長官記者会見要旨(平成31年3月20日)

会見日時等

平成31年3月20日(水) 14時00分~14時45分
於:気象庁会見室


発言要旨

  それではよろしくお願いします。まず私の方から3点お話をさせて頂きます。

  昨日19日に開催いたしました、「防災気象情報の伝え方に関する検討会」についてです。本検討会は、「平成30年7月豪雨」をはじめ近年相次ぐ大雨災害を踏まえまして、避難等の防災行動に役立つための防災気象情報の伝え方の改善について検討を進めてきたものです。昨日第4回の検討会が開催され、昨年末に中央防災会議のワーキンググループで示された警戒レベルと、私どもが出す防災気象情報との対応関係等について、それから大雨特別警報の精度向上等についての議論が行われました。また、情報の伝え方につきましては、例えば避難にあたる警戒レベル4に相当する情報の呼びかけ方が大変重要であるとのご指摘もいただいております。
 これまでの議論をいただきました改善策と取組につきましては、今後、委員の皆様から報告書案についてご意見を賜ったうえで、速やかにとりまとめて公表させていただく予定としております。
 気象庁といたしましては、本検討会でとりまとめられました改善策に沿いまして、速やかに必要な取組を進め、来たる出水期に備えてまいりたいと考えております。

  次に、長周期地震動についてです。大地震に伴いまして発生する高層ビル等を大きく揺らす長周期地震動ですけども、この予測技術、その利活用方法等について、あるいは、利活用するにあたっての留意事項などの検討・検証を行うために、気象庁におきまして「長周期地震動に関する情報検討会」の下で、「多様なニーズに対応する予測情報検討ワーキンググループ」を開催いたしまして検討を進めてまいりました。その検討の結果を12日に報告書として公表しております。
 この報告書を踏まえまして、今後、気象庁では、長周期地震動の情報を広く社会に役立てるため、事業者による予測情報を安心して利用することが可能となるような仕組みの構築の検討、予測情報の社会実装に向けたさらなる実証実験の拡大・継続を行っていきたいと考えております。

  最後に、「世界気象デー」についてです。先週14日に報道発表でお知らせいたしましたように、3月23日は、1950年のこの日に世界気象機関(WMO)条約が発効した日でありまして、この日を世界気象機関は「世界気象デー」と定めております。今年の世界気象デーのキャンペーンテーマは、「サン・アース・ウェザー(太陽・地球・気象)」です。
 先月末に、世界気象機関のターラス事務局長を気象庁にお招きする機会がございました。その際に、気象や気候分野における世界の課題や世界気象機関の取組について意見交換させていただきました。地球温暖化の進展に伴い、世界各国で自然災害が増加することへの懸念や、気象・気候に関する国際的な協力の推進について、改めて意識の共有をしたところであります。
 気象庁といたしましては、世界気象機関などと連携をいたしまして、温室効果ガスに関するデータ提供や、気候変動に関する監視・予測を行ってきております。また、アジア太平洋諸国の防災や気候変動対策に資するために、台風情報・気象衛星データの提供や気象の観測・予測技術の向上・人材育成などの支援を行っております。今後もこうした取組を強化して、世界気象機関などとも連携いたしまして、気象防災・気候変動対策に貢献してまいりたいと考えております。

