長官記者会見要旨(平成31年4月1日)

会見日時等

平成31年4月1日(月) 14時00分~14時25分
於:気象庁会見室


発言要旨

   本日付で気象庁長官を拝命いたしました関田康雄と申します。よろしくお願いいたします。

   気象庁の使命は、災害を防止・軽減すること、交通安全を確保すること、それから社会経済活動へ貢献すること、こういった3つ点がございますが、私をはじめとして4月1日から新しい体制になりましたので、職員一同一丸となってこの使命を果たすため努めてまいりたいと思いますので、何卒ご協力のほどよろしくお願いしたいと思います。

   最初に、我々は災害を防止・軽減するために様々な情報を発表していますが、これらの情報を国民の皆様にあまねくお届けするためには報道機関の皆様のご協力が不可欠でございまして、これまでも多くご協力いただいておりましたこと、厚く感謝申し上げるとともに今後ともご協力のほど宜しくお願いしたいと思っております。
 また併せまして、こういった情報をしっかり効果的に使っていただくためには、情報の中身を分かりやすく解説することが不可欠ですが、こういった点につきましても、報道機関の皆様が番組や記事の中で、分かりやすい言葉で、あるいは分かりやすい図表を使って解説していただいていますことは、我々が足元に及ぶところではございません。これにつきましてもご協力を引き続きお願いしたいと思います。

   本日、私から4点お話させていただきます。

   1つ目は、防災気象情報の伝え方に関する検討会でございます。
 ご案内のとおり、先週末に提言のとりまとめをしていただきました。昨年の「平成30年7月豪雨」をはじめとして、近年の大雨災害の教訓を踏まえまして、私たちの発表する情報が必ずしも避難等の防災行動に結び付いていないという危機感がございましたので、我々の情報が皆様の避難行動に結び付くように、効果的に伝えるためにはどうしたら良いかということを有識者の方にご検討いただいた次第でございます。
 様々な提言をいただいておりますので、我々としてはこの提言を受けて、しっかりと実施に向けて努めてまいりたいと考えております。

   続きまして、南海トラフ地震対策でございます。
 内閣府より先週末に、異常な現象が南海トラフにおいて観測された際に、自治体や企業が取るべき対応のガイドラインが発表されております。気象庁としましては、ガイドラインに示された防災対応の実施を支援できるよう、南海トラフで発生する異常な現象を的確に評価し、わかりやすく情報を発表していくことが必要だと考えております。具体的な内容については、先週末に報道発表させていただきましたが、「南海トラフ地震臨時情報」に防災対応等を示すキーワードを付けるということをさせていただくことにした次第でございます。合わせて、南海トラフ地震につきましては、緊急地震速報、津波警報等につきましても適時適切に発表していきたいと考えております。

   3つ目は火山に関する分野でございます。
 御嶽山や草津白根山の火山噴火災害を教訓としまして、火山活動に関する観測・監視体制の強化及びシステムの更新を行ってきたところでございます。こういったことを背景に今後も火山災害の軽減に向けて、火山活動の変化を確実にとらえ、適時に火山情報あるいは噴火警報を発表するなど、努めてまいりたいと考えております。

   4つ目、最後になりますが、「気象ビジネス市場の創出」に関してでございます。
 「気象ビジネス市場の創出」の推進母体として、平成29年3月に、「気象ビジネス推進コンソーシアム」(WXBC)が設立されました。設立当初は215の参加者だったのですが、現在609と非常に大きく伸びております。これを見ても気象情報に対する皆様の期待・関心が非常に強いなと改めて実感させていただいているところでございます。
 気象庁としましては、ビジネスに利用するために気象庁のデータを入手しやすい・使いやすい環境を構築していくということと、さらに利用価値の大きい新しい情報を提供していくということを今後も進めていきたいと考えております。引き続き、WXBCと連携し、気象ビジネス市場の創出に向けて効果の高い施策を進めていきたいと考えております。

   気象・水象・地象につきまして、観測をし、解析をし、予測をし、それからこれを情報として発表するということが我々気象庁の仕事でございます。こういった、気象庁から提供いたしますデータや情報は、情報インフラやソフトインフラと申し上げている次第でございます。我々気象庁の使命としましては、まずこのインフラを良いものとしていく、具体的には、こういった情報やデータの質を高めるというのが1点、それから、インフラをせっかく作っても使っていただけないのでは意味がございませんので、利活用の促進、広げていくということが重要と思っていますので、この2点について今後も努めてまいりたいと思っております。

