長官会見要旨 (令和3年2月17日)

会見日時等

令和3年2月17日 14時00分~14時31分
於:気象庁会見室


発言要旨

   冒頭、私から4点ほど述べさせていただきます。

   最初に地震について述べさせていただきます。
   先週13日(土)に、福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生し、宮城県と福島県で震度6強を観測し、各地で被害が出ております。この地震により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
   この地震の後、周辺の地震活動が活発となっておりまして、地震発生から1週間程度は、最大震度6強程度の地震に注意が必要です。また、揺れの強かった地域では、家屋の倒壊や土砂災害などの危険性が高まっておりますので、今後の地震活動や降雨の状況に注意していただきますようお願いいたします。
   この地震は東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震の余震域で発生したものです。その大震災から来月11日で10年を迎えます。改めて、この震災で犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。
   この10年間、気象庁では、地震や津波に関しまして様々な業務の改善に取り組むとともに、震災の経験を忘れることのないよう、関係機関とも連携し、地震・津波防災に関する普及啓発活動を精力的に行って参りました。
   この普及啓発活動の一環といたしまして、来月6日には、「南海トラフ地震」の防災対策をテーマとしたシンポジウムを三重県津市で開催いたします。三重県の鈴木知事が、東日本大震災を教訓とした防災対応に関して基調講演をなさいますが、その中で、宮城県の村井知事とのWeb会談も予定しているところでございますのでご紹介をさせていただきました。

   次に、皆様にお詫び申し上げなければならないのですが、先月末に発生しましたシステム障害についてでございます。
   1月26日16時40分頃に、当庁の気象データなどをやり取りする基幹システムである気象情報伝送処理システム、通称アデスという名前でご存じの方も多いかもしれませんが、ここで障害が発生いたしまして、その影響で、報道機関を含めた民間事業者や、自治体等の関係機関に気象データが正常に提供できない状態となりました。国民の皆様や関係する方々に多大なるご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。
   現在、気象庁では、情報通信ネットワークやシステムの更新・整備の作業を進めているところでございまして、今回の障害は、その作業の中で機器の設定に誤りがあったことが直接の原因でした。そして、障害への対応の中で手順等の誤りがあり、地震情報が一部利用者の方に長時間配信できない状態となる等の問題が発生しました。
   これまでに、今回直接の原因となった機器の設定等についての確認体制を強化し、また、作業全体の管理をする体制を強化する等の再発防止策を徹底しており、その上で、システムの更新・整備作業を継続し、また運用についても行っているというところでございます。また、万が一、不測の事態が発生した場合でも、強化した体制のもと、迅速な対処を行い、速やかに利用者への情報提供ができるような体制で実施して参ります。

   3点目ですが、線状降水帯の予測精度の向上についてでございます。
   気象庁では、令和2年7月豪雨を受けまして、線状降水帯の予測精度向上を最優先の課題として、観測の強化や予測技術の高度化等を進めているところです。
   こうした取組につきましては、気象庁だけで行うのではなく、多くの方々のお知恵をお借りしようということで、「線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ」を設置し、2月4日に第1回会合を開催したところでございます。本ワーキンググループのメンバーとなってくださっている大学や研究機関等の専門家の方々から、最先端の科学的知見に基づいたご助言をいただいたり、産学官で連携した技術開発に結びつけていきたいということを考えているところです。
   こうした取組を通じて、しっかり精度の向上を図り、少しでも良い情報を少しでも早い時期に皆様のもとへお届けできるよう頑張っていきたいと思いますし、こうした取組を通じて成果が得られた場合には、皆様にもお知らせしていきたいと考えているところでございます。

   最後に、気象庁ホームページのリニューアルについてでございます。
   昨日、報道発表しておりますとおり、2月24日に気象庁ホームページのリニューアルを予定しています。新しいホームページの売りは、ご自身がお住まいの地域の情報、例えば警報・注意報や危険度分布等を並べてご覧いただけるところが利点だと考えております。
   引き続き、気象庁ホームページを日常生活や災害対応等にご活用いただければと考えております。

