長官会見要旨(令和元年6月19日)

会見日時等

令和元年6月19日 14時00分~14時23分
於:気象庁会見室


発言要旨

   最初に私の方から、5点述べさせていただきます。

   最初は、昨日山形県沖で発生しました地震についてでございます。
   昨日18日22時22分、山形県沖を震源としますマグニチュード6.7の地震が発生いたしました。この地震により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。この地震に伴いまして、気象庁では22時24分に山形県から石川県能登にかけまして津波注意報を発表し、本日19日01時02分に解除したところでございます。
   この地震に際しまして、地元の気象台から気象庁防災対応支援チーム(JETT)を派遣しております。山形県庁と同県鶴岡市、新潟県庁と同県村上市、及び秋田県庁へ派遣し、地方公共団体の防災対応の支援にあたっております。また、震度5強以上を観測しました新潟県村上市と山形県鶴岡市には、気象庁機動調査班(JMA-MOT)を派遣して、現地調査を実施しているところでございます。
   今回の地震で揺れが強かった地域は、今後の地震活動あるいは降雨によって、家屋の倒壊や土砂災害などのおそれがございますので、今後の地震活動や降雨の状況に十分注意していただければと思います。

   続きまして、大雨への備えについてでございます。まだ一部梅雨入りしていない地域がありますが、梅雨のシーズンに入り、これから梅雨末期にかけて大雨が心配される時期でございます。
   気象庁は昨年度開催しました「防災気象情報の伝え方に関する検討会」からご提言いただきました、警戒レベルを含む各種改善策について、その実施状況を先月29日に記者発表させていただいたところです。今後、内閣府をはじめとする関係省庁とも密に連携を図りながらしっかりと必要な取組を進めて参ります。
   住民の皆様には、注意報や警報等に加えて、実際に地域のどこで土砂災害や洪水等の危険度が高まっているか分かります危険度分布も活用いただきまして、早め早めの防災対応をとっていただきますようお願いいたします。
   また報道機関の皆様には、これまでも数々の防災気象情報の周知・理解あるいは活用の促進に向けた番組あるいは報道をしていただき大変感謝しております。引き続き是非ご協力いただければと思っております。

   3番目は熱中症予防についてでございます。例年のことになりますが、これから夏の時期は熱中症に対する十分な備えが大切だと考えております。
   ご案内のとおり気象庁では、最高気温が概ね30℃以上となる場合には、天気概況の中で注意を呼びかけ、さらに、最高気温が35℃、一部地域は少し低いですが、概ね35℃を超えると予想される場合には、高温注意情報を発表することとしております。住民の皆様はこれらの情報を活用し、熱中症にならないよう適切な対応をとっていただければと考えています。

   4番目は熱中症にも関連しますが週間天気予報の先の情報として、2週間先までを対象としました気温の予報を本日から発表を開始することとしております。
   2週間先までの気温の予報については、熱中症対策のほか、顕著な高温・低温による農作物への被害を軽減するための対策や、体調の管理、旅行やイベントの準備、季節用品の入れ替えのタイミング、レジャー計画などにご利用いただけるのではと思っております。
   さらに、飲料や家電など気温に影響を受ける商品の流通・販売や、発電の計画など、経済活動でも幅広くご利用いただけるのではと考えております。
   気象庁では、今後もさらに2週間気温予報の利活用推進のための取組みを進めてまいります。

   最後は世界気象機関(WMO)の総会への出席についてでございます。
   先週1週間、スイスのジュネーブで開催されましたWMOの第18回総会に出席してまいりました。
   WMOは気象業務に関する国際的な調整を行う国連の専門機関という位置付けでございます。4年に一度総会を開催しまして、総会におきましてWMOの4年間の事業計画や予算について議論することとなっております。今回の総会では、特にWMOの活動をより効果的にするための組織再編が議論され、承認されたところでございます。
   併せまして、産学官の連携を通じて気象業務をより発展させるための「ジュネーブ宣言」が採択されました。同宣言におきましては、産学官の間で国際的にデータ交換を促進すること、防災分野における国家気象水文機関が担う役割などが示されました。
   さらに、総会では役員の選出が行われまして、私も37名の執行理事の一員として選出されました。気象庁は様々な気象業務に関する知見を有していますので、こういった知見を活かしながら、積極的にWMOの活動に貢献していきたいと考えております。