  私からは、以上です。

質疑応答

Q : 「防災気象情報の伝え方に関する検討会」のところですが、報告書を取りまとめて公表する時期の目途と、この夏の出水期に向けて、目先実現しそうなものの見通しについて教えてください。
A : 報告書の目途ですけども、案について各委員から意見をいただいて、それを座長一任のもとで取りまとめてということになりますので、そういうプロセスを経て速やかに公表したいと考えております。今の段階では1週間か、2週間か、そういうタイムスケジュールで考えていきたいと思っております。
  それから、この検討会を踏まえまして実現に向けて進めてまいりたいことの見通しということで。「防災気象情報の伝え方」ということで幅広くテーマを設けて検討させていただきました。すでに大きな目次としては、昨年の12月末に「防災気象情報の伝え方の改善の方向性と推進すべき取組」ということで、中間的な報告をさせていただいておりますけども、その中に4つのテーマがございます。「危機感を効果的に伝えていく」、2つ目が「防災気象情報を使いやすくする」、3つ目が「防災情報をわかりやすくシンプルに伝えていく」、4つ目が「大雨特別警報への理解促進や精度向上」、こういうことであります。
  このうち「危機感を効果的に伝えていく」の中には、地域の防災支援の強化という観点で、「気象防災アドバイザー」の活用、「気象防災ワークショップ」の一層の推進、「地域防災リーダー」の育成支援等々、様々なメニューを改めて記載し強化するということを書いております。新しいキーワードとして「あなたの町の予報官」の配置についても書いておりますけども、これらについてはこれから速やかに実施し、継続的・着実にこの取組を進めていきたいと考えております。
  それから、「使いやすくする」という点につきましては、危険度分布の1kmメッシュ化については、出水期を目途に利用できるように進めてまいりたいと思っております。その他、危険度分布とハザードマップ等の一覧性の改善等についても可能な限り進めてまいりたいと考えております。
  それから、昨日のテーマにありました「わかりやすくシンプルに伝えていく」という中には、いわゆる「防災情報の警戒レベル」とそれに対応した「防災気象情報の提供」がございます。昨日の検討の中で、レベル5相当として、大雨特別警報を位置付ける等のことがございましたので、防災気象情報がどういう警戒レベルに対応しているのかかを可能な限りホームページ等の中で対応付けて見られるように進めてまいりたいと思っております。
  それから、大雨特別警報の役割と位置付け等については、しっかりと出水期まで、それから出水期以降も周知・徹底をしていく必要があると思っております。そして、昨日の検討会で話題としました大雨特別警報の精度向上につきましては、大きな方向性として、危険度分布に活用しております「土壌雨量指数」、「表面雨量指数」それから「流域雨量指数」等の指数を活用することとしておりますので、これらについては、この出水期から具体的にどこかの都道府県でできるかどうか非常に微妙なタイミングだと思っておりまして、まずは、私どもでよくデータを精査し、精査した結果を都道府県ともよくご相談しながら、都道府県ごとに設定できるかという作業を進めていくということになります。出水期から新しい指数を活用した特別警報が発表できるかどうかは、難しいかと思っております。いずれにしても重要なので、検証等についてはしっかりと進めてまいりたいと思っております。

Q : 昨日の「伝え方検討会」についての質問なんですけれども、検討会の中で、危険度分布の「濃い紫」と「うす紫」についてかなり議論が行われました。その中で、気象庁の方から実証期間というのを設けて、本当に効果があるということがはっきりすればまたレベル5にということも検討という話が出ていたんですけれども、実証期間というのはどれくらいの期間を考えておられるのでしょうか。
A : 先ほど大雨特別警報の精度向上でも話しましたように、例えば土砂災害にかかる指数について、災害との関係を精査していくというようなことをやります。そういう検証の中で、「うす紫」はそれぞれの地域で、例えば土砂災害であれば、災害が起こったかもしれない水準に2時間後に到達するという予想で出し、「濃い紫」はその地域で災害が発生したことがあるという水準に実況としてすでに到達している、この違いですけれども、この「濃い紫」の基準の位置がいいかどうかという技術的な精査をしっかり行っていく必要があるのではないかと思っておりますので、かなり時間がかかるのではないかと思っております。「濃い紫」は、現状のガイドラインで避難指示(緊急)の警戒レベル4に相当するものに位置付けられておりますから、当面の間は、それをそのまま運用していくと。それと並行して、それぞれの地域において「濃い紫」に至る指数等の値がより適切なものであるかどうかという検証をしながら、それぞれの地域で見ていく必要があると思っていますから、特別警報を全部見直すのと同程度しっかりやったうえで、かつ実力も踏まえて新たな位置付けがあるかどうかの検討になるのではないかと思っております。