   私からは以上です。

質疑応答

Q : 先日の震度6強の地震ですが、10年前の東日本大震災の余震ということに驚いた方も多かったと思います。そもそも余震とはいつまで続くものなのか、また「余震」を見直すという一部報道もありましたが、気象庁としての見解を教えてください。
A : 「余震がいつまで続くのか」というご質問にお答えするのはなかなか難しいところです。余震自体はこれからも相当長く続くと考えております。ただ一方で、一つ一つの地震を取ってみたときに、それが余震かどうかを判断することは難しいところでございまして、今のところ気象庁では、余震域を設定して、その範囲で起きた地震については全て余震として位置付けてお伝えしてきたところです。
 ご質問の趣旨は、そういったことをいつまで続けなければいけないのか、ということかと思います。私どもとしては、東北地方太平洋沖地震の発生から10年が経過することを踏まえて、余震域で規模の大きな地震が発生したときに、どうお伝えするのが良いのかということについて庁内で検討しているところでございます。呼びかけ方については、発生した地震が余震かどうかに関わらず、大きな地震が発生したときに、地震の揺れや津波に備えていただくといった防災行動に繋げていただくためにはどういう伝え方が良いのかという観点で検討することが大事だと考えており、現在そのような観点で検討しているところです。

Q : 10年前と比べて気象庁として進歩した点と現在の課題点を教えてください。
A : 東日本大震災の教訓を踏まえて、この10年間、気象庁でも色々なことを行ってきました。津波や地震の監視体制を強化することや、緊急地震速報の迅速化や精度向上、また津波警報のあり方についての改善等に取り組んできたところです。また、周知広報や普及啓発の活動にも力を入れて参りまして、例えば緊急地震速報等についての認知度は上がってきているのではないかと考えています。
 一方で、情報をしっかりお使いいただくという意味では、精度や品質を向上させていくという点には引き続き多くの課題があると考えており、これについては研究機関等の方々とも連携しながら、少しでも良い情報を作っていくことが一つの課題になっているだろうと考えております。
 また、個別具体な話になりますが、津波警報等を、特に聴覚障害者の方々にお伝えするための「津波フラッグ」についても、これから普及を図っていかなければいけないステージにあると考えており、関係機関とも連携をして、しっかりと普及を図っていきたいと考えております。ぜひお集りの報道機関の皆様にもご協力いただいて認知が高まっていくようにしていこうと考えております。よろしくお願いいたします。

Q : アデス障害についてお伺いします。今回システム障害が発生した後に、自治体や報道機関といった利用者に対して、システム障害が発生したこと自体を明確にお知らせするような連絡が一切ありませんでした。この点についての改善策はお考えでしょうか。
A : まさにおっしゃる通りで、私としてはシステム障害があったということについては、障害の原因を究明したり復旧させたりするといったことはもちろん大事な仕事で、懸命にやらないといけませんが、それと並行して、影響の範囲を明らかにして、利用者の方々に一早くお知らせしていくということも非常に大事なことだと思っています。こういったことは従前から障害の対応の留意すべき点として庁内で周知はされていたところではありますが、今回の事象を通じてまだ改善の余地があるということが分かりました。残念なことではございますが、それについてしっかりと改善をしていかなくてはいけないと考えています。今回のことを受けて、システム全体や近隣のシステムとの関係等の全体を俯瞰して、作業を管理していくという体制が手薄だったことで、影響範囲を把握しきれなかったり、お伝えすべきところにお伝えするのが遅くなるということが生じましたので、そこをしっかり強化するということで、本来あってほしくはありませんが、次に障害が発生した場合には、強化された体制を通じて的確な評価や部外への迅速な連絡を徹底したいと思っています。

Q : 2011年に同じような障害が起きたときには、その時の担当者が速やかに会見を開いて事情を説明すると共に謝罪をされていました。一方で、今回は長官ご自身が頭を下げられるまで、情報基盤部の担当者が会見を開かないといった対応を取られたと思いますが、その点については誠実な対応だったと言えるのかお聞かせください。
A : まず、会見を開いて広く皆さんにお知らせするということについては、2011年の時には、障害の復旧も難しく影響も甚大だというところまでは一早く分かっていて、ただその時も何がどこまで止まっているかということを評価することはなかなか難しかったのですが、とにかく甚大な影響があるということで一早く会見を開いたと私は認識しています。今回は障害が発生した時点で一定の対策を取ればその影響を最小限に抑えられるというように考えていましたが、これほどの形で大きな影響になることまで分からなかったというところで、2011年の時の対応とは違ったと考えています。

Q : 実際は人為的ミスで接続のミスがあって障害が長期化したわけですが、その点についてはいかがですか。
A : その点については、1月29日に、当時何が起こったかということを担当者から説明させていただいたという経緯があるかと思います。説明までが遅いのではないかということについては、その通りだと私も思っておりまして、先ほど申し上げたような形をもって、何が起こったのか、どのような影響があったのかということについて、迅速な対応を今後は心掛けたいと考えています。