  私からは、以上です。

質疑応答

Q : 本日、新元号の発表があったことを受けましてお伺いします。平成の時代は、東日本大震災など多くの災害がありましたが、次の時代に向けて目指す災害時の情報発信のあり方についてお考えをお聞かせください。
A : 自然災害でございますので、今後も、災害を伴うような自然現象が発生しなければ幸いですが、そういうことはなく、今後も引き続きそういった事態が起きるだろうと思っております。特に地球温暖化が進みますと気象の分野ではより激しい現象が起きるだろうという予想も出ております。こういった自然現象が発生した際に、少しでも被害を軽減するというのが我々の役目でございます。こういった観点で、昨年8月に気象分科会の方から、2030年の科学技術を見据えた形で、我々が今後どういうふうに技術開発を進めていくのか、あるいは我々が出します情報をどう利活用していっていただくのか、そういった提言をいただいております。これも含めて様々な提言、これは橋田前長官の強いリーダーシップのもと、様々な検討会等を開催してご提言いただいたものでございますが、まずこういった道が示されておりますので、我々としてはここを着実に前に進めていくのが、まずはやるべきことかなと考えています。

Q : 今日から新年度が始まりました。昨年度は災害が相次いだ年となりましたが、新年度は気象庁としてどのような一年にしていきたいか、お考えをお聞かせください。
A : 行政では継続が重要ですので、新しい年度になったからといってやり方が急に変わるというものではないと思っていますし、急に変えるのが良いとは私は思っておりません。橋田前長官が切り拓かれた新しい道をしっかりと継いで行くことです。具体的には、まず、災害が伴うような現象が発生した際に国民の信頼を得られるようしっかりと対応していくことが一点だと思います。併せて先を見据えて我々が発表する情報の質を高めていくことと、それからそれをしっかりと正しく利活用していただくことが、我々が目指す車の両輪であると考えておりますので、しっかりと進めいてきたいと考えております。

Q : 新元号の令和に対する受け止めについても伺ってよろしいでしょうか。
A : 元号そのもののについて私からコメントする立場にありませんので差し控えさせていただきますが、一方で、我々の情報でも元号を使っておりますので5月1日から新しい元号で情報発表ができるようしっかり準備を進めていきたいと思っています。

Q : 火山防災分野を長く歩んで来られたと思いますが、地震火山部長であった平成26年に御嶽山の噴火災害が発生しました。火山防災の転換期となるような災害になったと思いますが当時のお考えを持っておられたかということと、今後の火山防災のあり方についてのお考えを伺いたいと思います。
A : 大変痛ましい災害であったと考えております。亡くなられた方にはご冥福をお祈りいたします。このような災害を二度と繰り返さないことが我々にとって非常に重要なことだと思っております。災害の教訓を踏まえまして大幅な観測・監視体制の強化をさせていただきました。こういったものを背景に火山活動を適切に評価し、適切に情報発表することに尽きると考えております。

Q : 新年度になり新しく入庁された方もいると思いますが、改めて今後時代を担う気象庁職員に対して、必要なことなどがありましたらお願いします。
A : 本日職員にお願いしたのですが、時代の変化が非常に速い世の中ですので、時代の変化にしっかり追いついていくことが非常に重要であるということと、社会情勢の変化や技術革新のスピードも非常に速いので、我々が従前からやっていることを変えるということについてためらわないことが重要と思っているということを話しました。変化は当事者にとってはつらいことで、場合によってはこれまで培ったスキルや知識が使えなくなったり、今まで技術開発したものが使い物にならなくなったり、あるいは長く考えた計画がご破算なったりと非常につらいことも多いのですが、社会情勢が変化し、技術革新が進んでいる中で、変わることをためらわないでやっていくことが非常に重要であるといったことも話をしました。

Q : 気象庁の中で今遅れていることは具体的にありますか。
A : 具体的にはないと思っていますが、技術革新は非常に速く、特に情報通信関係の進展は申し上げるまでもなく物凄いものがありますので、しっかりフォローして、気象業務に役立つものは積極的に取り入れていくという精神はしっかり持っていきたいと思っております。

Q : 冒頭の発言で触れられていましたが、先週気象庁として「南海トラフ地震に関連する情報」を臨時情報と解説情報という形に名称変更して運用を改めるということになりました。まだ運用がいつになるかは決まっていないということですが、関連情報を暫定で運用されている経験を踏まえて、どのような情報にしていきたいかというところを教えてください。
A : 我々としては、南海トラフで異常な現象が起きた場合にはしっかり評価してどういった現象かを見極めた上で、皆様の対応がやりやすいような形で発表していく、これは南海トラフに限らずあらゆる現象にとってそうであろうと思っておりますが、南海トラフ地震については政府からガイドラインが示されましたので、しっかり対応できるようにやっていきたいと考えております。

Q : 気象庁は近年地域防災力の強化がテーマの一つであると思いますが、今後、地域防災力の強化に向けて、どのような取り組みをしていくのか、お考えをお願いします。
A : ご案内のとおり多くのメニューがありますが、一つ一つ進めていくことが重要であります。中でもJETT(気象庁防災対応支援チーム)です。災害が起きた場合に地域の方々のお役に立てるだろうと思っております。災害が起きた際に遅れないでしっかり職員を派遣する、現場において役立つような助言をしていくことが一つあります。それから平時におきましては、今年度からの新たな施策で「あなたの町の予報官」という形で平時から市町村の方が気軽に地域における気象状況などの自然現象、あるいは防災に関して気象台に相談できるような体制を作って参りたいと考えており、こちらもしっかり進めていきたいと考えております。