Q : わかりました。これも委員からご発言があったことなんですけれども、「濃い紫」というのが災害がすでに発生していてもおかしくないという情報だということなのであれば、それはレベル4の避難開始ということとやはりどうしても矛盾というか、避難を開始している時点で、もう避難できない状況になっているということがありうるということで、レベル5にした方がよいというような意見があり、やはり私自身も納得するところがありまして、そういった中で、検証に時間がかかるということだったんですけど、検証方法ですとか、そういったこともこれから考えていくということになるのでしょうか。
A : 具体的には、これまでの過去のデータは見ておりますけれども、特別警報の精度改善と同じように、それぞれの地域で災害発生と濃い紫の関係を見ていくということを改めてする必要があるのではないかと思っておりまして、それなりに時間がかかるのではないかと思っています。昨日、土砂災害について、ある委員の方がおっしゃっていましたけれども、「うす紫」から「濃い紫」に至るのは、シャープに変わるというよりは、グラデーション的に非常に緩やかに色が変わっていくイメージであるというのが実態でありますので、どこに線を引くことがいいのかというようなことは、精度をしっかり上げていかないとなかなか言いづらいのではなかろうかと思っております。そういう状況がありますので、当面、警戒レベル4に位置付けることとして、土砂災害の危険度分布については「うす紫」と「濃い紫」の両方になっております。したがいまして、これまでどおり、呼びかけとしては「うす紫」が出れば避難をお願いしますと、こういうことをしっかりと訴えていく必要があると思っておりますし、報道の皆さんにも、ぜひそういうことでご協力いただきたいと思っております。

Q : 「濃い紫」に関しては、一昨年の「九州北部豪雨」の例を見ましても、洪水警報の危険度分布の「濃い紫」が出るとほぼ同時に朝倉の川があふれているですとか、そういった事例もやはりありました。当時の数字で言いますと、半分以上が「濃い紫」になるとほぼ同時に災害が発生しているという状況で、これまで気象庁も緊急会見で「濃い紫」というのは災害がすでに発生していてもおかしくないですということを緊急会見で何度も何度も国民に向かって発表されていたと思います。警戒レベル4ということは、避難をするタイミングということになりますが、この整合性が取れていないと思うのですが、このあたりについて長官のお考えをお願いします。
A : 例えば災害が起こったような事例、「平成29年九州北部豪雨」や「平成30年7月豪雨」のような場合について言えば、「濃い紫」が出た場合に被害が発生しているというのが比較的対応がいいというのは今お話にあったとおりです。一方、被害が発生しないような場合であっても「濃い紫」が出ている場合が相当ございます。そういう事実を踏まえたときに、特別警報について、例えば「濃い紫をもっと深くしたような紫」が一定数以上出るということを新たな基準とする方向性が、昨日の検討会で、今後の方向性として出ておりますので、それはレベル5相当として位置付けても実力にそれなりに見合ったものではないかと考えられます。「濃い紫」について言えば、メッシュで言うと1年間に万単位で出るという話もありますので、そういうものに対して全部どうなるかということはやはり検証していく必要があると思っております。これは技術上の問題がありますので、そこはそこでしっかり検証をしていかなければならないと思います。一方で、「うす紫」と「濃い紫」が同じように警戒レベル4に入っていると、これは避難勧告と避難指示(緊急)が警戒レベル4に入っているのと似ているところがありますけれども、今は、とにかく避難のトリガーは「うす紫」でしっかりしていただくということをお願いしていくということを徹底してまいりたいと思っております。