Q : 東日本大震災の余震の話ですが、余震の発表の見直しを検討されるに至った背景や理由をもう少し詳しく教えてください。
A : 考え方としては、余震という形でお伝えすることが、これまでそうしてきたわけですが、本当にそれで良いのかということについて検討しなければいけないだろうということが私たちの考え方です。ちょうど10年を迎えるということを一つの機会として検討が始まったということでございます。

Q : 余震と聞いた時の受け止め方の問題ということでしょうか。危険性がうまく伝わらないとか、かえってその地震の適切な評価に関わってくるとか、どう受け止めるのかということに関わってくるということでしょうか。
A : 地震の科学的な分析については、このこととは別に考えていくべきことだと思いますし、地震学の専門家の方々の見方によってこれを余震と見るのかどうかというのは違ってくると思っています。先ほど私からお話したことは、専らお伝えの仕方として「余震」という言葉を使うことがよろしいかという観点での回答となっています。

Q : 今回、気象防災監が設置されて初めての大きな地震だったかと思いますが、実際に設置されて運用等がどのように改善されたか、ご感想があれば、あるいはこういった改善点が見つかったとか、気象防災監の設置に関して何かあればお願いします。
A : 気象防災監の一つの仕事はこのような突発的な事が起きた時に、緊急参集チームというものがありまして、そこに参集してハイレベルでの調整をするということが一つの役目です。実際には、当番を組んでやっているので、この日はたまたま本人ではなく代理の者が最初の参集をしたのですが、その後のことや、その日の庁内の様々なことについては、気象防災監がしっかり指揮を執る一員として働いてくれたと考えています。今すぐに何か気象防災監について課題があるかというと、私としては特に認識しているものはありません。

Q : 気象防災監設置前と比べて、こういったことがスムーズになったなどといったことはありましたか。
A : 具体的に何かが円滑になったかと言われるとなかなか難しいですが、長官の私としては、一人ハイレベルの視点で全体を見てくれる人がいるということは非常に心強かったというところがございます。

Q : 線状降水帯の予測精度向上ワーキンググループに関して、産官学、科学者も含めて、どのような方向が良いのか、また技術開発でも協力・連携をしてというお話ですが、民間や文部科学省関連の機関の力を借りることの他に、気象庁として、線状降水帯はとても世の中の注目度が上がっていますし、精度向上が求められていることを受けて、予算要求をもっと強化し、お金をかけて自分達で行うという方向も並行して考えたりすることはないのでしょうか。あまりその部分のお金が増えていないと取材していて見て取れるような印象があるのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
A : まず一つは、線状降水帯の予測のために必要な、水蒸気がメインとなりますが、気象の観測を強化しなくてはいけないという点については、今回の補正予算の中でいただいているところです。今後はそれを使って、スーパーコンピューターを使った予測技術を高めていくということが必要で、高めた予測技術を運用していくためには、スーパーコンピューター等をどうしていくかといったことを検討しなくてはならないと考えています。そういった必要な経費については、もちろんしっかりと要求させていただいて開発に努めたいと考えています。一方で、研究開発のための予算のことをもしかしたらご質問されたのかもしれませんが、これについては、それぞれの研究機関が持つリソースを使ってそれぞれが研究されて、その成果をシェアし合ったり、方向性を一致させて、協力して一つのことにみんなでチャレンジしていくというようなことを考えているところです。気象庁も、気象研究所も含めて研究開発体制を持っていますので、その中でしっかりやっていきます。他機関のリソース、資金を目当てに連携するものではございません。

Q : 東北地方太平洋沖地震の余震の伝え方について、今までの長官の説明ですと、どのような問題意識を持って伝え方を検討しようとしているのか、まだよく分かりません。オートマチックに、いわゆる余震域で発生した地震を余震と位置付けていることを、このまま現状維持していいのかという点に疑問を持たれているのかどうか、そのあたり教えていただけないでしょうか。
A : まさにおっしゃるとおりで、余震域で起こった地震をすべて余震と位置付けることが良いのかということが一つの検討課題で大事なところだと思っています。

