長官記者会見要旨(令和元年5月15日)

会見日時等

令和元年5月15日(水) 14時00分~14時21分
於:気象庁会見室


発言要旨

   最初に私の方からご報告させていただきます。

   まずは、大雨への備えについてでございます。これから6月にかけて全国的に梅雨に入るシーズンで、今後、本格的な出水期を迎えます。
   気象庁では昨年度、「防災気象情報の伝え方に関する検討会」を開催いたしまして、防災気象情報を避難等の防災対応に効果的に役立てていただくための改善策についてとりまとめを行いました。
   このとりまとめを踏まえた具体的な取り組みといたしまして、
   ○ 地域専任チーム「あなたの町の予報官」の順次配置による自治体等へのきめ細かい気象解説の推進、
   ○ 市町村担当者向けの「気象防災ワークショップ」の実施、
   ○ 「気象防災アドバイザー」等、気象防災の専門家リストの自治体等への共有、
   ○ 土砂災害の危険度分布の高解像度化、
   ○ 大雨特別警報につきまして、その役割・位置づけの周知を強化するとともに、局所的な現象においても適切に発表できるよう
    にするための発表指標の改善
  こうしたことに速やかに取り組んで参りたいと考えております。

   関連しまして、先週8日に報道発表させていただいておりますが、大雨・洪水警報の危険度分布をもとにした、大雨災害の危険度のメール等による通知サービスにつきまして、民間事業者の協力もいただきながら、そのサービスの普及を図って参りたいと考えております。
   また、中央防災会議のワーキンググループにおいて示されました、政府全体として今出水期から新たに運用を開始いたします警戒レベルにつきまして、まず住民の皆様の避難行動等に効果的に役立てられるよう、その周知活動の強化など、内閣府をはじめとする関係省庁とも密に連携をとりながらしっかりと必要な取り組みを進めていきます。また、防災気象情報を発表する際に相当する警戒レベルを一緒に伝えていくことなどの様々な工夫を行って参りたいと考えております。
   今申し上げました取り組み以外の取り組みも含めまして、現在準備を進めております様々な改善について、近日中に全体をとりまとめて公表することを予定しております。
   防災気象情報が皆様に危機感を持って伝えられ、少しでも大雨災害の被害軽減につなげられるよう、気象庁としてしっかりと取り組んで参りたいと思います。
   住民の皆様には、注意報や警報に加えて、実際に地域のどこで土砂災害や洪水等の危険度が高まっているかを確認できます危険度分布も活用いただき、早め早めの防災対応をとっていただくようにお願い申し上げます。
   また、報道機関の皆様におかれましても、防災気象情報や警戒レベルの周知や理解・活用の促進に向けて引き続きご協力をいただければと考えております。

   続きまして、「気象業務はいま2019」の刊行についてでございます。
   本年6月1日は第144回気象記念日でございます。気象記念日は明治8年(1875年)6月1日に気象庁の前身であります東京気象台において、観測を開始したことを記念して制定しているものでございます。
   気象庁では、毎年、気象記念日にあわせて「気象業務はいま」を刊行しております。「気象業務はいま」は、気象庁の最新の取り組みや今後の展望など、気象業務の全体像について広く知っていただくことを目的に刊行しているものでございます。
   皆様にも是非ご活用いただければと考えております。

   私からは以上です。

質疑応答

Q : 令和になって初めての長官会見となりました。気象庁として社会でどのような役割を担っていきたいかお考えをお聞かせください。
A : 4月の会見でも申し上げましたが、気象庁の使命は、自然災害の防止・軽減、交通安全の確保、社会経済活動への貢献の3つでございます。平成から令和という新時代になりまして、この新しい令和という時代が国民の皆様にとってより良い時代となりますよう、職員一同、一丸となってこういった使命を果たしていきたいと心を新たに決意しているところでございます。
 具体的に申し上げますと、まず観測・予報精度向上のための技術開発、気象情報・データの利活用促進を『車の両輪』として進めていきますが、その上で特に国民の生命・財産に関わる「防災対応・支援」につきましては、当庁の中心課題として、引き続き関係機関と一体となって、地域防災力の向上に取り組むなど、安全・強靱で活力ある社会の実現に向けて取り組んでいきたいと考えております。
 気象庁の仕事は、気象・水象・地象に関する防災情報といったソフト面から社会を支えることでございます。そのためにまず、技術基盤を強化し情報自体の質を高めることが最も重要と考えています。併せまして、気象災害による被害を少しでも軽減していくためには我々が発表する防災気象情報を分かりやすく、また、我々が持つ危機感を効果的に伝えていくことが大変重要であると認識しておりまして、関係機関とも緊密に連携し、また報道機関の皆様ともよく連携させていただきながら、改善に向けた取り組みをしっかり進めて参りたいと考えております。