Q : 特別警報に関しまして、年明けの第3回、第4回の検討会の中でも果たして精度はどうなのかという議論があったと思います。特別警報に関しても指数を具体的に短時間の発表基準に盛り込んでいくという形でさらに改善し、適中率を上げていくことも踏まえてレベル5に位置付けるという話があったと思います。その一方で特別警報は将来的な基準の見直しも含めてレベル5に含まれたにもかかわらず、これから基準値を改定していく「濃い紫」は将来的な可能性も含めてレベル5に位置付けられずレベル4に据え置かれたというのはどうしてでしょうか。
A : 実際に「濃い紫」が出ている、あるいは特別警報が出ているという状況において被害がすでに発生していた、あるいは発生したということの対応関係として大雨特別警報が出ているときのほうがより被害が出ている蓋然性が高いという実態を踏まえて、今は、特別警報はレベル5に、「濃い紫」は4のままにされた、こういうように私自身は理解しています。どこに線を引くかということなのではないかと。昨日出ていただいていた委員の皆様の納得感として、確かに特別警報の過去5年あまり見ますと、空振りもあれば、この災害では特別警報を出していた方がいいというようなことをおっしゃる方もいますけれども、特別警報が出た時点でまあまあ災害が起こっていることがあるという感覚をお持ちなので、特別警報をレベル5にすることは皆さんおおむねそうだとおっしゃっていたのではないかと私は理解しております。一方で、ひとつひとつのメッシュで「濃い紫」が出たことに伴って災害が発生している蓋然性が高いかどうかとなったときに、もう少し精度を上げるとか指数の基準値を変えていくとかいうことをしないと被害が発生していることに「相当」とは言いづらい部分があるのではないかと思っております。したがいまして、「濃い紫」については技術検証、技術改善を踏まえてどのように位置付けるのがいいか、あるいは伝える場合にさらに色を加えるとか色々なオプションがあると思うのですけれども、それについては技術的な改善の状況を踏まえて、改めて皆さんの意見を聞きながら設定をしていくのではないかと思っております。

Q : 「濃い紫」も特別警報も同じく指数を使って今後基準の改定が行われていくというようなことになると思うんですが、そこに関してどう違うのか、私たちの感覚からしますと特別警報もこれから指数を使って出されるようになっていくわけで、それでしたら両方ともレベル5に位置付けるというのが昨日の議論の中でも、2月の第3回の議論の中でも、有識者の方でもかなりそういった意見が出ていたと思うんですが。
A : 非常に技術的な議論になってしまうのですけれども、いくつかの事例について、特別警報を発表した、あるいは特別警報を発表しておくべきではなかったのではないかと言われている事案について指数で見ていったときに、今の「濃い紫」が出始めるだけの指数値では特別警報相当にはなかなかなりません。土砂災害については、やはり今の「濃い紫」に入るか入らないかの境の値が比較的安全サイドに立っておりますので、私たちが特別警報として指数を使う場合は、今の「濃い紫」の値よりももう少し上の水準を、これは場所ごとに違うと思いますけれども、そこをよく見て精査をしていかなければならないと思っております。今、「濃い紫」に設定している指数の値よりは上の水準で基準値を決めて、それが複数メッシュ出たようなときに特別警報を発表するというような方向性なのではないかと。今の時点ではまだまだ精査する必要がありますけれども、明らかに言えるのは今の「濃い紫」だけの基準値を使って、これが複数出たからといって特別警報を出してしまうと結構空振りが多くなってしまうというような状況があると思っています。このような私どもの持っている相場観をみなさんにしっかり説明する必要がありますけれども、現行の特別警報と「濃い紫」を直接連動させるというのは、なかなか難しいと思います。

Q : 危険度分布を始めたときの頃を振り返って考えているのですけれど、あの時に水位計の付いているような大河川ですとか、一部の簡易水位計を付け始めた中小河川、色々な大雨による災害が起きている中で、大河川の氾濫とか影響というのはだいぶ見える化が進んでいて、それに対する対策も進んでいる。だけれども、2万くらいある中小河川によっての犠牲者が非常に多く出ているというところで、そこを気象庁の流域雨量指数という考え方で何とか救えないかという気持ちで皆さんお作りになったというふうに記憶しているんです。これは正しいですか。
A : そのとおりだと思います。一方で、今も進んでいますけれども水位等の実況値もすごく大事ですので、流域雨量指数とその場所その場所での被害との関係付けを行って危険度分布として始めますけれども、将来的には実況値も踏まえながらどう出していくかということを想定しつつ、洪水警報の危険度分布については始めたということです。