Q : 位置づけた末に、それが防災上のメッセージとしてどのように伝わっているだろうかといった点も含めてということですか。
A : そうです。

Q : 唐突に見直しの話が出てきたように思ったのですが、そういった土壌が何かあったのでしょうか。巨大地震の余震という位置付けをしないとするのであれば、例えばどのような形が考えられるのでしょうか。
A : もともと、余震であるかどうかに関わらず、そこで想定される地震や発生した地震に対して警戒を呼び掛けることを前面に出していくやり方もあるでしょうし、マグニチュード9の地震だから、まだまだ強い地震があるんだというようにご理解いただくというやり方もあるでしょうし、そういった観点でどういったメッセージを皆様にお伝えするのが良いかということだと考えています。

Q : 明確に余震と伝えることによって、何か防災上の効果が相殺されている等、デメリットのようなものを具体的に想起されているわけではないということですか。
A : 私はそのようなご意見を耳にしているわけではありませんし、私たち自身が余震という言い方が良くないのではないかと強く思ったということではありません。

Q : 10年というこのタイミングで一度考えてみようということでしょうか。
A : そうです。

Q : 余震という表現ぶりを見直すということに関して、余震域で起こっているものについては、考え方として余震で変わらないものなのかどうか、つまり、冒頭発言の中では余震自体は相当長く続くとおっしゃった一方で、先ほどの質問の中では、言葉尻を捕らえるようで恐縮ですが、余震と位置付けるのはどうかというご発言があり、ずれを感じるのですが、そのあたりの説明をもう少しお願いします。
A : 余震が続くだろうと申し上げているのは、例えば地震の数を数えたときに、震災前に比べてまだ多い状態が続いており、おそらくまだまだ長く続くだろうと考えています。そのようなことをもって、余震はまだまだ続くだろうということを申し上げているところです。一方で、一つの地震を取り上げたときに、それが余震なのかということについては、見る観点によっても違うでしょうし、例えば気象庁のように余震域で起こったものは余震と位置付けて、そのようにお伝えしていくと決めている立場からすれば、それは余震だということになりますし、地震学的にもう少し検討を加えた上で、いわゆるマグニチュード9.0の地震との関係がどうであるかということを整理する考え方もあるのだろうと思いますので、それが余震かどうかということを判断することはなかなか難しいだろうと申し上げております。そういった背景の中で、今後起こり得る地震や直近で起きた地震について、これは震災をもたらした地震の余震であるというように言うことが本当に良いのかどうかということを検討したいということです。

Q : システム障害に関して、仮定の話で恐縮ですが、もしシステム障害の最中に先日のような震度6強の地震が起きていたならば、どうなっていたのでしょうか。そして、それを想像された時の長官のご所見をお話いただければと思います。
A : 今回のシステム障害について、私が非常に重く受け止めているのはまさにその点です。どうなっていたかということを考えると非常に背筋が寒くなりますが、情報が来ない、データが行かないということを迅速に把握し、定められたバックアップの手段を講じていくといったことはもちろん行うということではありますが、非常に大きな影響を与えかねない状況だったと考えています。

Q : 余震について伺います。余震という言葉は本震という言葉に比べるとどうしても規模として小さいというイメージを持たれがちかと思いますが、今回の余震という言葉の伝え方を検討するにあたって、そうした余震という言葉が本震という言葉に比べて規模が小さい地震であるというイメージを持たれてしまうということも検討する過程の中には入っていたのでしょうか。
A : それも大事な観点だと思ってます。

Q : その上で、積極的には余震だということを今後、余震域での地震が発生した場合においてもお伝えにならないのかもしれませんが、そうしたときに、例えば緊急記者会見においても、その地震が余震かどうか、余震域で起きた地震について聞かれた際には、それは余震と考えられるというようには現段階では説明される方針でいらっしゃるということでしょうか。
A : 検討の結論が出るまでの間は、今の状態を継続しようと思っていますが、その後どうするかについてはまさに検討課題だと考えています。

Q : 津波フラッグについて、報道機関も普及に努めるべきだと思いますが、気象庁としても、普及に向けて今後の予定はございますか。
A : 色々な関係機関と連携して、例えば市町村に働きかけたり、イベントをやったり、リーフレットやビデオ等を制作して使ったり、そういったことをやっていきたいと思っています。

Q : 余震について、東日本大震災から10年というタイミングを機会に検討を進められているということで、例えば東日本大震災当日までに何らかの考えを出されたりとか、そのような可能性もありますか。
A : 可能性がないとは申しませんが、お約束もできないというところです。検討を始めてみてどうなるのかというところで、当日までということについては今はコメントできません。



(以上)

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