きします。12月に運用開始が迫っている中で、この情報に対する周知がなかなか進まない中で始まるだろうなというふうに思っています。冒頭言われたように、高い不確実性を伴いながら、けれどもやはり注意を促すと。しかるに、南海トラフ地震の臨時情報とも似ているようでかなり違うところがありますよね。事前の避難を呼びかけないとか、専門家による分析もないとか、それから頻度で言うと、数年に一度ぐらいのペースで発表されそうだというあたり。現状、この情報の内容に対する理解がなかなか進まない中で、この情報が出たときには相当ドキッとされるのかなと。内閣府と気象庁の緊急記者会見という形式もありますので、どういうふうに防災上を受け止めたら良いか、長官の立場でもう一度お話しいただけますか。
A : 今まさにおっしゃった通りで、この情報が出たら1週間程度の対応をお願いするということになろうかと思いますが、その間に巨大地震が起こりますという予測をしているわけではございません。通常でも逼迫していると言われている巨大地震でございますが、それがさらに確度が高まった状態になっていますということをお伝えするものでございます。 従いまして、例えば社会経済を止めてしまって避難に専念するということではなくて、社会の動きを止めないのだけれども、いつ地震が起きても良いように日頃の地震の対策をしっかりと点検していただく、地震が起きて津波の警報が出たときにはすぐに逃げられるように準備をしていただくといったことについて呼びかけをしたいと考えております。

Q : 内閣府と一緒にやられると思いますけれども、できるだけ急いでこの情報の意味を伝えるという理解の促進という点では、具体的に何か考えていらっしゃいますでしょうか。
A : 今、地方自治体に向けての説明会を進めているところでございます。また、皆さま報道の方々にもしっかりご理解をいただきたいということで説明会を予定しております。それから、住民向けに直接というところではチラシやポスターを作って配布したり貼ったりしていくということや、マンガ冊子を作って話題を呼んで周知を図ろうとか、デジタルサイネージを使っていこうかとか、さらにホームページでも特別なページを作ったり、自治体の広報誌にも協力をいただいて周知を図ってまいりたいと考えております。

Q : 情報の名前には「北海道・三陸沖」と付きますけれども、高い津波の襲来が予想されるエリアの中には、福島、茨城、千葉もあって、これらのエリアでは3.11(東日本大震災)の記憶はありますけれども、「北海道・三陸沖」というので地元のことだとピンとこないようなエリアも呼びかけの対象になるわけですけれども、そのあたり誤解のないようにする工夫というのは何か考えていらっしゃるのでしょうか?
A : 情報の名称につきましてもいろいろな観点からご意見をいただいた中でこの名称になったわけですけれども、今おっしゃったように、名称からなかなか想起できない地域の方々への周知というのは、ますます重要なことだと思います。しっかりとその点も含めて周知をしていきたいと思います。

Q : 後発の巨大地震への注意を促す情報に限らず、最近気象庁の情報発信の種類が、線状降水帯の予測も含めていろいろ多岐に増えていて、受け手としては処理が追いつかないというか、報じる側も少しそういうところがあるかもしれないのですけれども、そういったことに対して長官としてのお考えや対策がもしあったら教えてください。
A : 地震についてではないのですけれども、特に気象に関しては、これまで様々な災害を受けて少しずつ情報の改善をしてきたわけです。その中には新しい情報の発表も含まれていて、今おっしゃった線状降水帯の情報も含めて情報の追加がずっと積み重ねられてまいりました。その結果、情報の種類が多すぎるとか、情報の名称についてももう少し分かりやすくできないかといったご意見がございまして、実は今、防災気象情報に関する検討会というものを今年の1月から開催しておりまして、ここで情報の名称や体系を含めて分かりやすい情報にしていこうということで検討を進めているところでございます。9月9日にその検討会の中間取りまとめが公表されました。この中では、防災気象情報というものは情報の受け手の判断や対応を支援するものなのだという定義づけをして、その情報については「対応や行動が必要な状況だということを端的にお伝えする簡潔な情報」と「その背景や根拠を丁寧に説明する情報」の二つに大きく分けられるのではないかという結論が出されたところです。今、その考え方に沿って具体の情報をどうしていくかということについて、検討を進めようとしているところでございます。

Q : 今年の出水期もほぼ終わりが見えていると思うのですけども、今年も強い台風とか活発な前線活動、線状降水帯などいろいろなことがありました。この出水期を振り返って、気象庁の対応はどうだったか、評価はどのようにされているのか教えていただけますか。
A : はい、台風や前線に伴う大雨などいろいろなことがありました。私どもとしては、その都度その時々の予測、観測、直前の予測に対応してきちんと情報発表ができたと考えておりますし、情報発表だけではなく、ホットラインやJETT(気象庁防災対応支援チーム)の派遣といったものを通じた地方自治体への支援や地域防災力への貢献ついても思った通りのことができたと考えております。
 情報がどう活用されて災害の防止軽減に繋がっていったのかということについては、各気象台が自治体と振り返りを進めていきますので、その中で課題が上がってくればそれについて考えたいと思っています。また、線状降水帯もそうですし台風についてもそういうところがありますけれども、精度はまだまだ十分ではないというところがありますので、これについても事例を積み重ねて、精度の向上に繋げたいと考えているところでございます。

Q : 後発の巨大地震への注意を促す情報について、先ほど長官がこの情報について「高い不確実性」という言葉を用いていらっしゃいましたけれども、長官ご自身として今回のこの情報の導入についてどう評価されているのか、また、平時からの周知啓発を進めたいということでしたが、気象庁としてどのような取り組みをしていくのか、2点伺います。
A : まず、評価といいますか、これまでの地震の発生の仕方や地震学の知見から、場所や日時や大きさを特定した地震の予知というのはできないということではありつつも、大地震の発生する確度が一定程度高まっているということについては分かるというのが、私達が今持っている地震についての知見なわけですけれども、それを実際の災害対策や防災に役立てられるのかという観点で様々な有識者などをも含めて検討した結果、このやり方がいいだろうという結論のもとで進めるものであると、そういう経緯をたどったものというふうに認識をしています。[気象庁1][気象庁2]周知につきましては、今、各自治体や報道機関などへの説明会を進めているということに加えまして、チラシやポスターを使った周知ですとか、ホームページに特別なページを作ったりSNSでの発信をしたり、それから関連する自治体の広報誌がございますので、そういったものも活用させていただいて周知を図りたいと考えているところでございます。これは気象庁だけということではなく内閣府など関係機関とも連携して、情報だけでなく、後発巨大地震の概要や地震への備えについても併せて周知に取り組んでいきたいと思っています。 
 
Q : 今回の後発の巨大地震への注意を促す情報の導入時期について、検討会で検討された結果ということだったのですけれども、長官として情報の導入時期についてどう思われますか。早すぎるといったことはないですか。
A : 防災情報ですので、こういうことができる、あるいは準備がもう大丈夫だということになれば、なるべく早く始めるというところだと思います。ただ一方で、周知を進めないと効果が現れないというところがありますので、そのバランスの中で情報の運用開始の時期が決まってきているというふうに理解しています。

(以上)

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