    私からは以上です。

質疑応答

Q : 昨夜発生した地震について冒頭ご発言いただきましたが、今も復旧あるいは被害状況の確認が進んでいます。被災地の方々に向けて、今後の地震活動で注意を呼び掛けたい点として、具体的にどのような点に注意いただきたいかお聞かせください。
A : 地震活動がまだ続いており、今後も昨日の22時22分頃の地震とほぼ同じ規模の地震が起きる可能性が1週間程度あると言われておりますので今後の地震活動に十分ご注意いただきたいと思います。特に夜間、就寝中は危ない時間ですので、できれば例えば家具が倒れてこない部屋でご就寝いただくといった細かな注意をしていただければと考えております。併せまして地震によって地盤が緩んでおり、通常より少ない雨で土砂災害が起きる可能性がありますのでそれについても十分注意いただければと思います。

Q : 気象防災情報のレベル化について質問です。既にいくつか大雨で発令される事例も出てきております。先月の会見で実践により周知が進むというお話がありましたが、現状の効果、どれだけ周知が進んでいるか、あるいは課題点について現時点でのお考えをお聞かせください。
A : テレビのニュース番組や情報番組等で大雨への備えという形で、最近よく目にするようになりました。また、新聞記事の中でも大雨について、あるいは我々が発表する防災気象情報について知識を広めていただくような記事をよく拝見しており、報道機関の皆様にこういった形でご協力いただきまして感謝している次第でございます。先々週末、西日本で大雨警戒レベル4に相当する土砂災害警戒情報、あるいは警戒レベル4に当たります避難勧告が発令されたという事実がございました。正直申し上げてまだ始まったばかりですので、今評価する段階ではないだろうと思っています。私どもとしましては、先月末に公表しました取組をまずはしっかり進めていく事を目標にさせていただきたいと思います。報道各社の皆様もご存じのように、元々警戒レベルにつきましては、住民の方々が、何をすればよいかシンプルに分かりやすくする目的で導入されたものでございます。この警戒レベルが何を意味していて、レベルがいくつの時に何をすれば良いのか知っていただくことが最初の第一歩ですので、こういった取組については、これまでも実施してきましたし、まだまだ十分ではありませんので今後もしっかりと進めていきたいというのが今の段階だと思っております。

Q : 警戒レベルの運用について、まだこれから検証も行っていくということですが、避難に関するレベルの情報の一方で、気象庁の気象防災情報はレベル相当の情報であり、気象庁としては積極的に避難の呼びかけをしていくスタンスですが、それが多くの避難の呼びかけに感じてしまい住民の混乱を招く恐れに関してはどのように思われますか。
A : 元々様々な防災情報がありまして、それをしっかり一つ一つ理解して活用していただけると、本当に避難が必要な時に避難することができる、自ら知ることができるという仕組みはできていると思います。一方で、そうは言いながらもそれだけの情報を使いこなすには、かなりの知識が必要ですので難しいという観点から警戒レベルが設けられたと私は理解しております。そういった点ではある意味過剰な反応があっても止むを得ないと思っております。迷った時は安全側というのは一つのスタンスです。そうはいっても避難をしたけれどもなかなか実際に災害が起きない、よく考えてみれば自分の所は安全な場所であったということが、何度か学ぶうちに、実はどこを見ればもっと正確に避難ができるのか分かっていただけるのではないかという思いもあります。もちろんそのような無駄を許容するのは如何なものかというご意見もあるかと思いますけれども、今の時点ではそのようなスタンスがベストではないかと思っております。

Q : そのあたりも自分たちで判断しなければいけない、その材料にして欲しいというのも併せて周知していこうという考えでしょうか。
A : おっしゃる通りでございます。

Q : 2週間気温予報が本日14時30分から始まりますが、先ほどの冒頭発言にもありましたが、今一度どういう利用方法をしてほしいか、2週間先までの予報ができるようになったきっかけ、色々な技術改善もあったと思いますが、振り返るといかがでしょうか。
A : もちろんこれからの利用でございますので、様々色々な形でご利用できるのだろうと思っております。ご案内の通り今も異常天候早期警戒情報を発表させていただいて2週間先まで、非常に顕著な現象がある場合だけの発表とはなりますが、特に農業の方ではご利用が進んでいるのだろうと私は理解していました。まずは、そういった形で既に実績のある分野からお使いいただいた上で、例えば生活の利用ですと、2週間先は普段は必要ないかもしれませんが、例えば旅行に行くとか2週間先まで見ないと準備が間に合わないこともそれなりにあるのだろうと思いますので、そういった形でまず使えるところから使っていただくのかなと思います。我々の方も色々な利用者に聞き取りをしながら良い使い方があれば、そういうものも広報して利用を進めていきたいと思っております。技術については、新しいスーパーコンピュータを導入いたしまして、先までしっかりとした予測ができるようになったことが一つ大きな要因でございます。もちろん、我々の予測技術(モデル)も改善してきました。ご案内のとおり、その日の最高気温を予想しているのではなく、あくまで5日平均を予測している状況でございますので、まだ今後も技術改善の余地はあると考えております。