Q : 冒頭発言があった大雨の備えに関連して、レベル化についてお聞きしたいと思います。まず、奄美地方が梅雨入りしましたが、運用開始時期、具体的なスケジュール感についての現時点での見通しを教えてください。また、運用までの準備期間が短かった中で、なかなか周知の理解が進まない現状がありますが、今後気象庁として、新しい情報提供になるわけで、どのような努力を行っていくか、さらに次の豪雨災害に向けて、この情報提供が住民の安全確保・避難にどのように結び付くかについて、現状どのような期待感を持ってらっしゃるか、以上3点を教えてください。
A : 現在の警戒レベルの運用についての準備状況についてですが、目先の取り組みといたしまして、土砂災害警戒情報や指定河川洪水予報の情報文の中に警戒レベルを記載するといった改修を、5月下旬を目途に実施する予定でございます。さらに気象庁ホームページにおいて防災気象情報の解説や凡例の部分に、関係する警戒レベルを一緒に添えて表示するといった改修も可能な限り速やかに行うこととしています。これについて5月下旬以降、まず当庁ホームページの危険度分布のページから順次改修していきたいと考えております。
 併せまして、新しい情報ですので、しっかり使っていただくためには知っていただくことが非常に重要でございます。そのためのいくつか取り組みを行っており、ひとつは内閣府や消防庁と連携しまして、全国10ブロックで自治体向けの説明をこれまで開催してきました。さらに、気象庁としまして記者会見の際や気象台が自治体等に対して気象解説等を行う際に、警戒レベルについて併せて触れるという形で警戒レベルやそれに相当する防災気象情報について周知し、広く理解・活用を促進してまいりたいと考えております。
 元々、警戒レベルというのは、様々な情報があって分かりにくいということから出てきたものですので、一番は住民の方が警戒レベルを見ていただければ自分がどうすればよいのかすぐに分かるという大きな目的がございます。そのためには、今どういう状況であるので何をしたら良いのかということを知っていただくことの周知が進めば相当な効果があると思っております。これは4月1日に申し上げましたが、我々は様々な改善を行っていく内の一つでございまして、これだけで全てが済むわけではありませんので、その他の施策も含めて効果のあるよう進めてまいりたいと考えています。

Q : 危険度分布の警戒レベル化を進めていくことについて、必ずしも危険度分布のすべてが警戒レベルに紐づいていない現実が課題であると思います。先日の与那国島での大雨の際も土砂災害の危険度分布は警戒レベル4相当の「濃い紫」の状況の中で、浸水害もかなり発生して、実際、浸水害の危険度分布も早い段階から「濃い紫」を示していました。ただ、浸水害については危険度分布が警戒レベルに何も紐づけられていない状況で、なかなかレベル化を進めるのは難しいようにも思うのですがそのあたりいかがでしょうか。
A : まず土砂災害については土砂災害警戒情報という元々しっかりした情報が既に警戒レベルに結び付いておりますので、もちろん必ずしもすべての危険度分布が警戒レベルに結び付いていないのはそのとおりですが、現状しっかりと防災対応をとっていただくトリガーとなるという観点では十分できておりますので、まずはそこから始めていただくのかなと思います。それ以外の情報で警戒レベルに結び付いていない情報については今後検討した上で位置づけをしていくことになるのではないかと考えています。

Q : 危険度分布について、これから住民や自治体の方々が覚えてしっかり使っていくことがより大事になると思いますが、周知に向けて気象庁がこれからやっていくこととして考えていることを教えてください。
A : 先ほど申し上げましたとおり、こういった情報は実際の現象と切り離して周知してもなかなか覚えていただけない部分がありますので、一番効果的なのは、実際現象が起こった時や我々が様々な防災気象情報を発表した際に、これは警戒レベルいくつに相当しますのでどういう行動をしてくださいということを併せて伝えていくことが効果的だろうと思います。大雨の際にはテレビ等で報道していただける機会が多いので、そういった機会を有効に活用して、実際の現象と合わせた形で周知を行っていければと考えております。

Q : 具体的に地域の現場や教育現場、自治体の現場に気象庁や気象台の職員が入っていくということは考えていないのでしょうか。
A : 我々は元々、警戒レベルとは切り離した形で、防災気象情報を周知していただく機会を持っております。その中で防災気象情報についてどのような情報があってどのような意味を持っているのかを周知させていただいておりますが、当然今回警戒レベルが新しくできましたので、そういった機会に常に一緒に周知させていただくことはやっていきたいと思っております。