Q : その時に、どうしても救いたいといった中で、先ほど長官のお話にもあったように指数を安全サイドに立って低く設定した、これはなぜですか。
A : ひとつは、災害が起こり過去の検証をするときに、その災害が何時何分に起こったということが明確にわかる場合と、なんとなく明け方に起こりましたというデータしかない場合もあります。その時に、災害発生に至った指数との対応付けというのが、ある意味厳密というより大体この辺りという設定をせざるを得ないというのが一つのわかりやすい事例なのだと思います。土砂災害については、CLラインとか色々ありますけれども、その場所で災害が発生したケース、しなかったケース、どこに線を引けばいいか、その時発生したケースとして見る場合に、指数との関係が、どの時間の指数であったかということ、そういう誤差を含んだ形で私どもも設定しておりますので、どうしても安全サイドに立たざるを得ないというのがあると思います。あとは、都道府県ごとの思いというのもありますから、絶対逃したくないという思いのところもあるでしょうから、そのあたりは都道府県と協議をしながら、例えば、指数を決めてきたという実態があります。これをひとつひとつ丁寧に精度を見ながらやっていくということを全国についてやらなければならない。こういうことであります。

Q : 精度の向上というのは非常に大切で、長官はすごくいいキーワードを言ったんですけれども、地域ごとにある意味リスクの管理で、人の命を救うためにはある程度余裕をもって本当に危ないっていうところよりも手前の低い指数で設定してほしいという思いがあるところが、やっぱり災害から命を救う大事なところだと思うんですよね。そのために、「濃い紫」、「うす紫」というのを作って、危険度分布って素晴らしい精度だと思って見てたんですよね、そういう研究者たちの思いが結実したものだと思っていますので、その指数に基づいて特別警報、「濃い紫」を基準にして作る部分もあったはずなのに、なんかその「濃い紫」だけが置いてけぼりで、先ほどの質問にもありましたけれども、検討会の中でも、発生していてもおかしくない情報として「濃い紫」を指数を安全サイドに立ってつけたというふうに言って、だったらそれはレベル5じゃないの、という声を何人かの人が発しているにもかかわらず、そこで気象庁サイド、長官がそれを打ち消すコメントでまとめてしまったというのが、オブザーバだったので何も我々は発言できなかったんです。その辺についてのお考えというのを改めてお聞かせください。
A : 私自身は全体のご意見を伺いながら、ある意味予断を持たないで見ていかないといけない立場だと思っております。その観点からいって非常に悩ましい議論ではあったと思いますけれども、警戒レベル4と5が明らかに定義として違っているということが非常に大きいポイントなのではないかと思っております。あくまでも4までは様々な予測を含めてやらなければならない、5については災害が発生したということを基本とするんだという質の違うものであるという観点があります。そういう意味では、特別警報も4なのではないかという議論ももちろんあります。特別警報をレベル5に入れたのは、先ほども申し上げましたように、特別警報については「濃い紫」が出始めるよりも「さらに濃い紫」ともいうんでしょうか、これが出てかつそれが複数出ていくような場合におおむね対応していて、現実に大雨特別警報が出るようなときは、災害が発生している場合が多い、もちろん空振りの事例もこれまでありますけれども、そういう相場観を踏まえて、特別警報は表の中に入れるのであればレベル5なのではないかと。「濃い紫」について言えば、それがひとつ出たからといって必ずしも災害が起こるというわけではなく、今の基準値の設定の仕方では、むしろ起こらないほうが多いんだろうと思います。そういう相場観を踏まえて、当面の間は、今のガイドラインにあるとおり、「濃い紫」は避難指示(緊急)に相当するところと同クラスに位置付けるということです。先ほどから申し上げていますけれども、「濃い紫」と「うす紫」、「紫」が同じ警戒レベル4とされることに対しては、「うす紫」が出た時点で避難行動を開始していただくということを今の時点でしっかりお願いしていくものと私は考えております。