Q : 冒頭で梅雨末期の豪雨のお話がありましたが、例年梅雨末期には一昨年は九州北部豪雨、昨年は西日本豪雨が起きてますが、そこに対しての気象庁としての危機感について教えてください。
A : 大変残念なのですが、ここの所年に1回は大きな大雨災害がございまして、特にここ2年は梅雨末期の7月上旬に大きな災害が起きていることが事実でございます。今年がどうなるかは全く分からないのですけども、温暖化が進めば極端な現象が増えてくるという予測もありますので、こういった大雨災害を起こすような顕著な現象は、間違いなく増えていくのだろうと思います。そのため昨年、一昨年が例外ではなく、あのような現象がおそらく毎年あるのだろうと思います。そういった場合にそれを災害にならないようにいかにしていくのかが我々の課題なのだろうと思います。気象庁としてもまだまだ予測精度も完全ではありませんので、こういった情報の精度向上をしっかりさせていただいて、なるべく単に大雨の可能性の有無を予測するだけではなく、いつどこで大雨の可能性が高まるのかしっかり予測することによって、予測が当たるようになれば、必然的に皆様に避難していただけると思いますので、技術開発をしっかり進めていきたいというのがまず1点でございます。併せまして、技術開発には非常に時間がかかりますので、伝え方検討会で色々ご提言いただいた今やれることとして、我々の今ある情報を使って最大限人の命を救うという取組を進めていきたいと考えております。

Q : 昨年非常に強い台風が25年ぶりに上陸したということもありました。そういった勢力が強い台風の上陸に対する危機感はいかがでしょうか。
A : 台風については、温暖化に伴う予測は難しく、一時は台風の発生数は減って、強い台風が増えるという予測がありましたが、最近は発生数についてはなんとも言えない、ただ強い台風は増えるという予測が出ています。なかなか温暖化によってどのような効果があるのか予測するのは難しいようですが、共通しているのは極端な現象、強い台風が増えるのではないかという予想は確度が高いという理解をしております。そうなりますと昨年のような台風が珍しくなくなる可能性が十分あると思いますので、そういった台風に対して今後も来るのだという考えで体制を進めていくことが重要だと思います。

Q : 昨日の地震に関連して、緊急記者会見の設定時間は平日の夜間であれば地震発生から1時間半から2時間目途ということで、昨日はここから大きく逸脱している訳ではありませんが、印象としては非常に時間がかかっているという感想を持ちました。というのは、例えば震度5弱を一か所で観測するような地震とは明らかにグレードが違うような地震で、政府官邸においては危機管理の最大級のチームである官邸対策室が立ち上がり、官房長官が2回記者会見を行っている中で、その後で観測機関の気象庁が津波注意報も出ている中でその後での記者会見の開催は遅いという印象を持ちます。防災気象情報の発信を色々やられて記者会見の位置付けも改善すると打ち出されている中で、防災上の呼びかけを前倒しして通常の基準に関係なく早めに発信とかそのあたりのお考えはないでしょうか。
A : そういったご要望をいただいていることは承知しております。庁内で検討をしておりますが、昨日の記者会見に臨んだ時のような資料を作成するとなると、地震が起きて職員が駆けつけてデータ解析を行って資料を作成するとなりますと2時間くらいは必要となります。これはなかなか早めるのは難しいです。一方で、確かに2時間というのは現在の社会状況を考えますと少し遅いという気持ちは十分理解できます。そういった意味で1時間程度を目途にその時に提供できるような情報だけでまずは記者会見を行って、さらに詳細な情報については準備出来次第というやり方もあるのだろうと思っています。ただ1回目の記者会見があまりにも情報が少なくて、それまで我々が既に発表している情報と何ら変わらない程度でも果たしていいのかどうかという点もございますので、私の方で早急に検討させていただいた上でご提案を記者クラブの皆様にさせていただきたいと思っております。例えば1時間後にやるとしたらこういった内容の情報で行い、2時間後に今回のような詳細な情報で行うというやり方が果たして受け入れ可能なものなのかどうか、こちらの方からご提案させていただきますので、是非ご検討・ご相談いただければと思っております。

Q : もう一つ関連しまして、昨年10月に地震火山部との間で記者会見の設定について、こちらからはいろいろ意見を言う場面もありましたので、その後どのように受け止められているのかも踏まえてご検討いただければと思います。
A : 大変失礼いたしました。ご指摘の件を十分踏まえた上で、こちらから早急に案を提示させていただいて、ご相談させていただきたいと思います。

(以上)

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