Q : 警戒レベルの実施時期に関して確認ですが、あるタイミングで一斉に始めるというよりは、先ほどおっしゃられた5月下旬を目途にまず土砂災害警戒情報及び指定河川洪水予報において明記して、その後に気象庁ホームページの改修等で順次出していくようなスタイルで、実際来月中には列島が梅雨入りしてしまうと思いますが、それまでには間に合わせるというイメージでしょうか。
A : おっしゃる通りで、5月末には土砂災害警戒情報と指定河川洪水予報について警戒レベルが付記されるのと、危険度分布の解説や凡例に付記されるのは概ね同じ時期と考えています。その後気象庁ホームページの他のページについても順次作業を進めて、6月中には少なくとも当面できることについてはやりたいと思っています。

Q : 与那国島の大雨の際に、避難勧告まで出て、映像を見ても冠水等も起こっていた状況の中で、沖縄地方への自治体説明は終わっていたのでしょうか。
A : 先ほど申し上げました10ブロックに分けての説明会を、沖縄については4月18日に実施しております。

Q : 既に説明会は終わっていたのですが、与那国島の町役場の防災担当者は警戒レベルのことを知らなかったという事実があり、これからのハードルが非常に高いなと思っていますが、それをこれからどう打破していくおつもりでしょうか。
A : それについては我々も情報を入手していませんでしたが、まずこのような災害があった場合、あるいは災害になりそうな事象があった際には我々は振り返りという形で自治体の関係者と話し合いをしながら、どういう点に問題があったか、どのように改善をしていったら良いのかということを議論する場を設ける予定でございますので、そういった中で今回の事象についても、もし問題があれば対応していくものと思っております。全ての人がこれについて熟知するのは簡単ではないと思いますが、打ち出の小槌のように、これを振れば皆が分かる、というものではありませんので、地道に周知活動を続けていくことが重要なのだろうと思います。今回こういった形で事象がありましたので、おそらく認知度も上がるのでないかと期待しているところでございます。

Q : 「あなたの町の予報官」について、4月に始まったばかりですが、現状の進捗と今後について、今の段階でお話できることを教えてください。
A : すべての状況を私も把握しておりませんが、例えば東京都につきましては、先日私も東京都の副知事と直接お会いしまして「あなたの町の予報官」という取り組みを始めた旨と、こういった形でチーム編成している旨、さらにはチームの名前と写真を先方にお送りさせていただいております。出水期はこれからですので、まずはこういった形で顔合わせをして、顔を覚えていただき顔の見える関係をまず作っていったうえで、これから出水期に入って様々な現象が起きれば、その段階で活動がさらに深まっていくだろうと考えている次第でございます。

Q : 浸水害については危険度分布が警戒レベルと結び付いていないという話がありましたが、とはいえ与那国島の大雨の際には、朝の段階からうす紫であったり濃い紫のメッシュが出現しておりました。改めて長官の目からご覧になって危険度分布の有効性であったり、国民がどのように活用して欲しいか、どのように感じておられますか。
A : 元々危険度分布を設けたのは、従来の大雨警報発表基準は基本的に雨量で決めていたものですが、こういったものより、実際の災害との関連性が高い危険度の基準に基づいて警報等を発表した方が空振りの回数が少ないという技術的な裏付けがあります。そういったことをまずしっかりご理解いただくことが重要なのかなというのがまず私の感じているところです。そうはいっても、まだ紫のメッシュが出たからといって必ずしも被害がある訳ではないという部分がありますので、我々の方でしっかりと技術開発をさらに進めて、より精度の高い情報を出していくことが非常に重要であると思っています。実際我々の技術開発が進み精度が高まり、そのことを皆様に知っていただければ自ずと使っていただけると思っておりますので、周知をしてしっかりどういうものか知っていただくことが重要ですが、併せまして我々の技術開発もしっかりと進めていく必要があると思っております。

Q : 特別警報についてお伺いします。大雨特別警報については、警戒レベル5相当の情報として位置付けられましたが、一方で台風として高潮警報が出た場合にはレベル4相当であったり、台風の場合に特別警報が発表された場合には、大雨特別警報もレベル5相当にならないとか、そのあたりの整理が今後必要であると考えますが、いかがでしょうか。
A : 元々警戒レベルを設けたのは、大雨の災害についてどのように対処していくかということなので、そういう意味で台風については一度置いた上でまず、雨を要因とする大雨特別警報について整理させていただきました。台風等を要因とする特別警報についてもこれまで運用してきていくつか課題があることも事実ですので、まず我々の方で台風等を要因とする特別警報についてもしっかりレビューをしていくことが重要だろうと考えており、まずはそこからと思っております。

(以上)

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