Q : 現状、「うす紫」も「濃い紫」も「紫」をレベル4に入れてしまうことを決めたことによって、何度も長官おっしゃってますけど、「うす紫」になったら逃げてください、避難だという風に、苦しい言い訳みたいになっていて、今後の話を聞かせてほしいんですが、その色々な精査が進んで、地元との協議も終えた上で「濃い紫」がレベル5に相当する蓋然性が高まったとなった場合には、「濃い紫」のまま今度レベル5に上げると、これまた世間が大混乱してしまうんですよ。「濃い紫」が今度ダメっていう情報になるわけじゃないですか。その時は避難完了していないとおかしいということになってしまうので、色を変えないといけないかとか、そういうところまでお考えになって、今はレベル4に入れておいて、将来同じものがレベル5になるというのはとっても混乱が起きるので、だからこそ特別警報は今から蓋然性はあるけれども、今後精度を高めて行かないと、本当の意味での災害発生情報ではないという星印がついたままレベル5に入れられたのに、「濃い紫」だけはレベル4にしておく、これが格上げということになったら、また救える命がいくつか指の間からこぼれてしまうような気がするんですが。
A : 「濃い紫」については、必ずしも今の基準値のままでレベル5にしますと言っているわけではなく、精度が良い形で新たな基準値が設定できるようになるなら、改めて位置付けを考えなければならない。そのときに、今想定しうるパターンがいくつかあって、例えば「濃い紫」は今のまま指数の基準値を変えなくて、もっと適中率の高い基準値のものを新たに「黒」にするとか、色々なことが考えうると思います。それを今の時点で決める必要もないと思っております。混乱のない形でご利用いただくというのが何より大事ですから、今おっしゃったような固定的な運用を次にしようなどとは考えておりません。むしろ、しっかりと精査をして、実力があるならばどう位置付けるか、「紫」と「黒」みたいな分け方があれば、「紫」のままで上にあげるとか、色々なパターンがありうると思います。むしろ、それを今の時点で固定的に決めると、かえって円滑な移行やしっかりと利用していただくことに影響を与える可能性があります。したがいまして、表の下には、わざわざ「改めて検討する」と書いておりますので、改めて検討するときにどういう色の付け方をするかなど、そういうことについては、その段階で考えるのがよろしいのではないかと私は思います。

Q : 第3回の検討会までは、座長の田中先生の取りまとめを見ても、特別警報も「濃い紫」もレベル5がふさわしいという意見が多数であったというふうになっています。だけども、第4回でそういう意見も依然として出ていたのに、気象庁はレベル4ですとそれに被せる形でまとめたんですよ。それはなぜなんですか。
A : ひとつは、「濃い紫」に関する説明ぶりと理解ぶりと実力と、そういう関係についての共通意識を、3回目から4回目にかけて、私ども気象庁の内部でもそうですし、委員の皆さん、それから委員に含まれている関係省庁の皆さんも含めて、より理解が深まったのではないかと思っております。例えば、「濃い紫」の表現として、災害がすでに起こっていてもおかしくないという言い方をしてきておりますが、一方で、もちろんそれは安全サイドに立っている部分がありますから、それでは実力がどれくれくらいかというと、そんなに高くないということもわかってきておりますので、昨日の第4回の時点では、まだそうではないかとおっしゃる委員の方もいらっしゃいましたし、レベル4のままでもいいのではないかとおっしゃった委員の方もいたと思っております。委員の意見に関わらず、気象庁が一方的にレベル4にしたという印象を私自身は持っておりません。もし、オブザーバで聞かれていて、そのような印象を持たれているのであれば、しっかり丁寧な説明をしていかなければならないと思っております。