Q : 新年度ですので、気象庁にも新しく、阪神・淡路大震災も記憶にないような世代の若い方がこれから入庁してくると思いますが、これから新時代を担っていく新入職員に対してどういったことを求めていきたいかお聞かせください。
A : これから入られますので、気象庁の仕事が何か、使命が何かをしっかりご理解いただき、その上で現場において自分が担当している業務において、どういう目的でどのようなことが期待されてこの仕事があるのかをしっかりご理解いただくことが最初だと思います。そういった中から、求められていることや目的をしっかり理解すれば、より効果的、効率的なやり方など現場から色々な発想が出てくると思いますので、そういうことを期待したいと思います。自分の仕事の意義をしっかり知っていただくこと、そこから現場の中から色々な改善策が出てくることが、我々が若い人に期待したいことでございます。

Q : 橋田前長官が切り拓いてきたものをしっかりと進めていきたいというお話がありましたが、一方で、関田イズムとしてこれからの気象庁をどう引っ張っていくのか意気込みをお聞かせください。
A : 行政は継続が重要ですし、大きい遺産を残していただいていますので、その遺産をしっかり使って業務を前に進めていくことが重要だろうと今は思っております。ただ、様々な情勢がこれから色々な形で変化すると思いますので、そういった変化には柔軟に対応して社会に遅れないようにしていくことが非常に重要だと思います。最近、私自身の感覚では気象庁に期待されるところが以前より大きくなってきているかなと感じておりますので、期待を裏切らないよう進めていきたいと思います。特に国民の皆様が我々のやることをどう感じられているかに関心を置いてやっていきたいと思います。

Q : 気象庁としてでも個人としてでも構いせんので、平成を振り返ってみていかがか教えてください。
A : 先ほども申し上げましたとおり、行政は継続しているので、時代が替わったとしても我々がやることはそれほどは変わっていないだろうと思います。もちろんこの30年間に様々な災害があり、それらの災害を踏まえて、我々の情報や様々な業務も改善してきたと思います。こういったことは今後も続いていくだろうと思いますし、社会情勢の変化や技術革新に遅れないようしっかりフォローしついていき、その時点での最も精度の高く使いやすい情報を発表していくことだろうと思います。

Q : 気象庁の会見は国民にとって親しみのあるもので、最新の情報がダイレクトに届く非常に大事なものになっています。先ほど、情報の伝え方や分かりやすさというお話がありましたが、気象庁の会見は関田長官の中でどのように位置づけていこうと考えていますか。
A : できるだけ分かりやすくというのは当然ありますが、視聴者の方に本当に分かりやすくするためには、我々よりは報道機関の方の方がそのスキルはお持ちだろうと思います。気象庁として一番外してならないのは、とにかく正確であることであります。そこを外してしまいますと、気象庁としての価値、我々の会見の価値がなくなってしまいますので、技術的な事項について正しく解説をしていくことがまず第一だろうと思います。それを視聴者・読者の皆様に分かりやすく伝えていただけるのは報道機関の方が得手だと思いますので、是非ご協力をお願いしたいと思っています。

Q : 気象庁が発表する防災気象情報を含めて大雨時の災害情報のレベル化が6月から始まろうとしています。去年の7月豪雨を踏まえての新たな情報体系の変更ですが、これによって避難がどの程度効果的に促されるかの期待、それから気象庁として情報発信でそこにどう貢献をしていくか、今のお考えをお聞かせください。また、これにあたっては、気象庁として更なる技術革新、特に予測精度の向上が強く求められる部分があると思いますが、どういうスピード感を持って、危険度分布等の予測精度の向上や、伝え方という点では例えばハザードマップと危険度分布の重ね合わせなども、どういうスピード感を持ってやっていくのかお聞かせください。
A : レベル化も大きなポイントだと思っていますが、それを含めて様々なご提言をいただいていますので、これらが全て相まって防災効果の高まりに繋がるのだろうと思っております。一つ一つご提言いただいた施策をしっかりと前に進めていく、そしてできるものからどんどん実現していきたいと思います。技術革新、予測精度の向上については短期的なものと長期的なものがございます。長期的なものは10年先を見据えた形で、昨年8月に気象分科会からご提言いただいておりますので、これを一つの大きな目標として進めていくことが我々の技術革新の一つの目標と考えております。

Q : 社会の中で気象庁の果たす役割が大きくなっているというご発言がありましたが、私もそのように感じており、どういった役割を求められているのかということと、長官としてどのような役割を果たしていきたいか、何に力をいれていきたいかを改めてお聞かせください。
A : 車の両輪ということで申し上げてきましたが、我々が発表する情報・データの精度を高めていく、これがまず一つの大きな目標であります。そのための様々な技術革新を取り入れていきたいということが一つです。それから、情報やデータを我々がどれだけ提供しても使っていただけなければ全く無意味ですので、しっかり効果的に使っていただくためにどのように努力していくか。この2点について今後もしっかりやっていきたいと思います。

(以上)

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