Q : 改めて、今後、レベル4に入ったことで、再三先ほどもおっしゃっていますけれども、「うす紫」で避難なんだというところを気象庁は必ず言ってください。そうじゃないと、伝える我々も伝えにくくなってきます。お願いします。
A : はい。警戒レベルの運用がこの出水期までにしっかり間に合うようにしようということで、政府全体で進めております。「警戒レベル4で避難」というキーワードにしておりますし、私どももそれに対応するトリガーとなる情報を出していきますので、しっかりと利用の仕方について周知し、その都度しっかりと解説等もしてまいりたいと思っております。

Q : 今の長官のお言葉だと、これからの「濃い紫」をわれわれがどういうふうに伝えていけばよいかというところで、これまでは、重大な災害が発生しているおそれが極めて高い状況であると、もう起きていますよと、だから、レベル5と同じような形で伝えていたわけです。それをこれからはどういうふうに伝えればいいでしょうか。そういった蓋然性が低いというか、起きていない可能性の方が高いということも先ほどおっしゃられましたけど、そうなった場合、これまで伝えていたものと違う呼びかけになるのか、「濃い紫」をどのように伝えればよいでしょうか。
A : 警戒レベル4のときに住民が取るべき行動としては、警戒レベルの表が中央防災会議で作られたときに、ふたつ書かれています。ひとつ目はレベル4の前半にあたる部分で「指定緊急避難場所等への立退き避難を基本とする避難行動をとる。」というもの、ふたつ目がレベル4の後半にあたる部分で「災害が発生するおそれが極めて高い状況等となっており、緊急に避難する。」となっております。「濃い紫」が出たときに住民がとるべき行動は、ふたつ目の行動に対応するものだと思います。したがいまして、まず「うす紫」が出たら市町村から「避難を開始してください。」という避難勧告が出る場面、次に「濃い紫」が出たら「緊急に避難をおねがいします。」という避難指示(緊急)が出る場面に対応しているのだと思います。その上で、特別警報が出たような場合には「災害がすでに発生している状況です。命を守る最善の行動をお願いします。」ということを住民がとるべき行動としてお願いしていることなので、これまでも「濃い紫」や特別警報について言ってきたことの関係が、住民がとるべき行動にはおおむね対応しているのではないかと思っております。この観点で呼びかけをお願いします。

Q : 今後、災害が発生するおそれが強いというものが「濃い紫」で、それで災害が発生しているというのは「濃い紫」にあたらない可能性があるということでしょうか。
A : 「濃い紫」はそれより上の色がありませんので、「濃い紫」が出続けているところは、もちろん「災害がすでに発生している」場所がありうるわけです。ただし、「濃い紫」を市町村が避難指示(緊急)のトリガーとして使っていただく観点では、先ほどの言い方をしていただきたいということです。タイミングの問題もありまして、時点時点で「濃い紫」の深さが変わっているわけです。

Q : 昨日の最後の検討会の中でも、秋に「伝え方検討会」のようなものを開いて議論するのがよいのではないかという話がありました。先ほど長官おっしゃいました「濃い紫」の実証期間という件もあり、また、秋に今回の「伝え方検討会」のような検討会を開催されるご意思はあるのでしょうか。
A : 私も閉会のときに言いましたけれども、今回、伝え方ということで先ほど4つの大きなポイントを申しましたが、幅広く議論と改善の方向性がありました。もちろん、今議論になっております特別警報の運用、危険度分布の運用や検証もそうですけれども、それら4つの全てをPDCAサイクルを回してしっかり見ていくという意味では、引き続き同じ有識者の皆さんに状況をご報告して、意見をいただきながら進めていく必要があると思っておりますので、秋になるか冬になるかわかりませんけれども、いずれにしてもそういうことはしっかり考えてまいりたいと思っております。

(以上)

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